新生HOWL BE QUIET 「ただいま!」そして力強く歩み始めた「Andante TOUR」ファイナル
HOWL BE QUIET | 2019.10.11
メジャーデビュー当時、初めてHOWL BE QUIETに取材させてもらったとき、とにかくメンバー全員が、竹縄航太(Vo/Gt/Piano)というフロントマンが生み出す「歌」が大好きで仕方がないバンド、という印象が強かった。「曲に対して絶対的な信頼がある」(黒木健志/Gt)、「そもそもタケちゃんっていう人間が好き」(岩野亨/Dr)と、真っ直ぐな目で話してくれたことを、いまでも覚えている。あれから3年。メンバーが変わり、バンドを続けられるかどうかという瀬戸際を越えて、再び歩きだしたハウルには、やっぱりその真ん中に竹縄航太の歌があった。今年7月に約2年2ヶ月ぶりにリリースされたアルバム『Andante』を携えた全国ツアーのファイナル、恵比寿リキッドルームだ。
ふっと大きく息を吸い、ピアノのみの伴奏で「覆水盆に返らず」を歌い始めた。そこに加わるバンドサウンド。軽やかに広がるポップネスが、「ああ、ハウルのライブがはじまる」という高揚感を高めてくれる。岩野のフォーカウントを合図に、昨年新メンバーとして加入した松本拓郎(Ba)の躍動感のあるベースラインが響きわたると、賑やかに駆け抜けた「Dousite」へ。ジャジーなピアノに透明感のあるファルセットが踊る「Daily Darling」では、アウトロでテンポアップするクールなセッションを繰り広げた。リリースされている音源以上に衝動的で、4人の個性が強く主張し合う強靭なアンサンブルはライブならではだ。約1年前、ゼロからスタートを切ったハウルだが、すでにいまは松本を交えた新しい4人のグルーヴができあがっていた。そう言えば、松本が加入したころ、岩野は松本を誘い、率先してリズム隊だけでスタジオにこもっている、と言っていた。そういう日々を経て、今回のツアーをまわり、ハウルは一回りタフなバンドになって、この場所に帰ってきたのだ。
竹縄の「ただいま!」に、会場は「おかえり!」と返す。おそらく、この「ただいま」には、1ヶ月にわたるツアーで再び東京に帰ってきたという意味と同時に、本格的なバンドのリスタートに対する意味もあったのだろう。「存分に楽しんでください!」と意気込みを伝えた竹縄が「いつもウジウジしてるから、久々に真っすぐ歌えた曲を」と紹介したのは、最新アルバムからの「fantasia」。大きく刻むリズムのなかで、“ただ 目の前の君が笑ってる それだけでいいよ”と歌う満ち足りたバラードに続けて、ロックに表情を変えた「バーバラ」へつなぐ。真っ赤な照明がステージを照らし、踊るようなピアノを情熱的なバンドサウンドが彩った「千年孤独の賜物」では、黒木の狂おしいほどのギターソロが炸裂した。
フロントに立つ竹縄が、曲ごとにアコースティックギターと、ピアノを使いわけながら、ライブは進んでいった。中盤、楽器隊の3人が捌け、ひとりステージに残った竹縄が、「初心にかえる、じゃないけれど……」と前置きをして、アコースティックギター(アコギ)の弾き語りで「GOOD BYE」を歌った。続けて、メンバーを交えたアコースティックコーナーへ。各地で異なるペアで、日替わりで曲を披露してきたというが、ファイナルとなった東京では、メンバー全員で「孤独の発明」を披露。岩野がカホンを叩き、黒木はアコギ、松本はエレキベースという編成で、アップテンポな原曲とはまったく違うアレンジで聴かせた。アコースティックパートの2曲は、どちらも2013年のインディーズ時代にハウルが初めて出した全国流通盤『DECEMBER』からのナンバーだった。この頃から、彼らの音楽の根底には、誰かを愛したいという根源的な願いと、それに付随する言いようのない孤独があるのだと、改めて思う。
Sexy Zoneに楽曲提供した「名脇役」のセルフカバーから、ライブの後半にかけては、バンドにとって大切なナンバーが続いた。新体制の第一弾楽曲として発表された「ヌレギヌ」では、竹縄がマイクを通さずに歌い出し、会場からは自然とシンガロングが巻き起こると、岩野はドラムスティックを指揮棒のように振っていた。終盤のMCでは、今回のツアーを振り返り、「MCで下ネタが増えてきた」と、暴露。その“諸悪の根源”である岩野が嬉々として繰り広げる長めの下ネタトークを、松本が効果音でイジり、会場が笑いに包まれると、黒木が竹縄に、「(この流れで)次、歌える?」と心配する場面も。それに竹縄が「余裕、余裕(笑)」と答えると、「ギブアンドテイク」を皮切りに、「Reversi」と「MONSTER WORLD」から、ライブはクライマックスに向けて、さらに熱を帯びていった。
ラスト1曲を残して、最後のMC。今回、バンドとしては2回目の恵比寿リキッドルームになったと、竹縄が語りかけた。1回目はメジャーデビュー直後だった。「Wake We Up」のリリースパーティーとして、バンド最大規模のキャパシティをソールドアウトできたことを、とても喜んでいた。だが、そこからのブレーキ。一時はバンド解散の危機もあったが、それを乗り越えて、再びこの会場に立つ意味を丁寧な言葉で伝えていく。「当時、俺たちは、もっと大きい場所でやりたいとか思ってた。でも、人生いろいろある。3年経って、(傍から見たら)“まだ同じ会場?”って言われるかもしれないけど、また同じ会場でできることを誇りに思います」と。さらに「HOWL BE QUIETでよかった。また、ここに立てると思わなかったから。音楽できてうれしいです」と言うと、その想いを楽曲へと託した「Dream End」へつないだ。静謐なピアノの弾き語りから、やがて力強く鳴らされる壮大なバンドサウンド。そこで歌われるのは、“これでよかったんだ”と自分自身を肯定し、“この夜も越えていくんだ”という未来への想いだ。ひとつの夢の終わり、それでも新しい夢の続きを描いていく。そんなバンドの意思に胸が熱くなるフィナーレだった。
アンコールでは、まずお客さんと一緒に歌う練習をしてから届けた「レジスタンス」で、黒木がステージから降り、さらにフロアの熱狂を加速させると、この日、数えきれないほど重ねた「ありがとう」の言葉を、ひときわ熱っぽく伝えて、最後は「幽霊に会えたら」でライブを締めくくった。晴れやかな笑顔のまま、ラストナンバーを歌えるのも、また「この次」に会う約束ができるからだ。音楽を続けること、大好きな歌を信じ続けることが、決して当たり前ではないことを知り、再び立ち上がったHOWL BE QUIETは、ここから、これまで以上に力強く自分たちの音楽を貫いていくだろう。
【取材・文:秦理絵】
【撮影: 山川哲矢】
※記事初出時、一部誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
リリース情報
Andante
2019年07月31日
ポニーキャニオン
02.fantasia
03.ヌレギヌ
04.Reversi
05.バーバラ
06.名脇役
07.幽霊に会えたら
08.Dream End
セットリスト
HOWL BE QUIET 「Andante TOUR」
2019.10.3@恵比寿LIQUIDROOM
- 1.覆水盆に返らず
- 2.Dousite
- 3.Daily Darling
- 4.ラブフェチ
- 5.fantasia
- 6.バーバラ
- 7.千年孤独の賜物
- 8.Higher Climber
- 9.GOOD BYE(竹縄弾き語り)
- 10.孤独の発明(Acoustic ver.)
- 11.名脇役
- 12.ヌレギヌ
- 13.ギブアンドテイク
- 14.Reversi
- 15.MONSTER WORLD
- 16.Dream End 【ENCORE】
- En1.レジスタンス
- En2.幽霊に会えたら
お知らせ
HOWL BE QUIET “REQUEST LIVE SHOW”
11/29(金)恵比寿LIQUIDROOM
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。