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「いろんなことが良くなるように、願ってる!」――10-FEET “ハローフィクサー” ONE-MAN TOUR 2019

10-FEET | 2019.10.23

 この2019年、長崎・稲佐山でのワンマンライブや、主催フェス「京都大作戦 2019」を2週・4日間にわたって繰り広げてきた10-FEETが、各地夏フェスでの活躍を経ていよいよ「“ハローフィクサー” ONE-MAN TOUR 2019」をスタートさせた。年内に全国12ヶ所のライブハウス公演を予定し、その幕開けを飾るのは10月9日Zepp Tokyo。この初日の模様をレポートしたい。

 お馴染みのオープニングSEが満場のオーディエンスによる大歓声と正面衝突するや否や、ステージ背景には最新シングル「ハローフィクサー」の、今回のツアー用の新たなバックドロップが迫り上がってくる。無数のタオルが掲げられたフロアに向け、いきなり撃ち込まれるのは“VIBES BY VIBES”だ。パンキッシュなラガボーカルが弾け、TAKUMA(Vo・G)が「跳べるか?」と問いかけるのも待たずにNAOKI(B・Vo)はベースを抱えたまま率先して高くジャンプしている。ボリュームの多いワンマンライブだからといって、勿体ぶったりはしない。初球から全力のライブ鉄板曲を浴びせかけてくるのである。続けざまに放たれるのは“1 size FITS ALL”。問答無用のバウンス感にフロアが激しく波打つ。

 3人の演奏が重くズッシリとした手応えなのは、ただ楽器のサウンド面における話だけではなくて、歌声の輪郭がすこぶるクッキリと伝わり、ハーモニーやスイッチングボーカルが映えるからだ。それは、どれだけファストな展開の中であっても、忙しないアクションを見せていても、今回のステージで一貫して保たれていた「歌の質量」であった。もちろん、10-FEETのワンマンとなれば、オーディエンスの雄々しいシンガロングやコール&レスポンスも会場を震わせ続けているのだが、その真ん中には間違いなく10-FEETの「歌の質量」がのしかかっていた。それはあたかも巨大な文鎮のように、ライブ全編を揺るぎないものにしていたのである。

「今宵はお前らと~、どこまで行けるかな~♪」。TAKUMAがそんなふうにアドリブを差し込んで歌い出す“Fin”は、哀愁の歌謡テイストが焦げ付かんばかりのエモさを振りまいている。ギターソロを弾き倒す“super stomper”、さらにベースフレーズが踊りまくる“SHOES”と、演奏の方も歌に駆り立てられるように雄弁さを増してくる。10-FEETのミクスチャー感覚は意外性に満ちた曲展開の数々にも表れているが、涼しい顔をして急激な変化を支えるKOUICHI(Dr・Cho)のドラムプレイも素晴らしい。

「お互い、盛り上がるために来たんでしょ? 利害が一致してるわけやろ? 言ったら、ロックの忖度やろ?」と告げて、ユーモラスなカップリング曲“123456789101112”に持ち込んだりもする。NAOKIが新調したベースについて「いつもと音ちがうやろ」と嬉しそうに語り出すと、KOUICHIは「NAOKIがベース変えてくると思って、俺も新調してきた。パンツを。下半身がちょっとちがうやろ」と便乗してくる。そんなふうに笑いを絡めながらも、むしろ一曲一曲の演奏は感情の形がどんどん純粋に、明瞭なものになっていった。こちらも「ハローフィクサー」のカップリング曲である“heart blue”の、丸裸の歌心を伝えるパンクはどうだろうか。ここから“夢の泥舟”へと連なる流れは、この夜のひとつのハイライトであった。

 ギラッギラのハードコアサウンドで燃え盛る“1sec.”の後に、TAKUMAは「ほんまいろんなことが良くなるように、願ってる!」と不器用にまくしたて、“quiet”へと傾れ込んで行った。どれだけ多くの人の支持と信頼を得ても、彼の言葉は小綺麗に纏まることがない。むしろ、簡単には片付かない事柄を選んで、向き合っている。心の底からの、ハミ出すような願いを掘り起こし、それを叫ぶ。その本音の熱さに触れているから、いつだって10-FEETのファンは全力で歌声を重ねるのだろう。必殺曲の連打では大合唱もピークに達するのだが、中でも“蜃気楼”で2コーラス目をオーディエンスに預けたとき、TAKUMAは本当に嬉しそうに笑っていた。

 そして、切ないジャジーソウルのイントロから急転直下に唸りを上げる“ハローフィクサー”である。得体の知れないものと向き合うための、得体の知れないミクスチャーサウンド。こんなふうに、ありとあらゆる音を味方にした10-FEETが、またいつ終わるとも知れない日々の闘争に赴く。サウンドと言葉がギュッと引き締まった“RIVER”が、まるで今ライブが始まったかのようにフロアを揉みくちゃにしていたのは、言うまでもないだろう。

 さて、アンコールの時間も予め本編に織り込まれたこの日のセットリストだが、ライブ前に急遽メンバー3人で話し合い、それぞれに好きな楽曲を加えることにしたそうだ。まず届けられたのはブライトなパンクチューン“FELLOWS 1.5”。そしてまたもやオーディエンスにがっつりと歌わせる“4REST”をNAOKIがハイキックのアクションで締めくくり、このライブ終盤でさらに追い込みをかけるようなグルーヴが迸る“STONE COLD BREAK”へと繋げてみせた。ボーナスと呼ぶには、あまりにも熱く燃え上がる3曲であった。

「好きやで、ほんま。応援してくれるし、贔屓してくれるし、だから、好き。熱いMCして、ガーッと行った方が盛り上がるんやけど、なんか言いたくなった。好き」。照れ隠しのようにニヤニヤしながら、TAKUMAはそんな告白をした。《お前らに会いにきた》と歌詞を変えて歌われる“その向こうへ”は、シンガロングもハンドクラップもクラウドサーフも全盛りの狂騒と化し、「ありがとうな」と感謝の念を連発する“ヒトリセカイ”で歓喜のままのフィナーレへと向かう。強烈な衝動も、スリリングなミクスチャーサウンドも、そして笑いも、すべてを歌心が繋ぎ止める全25曲。いつでも心をザワつかせて止まない10-FEETの、新しいワンマンツアーが始まったのだ。

【取材・文:小池宏和】
【撮影:HayachiN】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 10-FEET

リリース情報

ハローフィクサー

ハローフィクサー

2019年07月24日

BADASS / EMI records

01.ハローフィクサー
02.heart blue
03.123456789101112

セットリスト

10-FEET "ハローフィクサー" ONE-MAN TOUR 2019
2019.10.9@Zepp Tokyo

  1. 01. VIBES BY VIBES
  2. 02. 1 size FITS ALL
  3. 03. JUST A FALSE! JUST A HOLE!
  4. 04. Fin
  5. 05. super stomper
  6. 06. SHOES
  7. 07. 2%
  8. 08. 123456789101112
  9. 09. 火とリズム
  10. 10. JUNGLES
  11. 11. hammer ska
  12. 12. heart blue
  13. 13. 夢の泥舟
  14. 14. 1sec.
  15. 15. quiet
  16. 16. goes on
  17. 17. 蜃気楼
  18. 18. 太陽4号
  19. 19. ハローフィクサー
  20. 20. RIVER
  21. 21. FELLOWS 1.5
  22. 22. 4REST
  23. 23. STONE COLD BREAK
  24. 24. その向こうへ
  25. 25. ヒトリセカイ

お知らせ

■ライブ情報

10-FEET "ハローフィクサー" ONE-MAN TOUR 2019
10/30(水)Zepp Nagoya
11/03(日)仙台GIGS
11/09(土)高松festhalle
11/14(木)Zepp Sapporo
11/18(月)新潟LOTS
11/25(月)京都KBSホール
11/30(土)富山クロスランドおやべ
12/08(日)沖縄 桜坂セントラル



"BACK TO THE 1999"
11/22(金)京都KBSホール 元祖大四畳半酒場ポン20周年秋の宴

MERRY ROCK PARADE 2019
12/21(土)、22(日) ポートメッセ名古屋1〜3号館
※出演日未定

ポルノ超特急2019
12/22(日)京都パルスプラザ

COUNTDOWN JAPAN 19/20
12/31(火)幕張メッセ国際展示場1〜11ホール、イベントホール

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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