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「HUMANisM」とは一体なんなのか。そしてircleがバンドを続ける理由――今こそ解き明かす。

ircle | 2019.08.30

 8月23日に下北沢SHELTERにて、大分出身の4ピースバンド・ircleの3週連続自主企画「HUMANisM~東京夏の大三角形~」の2公演目となるライブが行われた。この日のゲストは、4ピースバンド・2。河内健悟(Vo/Gt)曰く「企画の第2弾目の公演に2と2マンで、ircleと2は2回目の対バン」という“2”尽くしの一夜となったこの日、どちらのバンドもそれぞれが持つ「バンドの信念」に対して愚直なまでに正直なライブをしていた。

 先行は2。SEをバックに古舘佑太郎(Vo/Gt)、加藤綾太(Gt)、yucco(Dr)、赤坂真之介(Ba)の4人が静かにステージに登場すると、本当に突然、何の前触れもなく古舘が「ニヒリズム」のサビを歌い出し、そのまま豪快にライブがスタート!その強烈なスタートダッシュに一瞬怯んだが、そんなことお構いなしといったように次々と「フォーピース」や「ルシファー」などのエネルギッシュな楽曲を連発していく。そんな猪突猛進的なアクトの中でプレイされた「DEAD HEAT」の《どちらか出遅れた時は構わず置いて先に行こう/手を差し伸べてあげるほど余裕もないから》のフレーズを聴いて、2マンライブで向き合うバンドの関係性はいつだってこうであってほしいと心底思った。MC中に行われるバンド同士の称え合いはもちろん美しいし伝わりやすいが、互いがバンドであるからには、ステージの上のライブアクトで言葉も不要とするほどの波動をもって相手への敬意や誠意を見せてほしいと個人的に思っている。そういう意味でも、この日彼らは「ircleと2マンを行うこと」への答えを、ラストの「DAY BY DAY」に至るまで一切減速することなく激情的に突っ走ったライブそのもので見せつけてくれた。音楽を信じている者から受けた信頼は、自分の信じる音楽で返す――まだ結び立てではあるものの、会場に満ちた熱気と生命力が両バンドの間にある絆の存在を物語っていた。



 そして、この日の締め括りを務めるのはircle。河内、仲道良(Gt/Cho)、伊井宏介(Ba/Cho)、ショウダケイト(Dr)がステージに登場すると、河内は美しいビブラートの効いた歌声で「あふれだす」のフレーズをじっくりと歌い上げ、「久々の下北沢。魔法を掛けてあげよう」と言葉を投げかけてライブをスタートさせた。私は会場の後方でライブを観ていたのだが、「あふれだす」のシンガロングの場面では、段差のないフロアに満面のハンズアップが沸き起こり、数多の手に隠れてステージが見えなかった。メンバーが煽ることもなくそういった会場の一体感が自然発生的に生まれたことに感動したし、その空気は優しい楽曲の雰囲気と相まって幸福感に満ち溢れたものだった。バンドと楽曲が愛されているということを、冒頭のたった1曲から強く感じることができた瞬間だった。



 この「HUMANisM」という企画は、ircleが2015年からリリースツアーとは別の意義を持って定期的に開催しているイベントだ。そして今回の「東京夏の大三角形」編は、これまでircleがリリースしてきた作品単位でセットリストを組んでいる。第1弾の新宿Marble公演ではミニアルバム『You』と『Run』、そしてこの日のライブではミニアルバム『μ』と『さよならリリー』の楽曲が主軸となってプレイされていた。最新作を引っ提げて行われるライブはバンドの「今」を知るには最高の機会だが、旧譜に隠れた名曲たちをこうして改めてバンドがプレイしてくれることはとてもありがたいことだなと思う。「P.S.」や「永遠の瞬間」、そして今の季節にぴったりの「カゲロウと夏」を聴きながら、当時のツアーを疑似体験できているような気持ちになったし、リリースツアー中にサプライズ的に織り込まれた時に感じるものとはまた違った新鮮さをもたらしてくれた。だからこそオーディエンスも、喜びの歓声を上げたり息をするのも忘れるほどに深く聴き入ったりしながら、各々が自由に彼らの音楽との対話を楽しんでいた。



 そんなライブの渦中で、ircleのライブからはなぜこんなにも「人間臭さ」が滲み出ているのだろうか?と改めて考えた。人間から生まれた感情を人間が言葉にし、それを人間が歌い鳴らすのだから当たり前のことではあるのだが、ircleのライブはその人情がとびきり強く出ている。歌と音から放たれるその強い生命の波動は、これまでも決して尖り澄まされたものではなかったのだが、最近は特に、人を包み込むような大らかなものに変化したように思える。ここでセットリストの時系列とは逸脱するが、この日のアンコールで歌われた「本当の事」の直前、河内は「これからも本当の気持ちを、なるべく歌っていきます」と言った。この時、その「なるべく」という言葉にふと引っ掛かるものがあった。「なるべく」という言葉の表面だけを読み取れば、「じゃあ全部は本当じゃないのか?」という側面が際立つし、私自身も正直そこが気になった。けれど、この「なるべく」という言葉は、ircleが持つ人間味=誠実さと優しさそのものだなと思い直した。絶対とか必ずとか全部とか、そういった類の言葉は強力だけれど、ほんの一瞬の気の緩みで崩壊してしまう諸刃の剣だ。ircleは、言ってしまえばその「一か八か」に自分たちの本音や信念を懸けたくないのだろうと思うと同時に、自分たちの音楽に対してはもちろん、この場に集ったircleを愛する人に対して誠実で、常に正直でいることを最優先にできる人の考え方だなと思った。

 バンド結成から18年が経ち、人間としてももういい年齢の大人になった彼らは、この日の河内の言葉を借りるなら「ガキの頃の自分らなら『殺しに行くぞ!』みたいな気持ちもあったかもしれんけど、悪いけどもうガキじゃねぇけんな」なのだ。長らく「生」の面を強く歌ってきた彼らが、年齢を経るごとに様々な経験をして知見を広げ、近年では「生」と対にある「死」を身近に経験したことによって最新アルバム『Cosmic City』を生み出した。この日も同作に収録されている「ばいばい」を演奏する前に、「死に向かうようなことは歌わん。この世にいない魂のことも胸に持って、それを誰かの前向きな気持ちに変えるように現場で歌っていきます」と語っていた。自身の経験を歌にし、曲にするということは、勇気とエネルギーを必要とすることはもちろん、怖さもあることだと思う。けれど彼らはそこで踏みとどまることをせず、さらには自分たちの曲だけに留まらせることなく、誰かを救いたいという一心でこうしてライブで歌を届けてくれている。それは器用だとか不器用だとか、強いとか弱いとかの話ではなく、彼らはもうきっと、そうすることでしか生きていけないのだろう。音楽を鳴らすことがすでに自分の一部になっているからこそ、ircleの曲やライブからは満ち溢れるほどの人間味が感じられるのだと、改めて思うことができた夜だった。



 そして、この「HUMANisM~東京夏の大三角形~」は8月30日の渋谷TSUTAYA O-Crest公演で幕を閉じたが、同公演内にて、2020年1月18日に渋谷TSUTAYA O-EASTにて「HUMANisM~超★大乱闘編2020~」が開催されることが発表された。今年の1月に会場を同じくして大盛況となったこのイベントが1年ぶりにまた行われることをうれしく思うと同時に、さらにパワーアップされたイベントになるのだろうという期待感で今からそわそわしている。気になる出演者は今後発表されていくとのことなので、こちらもぜひチェックしていてほしい。

【取材・文:峯岸利恵】
【撮影:安藤みゆ(ircle、2)、中村里緒(2)】

tag一覧 ライブ 2 ircle

リリース情報

生と詩

生と詩

2019年04月03日

1994

01.ルシファー
02.ニヒリズム
03.SとF
04.性と詩
05.ナイトウォーク
06.DAY BY DAY
07.ハナレイバナレイ
08.ホメオパシー
09.東狂
10.WHEN I WILL DIE
11.フォーピース

リリース情報

Cosmic City

Cosmic City

2019年05月08日

YAMANOTE Records

01.ラストシーン
02.ただでさえ君が
03.ねえダーリン
04.Heaven’s city light
05.忘レビ
06.ばいばい
07.アンドロメダの涙
08.ペルセウスの涙

セットリスト

3週連続自主企画
「HUMANisM~東京夏の大三角形~」
2019.8.23@下北沢SHELTER

    2
  1. 01.ニヒリズム
  2. 02.フォーピース
  3. 03.WHEN I WILL DIE
  4. 04.DEAD HEAT
  5. 05.ルシファー
  6. 06.PSYCHOLOGIST
  7. 07.急行電車
  8. 08.LONELINESS BOY
  9. 09.東狂
  10. 10.ANTHEM SONG
  11. 11.ナイトウォーク
  12. 12.SとF
  13. 13.ケプラー
  14. 14.Family
  15. 15.DAY BY DAY
    ircle
  1. 01.あふれだす
  2. 02.ラストシーン
  3. 03.バタフライ
  4. 04.P.S.
  5. 05.桃源郷
  6. 06.Obstruction
  7. 07.永遠の瞬間
  8. 08.Later Letter
  9. 09.カゲロウと夏
  10. 10.瞬
  11. 11.ばいばい
  12. 12.セブンティーン
  13. 13.アンドロメダの涙
【ENCORE】
  1. 01.本当の事

お知らせ

■ライブ情報

【2】
2 presents 3ヶ月連続自主企画
2 MAN LIVE at 下北沢シェルター

Vol.1「恋とジャーナル」
10/31(木) w) teto

Vol.2「OMOKAGE」
11/27(水) w) ハルカミライ

Vol.3「同じ月を見るふりをして」
12/26(木) w) Hump Back

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リプレイスメンツ2019
08/31(土) 下北沢BASEMENT BAR&下北沢THREE
w) SEVENTEEN AGAiN/BALLOND’OR/FINLANDS/KONCOS/No Buses/THE SENSATIONS/Wienners/突然少年/DJ 松田"CHABE"岳二

スクイズ
09/11(水) Shibuya duo MUSIC EXCHANGE
w) STRANGE REITARO BAND/DENIMS

吉祥寺WARP presents
「SMALL LAKE!!-SPECIAL-」

09/12(木) 吉祥寺WARP
w) CRYAMY/川崎テツシと燃えるキリン

TOKYO CALLING 2019
09/16(月・祝) 渋谷ライブハウス13会場

Hump Back
「僕らの夢や足は止まらないツアー」

09/21(土) 山形 酒田MUSIC FACTORY
09/22(日) 秋田 Club SWINDLE
w) Hump Back

「エレキレストラン117」
~京都MOJO 20周年スペシャルスリーマン!!~

09/24(火) 京都 MOJO
w) KOTORI/BAN’S ENCOUNTER

夏の魔物2019 in SAITAMA
09/28(土) 埼玉 東武動物公園

The Wisely Brothers“Captain Sad Tour”
09/29(日) 新代田FEVER
w) The Wisely Brothers/Special Favorite Music

MEGA☆ROCKS 2019
10/05(土) 仙台ライブハウス各会場

忘れらんねえよ主催 ツレ伝オールナイトフェス
10/05(土) 渋谷TSUTAYA O-EAST
w) 忘れらんねえよ/Wienners/おとぎ話/感覚ピエロ/くもゆき/THEラブ人間/四星球/ネクライトーキー/爆弾ジョニー/ハルカミライ/アルカラ/グッドモーニングアメリカ/PAN/ハンブレッダーズ/眉村ちあき/MOROHA/and more

My Hair is Bad presents
サバイブホームランツアー

10/09(水) 盛岡CLUB CHANGE WAVE
w) My Hair is Bad

THE BOYS&GIRLS TOUR 2019“明転”
10/11(金) 高松DIME
w) THE BOYS&GIRLS/ハンブレッダーズ/and more

FM802 30PARTY MINAMI WHEEL 2019
10/12(土)~14(月・祝) 大阪ライブハウス20会場

ナードマグネット「だいそうさくツアー」
10/19(土) 福岡 graf
w) ナードマグネット
10/22(火・祝) 岡山 PEPPERLAND
w) ナードマグネット/w.o.d.

松尾企画PRESENTS“TOUR2019 糸”
11/01(金) 下北沢ERA
w) SEVENTEEN AGAiN/時速36km

Loft PlusOne West 5th Anniversary
11/02(土) 心斎橋JANUS&心斎橋Loft PlusOne West
w) 大槻ケンヂ/ホフディラン/赤犬/KING BROTHERS/おとぼけビ~バ~/ちゃらんぽらん冨吉&矢野・兵動 矢野/街裏ぴんく/トンガリキッズ/アサダマオ



【ircle】
HUMANisM~地獄編~
09/29(日) 大分 T.O.P.S BittsHALL
w) ハルカミライ/LACCO TOWER/SIX LOUNGE/cinema staff/Halo at 四畳半

ircle ONE MAN LIVE
12/14(土) 山口 周南rise
12/20(金) 新潟 RIVERST

ircle presents
「HUMANisM~超★大乱闘編2020~」

2020/1/18(土) 渋谷TSUTAYA O-EAST

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SHIMA「BLAST」TOUR 2019
09/07(土)群馬 SUNBURST
w) SHIMA/アシュラシンドローム
09/08(日)新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
w) SHIMA/アシュラシンドローム/Noah

TOKYO CALLING 2019
09/16(月・祝) 渋谷ライブハウス13会場

独創と空間
09/23(月・祝)長野 松本ALECX
w) The Cheserasera/SHE’ll SLEEP

十二代目梅雨将軍2man series「暴れん坊将軍」
09/26(木) 池袋Adm
w) 爆弾ジョニー/(O. A)プピリットパロ

rem time rem time presents
「rem fes 2019」

10/06(日) 八王子Match Vox/八王子RIPS/楽廊
w) rem time rem time/Unblock/Os Ossos/KAKASHI/3SET-BOB/BAN’S ENCOUNTER/Bray me/裸体/and more

OTONOKE ROCK FES’19
10/13(日) 山形 東北芸術工科大学 体育館
w) アンテナ/and more

弁天周遊祭 =BENTEN CIRCUIT 2019=
10/14(月) 新潟 NEXS NIIGATA/NIIGATA CLUB RIVERST/万代グリル ガルベストン by Soi

GRAND FAMILY ORCHESTRA
1stフルアルバムリリースツアー
「大家族会議~セルフタイトルにゃ訳がある~」

10/20(日) 兵庫 神戸ART HOUSE
w) GRAND FAMILY ORCHESTRA/The Cheserasera
10/21(月) 広島 SECOND CRUTCH
w) GRAND FAMILY ORCHESTRA/The Cheserasera
11/27(水)宮城 仙台MACANA
w) GRAND FAMILY ORCHESTRA/ANABANTFULLS/rem time rem time

EBP pre.「nbir」
10/22(火) 福岡 Early Believers
w) GRAND FAMILY ORCHESTRA/Suspended 4th/aint

下北沢にて’19
12/07(土)、8(日) 下北沢 GARDEN/SHELTER/251/440/BASEMENTBAR/THREE/近松 MOSAiC/Daisy Bar/Laguna/ERA/GARAGE/WAVER/ReG/mona records/and more

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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