キュウソネコカミ 自身初となる野音ワンマン『DMCC REAL ONEMAN TOUR 2019 EXTRA!!~アウトドアマウス~』
キュウソネコカミ | 2019.08.05
昨年の年間100本ライブに引き続き、この2019年も平成を締めくくる新作ツアーから対バンツアー、各地でのフェス/イベント出演と、怒涛のスケジュールでライブを繰り広げているキュウソネコカミ。令和初となるワンマン公演は、東京・日比谷野外音楽堂(7月15日)と大阪城音楽堂(8月3日)で繰り広げられる初の野音ワンマン「DMCC REAL ONE MAN TOUR EXTRA!! ~アウトドアマウス~」である。本稿では、日比谷野音での模様をレポートしたい。
梅雨の時期でありながら、公演中は雨を寄せ付けなかった当日。開演予定時刻の17時をまわり、歓声を浴びながらステージ上のポジションにつくヤマサキ セイヤ(Vo/Gt)、オカザワ カズマ(Gt)、カワクボ タクロウ(Ba)、ヨコタ シンノスケ(Key/Vo)、ソゴウ タイスケ(Dr)の5人。「せーの!!」の掛け声で思い切りの良い爆音の音出しを放ち、「キュウソネコカミじゃー!!」の第一声から挨拶代わりの「キュウソネコカミ」を叩きつけるオープニングだ。ヤマサキは歌の合間にも「たくさん来てくれてありがとー!!」と声をあげ、ヨコタのキーボードソロに繋ぐ。さながら、シンガー兼マスター・オブ・セレモニーといった堂々たる立ち居振舞いである。
楽曲そのものの瞬発力で一気にヒートアップする序盤だが、振り付けのダンスでオーディエンスを巻き込むインタラクティブ性の高さも抜かりない。オーディエンスの様子を見渡してガッツポーズを決めるオカザワも、気持ち良さそうだ。難しい人間関係の距離感をキャッチーに歌い上げてしまう「メンヘラちゃん」や、かつて世間をバズらせた世代のアンセム「ファントムヴァイブレーション」の強靭なフックで場内を沸かせ、すべてのしがらみを振り切ろうとする「越えてゆけ」のグッドメロディが高らかに響き渡る。こんなに飛ばして大丈夫かと思うぐらいだが、あらためて感謝の言葉を織り交ぜたMCの中では「ゆっくりやろうよ。キュウソって忙しない(ヨコタ)」「そうなのよ。朝ごはんみたいなバンドやから(ヤマサキ)」と笑わせるのだった。
そうは言いながらも、メジャーデビュー曲「ビビった」で5人はすぐさまロックな熱狂を取り戻してしまう。「膝ぶつけない程度に全力でーっ!!」と気遣いながらダンスを促す余裕も含めて、ライブバンドとしての基礎体力の高さが伺える。「サギグラファー」では自撮りの時代を鋭く抉りつつ、演奏中に自分たちの写真撮影が行われていた。メタ視点の批評精神や遊び心をもたらしても、ロックバンドとしてのエモーショナルな熱狂を見失わないところに、キュウソネコカミの凄さはある。ヨコタがショルダーキーボードを携えて前線に躍り出る「ギリ昭和」では、MV化された完全版の《令和》コールを巻き起こし、日本の中枢にほど近い日比谷野音で繰り出される「JP」も痛快な響きであった。
「馬乗りマウンティング」では、カワクボの攻め気溢れるベースフレーズがオーディエンスの体を揺らし、この日配布されていた特製うちわが振りかざされるダンスタイムへ。これからのシーズンを迎え撃つ「夏っぽいことしたい」では、ステージ上にビニールプールやビーチパラソルが持ち込まれ、ヤマサキは水鉄砲を乱射しながら歌っている。ブリージンなバンドサウンドも素晴らしく、最後には花火まで吹き上がる華やかな一幕となった。ヤマサキの悪ノリで水をかけられたように見えたソゴウだが、実はギリギリでかからないように手加減していたらしい。
「スイカ切れたよー」という声に誘われて、一旦メンバーが立ち去るのだが、ヤマサキがアコギを携えて一人でステージに戻り、場内をどよめかせる。ここで弾き語り披露された新曲「Kくん」は、SNSに振り回される若者を描いた切ないラブソングであり、曲調の方もストレートで美しいメロディが光っている。意表を突くようなハイライトシーンになった。喝采の中で「緊張したあー」と言葉を漏らすヤマサキは、続いて手拍子を誘いながら「米米米米」を歌い出し、他のメンバーが戻ってきてドラマティックにバンドサウンドを立ち上らせる。この曲でこんなにも感動するものなのかという、音楽の魔法である。そこから“家”のハードコアなサウンドへと持ち込み「米米米!!」と盛り上がる流れも鉄壁だ。
場内のオーディエンスはもちろん、場外で音漏れを聴いているファンともコール&レスポンスを繰り広げてしまう「DQNなりたい、40代で死にたい」。釣り人の姿になったオカザワがボートに乗り込み、オール型のギターでソロを弾き倒す「KMTR645」。その後には、何の前触れもなく唐突に新曲が披露される。これも、練り上げられた情緒の形が印象深いナンバーだが、演奏後にあらためてイントロを鳴らし手応えを確認した後、ヤマサキはリスナーと支え合う関係について語りながら「出す予定もない。ただ、君たちのために新曲を用意しました」と告げるのだった。
そして終盤は、まさにアーティストとリスナーの信頼関係を歌う「推しのいる生活」から、深いモラトリアムの時間を映し出す「何も無い休日」、そして愚直で一所懸命な「真面目に」や「5RATS」と、キュウソネコカミの本質的な反骨精神がむき出しになってゆく。冷静かつ客観的な視点をもって表現に向かいながら、しかし決して冷めてはいない。むしろメタ視点を燃料に、人生のエモーションをより大きく燃え上がらせている。本編最後の「The band」まで、新旧の楽曲によって構成されたセットリストと演奏は、キュウソネコカミの何たるかを再確認させる素晴らしい内容であった。
アンコールに応えると、「今日は星空は見えていないけど、皆さんと星空を作りたいと思います!」とオーディエンスにスマホのライトを灯すよう促し「GALAXY」へと向かう。この楽曲に込められていた壮大かつ夢見心地なビジョンに、目の前のリアルな視界が追いついた。そんな手応えを抱かせる。最後の最後には “ハッピーポンコツ”でテープキャノンが放たれ、全27曲のライブは幕を下ろした。結成10周年を控え、その道のりを多くのファンと共に肯定してみせるような、見事なステージであった。
【撮影:Viola Kam (V’z Twinkle Photography)】
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リリース情報
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ギリ平成
2018年12月05日
ビクターエンタテインメント
2. The band
3. ただしイケメンに限らない
4. 馬乗りマウンティング
5. 遊泳
6. 真面目に
7. KENKO不KENKO
8. ピクピク
9. 炊き上がれ召し上がれ
10. 米米米米
11. 越えていけ
12. ギリ昭和
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セットリスト
DMCC REAL ONEMAN TOUR 2019 EXTRA!!
~アウトドアマウス~
- 01.キュウソネコカミ
- 02.MEGA SHAKE IT!
- 03.メンヘラちゃん
- 04.KENKO不KENKO
- 05.ファントムヴァイブレーション
- 06.越えていけ
- 07.ビビった
- 08.サギグラファー
- 09.ギリ昭和 ~完全版~
- 10.JP
- 11.たば狂
- 12.馬乗りマウンティング
- 13.イキがいいのだ
- 14.夏っぽいことしたい
- 15.Kくん ※新曲
- 16.米米米米
- 17.家
- 18.DQNなりたい、40代で死にたい
- 19.KMTR645
- 20.※新曲
- 21.推しのいる生活
- 22.何も無い休日
- 23.真面目に
- 24.5RATS
- 25.The band
- 01.GALAXY
- 02.ハッピーポンコツ
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お知らせ
東名阪対バンツアー『タイトル未定』
11/19(火) 名古屋DIAMOND HALL
11/21(木) 新木場STUDIO COAST
11/25(月) なんばHatch
ROCK IN JAPAN FES.2019
08/10(土) 国営ひたち海浜公園
ハンブレッダーズ『“続けてみることにした”ツアー』
08/13(火) 渋谷CLUB QUATTRO
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZO
08/17(土) 石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ
SUMMER SONIC 2019
08/18(日) 大阪・舞洲SONIC PARK
WILD BUNCH FEST. 2019
08/25(日) 山口きらら博記念公園
SWEET LOVE SHOWER 2019
08/30(金) 山梨県 山中湖交流プラザ きらら
TRIANGLE’19
08/31(土)-09/01(日) 福岡シーサイドももち海浜公園地行浜ビーチ内特設ステージ
OTODAMA’18-’19~音泉魂~
09/08(日) 泉大津フェニックス
ベリテンライブ2019
09/08(日) 栃木県真岡市・井頭公園
BAYCAMP2019
09/15(日) 神奈川県川崎市東扇島東公園 特設会場
イナズマロックフェス2019
09/22(日) 滋賀県草津市烏丸半島芝生広場
SHANK『THE SUN ALSO RISES vol.95』
09/27(金) F.A.D YOKOHAMA
PIA MUSIC COMPLEX 2019
09/28(土)-29(日) 新木場・若洲公園
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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