ヤングオオハラ、初の全国ツアー「OOHARA EXPRESS 2019 秋」
ヤングオオハラ | 2019.12.11
2019年夏に2ndミニアルバム『YOUNG☆TONE』をリリースした沖縄在住の4人組ロックバンド・ヤングオオハラが、初の全国ツアー「OOHARA EXPRESS 2019秋」を開催。全国12ヶ所を回る同ツアーのセミファイナル・東京公演は、名古屋の3ピースバンドMakiとのツーマンライブだ。
ヤングオオハラとMakiは同年代生まれ。ヤングオオハラが名古屋に遠征に来た際、両者で飲み明かすのが定番だそうだ。音楽性は異なれども、ジャンルやセオリーにとらわれず自分自身の感情を落とし込む音楽を奏でていることは共通している2組。ゆえにこの日は単純だけど複雑な、その人間くささや人間らしさが嘘偽りなく鳴り響いていた。
MakiはMONKEY MAJIKの「Around The World」をSEに登場。1曲目「春と修羅」から焦燥感と衝動性をない交ぜにした演奏と、センチメンタリズムを含むグッドメロディを響かせる。「ヤングオオハラとは昨日から一緒にツアーをやらせてもらってます。今日も最高の日にしたいと思ってます」と語る山本響(Ba/Vo)の「俺たちは俺たちでやりたい音楽を全力で鳴らして帰ります」という言葉に続いて演奏されたのは「文才の果て」。佳大(Gt)の奏でる憂いのあるコードワークと、すべてを蹴散らして前に進もうとするほどのインパクトを持つまっち(Dr)のプレイもまた、若者ならではの葛藤、心に渦巻く切迫感を如実に表す。
「感謝の気持ちを込めて」と前置きされた「白」ではポップな音像をピュアに鳴らし、「嫌い」では沸々とした感情や、溢れだしそうな涙を堪えるような強がりもすべて放つ。生き様や美学を刻み付けるように鳴らし続ける彼らの佇まいは、ぶっきらぼうながらにぬくもりもあり、なにより非常に堂々としている。《どうかまた》と願うように叫ぶ「平凡の愛し方」から間髪入れずに「シモツキ」へつなぐ場面は、陰のなかから光を掴みにかかるようなエネルギーに溢れていた。ラストは山本が「僕らの友人に1曲やって終わります」と言い、ミディアムテンポの「1997」で締めくくる。肩肘張らない空気感ながらにロマンチシズムも持つ同曲は、まさに1997年生まれの彼らの等身大の青春。勢いよくたたみかけながらも、最後は軽やかにヤングオオハラにバトンを渡す小粋さに唸った。
Village Peopleの「YMCA」をSEに登場したヤングオオハラは、ダンサブルな「サマタイ」から鮮やかにスタート。ハローユキトモ(Vo/Gt)の辿るメロディ、その横で鳴るヨウヘイギマ(Gt)の歌うようにさえずるギターに、しっかりとグルーヴを作るミツキング(Ba)とノリバルカン(Dr)のリズムとビート感は、たちまちフロアの緊張をほどいていく。ポップなセクションからパンキッシュに移り、途中レゲエにもなりアウトロでは拍子が変わるという怒涛の展開を短尺に詰め込む「グッドバイバイバイ」から勢いよく「MAGIC」につなげる場面は、遊んでいるような奔放な空気感が瑞々しい。
天邪鬼でエッジが効きつつも、ゴキゲンで愛嬌があるのもヤングオオハラの魅力のひとつ。観客たちの表情を観ながら「最高な夜が今日もいっぱいあるらしい、俺らを選んでくれた! 俺らがいちばん間違いねえんだ!」と興奮を伝えるユキトモを始め、メンバー全員が陽の感情を噛みしめながら笑顔で演奏していく。そのなかでふとした瞬間、メンバー全員から同じタイミングでこぼれる鋭く真剣な空気。1本1本のライブに真摯に向き合っていることが窺える。センチメンタルポップナンバー「TV girl」やロマンチックなミドルナンバー「ハセスとココロ」はそのスパイスが炸裂し、スリリングで心地いい緩急を作っていた。
『YOUNG☆TONE』はミドルテンポの楽曲が多いことも特徴で、その新たな強みを生かした中盤のセクションは目を見張るものがあった。ユキトモの弾き語りと「素敵な時間には最高の音楽と俺らさえいればいいよね。本当に愛しています」という言葉で幕を開けた「アイラ・ビュー」は、ギターを背中に回したユキトモが両手を広げて愛を歌うシーンがとても美しく、「中南海」は竿隊がノリバルカンのもとに集まり音を重ねていき、4人一丸となって情景を変えていく様子が眩しい。ユキトモの内省的な要素が歌詞に綴られたオルタナナンバー「HANBUN」は途轍もない気魄で、宇宙や海といったほの暗さや感傷的な成分に溢れる。そこに迷いなどは一切なく、ただただ自分たちの音楽へとまっすぐ飛び込んで泳ぎ続けていくようだ。受け取る側のこちらが、胸がかきむしられてぼろぼろになるんじゃないかと思うほどの純度の高さ。メンバー一人ひとりの才能だけでなく、4人が作り出すヤングオオハラという生命体の底知れない潜在能力に奮い立った。
どうやら今日はメンバーもかなり緊張しているとのこと。ユキトモはステージ用の靴に履き替えることも、セットリストを持ってくることも忘れたと語るも、「それでもみんなが楽しい顔をしているとうれしいし、いい感じの空間が作れるんじゃないかな」とはにかんだ。
ユキトモとヨウヘイがゆるいトークで1本ずつツアーを振り返ったあとは、ノリが「東京寒くて風邪引いたんですが、風邪を吹き飛ばすほど熱いライブをしたいんですけどどうですか!?」と仕切り直して「新」で爽快に駆け抜ける。このままラストまで突っ切るのかと思いきや、ユキトモが「美しい」の前に口を開いた。
音楽をやっている理由は楽しいからと語る彼は、観客に向かって「自分さえ持っていればひとりでもかっこいいことはできるし、スマホがあればすぐ楽しいこともできる。でもみんなで楽しいことをやるのはすごく難しいってことを、このツアーでみんなから気付かされています」と話す。「みんなで楽しいこと、超かっこいいこと、バカやることは、こうやって俺らで顔合わせて意見が言い合える場所、パーティーができる場所があるからこそ成り立つと思っています」「みんなからいろんな気持ちと笑顔をもらって。(自分たちの音楽は)ほんっとにみんなとやりたい音楽なんだなって気付かせてもらいました」と続けると、真摯に感謝を伝えた。
「お前らがいるから、お前らとやるから音楽が楽しいよ! ずっとそういう音楽をやっていたい!」「みんなを愛してこそのロックバンド、ロックスターじゃないか!」と叫ぶ姿は、とても凛々しくて優しく、眩しい。楽器隊の3人もユキトモと気持ちを重ね、4人一丸となって音を奏でる。ラストの「キラキラ」でユキトモがギターを放り投げてシンガロングを煽ったシーンは、ツアーで得た充実の象徴的1シーンだった。
アンコールで先ほど倒したマイクスタンドを起こしたユキトモが「終わっちゃうのが寂しい」と心境を語るなかで、ヨウヘイが「お客さんとひとつになっちゃえばいいんじゃない?」と提案。それに同意したユキトモがフロアに降り、この日の幕引きを「決勝戦」に託した。楽器隊は気取らずに晴れやかな音を鳴らし、ユキトモもフロアから伸びやかなボーカルを響かせる。フロアも笑顔で4人の奏でる音に乗り、愛に溢れるラストシーンとなった。バンドが持つ信念をより強固にしたことを痛感するツアーセミファイナル。彼らの作る音楽の輪が、今後より深く、大きくなることを確信させた。
【取材・文:沖さやこ】
【撮影:知衿】
リリース情報
YOUNG☆TONE
2019年08月21日
MUNCHKeeN RECORDS
2.キラキラ
3.アイラ・ビュー
4.中南海
5.ハセスとココロ
6.TV girl
7.決勝戦
セットリスト
“OOHARA EXPRESS 2019秋”
2019.12.1@東京/渋谷STAR LOUNGE
-
Maki
- 1.春と修羅
- 2.文才の果て
- 3.ストレンジ
- 4.斜陽
- 5.白
- 6.嫌い
- 7.秋、香る
- 8.平凡の愛し方
- 9シモツキ
- 10.1997 ヤングオオハラ
- 1.サマタイ
- 2.グッドバイバイバイ
- 3.MAGIC
- 4.TV girl
- 5.ハセスとココロ
- 6.アイラ・ビュー
- 7.中南海
- 8.HANBUN
- 9.新
- 10.美しい
- 11.キラキラ
- En決勝戦
お知らせ
Awesome talks -Nice Buddy Tour 2019-
12/12(木)名古屋 CLUB QUATTRO
HEY-SMITH主催公演[HEY-Xmas 2019]
12/25(水)札幌PENNY LANE 24
Admさん魂のCOUNTDOWN LIVE 1日目
12/26(木)池袋Adm
rockin’on presents COUNTDOWN JAPAN 19/20
12/30(月)幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール
LIVE DI:GA JUDGEMENT2019
12/30(月)渋谷 CLUB QUATTRO
渋谷TAKE OFF 7
ENTH presents SLEEPWALK TOUR 2019 EXTRA SHOW
01/25(土)桜坂セントラル
teto 47都道府県ツアー「日ノ出行脚」
02/21(金)熊本 B.9 V2
03/07(土)桜坂セントラル
SIX LOUNGE TOUR 2020“THE BULB”
02/29(土)桜坂セントラル
TENJIN ONTAQ 2020
03/14(土)-15(日)福岡ライブハウス
「SANUKI ROCK COLOSSEUM 2020」-MONSTER baSH × I♥RADIO786-
03/21(土)-22(日)香川 高松
HIROSHIMA MUSIC STADIUM-ハルバン’20
03/21(土)-22(日)広島ライブハウス
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。