go!go!vanillas、プリティ完全復活で迎えた「THE WORLD TOUR 2019」Zepp Tokyo
go!go!vanillas | 2019.12.15
いつものSEがスピーカーから鳴り出す。明らかにいつもよりも大きな拍手と歓声が会場のZepp Tokyoを揺らすのは、これが東京公演のファイナルだからというだけではもちろんない。昨年12月の不慮の事故から10か月あまり、「あの男」がついに帰ってきたからだ。勢いよくメンバーが飛び出してくる。牧 達弥(vo/g)、ジェットセイヤ(dr)、柳沢 進太郎(g)、そして――長谷川プリティ敬祐(ba)が飛び出してきて腕を突き上げる。懸命のリハビリを経てついに完全復活したバニラズのベーシストが、いよいよツアーを完走しようというのである。メンバーやスタッフはもちろん、集まったファンも万感の思いでこの日を迎えたに違いない。11月16日土曜日、Zepp Tokyo、go!go!vanillas「THE WORLD TOUR 2019」。当然のように最高で、感動的なロックンロール・ショウだった。
1曲目「マジック」から、ステージ上の4人にみなぎる気合いがビンビンに伝わってくる。「SUMMER BREEZE」、そして「バイリンガール」と、心なしかいつもより速いようにすら感じるテンポでキラーチューンが連打されていく。「やっと4人で帰ってきたぜー! 最高だー!」。牧の心の叫びが轟く。そしてプリティも「大好きなみんなに音楽を届けるために手術もリハビリも全部乗り越えて、元気な身体で東京に帰ってきました。ただいまーっ!」と挨拶。「おかえりー!」とフロアからも大声が飛ぶ。そして「ここからだ!」という牧の一言から『THE WORLD』の1曲目に収録された「パラノーマルワンダーワールド」へ。今のバニラズのメッセージを象徴する曲、そしてこのツアーまで4人で一度も演奏されてこなかった曲。それが今こうしてあるべき姿で鳴り響いていること自体が感動的だ。この曲だけではない。「サイシンサイコウ」、「ワットウィーラブ」、「NO NO NO」……『THE WORLD』の楽曲すべてが、こうして4人で鳴らす喜びにあふれているように聞こえてくる。「NO NO NO」を披露したあとには、「プリティのベースがまだまだ欲しいぞ!」という牧の声を受けて、プリティがフロア最前列の柵の上に立ってベースソロを披露。そこに柳沢もソロで応酬し、グルーヴィーなダンスナンバー「Do You Wanna」になだれ込む。
「復帰してステージに立ってきて、そのたびに思ったんだけど、4人で音を鳴らすこと、いやその前に4人でステージに立っていることは絶対に当たり前のことじゃないし、すごく幸せなことだと思いました」。プリティはこのツアーを振り返り、自分が不在のあいだもバンドを走らせ続けたメンバーとスタッフ、そしてそれを支えてきたファンへの感謝の念を表明していた。そして語られたツアーでのささやかな思い出(みんなでサウナに行った)も、もちろんすべてを乗り越えたからこそ。大げさじゃなく死の淵から甦ったプリティがリードする自作曲「デッドマンズチェイス」はいつもよりも120%増しの楽しさと激しさだったし、「エマ」のイントロでのいつもの口上を、声を裏返しながら叫ぶプリティの姿に涙がこみ上げてくるのだ。
だが、このライブを通して胸に去来したのは、単に「プリティおかえり」という思いだけではなかった。もちろん、こうして4人でステージに立っているバニラズを観ること自体が「当たり前じゃない」という実感はその場にいた全員がもっていたし、プリティが元気な姿を見せてくれたことに対する喜びも感じていただろう。しかしそれをバニラズは今を愛でるような感傷としてではなく、ロックンロールを未来に向けてぶっ放す原動力にしてみせた。「カウンターアクション」や「平成ペイン」といった定番曲を終盤に畳み掛ける中でも、明らかにバニラズはスケールを増したロックンロールの包容力と突破力を見せつけていたのだ。
「俺たちはすべてを糧にして今ここに立ってる。3人のときも3人だとは思わなかった。みんなの中にも辛いこと、悲しいことが絶対あると思う。俺もプリティが事故に遭ったときに、悲しい気持ちもあったけど、悔しい気持ちも、こいつ(プリティ)に対してムカつく気持ちもありました。でもそういう気持ちをぶっ壊すのがロックンロールの使命だと思うし、ロックバンドのあるべき姿だと思います」。牧がマイクに向かってがなり立てたこの言葉。そう、この1年、バニラズはありとあらゆる苦難を乗り越えながら、ロックンロールを鳴らす人間としていちばん大事なものを手に入れたのだ。だから彼らが鳴らす音は、今までとはまったく違うタフさと広がりをもって響く。このツアーはそんなバンドの成長を証明する場でもあったのだ。
アンコール。ひとり出てきたプリティは、すべてのロックバンドの思いを背負うような口調で、生きて出会えたこの夜の「奇跡」を改めて強調した。そのあとのセイヤの「俺は! 俺たちは! 生きてる! LIFE!」というシャウトも実感がこもっていた。「いつまでもあるなんてことは本当にないよ。大切な人も大好きな人も自分も、いつかいなくなるから。じゃあいなくなるまでに何ができるか。どれだけ人に優しくなれるかっていうのを、僕らはこれからも追求して、みんなのそばで音楽を奏でようと思います」という牧の言葉。それは4人全員に共通する強い思いなのだろう。そしてそんな強い思いを乗せて歌われたのは、プリティの休養中、彼へのエールとしていろいろな場所で、オーディエンスが歌ってきた「おはようカルチャー」だった。Zeppに集まった全員の声が重なり、美しい和音を奏でる。続けて「前と同じことなんてないさ 昨日より今日の方が楽しいなら」と歌う「ライクアマウンテン」へ。いつもは熱さの中にもクールな一面を見せる牧が感極まった様子で声をつまらせていた。まだまだ目の前には高い山がある。今この場所に立っている喜びと生きている実感をもって、go!go!vanillasはさらに突き進んでいく――そんなバンドの意思がひしひしと伝わってきた。2020年、4人のバニラズ見せてくれる最高の景色を、今から楽しみにしていたい。
【取材・文:小川智宏】
【撮影:ハタサトシ】
リリース情報
THE WORLD
2019年05月15日
ビクターエンタテインメント
02.チェンジユアワールド
03.SUMMER BREEZE
04.No.999
05.サイシンサイコウ
06.雑食
07.スタンドバイミー
08.ワットウィーラブ
09.GO HOME?
10.Do You Wanna
11.NO NO NO
12.Hey My Bro.
セットリスト
THE WORLD TOUR 2019
2019.11.16@Zepp Tokyo
- マジック
- SUMMER BREEZE
- バイリンガール
- パラノーマルワンダーワールド
- 人間讃歌
- チェンジユアワールド
- サイシンサイコウ
- ワットウィーラブ
- NO NO NO
- Do You Wanna
- デッドマンズチェイス
- エマ
- ストレンジャー
- カウンターアクション
- 平成ペイン
- No.999
-
【ENCORE】
- EN.1 おはようカルチャー
- EN.2 ライクアマウンテン
- EN.3 Hey My Bro.
- EN.4 ギフト
お知らせ
ERRY ROCK PARADE 2019
2019/12/21(土)ポートメッセなごや 1号館〜3号館
FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2019
2019/12/27(金)インテックス大阪
COUNTDOWN JAPAN 19/20
2019/12/31(火)千葉県 幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール
SPACE SHOWER TV 開局30周年記念公演 スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR "同騒会"
2020/02/04(火)名古屋 Zepp Nagoya
2020/02/05(水)大阪 Zepp OsakaBayside
2020/02/07(金)福岡 Zepp Fukuoka
2020/02/10(月)東京 Zepp Divercity(Tokyo)
Hump Back「僕らの夢や足は止まらないツアー」
2020/02/29(土)仙台 Rensa
2020/03/01(日)郡山 Hip Shot Japan
go!go!vanillas presents
READY STEADY go!go! vol.07
〜しゃあしい音でしんけん騒ぐで凱旋ワンマン!!〜
2020/05/05(火)大分 iichikoグランシアタ
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。