秋山黄色の快進撃が始まる――衝撃の初ワンマンライブ「登校の果て」
秋山黄色 | 2019.10.09
秋山黄色が、9月28日に渋谷 TSUTAYA O-Crestにて「秋山黄色1st ONE MAN LIVE『登校の果て』」を開催した。
今年1月に1stミニアルバム『Hello my shoes』が発表されてから凄まじい勢いでその名を広め、Spotifyが選ぶ今年大きな飛躍が期待されるアーティスト「Early Noise 2019」に選出、大型夏フェスへの出場、最新シングル「夕暮れに映して」の配信リリースといった大きな話題が続いている秋山黄色。そんな彼の音楽キャリアは「宅録」に始まり、紹介時には「引きこもり」という言葉もよく使われてきた。しかし今回のライブは、その宅録部屋の壁を勢い良くギターでぶち破るような破壊的衝動を感じさせるものだった。秋山黄色というアーティストの本領は、ステージの上でこそ発揮される。そう決定付けた衝撃の初ワンマンの模様をレポートしたい。
ライブ当日、ソールドアウトした会場は「もう少し前に詰めてください」と開演前アナウンスが流れるほど満員状態。初ワンマンということで、この日初めてライブを観る人も沢山いただろう。その期待と興奮ですでにフロアには熱気が漂い、観客たちは物販の赤いタオルを首から下げて、今か今かと秋山黄色の登場を待ちわびていた。
ステージが赤いライトに染まり、バンドメンバー(Gt.井手上誠、Bass.神崎峻、Dr.片山タカズミ)に続いて秋山黄色がエレキギターを掲げながら現れると、堰を切ったように大きな歓声と拍手に包まれた。4人で顔を見合わせて一音鳴らした瞬間、フロアからは悲鳴に近い喜びの声が上がり、人気ナンバー「猿上がりシティーポップ」でライブがスタート。大きな手拍子が鳴り響き、音と音がぶつかり合う骨太なロックサウンドと、どこまでも抜ける強い光のようなボーカルが熱狂の渦を巻き起こしていく。そのまま「やさぐれカイドー」に突入すると、激しくギターをかき鳴らし、ラストのサビでは絶叫シャウトが炸裂。初っ端から全身全霊でぶつかってくる彼に負けじと、フロアも爆発的な盛り上がりを見せた。
「今日は地球上で一番大声出しても許される場所にみなさん来てしまったので、日ごろの鬱憤だとか……みんな鬱憤相当溜まってる顔してる(笑)」そんな毒っ気が混ざった挨拶の後は、未発表曲も挟みながら「クラッカー・シャドー」、「Drown in Twinkle」、「ドロシー」といったミニアルバムに収録されているナンバーを畳み掛ける。長い前髪からチラリと覗く鋭い眼差しをフロアに向け、感情を歌で解き放ち、その姿に呼応するように観客も腕を上にあげ、大きく身体を揺らし、時には真剣な表情でじっくり聴き入っていた。
中盤のMCでは「夢」についての話題に。秋山の幼い頃の夢はお寿司屋さんと漫画家だったが、中学で夢がなくなったという。そんな彼は、高校で進路を選ぶとき結局楽器を選んだ。「その時、不正解だったんじゃないかって今も思うときがある。でもそのお陰で素晴らしめな”登校の果て”に辿り着いたんじゃないかなと思う。あのとき夢がなくなったんじゃなくて、夢から覚めたんだなって思って。そもそも夢って見るもので、叶えるもんじゃない」そんな言葉からいい話ムードが漂っていたにもかかわらず、途中で「……考えてたオチ忘れました」と正直にぶっちゃけると、観客は一斉に大爆笑。こういったところもまた彼の魅力で、言葉の端々からどこまでも自由で飾らない人間性が見えてくる。「不正解からスタートするものっていっぱいある。でもこんなもん後から正解にすることなんていくらでもできる。だから自分を持って、酸いも甘いも忘れないでいた方が良いと思う」。そう言って心地よいエレアコの音色を響かせ、「夕暮れに映して」が始まった。辛いことや悲しいことはどうしても消したい過去になってしまうけれど、忘れられないなら忘れなくていい――曲に込められた切実な想いが、感情的な歌声にのって胸に飛び込んでくる。それを受け取った観客からは、共感が滲む大きな拍手が沸き起こった。
ここからは今までとガラッと雰囲気を変え、弾き語りスタイルで新曲を披露。テクニカルなはずなのにまるで身体の一部のように自然なギタープレイと、シンプルなサウンドになったことでより引き立つ歌の表現力が、秋山の飛びぬけた才能を光らせる。大迫力のバンドセッションが繰り広げられた後にも新曲群が惜しみなく放たれ、ただただ音楽的な引き出しの多さに圧倒されるばかりだった。これが初ワンマンライブだと思うと、貴重な瞬間を目撃しているような気分になる。秋山黄色はこれからもっともっと、大きいステージに立つアーティストだ。
いよいよライブも終盤へ。「いっぱい与えられて恵まれてるなと思う中で、『何もいらない』っていうことでありたいと思うんです。何も持ってないけど一番幸せそうで、レベル1のモンスターみたいな、そういう生活を送りたいと思います。それはずっと変わらないと思うんで、みんなよろしくね」。そんな秋山らしい言葉に続いて披露された未発表曲「スライムライフ」から、パンクなエネルギーに溢れた新曲を経て「クソフラペチーノ」になだれ込むと、フロアの盛り上がりは急激にヒートアップ。「今日イチでっかい声で、みんなで歌って帰りましょう!」その呼びかけ通り、ラストナンバー「とうこうのはて」では大きなシンガロングが響き渡った。最後の最後まで振り絞るような全力のパフォーマンスで駆け抜け、曲が終わると「また会いましょう!」と言い残し、ステージを去っていった。
すぐにアンコールを求める手拍子が鳴り、息を切らしながら秋山黄色がステージに再登場。「今日はアンコールやります!」と告げられると、フロアから喜びの悲鳴と拍手が起こった。観客のリクエストに応え2度目の「猿上がりシティーポップ」が披露されたが、始まってすぐに曲を止めて「みんな今日チケット取るのすげぇ大変だったらしいね、2月28日に追加ワンマンやるのでよろしくお願いします。キャパを倍にしました!」と嬉しいサプライズ発表が。この日一番の熱狂と歓声に包まれながら、記念すべき初ワンマンは大盛況のうちに終幕。終演後も観客の興奮気味なざわめきはなかなか止まず、会場を出ると追加ワンマンのチケットを求める長蛇の列が階段の下の方までずっと続いていた。
なお、追加ワンマンは2020年2月28日(金)にshibuya WWWにて開催される。
【取材・文:渡邉満理奈】
【撮影:鈴木友莉】
リリース情報
夕暮れに映して
2019年08月09日
SPACE SHOWER MUSIC
セットリスト
秋山黄色1st ONE MAN LIVE『登校の果て』
2019.9.28@TSUTAYA O-Crest
- 1.猿上がりシティーポップ
- 2.やさぐれカイドー
- 3.クラッカー・シャドー
- 4.日々よ(未発表曲)
- 5.Drown in Twinkle
- 6.ドロシー
- 7.夕暮れに映して
- 8.新曲
- 9.新曲
- 10.新曲
- 11.スライムライフ (未発表曲)
- 12.新曲
- 13.クソフラペチーノ
- 14.とうこうのはて 【ENCORE】
- 15.猿上がりシティーポップ
お知らせ
MINAMI WHEEL 2019
2019/10/12(土)心斎橋20会場
w.o.d. presents "スペースインベーダーズIV"
2019/11/28(木)神戸 太陽と虎
秋山黄色 ONE MAN LIVE『登校の果て.W』
2020/02/28(金)shibuya WWW
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。