前へ

次へ

「THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 -GRATEFUL SPOONFUL-」さいたまスーパーアリーナ

THE YELLOW MONKEY | 2019.07.29

 4月27日の静岡エコパアリーナからスタートした「THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 -GRATEFUL SPOONFUL-」。2016年に再集結してからアリーナツアーとホール・ツアーを行ってきた彼らだが、今回のツアーは再集結後初の新作『9999』リリース・ツアーとあって、更なる意気込みを感じさせるものだ。このツアーは4種類のセットリストで回るとアナウンスされており、15会場全27公演のうち、11・12公演目となった7月6・7日のさいたまスーパーアリーナ2daysも、それぞれ全く違う表情のTHE YELLOW MONKEYを見せるステージになっていた。

 もちろん全公演ひとつひとつを全力で見せてくれているTHE YELLOW MONKEYだが、彼らにとって大切な日のひとつである7月7日の前夜祭と当日を、吉井和哉(Vo, G)、菊地英昭(G)、廣瀬洋一(B)、菊地英二(Dr)の4人は会場を埋め尽くしたファンとともに迎えたのだった。6日の最初のMCで吉井は言った。 「ファンの方はご存知と思うんですけど、明日7日は我々が第1回の解散をした日。因縁のある日なのです。そして、僕がもう1回バンドをやってくださいと、皆にロンドンからガラケーで一斉メールした、そんな願いの叶った大事な日です。今夜はそれの前夜祭。この2日間をスペシャル・ナイトにしたいと思っています」

 6日はそんなスペシャルな2日間に、いよいよ突入したという高揚感があった。7月7日がどんな日か知っていても吉井の口から当時のことが語られると、彼らにしかわからないその日への特別な思いがひしひしと伝わってくるようだった。そうして再集結したことによって生まれた曲が『9999』に結実し、それを携えてのツアーというバンドとして当然の流れになっていることを、彼らは心から喜んでいるのだと思う。その中でのスペシャルな日は、さらに記念すべき日として時を刻んでいた。

 2日とも中心になるのは『9999』収録曲だが、オープニングからフィナーレまで流れがガラリと変わっている。新曲以外もかなり曲が入れ替わり、30年になろうとする彼らの歩んできた道を辿っているかのようだった。4人の衣装も曲に合わせたライティングもそれぞれの日の世界観を作り上げていたが、その中心となるのは彼ら4人の存在であり彼らが届けてくれる歌であり曲でありサウンドである。何よりもそのことを実感させるステージだった。そして、『9999』の曲をライブで演奏し、オーディエンスと共有することで、この最新作は完成するのだと、新作のタイトルについての吉井の言葉から思い当たった。 「アルバム『9999』が完成して、そのアルバムを引っさげてのツアーです。長い年月、皆さんもいろいろな思いがあったと思うし、初めて観る人もたくさんいると思います。 “SPOONFUL”というのはスプーン1杯という意味らしいです。皆さんの心の大切な一杯を、今夜我々にいただけたら嬉しいと思っています。最高の夜にしましょう」

 3月28日に『9999』先行試聴会を日本武道館で行ったのも、そういう思いを込めていたのだろう。このツアーでも毎ステージでオーディエンスからの1杯が加わって『9999』、そしてTHE YELLOW MONKEYの今が完成しているのだ。吉井はこんなことも言っていた。 「今回のツアーはトランプのマークになぞらえて4種類のメニューを用意しているんですけど、聴いてもらいたい曲がたくさんありますし、『9999』の曲と混ぜてやるとさらに相乗効果でいい感じになるんです」

 このツアーでの彼らが演奏すると初期からの代表曲が新たな輝きを発するし、意外な曲が掘り起こされて息吹を感じさせたりもする。そうした選曲のさじ加減にも今の彼らの体温が感じられるようだった。吉井とエマがドキドキするような絡みを見せて会場に嬌声の渦を起こしたのも、この日ならではのスペシャルな空気のせいだったのかもしれない。

 全体の印象を振り返れば、会場の照明が落ちる前から驚かせてくれた6日はTHE YELLOW MONKEYらしいグラマラスなイメージが強烈に伝わり、7日は前日の興奮が醒めやらぬままの躍動感ある幕開けで、彼らの鼓動まで伝わるような手応えが終演後の余韻にまであった。

 2004年の解散宣言と吉井の一斉メールによる再集結の呼びかけがあった7月7日がスペシャルな日になってから、この日付に彼らがステージに立つのは初めてだ。しかも今回の会場までは吉井とヒーセの地元を通って来るため、さいたまスーパーアリーナには特別な親近感があるようで、ヒーセは「ここを聖地にしたいです!」とステージから言ったほど。その思いは他のメンバーにもあったことだろう。思い入れのある会場での特別な夜となった7日のライブに気持ちが入らなかったはずはない。オープニングに続けた新曲を歌いながら吉井はこう呼びかけた。 「今日がどんな日かわかってますか? THE YELLOW MONKEYの誕生日ですよ! 新しいTHE YELLOW MONKEYを感じてください! 皆さんも新しくなりましょう!」

 特別な日だからこそ、彼らは1曲1曲に心を込めて演奏していた。エマはフライングVをダイナミックに鳴らし、ヒーセは華やかな衣装を揺らしながらどっしりとベースを響かせる。フロント3人がステージ狭しと駆け回るのを観ながら、アニーは力強くドラムを叩き続けた。ある曲で演奏を終えた瞬間にアニーが立ち上がったのは、内なる力の爆発だったのだろう。

 アリーナクラスのステージでは観客との距離が遠くなるが、彼らはそれを縮めるべくセットを組み、いくつかの曲では文字通りオーディエンスと触れあいながら歌い演奏した。だがそれがなかったとしても、このツアーはリアルに彼らを感じさせるものになっていると思う。THE YELLOW MONKEYの4人とサポート・キーボードの鶴谷崇との演奏は、このバンドならではの見事なまでのアンサンブルと熱量をダイレクトに伝えて来た。このツアーで見せている自分たちの充実ぶりを、彼らが一番感じていたに違いない。この特別な夜の終盤に吉井は遠慮がちにこんなことも言った。 「新しいアルバムを出したTHE YELLOW MONKEYは、一回り変わった感じに見えませんか? 僕はそう感じてるんですけどね。今THE YELLOW MONKEYやってて、昔と変わらないところもあるし、日本に、ちゃんとあっていいバンドなんじゃないかなと思ってます」

 アンコールでは意外な吉井の告白に場内がどよめいたりもしたが、スペシャルな2日間は彼らに新しい歴史を刻んで幕を閉じた。まだ続くこのツアーで、彼らはまた新しいエネルギーを溜め込んでいくのだろう。 「このツアーは続きます。またいつかニュー・アルバム10枚目が完成して、またツアーをやります。もうそんなに先も長くないかもしれないから、1本1本皆さんの気持ちを、空気を忘れないようにやっていきたいと思います」  吉井のこの言葉が示した未来へと続く素晴らしい2daysだった。

【取材・文:今井 智子】
【撮影:Mikio Ariga】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル THE YELLOW MONKEY

リリース情報

THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2017

THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2017

2019年08月02日

ワーナーミュージックジャパン

01. WELCOME TO MY DOGHOUSE
02. パール
03. ロザーナ
04. 嘆くなり我が夜のFantasy
05. TVのシンガー
06. サイキックNo.9
07. SPARK
08. 天国旅行
09. 真珠色の革命時代~Pearl Light Of Revolution~
10. Stars
11. SUCK OF LIFE
12. バラ色の日々
13. 太陽が燃えている
14. ROCK STAR
15. MY WINDING ROA
16. LOVE LOVE SHOW
17. プライマル。
18. ALRIGHT
19. JAM
20. Horizon (Special Edit)
21. SO YOUNG
22. 砂の塔
23. BURN
24. 悲しきASIAN BOY

お知らせ

■ライブ情報

THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 -GRATEFUL SPOONFUL-
08/03(土) 宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ
08/04(日) 宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ
08/08(木) 日本武道館
08/09(金) 日本武道館
08/26(月) 神戸ワールド記念ホール
08/27(火) 神戸ワールド記念ホール
09/03(火) アスティとくしま
09/14(土) あづま総合体育館
09/15(日) あづま総合体育館
09/21(土) グランメッセ熊本
09/22(日) グランメッセ熊本

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る