所属全7バンドが集結、世代交代を感じさせた「MASHROOM 2019」
MASHROOM | 2019.08.23
MASH A&Rによるライブイベント「MASHROOM 2019」が、8月14日に新木場STUDIO COASTで行なわれた。昨年のオーディション「MASH FIGHT! Vol.7 FINAL MATCH」でグランプリに輝いたユレニワが初出演となり、同イベント史上最大の計7バンドが集結! しかも、季節は真夏(これまでは毎年1月に開催)ということで、ソールドアウトの会場は開演前から例年にも増して熱気が高まっていた。
■THE ORAL CIGARETTES(FRONT STAGE)
トップバッターがいきなりTHE ORAL CIGARETTESというタイムテーブルが組まれた6回目の「MASHROOM」。景気づけの恒例4本打ちを経て、FRONT STAGEにメンバーが現れると、レーザーが飛び交う中、「接触」でイベントは幕を開けた。威風堂々たる存在感を放ちながらも「今日は仲良し小好ししにきたわけちゃうぞー!」と叫ぶ山中拓也(Vo&Gt)。「ひさしぶりの曲をやります」と始まった「STARGET」では、オーディエンスの拳とタオルを激しく回させ、照明が照らす山中のギターソロも決まり、完全に主導権を掌握する。ただ闇雲にブチ上げるのではなく、ダウナーなムードや横ノリを含みつつ、場内の熱気を寸分も逃さず集束させていくライブ運びはさすが。中西雅哉(Dr)とあきらかにあきら(Ba&Cho)のソロでも沸かせた「DIP-BAP」。鈴木重伸(Gt)の鋭角リフが唸りを上げ、“あぁ、そんな簡単に言うな”のシンガロング&ヘドバンが巻き起こった「カンタンナコト」と、終始ノンストップの演奏で生まれる興奮は尋常じゃない。最後は赤のライティングが差し込んだ狂乱の「PSYCHOPATH」。MASH A&Rの看板としてエグすぎるパフォーマンスを見せつけ、オーラルの4人は嵐のようにステージを去っていった。
■ユレニワ(LEFT STAGE)
フロアのサイドに設置されたLEFT STAGEのトップを飾ったのは、MASHの新顔バンドであるユレニワ。歌う前から「やっと時代が俺に追いついたなと思ってるんですよ。待ってたぜ、マジで」とシロナカムラ(Vo&Gt)がいきなりのビッグマウスでしっかりとかます、ルーキーらしからぬ物怖じのなさがいい。まずはグッと溜めの効いた演奏と感情を叩きつけるようなボーカルが際立つ「重罪」を直向きに聴かせると、「Hello Glow」ではミラーボールが煌めく中、ダンサブルなビートに乗って種谷佳輝(Gt&Cho)も眩しい音色を奏で出す。曲が進むにつれて、アカペラで歌うシーンが訪れたり、シューゲイザー的轟音が降り注いだり、緩急自在のパフォーマンスは深みを増し、決してハッタリなどではないこのバンドの凄みが初見のお客さんにもじわじわ浸透していくのが見て取れた。おそらく、MASHの先輩勢も彼らに少なからず脅威を覚えたのではないだろうか。その後も「バージン輿論」「PLAY」と熱く駆け抜け、今持っているものすべてを出し切ったユレニワ。青き感性を湛えた若者たちの躍動する姿に、会場からは何度も大きな拍手が起こっていた。
■LAMP IN TERREN(FRONT STAGE)
気合十分なリハの「New Clothes」で観客を温めて登場したLAMP IN TERRENは、荒々しいボーカルと疾走感あふれるサウンドで駆ける「innocence」から勢いよく飛ばす。7月末の日比谷野音公演で披露されたグランジーな新曲も堂々と届けるなど、激情ほとばしる現在のモードを自信たっぷりにアピール。他のバンドと張り合う感じではなく、あくまで独自の世界観を整然と作り上げていく佇まいがテレンらしい。ステージに光が満ちる中での「ホワイトライクミー」で気持ちが解き放たれたのか、「地球儀」の間奏では松本大(Vo&Gt)が突如「ダイブやってみたい!」と人生初ダイブを申し出。“今なら飛べるさ”の歌詞そのままに身を委ね、「おもしれー!」「すげえ!」と歓喜しながらオーディエンスの波を泳いでいった。また、喉のポリープがあって声がうまく出なかった去年の「MASHROOM 2018」で手術を決めたことにも触れ、「ちょっとかっこよくなったでしょ?」と晴れやかに笑うシーンも。締めは「ずっと歌っていきたい」という誓いを込めた「BABY STEP」。万感の思いでガツンと鳴らし、生まれ変わった姿を見せたテレンは、2度目の野音に続いて、「MASHROOM」でも文句なしのリベンジを果たした。
■YAJICO GIRL(LEFT STAGE)
“YAJICO GIRLってこんな感じだったっけ!?”と驚きを隠せない観客も多かったのではないかと思う。リリースされたばかりのアルバム『インドア』で大きく変貌を遂げた彼らは、その新しいエモーションをもって、あらためて自分たちがどんなバンドなのかを「MASHROOM」という特別な舞台で力強く伝えていた。標榜する“Indoor Newtown Collective”の文字がキーボードに輝く中、「2019」で軽やかに幕を開けたヤジコのステージ。榎本陸(Gt)が鍵盤も弾くスタイルになっていたり、代表曲「いえろう」を元のジャカジャカ掻き鳴らすギターロックではなく、抑揚の効いたソウルフルなアレンジで聴かせたりと、のっけからワクワクさせられるポイントがいっぱいで、ゆったりと紡がれるビート、四方颯人(Vo)のたゆたうようなボーカルに乗って、オーディエンスは気持ちよく身体を揺らす。伸びのあるシャウトに熱を帯びた演奏が重なる「NIGHTS」、会場が温かい手拍子に包まれた「熱が醒めるまで」などを通して、確かな成長を終始見せつけた5人。四方からは「日本のロックに自分たちなりのニュースタンダードを作っていきたい」と頼もしい言葉も飛び出しただけに、新生YAJICO GIRLの今後にますます期待してしまう。
■Saucy Dog(FRONT STAGE)
ブレイクタイムを挟んで後半戦の口火を切ったのは、FRONT STAGEへ登場したSaucy Dog。キリッと引き締まった3ピースサウンドと石原慎也(Vo&Gt)のまっすぐな歌声が響きわたった「真昼の月」に始まり、まずは「バンドワゴンに乗って」までを爽快に駆け抜ける潔いパフォーマンスで、序盤にして前回の自分たちをしっかりと超えてくる。「MASHの強者たちのライブを観て、初めてこのイベントに出たときの記憶が蘇ってきたので、チャレンジャーの気持ちでがむしゃらにぶつかっていきます!」とMASHの紅一点・せとゆいか(Dr&Cho)が思いを語ったあとは、“自分らしく歩いて行こうよ”と歌う清々しい新曲「雀ノ欠伸」も披露。さらに、美メロを奏でる秋澤和貴(Ba)のベースライン、歌の主人公に寄り添うようなせとのコーラス、石原の真に迫るボーカルが映えた、喪失感に胸が締めつけられるバラード「コンタクトケース」「いつか」を、一段と大きなスケールで聴かせてくれた。「ここにいる人たちは音楽がすごく好きなんだなって思いました」と笑顔を見せる石原。最後は「今までの弱かった自分に、最低だった自分に」と前置きし、困難を乗り越えるための曲「グッバイ」を熱く届けた。
■パノラマパナマタウン(LEFT STAGE)
「Top of the Head」→即興でラップを乗せたエアロスミス「ウォーク・ディス・ウェイ」と、リハの時点でウォームアップ万全で本番が待ち切れない様子だったパノラマパナマタウンは、オープニングの「ずっとマイペース」から岩渕想太(Vo&Gt)の縦横無尽な歌いっぷりとタノ アキヒコ(Ba)の腰にクる低音を起点にがっつりとアゲて、ブレイクでは田村夢希(Dr)が吹くホイッスルも痛快に滑り込む。「世界最後になる歌は」に突入すれば、浪越康平(Gt)のカッティングがエッジーに暴れ出し、グルーヴはいっそう研ぎ澄まされ、夏が楽しくなる新曲「HEAT ADDICTION ~灼熱中毒~」でボルテージはなおもギンギンに高まっていく。「MASHROOMということで、特別に好きなキノコのランキングを発表したいと思います(3位:エノキ、2位:しいたけ、1位:なめこ)」と岩渕のMCも自由奔放! そんな展開でふいにフリースタイルラップが始まったりするのも面白く、お調子者感を存分に活かしたいい流れのまま、生命力爆発しまくりの「めちゃめちゃ生きてる」までゴキゲンに突っ走ってみせたパノパナ。テレンと同様、長き試行錯誤の果てに揺るぎない自信を得たことが伝わる、超エネルギッシュなステージを見せてくれた。
■フレデリック(FRONT STAGE)
大歓声に迎えられたトリのフレデリックは、イントロから三原健司(Vo&Gt)が雄々しく叫び、レーザーがド派手に照射した「飄々とエモーション」で待ちわびたオーディエンスを瞬く間に圧倒。シンセの音色も魅力だけれど、何よりどっしりとしていて風格のあるバンドサウンドが度肝を抜くレベルで、早々にシンガロングが起こるのも納得してしまう。「今回のMASHROOMでわかったんやけど、全バンドが濃い上にみんな違う方向に尖っとんねん。交わるわけないよな。変態ばっかり(笑)。“NEW ROCK NEW STANDARD”がホンマにいろんな形で叶ってると思います」と健司がイベントを総括したあとは、ミラーボールがネオンカラーに輝く中、色気も哀愁もたっぷりに聴かせた「NEON PICNIC」。分厚いシンセの音壁や赤頭隆児(Gt)の情熱的なギターが際立つ新曲「イマジネーション」と、三原康司(Ba)と高橋武(Dr)を中心によりディープなグルーヴを繰り出し、新しい踊らせ方を提案するかのように陶酔させた。ラストも挑戦心を持って「俺たちのこれからをずっと見続けてください!」と新曲「VISION」を投下。言葉と楽曲のとおり、フレデリックはさらに痛快な未来を描いていこうとしている。それだけに今後の展開も目が離せない。
■アンコール(FRONT STAGE)
さて、残るは事前に“???”と告知があったお楽しみ枠のみ。アンコールに応えて現れたのは、大役を果たしたばかりのフレデリックの4人だった。健司曰く「今年からMASHROOMのアンコールはトリのバンドがプロデュースすることになった」そうで、今後のMASH A&Rを引っぱっていってほしいボーカル陣を迎え、フレデリックの楽曲をアコースティックセット(FAB!!)で聴かせるスペシャルな企画が実現! まずはSaucy Dogの石原が呼び込まれ、ラテン調にアレンジされた「ナイトステップ」で一夜限りのセッションタイムがスタートした。健司が歌ってもらいたかった曲を、石原も偶然選んだというだけあって、そのベストマッチぶりに早速どよめきが生まれると、続いてはパノラマパナマタウンの岩渕が登場。「かなしいうれしい」になんとオリジナルのラップを乗せて健司の歌とシンクロさせるパフォーマンスで、自分の長所を発揮しながら沸かせてみせた。さらに、LAMP IN TERRENの松本をステージに招き、お次は松本が歌いたかったインディーズ時代の楽曲「ほねのふね」を披露。ジャジーな味付けの中、見事にしっとりと悩ましい声を響かせるなど、MASH第2期をリードしていく3組のボーカリストがこうして堂々たる化学反応を起こしたことは、先輩のオーラルとフレデリックもさぞかし嬉しかったに違いない。世代交代も感じさせたイベントの締めは全員で歌う「オドループ」。石原、岩渕、シロ、四方、山中、松本が順に姿を見せてリレースタイルで歌い繋ぎ(山中&松本は会場後方のバルコニーからの登場でエスカレート!)、全出演者が舞台に入り乱れて、6時間に及んだ「MASHROOM 2019」は大団円となった。
【撮影:ハタサトシ、Masanori Fujikawa】
ユレニワ YAJICO GIRL Saucy Dog パノラマパナマタウン LAMP IN TERREN フレデリック THE ORAL CIGARETTES ライブ
セットリスト
MASH A&R presents MASHROOM 2019
2019.8.14@新木場STUDIO COAST
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■THE ORAL CIGARETTES
- 01.接触
- 02.STARGET
- 03.嫌い
- 04.DIP-BAP
- 05.カンタンナコト
- 06.BLACK MEMORY
- 07.PSYCHOPATH
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■ユレニワ
- 01.重罪
- 02.Hello Glow
- 03.缶詰
- 04.アパート
- 05.バージン輿論
- 06.PLAY
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■LAMP IN TERREN
- 01.innocence
- 02.新曲(タイトル未定)
- 03.凡人ダグ
- 04.ホワイトライクミー
- 05.地球儀
- 06.BABY STEP
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■YAJICO GIRL
- 01.2019
- 02.いえろう
- 03.ニケ
- 04.NIGHTS
- 05.汽水域
- 06.熱が醒めるまで
- 07.ニュータウン
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■Saucy Dog
- 01.真昼の月
- 02.ナイトクロージング
- 03.バンドワゴンに乗って
- 04.雀ノ欠伸
- 05.コンタクトケース
- 06.いつか
- 07.グッバイ
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■パノラマパナマタウン
- 01.ずっとマイペース
- 02.世界最後になる歌は
- 03.HEAT ADDICTION ~灼熱中毒~
- 04.月の裏側
- 05.ラプチャー
- 06.マジカルケミカル
- 07.フカンショウ
- 08.めちゃめちゃ生きてる
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■フレデリック
- 01.飄々とエモーション
- 02.シンセンス
- 03.KITAKU BEATS
- 04.NEON PICNIC
- 05.イマジネーション
- 06.オンリーワンダー
- 07.VISION
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【ENCORE】
- 01.ナイトステップ
(w/ Saucy Dog 石原慎也)(FAB!!) - 02.かなしいうれしい
(w/ パノラマパナマタウン 岩渕想太)(FAB!!) - 03.ほねのふね
(w/ LAMP IN TERREN 松本大)(FAB!!) - 04.オドループ(全員)