Eve、プレミアムなライブハウス公演で実証したエモーショナルな表現力
Eve | 2019.11.18
2019年10月30日。ハロウィン前夜ということもあり不穏な空気が漂う渋谷センター街。ゾンビ姿やコスプレの人々を通り抜け足早にライブハウスへ。今日は、Eveによるレアなライブが渋谷WWWXで行われるのだ。普段、映像や照明、舞台セットにもこだわるシアトリカル(演劇的な)な世界観が魅力のひとつであるEveだが、今回は珍しくシンプルなセットにおける現段階ベスト選曲のステージ[CANDY]。本公演は、新曲「レーゾンデートル」の配信リリースを記念しての完全招待制イベントだ。
開演時間を迎え、バンドが登場し、パーカー姿のEveがあらわれた。いきなりギアをフルスロットル状態で「レーゾンデートル」からスタート。ハンドクラップでオーディエンスを煽るEve。本作は、専門学校HAL(東京?大阪?名古屋)のCMソングとしてTVでオンエアされ、川村元気による企画・プロデュースのMVも話題となったキラーチューンだ。
勢いそのまま「渋谷、いけるか!」とシャウトし、人気チューン「ナンセンス文学」へとなだれ込む。ビートと呼応しフラッシュする照明。ライブ感あるエモーショナルなパフォーマンスにフロアが盛りあがる。
そして、イントロのギター“ジャーン!”の一音で湧くフロア。「アウトサイダー」を繰り出し、今日のライブがただ事ではないことを知るオーディエンスたち。そう、すべて代表曲づくし。青い照明が映え、疾走感溢れるビートが気持ちを高ぶらせてくれる。
ここでMCタイム。男性ファンからの黄色くない「Eveく~ん!」の声に「ふっ、……失笑しちゃった(苦笑)」と文字通り距離感の近いほんわかした雰囲気へ。「今日は、あっという間なんで盛り上がっていってください!」と、丁度3年前にリリースした3rdアルバム『OFFICIAL NUMBER』収録の「sister」をプレイ。とつとつと心を突き刺すメロディアスなナンバーを聴かせてくれた。サビで広がる虹色の照明が美しい。
アコースティック・ギターに持ち替え、テレビアニメ『どろろ』エンディング・テーマとなった「闇夜」では、繊細なサウンドとたゆたうように心の奥底へ響き渡るサウンドを披露。心の痛み、葛藤。闇夜を切り裂く静かな叫びのような歌声。Eveの新境地を開拓したプレミアムなナンバーだ。
続くメロウな「君に世界」では、温かみのある夕焼けのような照明が切ない。通常のワンマン公演とは違いシンプルなセットながらEveの歌声は映像を想起させ、気持ちをふっと非日常へとワープさせてくれる。
後半戦はイントロダクションから湧きに湧く人気チューン「トーキョーゲットー」から再び加速する。ギターを弾きながら、低音ボイスからのハイトーンへと移りゆく様がエモい。
このままクライマックスへ突き進み、ハードボイルドなキラーチューン「ドラマツルギー」投入。歌詞で“存在証明”とある通り、Eveによる作品性のテーマに“存在価値”を意味する“レーゾンデートル”という言葉は欠かせない。疾走感溢れるビートや歌声の熱さにカラダとココロは踊りながらも、歌詞と声色から受け取るメッセージ性によって一株の冷静さが残るのがEveらしさなのかもしれない。表現者ならではの葛藤の発露だ。とはいえ、やはりステージ前方へ駆け寄るEveの姿にフロアの熱狂は最高潮に。
「楽しい時間が作れている気がします!」と笑顔で話しかけると、それに大きな声で応えるオーディエンスたち。男女いい感じのファンが集まっているなぁと、ふと我に返った瞬間だ。そして「ラストダンス」をプレイ。これでもかとフロアに熱量を注ぐEveの姿。ネットカルチャー出身の彼は、ライブハウスで勝ち上がってきたタイプではない。しかし、完全に空間を自分のものにしているなと成長を感じたワンシーンだ。
そして、本編ラストに贈るナンバーはシンガロングが起きた「バウムクーヘンエンド」。Eveがフロントで煽る煽る。ダンサブルなナンバーにそれぞれのダンスで歌い踊るファンの姿に胸が熱くなった。そもそも音楽は、ロックは、ダンスミュージックは自由なのだ。制約を乗り越えていくもの。塗り固められた過去の常識をぶち壊していくEveの存在は面白いなと改めて思った。
渋谷WWWX、鳴り止まないアンコール。MCでは、今年春に行った『2019 春Tour「おとぎ」』以来のライブで、「普段は映像がバコバコあるんだけど、今日はこんなにお客さんと近くて緊張しました」と正直に告げる。しかも、レアなライブハウス公演だったこともあり「こういう機会をいただけて嬉しい」と思いを語った。そしてEveは「みんなに直接言いたいことがあります!」と、冬のツアーを12月から1月にかけて行うこと、さらに2020年2月12日にニューアルバム『Smile』をリリースすることをファンに直接自分の言葉で伝えた。そして、ラストナンバー「お気に召すまま」をやさしい歌声で披露。四つ打ちで踊れるナンバーによって魂が解放されていくオーディエンス。ギターソロがシンフォニーのように高らかに響き渡ったのが印象的だった。
最後にEveから一言「ハロウィンなんで気をつけて帰ってね! 今日はありがとう!!!」。帰り際、ハロウィンを気遣ってかオーディエンス全員に洒落た棒付きキャンディーが配られた。そう、今日のイベントタイトルは[CANDY]だった。忘れられない、狂おしくもスウィートな素晴らしいライブだった。
【取材・文:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】
【撮影:ヤオタケシ】
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リリース情報
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Smile
2020年02月12日
TOY’S FACTORY
01.doublet
02.LEO
03.レーゾンデートル
04.虚の記憶
05.いのちの食べ方
06.闇夜
07.朝が降る
08.心予報
09.白銀
10.バウムクーヘンエンド
11.mellow
12.ognanje
13.胡乱な食卓
02.LEO
03.レーゾンデートル
04.虚の記憶
05.いのちの食べ方
06.闇夜
07.朝が降る
08.心予報
09.白銀
10.バウムクーヘンエンド
11.mellow
12.ognanje
13.胡乱な食卓
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セットリスト
レーゾンデートル記念無料招待ライブ[CANDY]
2019.10.30@渋谷WWWX
- 1. レーゾンデートル
- 2. ナンセンス文学
- 3. アウトサイダー
- 4. sister
- 5. 闇夜
- 6. 君に世界
- 7. トーキョーゲットー
- 8. ドラマツルギー
- 9. ラストダンス
- 10. バウムクーヘンエンド -Encore-
- En1. お気に召すまま
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お知らせ
■ライブ情報
Eve winter tour 2019-2020 “胡乱な食卓”
2019/12/24(火)トークネットホール仙台 大ホール
2020/01/02(木)Zepp Nagoya
2020/01/03(金)Zepp Namba
2020/01/05(日)広島JMSアステールプラザ 大ホール
2020/01/11(土)東京国際フォーラム ホールA
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
Eve winter tour 2019-2020 “胡乱な食卓”
2019/12/24(火)トークネットホール仙台 大ホール
2020/01/02(木)Zepp Nagoya
2020/01/03(金)Zepp Namba
2020/01/05(日)広島JMSアステールプラザ 大ホール
2020/01/11(土)東京国際フォーラム ホールA
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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