SHE’Sの奥深い音楽世界を堪能した一夜。管弦楽団を迎えたスペシャル公演「Sinfonia “Chronicle” #2」
SHE’S | 2019.12.06
管楽器、ストリングスを迎えたSHE’Sのスペシャル公演「Sinfonia “Chronicle” #2」の東京公演が12月3日、中野サンプラザで開催された。ホーンセクション(サックス、トランペット、トロンボーン)、弦カルテット(バイオリン×2、ヴィオラ、チェロ)とともに行われるこの公演は昨年に続き2度目。「Un-science」「Dance With Me」などの代表曲から最新シングル「Tricolor EP」の収録曲まで、“ベスト・オブ・SHE’S”と呼ぶにふさわしい楽曲をゴージャスかつシックなサウンドで堪能できる特別な一夜となった。
客席の照明が落とされると、まずはホーン隊、弦カルテットが登場。壮大な雰囲気のインスト曲を響かせ、会場全体を豊かな音楽空間に導く。続いてメンバー4人がステージに上がり、ストリングスのイントロとともに最初の楽曲「Over You」へ。解放感に溢れたメロディ、疾走感のあるバンドサウンドを管弦楽器が彩り、早くも心地よい感動が押し寄せてきた。さらに“バンド+ストリングス”の編成で「Un-science」、“バンド+ホーン隊”で「Beautiful Day」「パレードが終わる頃」を披露。楽曲のムードや世界観に寄り添ったアレンジが施され、この日だけの特別なサウンドへとつながる。
最初のMCは服部栞汰(Gt)。「昨日、“入り口がわからなくて、会場に入れない”という夢を見ましたけど(笑)、見ての通り、めっちゃ楽しいです。スペシャルな日にしたいので、よろしくお願いします!」というトークの後は、12月4日にリリースされた5thシングル「Tricolor EP」の収録曲から「Masquerade」を披露。アイリッシュの匂いを感じさせる旋律をストリングスが奏でると、会場の雰囲気は一変。抑制の効いたAメロ、バウンシーなリズムとともに解放されるサビのメロディのコントラストも気持ちいい。切ない情感とダンサブルな抑揚が共存するこの曲は、今後のSHE’Sのライブでも大きなポイントになりそうだ。
ライブ中盤は、SHE’Sが持っている奥深い音楽性を堪能できるシーンがたっぷり。アグレッシブなロックチューン「Getting Mad」はメンバー4人だけで演奏。井上竜馬(Vo&Key)がギターをかき鳴らし、強い感情を込めたボーカルでオーディエンスの感情を煽りまくる。力強さを増した木村雅人(Dr)のドラム、シンプルにして骨太なラインで楽曲のボトムを支える広瀬臣吾(Ba)のベース、そして、ド派手なソロを響かせる服部のプレイ。ロックバンドとしての凄みを感じさせるステージングは間違いなく、この日のハイライトの一つだった。
新曲「Your Song」も強く心に残った。「追いかけてる夢があったり、追いかけたい夢を見つけたいなと思ってたり。いずれにせよ、ずっと不安だったり、壁や悩みにぶつかるけど、途中でどう転ぼうと、人生は美しいなって僕は思います」(井上)という言葉とともに演奏されたこの曲は、凛とした美しさをたたえたピアノから始まるミディアムバラード。エモーショナルなメロディとともに“どんな状況になっても、好きな歌を口ずさんで進んでいこう”という思いを込めた歌詞が広がり、じんわりとした感動が会場を包み込んだ。
ここで再び弦カルテットが登場し、クラシカルなインスト曲を演奏。その余韻を残したまま、切なさと憂いを感じさせる旋律が印象的な「Ghost」(アウトロのギターソロとサイケデリックなストリングスの絡みが素晴らしい!)、そして、同じくシングル「Tricolor EP」の収録曲「Letter」へ。大切な人との繊細な距離感、大人に近づくにつれて揺れる感情を描いた歌詞、静謐なイメージのメロディ。丁寧に言葉を手渡すようなボーカル、メンバーの重層的なコーラスを含め、SHE’Sの表現力を改めて実感できる演奏だった。
初の全国流通盤『WHO IS SHE?』(2014年)収録の「フィルム」は、アコースティック・バージョンで披露。広瀬がアコースティックギター、木村がカホンを演奏し、恋人に対する切なくて蒼い思いを映し出す。「月は美しく」ではホーンセクション、月、星をモチーフにしたライティングとともにオーガニックかつフォーキーな雰囲気を演出。このバンドの豊潤な音楽性を様々なアレンジで味わえる、贅沢な時間が続く。
「平日にもかかわらず、こんなにたくさんの人に来ていただき、(チケット)は売り切れました。感慨深いね。バンドを始めた頃は、こんなふうになれるとは思ってなくて。一歩一歩、歩めてるなと思います」(井上)というトークの後、“とにかくやる、やってみないとわからない”という思いを反映させたアッパーチューン「Time To Dive」からライブは後半へ。「Sweet Sweet Magic」ではメンバー全員のソロ演奏を挟み、それぞれの個性的なプレイヤビリティをアピール。解放的なホーンの音色をフィーチャーしたダンスチューン「Dance With Me」では、「おじゃまします!」と井上が客席に下り、観客とコミュニケーションを取りながら場内を一周する場面も。本編ラストは「みんなにとって“忘れられない”という思い出を増やすために曲を書いて、ツアーを回りたいなと思ってます」(井上)という言葉に導かれた「The Everglow」。“あの頃”と変わらない感情をしっかりと握りしめ、大人になっていく――そんな思いが真っ直ぐに伝わるなか、ライブの感動は頂点に達した。
アンコールではまず、マルーン5の「She Will Be Loved」のカバー(シングル「Tricolor EP」収録)を披露。そして、「いつもそばにいてくれて、ありがとうございます。みなさんにだけ届いてほしいと思います」(井上)と「Stand By Me」も。“目の前にいる人に、しっかりと自分たちの音楽を届けたい”という真摯な思いが伝わる演奏に強く心を揺さぶられてしまった。メンバー全員で丁寧に挨拶し、ライブは終了。管楽器、ストリングスとともに、SHE’Sの奥深い音楽世界をたっぷりと体感できる大充実のステージだった。
2020年1月に東名阪でファンクラブイベント「SHE”Zoo”サファリ vol.2」(“リクエストLIVE”と“トークセッション”)を開催、さらに2020年3月からは新たな全国ツアー「SHE’S Tour 2020」も決定。ピアノロックという確固たるスタイルを持ちながら、自由奔放に自らの音楽を広げ続けるSHE’S。現在制作中というニューアルバムにも大いに期待したい。
【撮影:MASANORI FUJIKAWA】
リリース情報
Tricolor EP
2019年12月04日
ユニバーサルミュージック
02.Letter
03.Your Song
04.She Will Be Loved
セットリスト
Sinfonia “Chronicle” #2
2019.12.3@中野サンプラザ
- 01.Over You
- 02.Un-science
- 03.Beautiful Day
- 04.パレードが終わる頃
- 05.Masquerade
- 06.Just Find What You’d Carry Out
- 07.Getting Mad
- 08.Your Song
- 09.Clock
- 10.Ghost
- 11.Letter
- 12.フィルム
- 13.月は美しく
- 14.Time To Dive
- 15.The World Lost You
- 16.Sweet Sweet Magic
- 17.Dance With Me
- 18.The Everglow
- EN1.She Will Be Loved
- EN2.Stand By Me
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