コブクロ「KOBUKURO 20TH ANNIVERSARY TOUR 2019”ATB”」
コブクロ | 2019.07.26
昨年9月、結成20周年のアニバーサリーライブを宮崎市生目の杜運動公園で行ったコブクロ。今年は3月の長野 ホクト文化ホール 大ホールでの公演を皮切りに『KOBUKURO 20TH ANNIVERSARY TOUR 2019 "ATB"』と銘打った全国ツアー(15都市32公演)を敢行。各地で会場を埋め尽くした多くのファンとともに、改めて20年の足跡をかみしめた。ここでは、ツアーも後半にさしかかる6月29、30日、さいたまスーパーアリーナ公演の2日目(30日)の模様をお伝えしよう。
まず、開演前の会場付近には、家族連れや友人同士、カップル、学生のグループなど、幅広い年齢層がひしめきあい、かなりの賑わいぶりだ。コブクロというアーティストがいかに多くの人の心をつかんできたのか――。その根強い人気に圧倒される。中には彼らの曲に自らの思い出を刻んできた人も少なくない。コブクロの楽曲には、小渕、黒田だけでなく、ファンにとってもヒストリーがあるのだ。
会場に入ると、アリーナ中央に設置された円形ステージが目に入る。全方向の観客に向き合おうという心意気が伝わるセットだ。
開演時間となり、照明が暗転すると、ステージ上部をぐるりと囲むように設置されたLEDスクリーンに映像が流れる。映像はサンドアートで、ストリートライブをする小渕と黒田の姿が描き出されていく。ふたりの原点ともいえるひとコマだ。その後、センターステージから4方向に伸びた花道のひとつに向かって、客席通路を歩くふたりの姿が目に入った。大きな拍手を浴びながら、小渕、黒田が悠然とステージを目指して進んでいく。
こうしてライブはふたりだけの演奏からスタートした。オープニングナンバーとなったのは「桜」。コブクロ結成のキッカケでもあり、その後リリースされて大ヒットを記録した楽曲だ。今でも旅立ちの季節には欠かせぬ歌として愛され続ける名曲である。“自分達はここから始まったんだ”という思いが伝わる、見事な1曲目だった。冒頭から国民的大ヒットの演奏により、観客は瞬く間にコブクロの世界に引き込まれていく。2曲目の「DOOR」は、夢を追う人の背中を押してくれる楽曲だが、ここで小渕のギターと歌が、かなりの熱を帯び始める。曲が終わると、黒田が「まだ2曲目なんですけど(苦笑)。アクセルの踏み方、おかしくないですか?(笑)」と、たまらずMCをはさむ。「ここ、しゃべるとこじゃないです(笑)」と、冒頭からパワー全開の小渕に突っ込み、思わぬところで空気が一気にほぐれていった。
続いてインディーズ時代からメジャーデビュー前後に発表された懐かしい曲が次々と披露されていく。また、ライブが進むにつれ、ステージ上にはバンドメンバーがひとりずつ増え、サウンドに厚みを加えていった。6曲目の「YELL~エール~」では、各メンバーが、所定の位置にスタンバイ。ステージ上が賑やかになった。
このブロックが終わると、MCタイムへ。小渕はアリーナからスタンド席の200レベルから300、400、500レベルの観客にまで、まんべんなく「最後までよろしくな~!」と挨拶。さらに、最初のブロックで披露した楽曲のエピソードをしっかりと紹介。グループの歴史を丁寧に語る配慮をみせた。
驚かされたのはサンドアートの映像である。実は録画されたものではなく、舞台のソデで実際に生で描かれているものなのだそうだ。これをMCで知った観客がどよめいたのは言うまでもない。
次なるブロックでは「赤い糸」や「未来」「Twilight」など、ラブソングを中心にセレクト。しっとりとしたメロディーに20000人超えの観客が酔いしれたところで、ライブは中盤へ。
「ここからはみんなにかかってますよ~!」と、アッパーな時間帯へと誘う小渕。手拍子に後押しされ、ここで「宝島」がプレイされる。観客が手にするカラフルなペンライトが左右に揺れ、場内の一体感が増していく。黒田もペンライトを手に花道を歩き回り、盛り上げに貢献。チョコレートのCMソングとしてなじみ深い「tOKi meki」では客席に大きなバルーンが投入され、ハッピーなムードを演出。この後も観客を巻き込むコール&レスポンスを取り入れた「Moon Light Party」や、火柱をボンボン出現させて「神風」をアグレッシヴに聴かせたりと、熱いパフォーマンスを展開。ハードな側面も見せつけた。
「めちゃくちゃ盛り上がりましたね~! ありがとう!」と笑顔を見せる小渕に「今日は元気あるわ~……小渕が!」と、茶化す黒田。小渕はすかさず「みんなが盛り上がってくれるからですよ!」と返す。
トークでも観客を楽しませながら、ライブは後半戦へと向かっていく。だが、その前に小渕は観客をいったん座らせ、少し長めのMCでグループの足跡を振り返った。
10年前にもアニバーサリーでファンに祝ってもらったこと、そして歌が誰かの力になると感じたこと、結成当時は下を向いて歌っていたこと、さらに一時活動休止を経験したことなど……。もちろん、短い時間で20年間のすべてを語ることはできないだろうが、このあと、10周年のタイミングで発表した「時の足音」につなげて、活動にじっくり向き合ったという楽曲を響かせた。ファンにはよく知られているのだが、この曲は時計の長針を黒田、短針を小渕に見立てており、進むスピードは違えど、同じ目標に進んでいくという思いを表現したものである。感情のこもった歌声にはぐっとくるものがあった。その流れから、知らぬ人はいないであろう名曲「蕾」へ。切なくも温かみのある歌が大きな会場を包み込んだ。
本編の大詰めは昨年の宮崎のライブで1曲目に歌われたという「20180908」。LEDスクリーンにも、その時のライブ映像が流れる。まさに感謝の思いがつめこまれた楽曲だ。
本編最後に選ばれたのは、20周年記念のメモリアルソング「晴々」。彼らの代表曲のタイトルや歌詞の一部がちりばめられた、粋なアッパーチューンだ。エンディングには銀テープが発射され、お祝いムード満点の締めくくりを飾る。ラストはまた花道から通路を通り、ファンの声援を浴びながら、ふたりともバンドメンバーとともに楽屋へと戻っていった。
アンコールでは、小渕と黒田がなんとスーツ姿で登場。客席からは「かっこいい!」との声が飛び交う。ステージにたどり着いたふたりから飛び出したのは「ココロの羽」だった。インディーズ時代からファンに愛され続けてきた曲で、観客は隣の人と手をつなぎながら大合唱。スクリーンにはサンドアートで羽が描かれ、まさに演奏と同時進行で仕上がっていく。曲の終わりにはサンドアートに“ANSWER”の文字が書かれ、ラストナンバーの「ANSWER」へ。メジャー第1弾アルバム『Roadmade』に収録され、ファンのあいだでも評価の高い1曲である。コブクロの原点を感じさせるメッセージが染みるナンバーだ。エンディングではサンドアートに“20th ありがとう”の文字が浮かび、聴き応え抜群のライブが完結する。終演後はバンドメンバーとステージで円を作り、深々と一礼。その姿に声援が鳴りやまない。そんなファンの思いを受け、小渕、黒田はファンに何度も手を振りながら楽屋へと戻っていった。終わってみると、訪れた人々も自分の半生を振り返ったかのような感慨深い気持ちになる。いかに彼らの曲が人生を支え、心に寄り添ってきたのか……。単純にヒット曲が多いということではなく、たくさんの人が共感できる歌があってのコブクロなのだろう。そんなふたりの歌の魅力にただただ感服させされる公演だった。全国でもらったたくさんの感謝の声を糧に、彼らがますますいい楽曲を届けてくれることに期待したい。
【取材・文:海江敦士】
リリース情報
ALL TIME BEST 1998-2018
2018年12月05日
ワーナーミュージックジャパン
お知らせ
KOBUKURO 20TH ANNIVERSARY TOUR 2019 “ATB”
08/03(土) 上海 万代南夢宮文化中心
08/04(日) 上海 万代南夢宮文化中心
08/24(土) 台北 台北國際会議中心
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。