chelmico、全公演ソールドアウトの『chelmico Fishing Tour』ファイナル
chelmico | 2019.10.09
8月にリリースされたアルバム『Fishing』を引っ提げて行われた『chelmico Fishing Tour』の7公演のチケットは、どれもソールドアウト。前日の追加公演に続いてマイナビBLITZ赤坂で行われたファイナル公演も、もちろん大盛況。『Fishing』のジャケットやブックレットのアートワークを反映したカラフルなステージ上のオブジェを眺めながら、観客はワクワクした表情で開演を待ちわびていた。
のどかな森の中にいることをイメージさせる鳥のさえずり、魚が跳ねて水面を打つ音、虫の声が静かに流れていた空間に最初に現れたのは、サポートメンバーのDJ、%CことTOSHIKI HAYASHI。「%C(パーシー)!」という歓声が、chelmicoファンの間での彼の大人気ぶりを示していた。そして、歩きながらRachelが下手へ、Mamikoが上手の立ち位置につくと「EXIT」がスタート。直立不動でラップを交し合うふたりの姿に一気に引き込まれた。chelmicoに関して、開放的なパーティーチューンのイメージを抱く人が多いと思うが、実は彼女たちが届けてくれる音楽は、とても幅広い。シリアスな表情を帯びたこのオープニングナンバーは、そのことを改めて感じさせてくれた。
「一緒に歌える人、歌ってください!」、突然、直立不動から解き放たれて、元気いっぱいに身体を動かして観客に呼びかけた彼女たち。ステージ上を動き回りながら歌い始めた「爽健美茶のラップ」は、大合唱を巻き起こしていた。まるでペンライトのように爽健美茶のペットボトルを掲げている観客もいる。手拍子もどんどん力強く高鳴っていった。そして、彼女たちが踊る振付を完璧に真似する観客もたくさんいた「switch」。牧歌的なムードを漂わせながらエネルギッシュに躍動した「BEER BEAR」。マーマレード色のライトで染まったステージ上で、心地よいダンスビートとラップが渦巻いた「ママレードボーイ」……ダンスフロアには明るい笑顔が溢れていた。
「いっぱいいるね」「初めてライブに来てくれた人もいるのが嬉しいね。『Fishing』から知ってくれたってことだもんね? でも、知ってたのに来なかった可能性もあるよ」「あっ、そうか。なんで来なかったんだろう?(笑)」「予定、合わなかったんじゃない?」――彼女たちのMCは、いつも非常にテンポ良く言葉を交し合う。小休止のMCタイムでありながらも、グルーヴがあるのが楽しい。そんなことを感じて過ごしている内に「ひみつ」がスタート。軽快なビートが、観客を爽やかに包み込んでいく。ビートを巧みに乗りこなしたラップが放たれると観客の間から歓声が上がった「12:37」は、どこかミステリアスな構成と展開も含めて、今までのchelmicoにはなかった形の興奮を噛み締めさせてくれた。
「chelmicoは、MCが多いんです。早口の曲が多くて疲れるので、MCが多いんですよ(笑)」というMamikoの言葉が観客の和やかな笑いを誘ったりもした場面を経て、アルバム『Fishing』の収録曲を中心としつつ、随所にお馴染みの曲を盛り込んだセットリストが、さらに展開していった。愁いを帯びたテイストの「Navy Love」に続いて披露されたのは、ファンの間で非常に人気の高い曲のひとつ「Timeless」。そして、「仲直り村」も披露された中盤のブロックは、落ち着いたトーンによる“かっこいいchelmico”が存分に発揮されていた。
身体が柔らかいMamikoのお辞儀が美しいことを、身体があまり柔らかくないらしいRachelがやたらと羨ましがる――というほのぼのとしたムードのMCを経て披露された「午後」と「Balloon」も、じっくりと彼女たちのラップと歌声に耳を傾ける悦びを感じさせてくれた。そして、豪華なセットで彩られたステージに立てたことを猛烈に喜びつつ、「いつか炎とか出したいなあ」(Mamiko)。「飛び回りたい!」(Rachel)――今後のライブで実現したい大がかりな演出をふたりで語り合い、観客からのおめでたい報告を聞いた後に届けられたのは、「OK, Cheers!」。ポジティブな祝祭感に満ちたこの曲は、どんな不景気の波も恐れをなして逃げていきそうな明るいエネルギーの塊であった。
激しい手拍子と歓声を巻き起こしつつ、夏の熱気を醸し出していた「Summer day」。「とても思い出がある、初めて作った曲を聴いてください」という言葉を添えてスタートし、chelmicoの原点を感じさせてくれた「ラビリンス’97」。急速にアッパーなパーティー空間を作り上げた「Highlight」。フロアに赤色と黄色の大きな風船が投入され、それが破裂すると中から飛び出した色とりどりの小さな風船がジェリービーンズのように飛び跳ねた「Player」……終盤戦は、片時も目も耳も離せない賑やかな場面の連続となった。
「ここの会場でできるとは思ってなかった。「ラビリンス’97」という曲は、クラブに行ったことがないのにクラブの曲を書いて(笑)。それが、こんなに人が集まってくれた場所で出来て嬉しいです。我々はRIP SLYMEに憧れてラップを始めたんです」(Mamiko)。「カラオケ出身だからね。カラオケからブリッツまで来ました!」(Rachel)――元気いっぱいのやり取りの後、「こういうの(衣装、ステージセットなど)、どれをとっても誰かの力添えなんです。あっ、ヤバい!」 突然、泣きそうになったRachelに代わってMamikoが、支えてくれる全ての人々に感謝した。「今日という日、終わりたくないんですよ。でも、やりますね。本当に楽しかったです。ありがとうございます!」。そして、本編はアルバム『Fishing』のラストの曲「Bye」で締め括られた。どこかゴスペルを思わせる響きが、とても神々しい。《See you tomorrow Bye bye oh oh oh oh oh》という観客の大合唱も加わると、ステージ上のふたりは心の底から嬉しそうな表情を浮かべていた。
「chelmico! chelmico!」「%C! %C!」「Rachel! Rachel!」「Mamiko! Mamiko!」という熱い歓声に応えてステージに戻ってきた3人。アンコールで最初に届けてくれたのは、ライブでやるのは久しぶりの「Oh, Baby!」。続いて、お気に入りの曲なのだが、本編のセットリストにどうしても組み込むことができなかったのだという「ずるいね」も披露。そして、来年の3月から5月にかけて全国ツアー『chelmico 感謝祭Tour 2020』を行うことが発表された後、アンコールのラストは「Love is Over」が華麗に飾った。「愛したい!」「恋したい!」「でも愛されたい!」というコール&レスポンスが交わされるにつれて、会場の隅々にまで広がった熱気がものすごかった。この曲がエンディングを迎えると、歓声を浴びながらステージを後にしたRachel、Mamiko、%C。「帰りたくなーい! LINEする。じゃーね!」という声を残しつつ手を振った彼女たちを温かい拍手が見送った。
【取材・文:田中 大】
【撮影:横山正人】
リリース情報
Fishing
2019年08月21日
unBORDE
02.爽健美茶のラップ
03.ひみつ
04.Navy Love
05.Balloon
06.Fishing (Interlude)
07.BEER BEAR
08.12:37
09.Summer day
10.仲直り村
11.switch
12.Bye
セットリスト
chelmico Fishing Tour
2019.9.29@マイナビBLITZ赤坂
- EXIT
- 爽健美茶のラップ
- switch
- BEER BEAR
- ママレードボーイ
- ひみつ
- 12:37
- Navy Love
- Timeless
- 仲直り村
- 午後
- Balloon
- OK, Cheers!
- Summer day
- ラビリンス’97
- Highlight
- Player
- Bye 【ENCORE】
- Oh,Baby!
- ずるいね
- Love is Over
お知らせ
chelmico 感謝祭Tour 2020
2020/03/01(日)横浜F.A.D
2020/03/07(土)福岡 DRUM LOGOS
2020/03/08(日)熊本 B.9 V2
2020/03/14(土)岡山 YEBISU YA PRO
2020/03/15(日)京都 MUSE
2020/03/20(金)札幌 Sound lab mole
2020/04/04(土)仙台 CLUB JUNKBOX
2020/05/08(金)大阪 BIGCAT
2020/05/10(日)名古屋 ReNY limited
2020/05/15(金)EX THEATER ROPPONGI
STARS ON 19
2019/10/13(日)中世夢が原(岡山県井原市美星町)
SPOOKY PUMPKIN 2019
2019/10/26(土)サンリオピューロランド
鉄工島フェス2019
2019/11/03(日)大田区・京浜島内
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。