the GazettE 『NINTH』の集大成となった壮大なツアーファイナル「第九」
the GazettE | 2019.10.03
the GazettEが9作目となるアルバム『NINTH』をリリースしたのが2018年6月のこと。そこから約1ヶ月後、彼らはアルバムを掲げたツアーに乗り出した。ひと言でツアーと言っても数ヶ所回って終わるような安易なものではない。バンドはツアーをいくつかのフェーズに分け、徹底的に『NINTH』と向き合ってきた。まずはホール中心に組んだ“the GazettE Live Tour18 THE NINTH / PHASE #01-PHENOMENON-”、続いて比較的キャパの大きいスタンディング会場で“the GazettE Live Tour18 THE NINTH / PHASE #02-ENHANCEMENT-”を行い、年が明けると“LIVE TOUR18-19 THE NINTH PHASE#03 激情は獰猛”という小規模なライブハウス中心のツアーを組んで初心に立ち返った。4月からはワールドツアー“WORLD TOUR 19 THE NINTH PHASE #04 -99.999-”を敢行。海外にも多くのファンを持つ彼らは、各地で熱狂的に迎えられた。そして、8月15日には横須賀芸術劇場で、ファイナル公演の前哨戦とも言える“LIVE TOUR18-19 THE NINTH PHASE#05「混血」”を開催。『NINTH』の収録曲と、他の時期に作った楽曲を混ぜ合わせるという試みに挑戦した。そんな経緯を経て9月23日の横浜アリーナ“the GazettE LIVE TOUR18-19 THE NINTH TOUR FINAL「第九」”のグランドファイナル公演を迎えたのである。これだけの規模でツアーができたのは、バンドの動員力もさることながら、ファンの熱量あってこそだ。前置きが非常に長くなってしまったが、この日が単なるツアーファイナルという言葉で括るのが難しいということをご理解いただけたと思う。そして、ソールドアウトとなったこの日のファイナル公演には、国内だけでなく、海外からも多くのファンが詰めかけた。
開演時間になり、ライブの開始を告げるアナウンスが始まる。この時点で総立ちとなった観客は、手拍子でテンションを高めていく。照明が暗転し、赤いライトに照らされたステージに戒(Dr)、麗(G)、REITA(B)、葵(G)が姿を見せる。最後にRUKI(Vo)が登場し、ライブの緊張感は一気に高まった。1曲目は『NINTH』のリリースに先駆けて発表されたリード曲「Falling」。エモさとキャッチーなメロディーがミックスされたアグレッシブなナンバーに無数のレーザー照明が反応し、場内は一気に熱くなっていく。2曲目「NINTH ODD SMELL」の冒頭でRUKIは「横浜!今夜もよろしく頼むぜ!」とたき付けると、直後に爆音が発生。熱狂は加速し、超満員の客席では一斉にヘドバンが起こった。見慣れている光景とはいえ、アリーナ会場を埋め尽くしたヘッドバンギングの海は壮観である。最初のMCでRUKIは「アツさがライブハウスと変わらねぇな!そんなアツい中、椅子はいらないんじゃない?関係ないくらい暴れちゃって!」と、ファンの士気を高めていく。本編では円熟味すら感じさせる『NINTH』の収録曲の合間に、別のアルバムからの曲も顔を出す。新旧の楽曲を共存させることで、ライブにいいアクセントが生まれていた。そして、ただ激しいだけではなく、彼らは中盤にドラマチックで重厚な世界観を見せつけるブロックを用意していたのである。『NINTH』の中でも、激情的で美しいメロディーを持つバラード「その声は脆く」や、狂気をはらんだ「BABYLON’S TABOO」などを、圧巻の表現力をもって演奏したのだ。この“重さ”は彼らだからこそ生み出せるスキルなのだと思う。さらに、このブロックの締めとして、前作のアルバム『DOGMA』から「DOGMA」をプレイ。バンド史上、最強の漆黒アルバムと表される作品から、クセのある暗黒のへヴィーチューンを選び、観客を驚かせた。この曲は“一気に『DOGMA』という世界に引き込むので、ライブでやるのは難しい”とメンバーが語っていたことがある。しかし、この日はまったく違和感を感じさせなかった。まさに『NINTH』の濃さが勝ったということかもしれない。
さぁ、ここから先は後半戦だ。「INCUBUS」「UGLY」、そしてこのツアーでバンドとファンによってキラーチューンに成長した「ABHOR GOD」など、煽情的なパワーチューンが立て続けに飛び出す。麗、葵、そしてREITAの動きも激しさを増し、本編は大詰めを迎える。「横浜!まだ力はあまってんだろ! 俺らとこの会場を揺らそうぜ!ラスト、いけるか!」と、RUKIが一喝。ラストの「関東土下座組合」へ。バンドの黎明期から演奏されてきた鉄板曲に、会場のあちこちでは“土下バン”(土下座しながらヘドバンすること)が起こり、会場は激しいうねりに包まれた。
本編が終わっても興奮は冷めやらず、引き続きアンコールへ。まずは恒例となっている戒の気合入れでパワーを注入。「最後の最後まで俺たちらしく、思いっきり暴れてこうぜ! 気合入れてかかってこい!」
アンコールは『NINTH』から離れ、「INSIDE BEAST」や「HEADACHE MAN」などの人気曲に加え、初期の名曲「貴女ノ為ノ此ノ命。」を入れ込むという、変化にとんだ内容で進行。バンドのヒストリーを詰め込んだような選曲は、the GazettEというバンドそのものを掘り下げているかのようだった。最初のアンコールは「TOMORROW NEVER DIES」でフィニッシュしたが、観客は当然のようにダブルアンコールを要求。メンバーが快く2度目のアンコールを受けてステージに戻ると、RUKIが珍しく長いMCで心境を語った。
「the GazettEが最高であることを証明したくて『NINTH』を作って……コンセプトがあったわけじゃなく、今までthe GazettEが歩んできた道、すべてを表現したかった。このアルバムを作ってホントによかった。そして俺たちはすごく成長できたと思う――いろんな会場で(ライブを)やってきて、違う環境でベストを見せるという修行になりました」
『NINTH』は、単なる9枚目のアルバムという事実を超え、バンドの存在確認の作品だったのだろう。最後は「これからも俺らは最高の景色を見せてやるから、ついてこいよ!the GazettEというジャンルを守ってくれてありがとう」と、ファンに対して熱い感謝の言葉を投げかけ、大ラス曲の「UNFINISHED」につなげた。銀テープが発射され、ツアー61本目となるファイナル公演を華やかに演出。演奏が終わると、珍しくRUKIは他のメンバーにもコメントを促した。
「61本という長いツアー、ホントに楽しかったと思ってます。心から幸せでした。ありがとうございます」(葵)
「葵さんがしゃべってる間に言うことを考えたけど、何も思いつきませんでした――また会う日まで!お疲れ様でした」(REITA)
「『NINTH』っていうアルバムを作った時から、最後は大きい会場でやるのを想像してました。これから先も一生懸命頑張っていきたいと思うのでよろしくお願いします」(麗)
「終わってみればあっという間。みんなのおかげで、ホントに楽しかった。さびしい気持ちもありますが、当然the GazettEが終わるわけではないので、これを超える最高のツアーをやろうよ!必ず帰ってきます!」(戒)
「1本1本、記憶に残るライブができたと思う。改めてありがとうございました!」(RUKI)
こうして長いツアーは幕を閉じた。終演後、この日の横浜アリーナ公演の映像作品『LIVE TOUR18-19 THE NINTH / FINAL「第九」LIVE AT 09.23 YOKOHAMA ARENA』、そして2019年ワールドツアーのドキュメンタリー映像作品『LIVE IN NEW YORK&WORLD TOUR19 DOCUMENTARY THE NINTH [99.999]』が、2本同時にリリースされることが発表され(2020年3月4日リリース)、場内からは歓声が起こる。が、それ以上の絶叫が起こったのは次なる情報が解禁された瞬間だった。それはバンドのアニバーサリー公演<18TH ANNIVERSARY DAY/6576>の発表だった(2020年3月10日 武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ)。比較的高い頻度で行ってきた結成記念日の公演だが、今年は『NINTH』に集中していたために行われず、やや寂しい思いをしたファンも多かったに違いない。だが、来年は思い切り周年を祝うことになりそうだ。もちろん、より進化したバンドの姿と、観客と作る素晴らしいライブの光景にも期待したい。
【撮影:YOSHIHIRO MORI、KEIKO TANABE、KYOKA UEMIZO】
リリース情報
LIVE TOUR18-19 THE NINTH / FINAL「第九」LIVE AT 09.23 YOKOHAMA ARENA【通常盤A】
2020年03月04日
SMR
セットリスト
the GazettE LIVE TOUR18-19
THE NINTH TOUR FINAL「第九」
2019.9.23@横浜アリーナ
- SE. 99.999
- 01.Falling
- 02.NINTH ODD SMELL
- 03.GUSH
- 04.CLEVER MONKEY
- 05.GABRIEL ON THE GALLOWS
- 06.裏切る舌
- 07.THE MORTAL
- 08.虚 蜩
- 09.その声は脆く
- 10.BABYLON’S TABOO
- 11.DOGMA
- 12.INCUBUS
- 13.TWO OF A KIND
- 14.UGLY
- 15.ABHOR GOD
- 16.関東土下座組合
- 01.GO TO HELL
- 02.INSIDE BEAST
- 03.貴女ノ為ノ此ノ命。
- 04.HEADACHE MAN
- 05.ATTITUDE
- 06.TOMORROW NEVER DIES
- 01.UNFINISHED
お知らせ
18TH ANNIVERSARY「DAY/6576」
2020/03/10(火) 武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。