レルエ、ワンマンツアー「LELLE live tour 2019 “Alice”」
レルエ | 2019.11.08
幻想的な雰囲気のSEが流れる中、ゆっくりと歩きながら、櫻井 健太郎(Vo.&Gt.)、エンドウリョウ(Ba.)、saya(Violin & Syn. & Cho.)、サポートプレイヤーの木下 哲(Gt.)、藤本 夏樹(Dr./Tempalay)が登場。仄かなスモークがたち込めるステージ上で、レルエの世界は突然構築された。「Stockholm」が鳴り響いた瞬間、ドラマチックに広がったサウンドと空間。サイバーなデジタルサウンドに彩られつつ、エモーショナルな人力バンド演奏が躍動する様は、ワクワクする他ない圧倒的なエネルギーに満ちていた。バイオリンとシンセイサイザーを巧みに操って多彩な色合いを煌めかせていたsaya。グルーヴィーなベースラインを奏でつつ、曲に熱量を注ぎ込み続けたエンドウ。ダンサブルなビート、艶めかしいギターの音色にも包まれながら、物語を豊かにイメージさせる歌声を響かせた櫻井――ステージの背景に幾何学模様のグラフィックが流れる中で生み出された空間は、非日常の眩しい刺激で満ち溢れていた。
レルエの音楽はダンサブルなものが多く、エレクトロのエッセンスも濃厚に香る音像は、観客の心を激しく揺さぶる。しかし、アッパーで開放的に踊る人々が続発するわけではない。その点が、非常に独特な魅力だと感じさせられる場面がたくさんあった。「さよならマジョリティ」「時鳴りの街」「シルエット」……ライブの序盤で次々と届けられた曲たちも、力強い躍動感に満ちていたが、“ダンスフロア”と表現できるような空間を生み出してはいなかった。しかし、盛り上がっていないわけでは全くなく、むしろ圧倒的な興奮が、周囲の空気を通じてまざまざと伝わってきたのが、非常に印象的だった点だ。“耳を傾けている人々は、実に気持ちよさそうな表情で穏やかに身体を揺らしつつも、届いてくる音の全てを目いっぱいに味わい尽くし、そこからイメージされる世界へと深く潜り込もうとしている”――そんな様子であることが窺われた。肉体で踊るというよりも、心を躍らせるという方向で集中力を発揮していた様子の人々の心の中には、各々の感性から導き出された美しい風景が広がっていたのだろう。エモーショナルなサウンドを響かせた「あの子はきっとインベーダー」の演奏が幕切れた瞬間、激しく拍手をした観客の姿が、夢から突然覚めたかのようであったのも、イマジネーションをフル稼働させていたひと時が、突然のインターバルを迎えたからなのだと思う。
サイバーな要素を少なからず持っているレルエのもうひとつの一面である抒情性、穏やかさ、安らぎ、牧歌性をじっくりと感じさせてくれる「#1」「硝子の国」「ホリデーバード」が観客を温かく包み込んだ後、「ネオサイン」を皮切りに、再びドリーミーな異世界の扉が開かれていった。ステージの背景のスクリーンに流れる様々なグラフィックと一体となり、目いっぱいドラマチックに響き渡った「クローバー」。シューゲイザー的なサウンドのベールを揺らめかせて、観客をうっとりとさせていた「火花」。清々しい光に包まれながらパレードする様をイメージさせてくれた「UP TO DATE」……曲と曲の間に時折の静寂も挟みながら、多彩なサウンドがじっくりと示されていった。
「楽しんでますか? 残りわずかとなりましたが、楽しんでいってください」。イントロが奏でられている中、櫻井が呼びかけてスタートした「青とゲート」は、観客の手拍子も加わり、とても穏やかな一体感を生み出していた。そして、再び迎えたインターバルで、観客に語りかけた櫻井。「前回のワンマンライブから約8ヶ月ちょっとなんですけど、僕たち、ずっと今日のためにアルバムを作ったり、準備をしてきました。無事、今日を迎えることができて、ほんとに嬉しいです。ありがとうございます。今日、観てくれたみなさんは、レルエに興味を持って来てくれた、僕たちにとってとても大切な人たちだと思ってます。必ず、僕たちはもっともっと大きくなって、みなさんが周りに自慢できるようなバンドになります。今日のことは忘れません。レルエでした。」この言葉を経てスタートし、本編ラストを華麗に飾った「プレイアデス」。逆光のライティングがメンバーたちのシルエットを浮かび上がらせた中で幕開けたサウンドは、力強く進んで行こうとするエネルギーを湛えているのを感じた。
アンコールを求める手拍子に応えてステージに戻ってきたメンバーたちは各々、観客に挨拶。「今日という日を本当に楽しみにしていて、“嬉しい”という言葉しか出てこないです。またお会いしましょう」(エンドウ)。「来てくれたみなさん、ありがとうございます。あっという間ですね。疲れてないですか? 大丈夫ですか? アンコールをやらせていただくので、あとちょっとお付き合いください」(saya)。「発表があるんですけど、11月からスタートするアニメ『モンスターストライク』の主題歌に決定しました。そして、来年の春、この主題歌を含めた新作をビクターからリリースします。これからもレルエをよろしくお願いします!」(櫻井)。――大きな発表もあった後、早速披露されたアニメ『モンスターストライク』の主題歌「キミソラ」は、同期サウンドとバイオリンの流麗な旋律の融合が、深い恍惚を誘う仕上がりであった。そして、ラストを締め括ったのは「夜はモーション」。届けられた一音一音を夢中になって噛み締めていた観客に向かって、温かなサウンドが優しく降り注いでいった。
演奏が終了した後、なんとなく照れくさそうにしながら、ステージの前方に並んだメンバーたちとサポートプレイヤーの木下、藤本は、繋ぎ合った手を掲げて観客に挨拶。そして、ステージを後にした彼らを、観客の大きな拍手が見送った。ライブ中に発表された通り、レルエは今後、広い世界へと踏み出していくが、さらにたくさんの人々を魅了するバンドとなることを確信させられる濃密なライブであった。
【取材・文:田中 大】
【撮影:横山マサト】
リリース情報
Alice
2019年09月18日
ヴィレッジアゲインアソシエイション
02.時鳴りの街
03.火花
04.硝子の国
05.UP TO DATE
06.あの子はきっとインベーダー
07.クローバー
08.青とゲート
09.ホリデーバード
10.夜はモーション
11.プレイアデス
セットリスト
LELLE live tour 2019 “Alice”
2019.11.1@渋谷WWW
- 1.Stockholm
- 2.さよならマジョリティ
- 3.時鳴りの街
- 4.シルエット
- 5.あの?はきっとインベーダー
- 6.#1
- 7.硝子の国
- 8.ホリデーバード
- 9.ネオサイン
- 10.クローバー
- 11.火花
- 12.UP TO DATE
- 13.青とゲート
- 14.プレイアデス
- EN1. キミソラ ※新曲
- EN2. 夜はモーション
お知らせ
rockin’on presents JAPAN’S NEXT
渋谷 JACK 2019 WINTER
日程 : 12月8日(日)
開場 11:00 開演 12:00 (予定)
会場 : TSUTAYA O-EAST / duo MUSIC EXCHANGE / TSUTAYA O-WEST / club asia / TSUTAYA O-nest / TSUTAYA O-Crest / VUENOS / Glad
チケット・イベント詳細はこちら
http://japansnext.jp
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