Ivy to Fraudulent Game 「Concept Live “完全が無い”」
Ivy to Fraudulent Game | 2019.08.02
白いスモークがうっすらと漂っているステージに大島知起(G)、カワイリョウタロウ(B)、福島由也(Dr)が現れたのに続いて寺口宣明(G・Vo)が登場。「+」がスタートすると、みるみる内にIvy to Fraudulent Gameならではの世界が会場内に構築された。ギターのアルペジオに彩られながら哀愁に満ちたメロディが広がり、唸りを上げた轟音。夢見心地のような恍惚を誘う彼らの音楽の質感は、とても独特だ。観客は一音も逃すまいとするかのように、一心に耳を傾けていた。「周りの顔は気にせずに、一緒に楽しんでください」という寺口の挨拶を挟んで「error」に突入すると、拳を突き上げて興奮を露わにした観客。続いて届けられた「trot」は、会場内に漂い始めた熱気をさらに力強く上昇させていた。
前のめりに疾走するサウンドがとても刺激的な「青写真」に続き、爆音の塊でありながらも精緻な構築美を示した「アイドル」。波の音が会場内の雰囲気を変化させた後、何処か物悲し気なメロディが鳴り響いた「she see sea」……表現力豊かなサウンドを堪能させられる場面がさらに続いた。
「いくつになっても何かを失いかけそうになると、大切さに気づいて、悔やんでの繰り返しなんですけど、今、手の中にある、間違いなく愛してると言えるものだけ信じて、なるべく見失わないように生きてるつもりです。それでも見えなくなることがすごくあって、最近もそんなことばかりで。なくす一歩手前で“大切なんだな”と思えるものが、他人と比べて多くはないのかもしれないけど、確実にあるんです。」という寺口のMCを噛み締めつつ聴いた「故郷」は、語っていた想いが反映されているのを感じた。続いて、ライブで聴くのは久々の「可憐な花」。優しいサウンドが、観客を包み込んでいた「夢想家」。《Everything’s Gonna Be Alright!!》と歌いながら、観客が拳を激しく突き上げていた「E.G.B.A.」……多彩なサウンドが生々しく迫ってきた。
このライブのタイトルは『Concept Live“完全が無い”』。“コンセプトとは何なのか?”という点について具体的には語られなかったが、「革命」「sunday afternoon」「Memento Mori」が披露された後、9月4日にリリースされるニューアルバム『完全が無い』に収録される曲がいち早く披露されたのは、このライブのコンセプトの一部分を示していたように思う。「“なんで言葉を持ってるんだろう?”と、ある日、突然思いました。“なぜ人間は、鮮やかな模様を持たず、牙を持たず、たてがみもないんだろう?”と。変な生き物だと思います。言葉なんていらないと思う瞬間があって、すごく邪魔だと思うこともある。でも、思ってることがちゃんと伝わった時に、他の生き物にはわからない人間だけの喜びがあって……。人間の模様は、生きながら心の中に作っていくものなのかなと。この曲ができて、そんなことを思いました」というMCを経て披露された「模様」は、ニューアルバムにも収録される曲で、この日、まさにシングルがリリース。アコースティックギターを弾きながら歌い始めた寺口に、他のメンバーも合流して開花させたサウンドが、とても柔らかで心地好かった。
新曲の初披露は更に続いた。瑞々しいメロディと轟音がドラマチックに高鳴った「真理の火」。不穏なムードを漂わせながら壮大な展開を遂げた「無色の声帯」。爽やかな躍動感を帯びていた「blue blue blue」……ニューアルバム『完全が無い』は、このバンドならではの精緻なサウンドメイキングが、一層の進化を遂げたものとなることを予感させられる瞬間の連続であった。そして、「平成が終わって令和になって、変わり映えのない暮らしの中で、やはり音楽だけはどんな時代になろうと、どんな状況であろうと、手放すことができません。それは多分、君たちと同じ。音楽を愛してるし、自分の歌、音楽を、どんな時代、場所でも大切に抱きしめていこうと思います」と寺口が力強く語った後、本編は「賀歌」が締め括った。大島がボウイング奏法(バイオリンの弓を使ってギターの弦をこする)を交えてプレイするなど、幻想的な残響音で彩ったサウンドが印象的だった。この曲も、ニューアルバムで改めてじっくりと耳を凝らして聴くのが楽しみだ。
アンコールで披露された寺口作詞曲の新曲「Oh, My Graph」は、観客の軽快な手拍子を誘っていた。そして、ラストを華麗に飾ったのは「劣等」。一丸となって演奏していたメンバーの姿が、実に楽しそうだった。「本当に今日は最高だった!」と寺口が叫んでエンディングを迎えた瞬間、湧き起こった猛烈な勢いの拍手と歓声は、メンバーたちの『完全が無い』に対する手応えを一層確かなものとしたに違いない。
【取材・文:田中 大】
【撮影:Yusuke Satou】
リリース情報
模様
2019年07月24日
ビクターエンタテインメント
2. 模様(TV size ver.)
3. 模様(Instrumental)
4. Carpe Diem Tour Live at STUDIO COAST (水泡~道化の涙~革命~Memento Mori~低迷)
お知らせ
Ivy to Fraudulent Game One Man Tour
”One Complete”
【2019】
11/24(日) 札幌BESSIE HALL
11/29(金) 金沢vanvan V4
11/30(土) 新潟CLUB RIVERST
12/08(日) 仙台darwin
12/15(日) 高松DIME
【2020】
01/11(土) 広島SECOND CRUTCH
01/13(月・祝) 福岡INSA
01/18(土) 大阪BIGCAT
01/26(日) 名古屋CLUB QUATTRO
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。