阿部真央 デビュー10周年の日比谷野音公演「阿部真央らいぶ 夏の陣~2019~」
阿部真央 | 2019.09.06
2019年1月22日に約5年ぶりとなる日本武道館ワンマンライブ「阿部真央らいぶNo.8~10th Anniversary Special~」を開催。さらに初のベストアルバム『阿部真央ベスト』に続き、シングル「君の唄(キミノウタ) / 答」「どうしますか、あなたなら」をリリースするなど、大充実の“10周年イヤー”を継続してきた阿部真央。その集大成とも言える、約8年ぶりの野音ライブ「阿部真央らいぶ 夏の陣~2019~」(東京 日比谷野外音楽堂)で彼女は、多彩な音楽性と豊かな感情に裏打ちされた歌、そして、まったく飾ることなく、自分自身をそのまま表現するステージングによって、超満員のオーディエンスの心と身体をしっかりと揺さぶってみせた。
心配された雨も降らず、夏の終わりらしい、心地よい暑さと虫の声に包まれたこの日の東京・日比谷野外音楽堂。チケットは完全にソールドアウト。立ち見の観客を含め、“この夏、最後のあべまのライブを思い切り楽しもう”という雰囲気が伝わってくる。
開演は定刻の18時ちょうど。まずは阿部真央が信頼するバンドメンバーがステージに上がり、あいさつ代わりのセッション。阿部真央は走りながら登場、アコギを持ち、オープニングナンバーの「逝きそうなヒーローと糠に釘男」へ。エッジの効いた歌と辛辣な歌詞が鳴り響き、会場のあちこちから「やばい!」「かっこいい!」という声が上がる。さらに「モットー。」「ふりぃ」とポジティブな意志に貫かれたアンセムを連発。手拍子とシンガロングで応える観客とともに、早くも気持ちいい一体感が生まれる(全身でライブを楽しみ、声と表情、体の動きであべまを支えるオーディエンス、この日も本当に素晴らしかった)。
「よかったね、雨も止んで。声出す準備、できてますか! 最後までよろしくね」という挨拶の後は、憂い、哀しみ、痛みを表現した楽曲を続けて演奏。劣等感に苛まれ、心の痛みを抱えたまま生きる“僕”の姿を鋭利なバンドサウンドとともに描いた「痛み」。“自分にウソをつかず、やりたいこと、目指すべき場所に向かって突き進め”と鼓舞する「走れ」。ネガティブな思いをストレートに反映させた楽曲もまた、彼女の大きな魅力。イヤな感情をそのまま出すのではなく、“どうすればリスナーに届くか”に心を砕き、魅力的なロックナンバーにつなげるセンスも素晴らしいと、改めて実感させられた。
気まぐれな女子に振り回される男子の切ない恋心を綴った「じゃあ、何故」、“全部を投げ捨てて愛してほしい”“でも、そんなのは難しい”という葛藤をテーマにした弾き語りの楽曲「この愛は救われない」(最新シングル「どうしますか、あなたなら」収録)などの哀切なラブソングも強く心に残った。特に「貴方の恋人になりたいのです」におけるボーカルの表現は絶品。生々しい感情をリアルに映し出す彼女の歌は、ここにきてさらに豊かさを増しているようだ。
ブラックミュージックのエッセンスを含んだサウンド、大人の女性を感じさせるボーカルが印象的だった「傘」、エレクトロのテイストを取り入れたダンスチューン「immorality」(編曲は岡崎体育)によってカラフルな音楽性をアピールした後は、最新シングル「どうしますか、あなたなら」(NHKドラマ『これは経費で落ちません!』主題歌)を披露。この日更新したツイート(@abemao_staff)で「新曲「どうしますか、あなたなら」の1サビ直前の歌詞は『違うかもだよ~』」とアピールしていたおかげで(?)、サビのフレーズを観客が大合唱。1番のサビ終わりを“どうしますか、森若さん”とドラマバージョンで歌うと会場から大きな歓声が巻き起こった。
“君が求める君になれ”とメッセージを放つ「君の唄(キミノウタ)」からライブは後半へ。“何があっても、あなたと一緒に答えを見つけたい”という切実な願いを込めた「答」、“すべてを失ったとしても、またそこから始めればいい”という意思を刻み込んだ「なんにもない今から」。彼女自身の強い実感にもとづいたポジティブな思いがまっすぐに伝わり、ダイナミックなバンサウンドとともに心地よい高揚感につながる。
ラストは「ロンリー」。切なさと愛らしさが共存するメロディ、“なんで貴方居ないの?”というシンガロングが夜空に響き、ライブはクライマックスを迎えた。
パステル調の花柄スカートに着替え、再び阿部真央がステージに登場(本人曰く“メリーポピンズっぽい”)。アンコールは、解放感たっぷりのロック・ポップ・チューン「K.I.S.S.I.N.G.」から始まった。未来に対する前向きな(攻撃的な)姿勢をハッピーに歌い上げる「這い上がれMY WAY」を歌い、彼女は観客に向かって語り掛ける。
「今日はホントに、私も“あっという間だったな”と思います。本当にありがとう」「明日がくるという確証は誰にもありませんが、明日をもっといいものにしたいと思うのはいいことだし、それが生きているということだと思います」
「明日もがんばっていきよう、と思ってもらえる活力にこのライブがなってくれたら嬉しいです」
最後は「まだ僕は生きてる」。観客の手拍子とともに“生きている限り、今できることを探して、未来に進もう”というメッセージを込めた歌――それはすべての人にとっての根源的なテーマだと思う――が大らかに広がるシーンは、今回のライブの充実ぶりをはっきりと証明していた。ダブルアンコールは「母の唄」。彼女のデビューのきっかけとなった曲であり、ライブでしか歌われない名曲を弾き語りで熱唱し、記念すべき10周年の野音公演は幕を閉じた。
阿部真央は9月末から11月にかけて全国弾き語りツアー「阿部真央弾き語りらいぶ 2019」を開催。そして来年2020年の3月から5月にかけて全14ヵ所16公演の全国ホールツアー「阿部真央 らいぶNo.9」も決定した。デビューから10年。公私ともに様々な経験を重ね、それを自らの音楽の表現につなげながら成長と変化を続ける阿部真央はこれから、シンガーソングライターとしてさらなる充実期に向かって進んでいくはずだ。
【取材・文:森 朋之】
【撮影:吉場正和】
リリース情報
どうしますか、あなたなら
2019年08月21日
ポニーキャニオン
2. この愛は救われない
セットリスト
阿部真央らいぶ 夏の陣~2019~
2019.8.31@日比谷野外音楽堂
- 01.逝きそうなヒーローと糠に釘男
- 02.モットー。
- 03.ふりぃ
- 04.痛み
- 05.走れ
- 06.じゃあ、何故
- 07.この愛は救われない
- 08.深夜高速
- 09.貴方の恋人になりたいのです
- 10.傘
- 11.immorality
- 12.どうしますか、あなたなら
- 13.君の唄(キミノウタ)
- 14.答
- 15.なんにもない今から
- 16.変わりたい唄
- 17.ロンリー
- 01.K.I.S.S.I.N.G
- 02.這い上がれMY WAY
- 03.まだ僕は生きてる
- 01.母の唄
お知らせ
阿部真央 弾き語りらいぶ2019
09/28(土) 愛知・名古屋E.L.L.
10/05(土) 福岡・福岡DRUM Be-1
10/06(日) 大分・大分DRUM Be-0
10/12(土) 石川・金沢EIGHT HALL
10/14(月・祝) 広島・広島クラブクアトロ
10/19(土) 北海道・札幌cube garden
10/24(木) 大阪・大阪BIGCAT
10/26(土) 岡山・岡山CRAZYMAMA KINGDOM
10/27(日) 兵庫・神戸チキンジョージ
11/02(土) 宮城・仙台darwin
11/03(日) 岩手・盛岡Club Change WAVE
11/08(金) 東京・東京TSUTAYA O-EAST
阿部真央 らいぶNo.9
[2020]
03/14(土) 北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
03/20(金・祝) 大阪 オリックス劇場
03/21(土) 大阪・オリックス劇場
03/29(日) 広島・JMSアステールプラザ 大ホール
04/04(土) 静岡・静岡市民文化会館 中ホール
04/18(土) 宮城・仙台電力ホール
04/26(日) 愛知・日本特殊陶業市民会館フォレストホール (名古屋市民会館)
04/29(水・祝) 福岡・福岡市民会館
05/02(土) 香川・サンポートホール高松 (大ホール)
05/08(金) 岡山・岡山市民会館
05/09(土) 兵庫・神戸国際会館こくさいホール
05/15(金) 石川・金沢市文化ホール
05/17(日) 新潟・りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場
05/22(金) 東京・LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)
05/23(土) 東京・LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)
05/30(土) 大分・大分iichikoグランシアタ
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。