全公演ソールドアウト! 初ワンマンツアー初日を観た!
reGretGirl | 2019.12.29
「coming soon ツアー」の初日、渋谷CLUB QUATTROは超満員だった。バンドにとっては過去最大規模のワンマンだが、そのキャパシティに対して、この日のチケットの応募は5倍以上もあったという。メジャーデビューもしていないバンドに、その集客力は破格だ。2017年にYouTubeで公開された「ホワイトアウト」のミュージックビデオがじわじわと口コミで広がったことで、早耳のリスナーを中心に知名度を広げたreGretGirlは、現在までに『my』『take』『soon』という3枚の全国流通盤ミニアルバムをリリースしてきた。今回のツアータイトル「coming soon」は、今年9月に発表した3部作の完結編となるミニアルバム『soon』を引っさげた初のワンマンツアーという位置づけ。だが、そのツアー初日が素晴らしかったのは、このツアーが『soon』という1枚のミニアルバムを表現するだけに留まらず、その3部作を総括するような、「ライブにおける3部作の完結編」とでも呼べる内容になっていたということだ。それは、これまで「一途な失恋ソング」にこだわり続けたreGretGirlだからこその内容だった。
まだツアーは続くので、以下のテキストではできるだけ楽曲の明記を避けて、今回のツアーを通じて感じたreGretGirlというバンドの魅力を掘り下げて書いてみる。
ステージに掲げられたバックドロップには、ツアータイトルとバンド名が大きく描かれていた。定刻を過ぎた頃、平部雅洋(Vo/Gt)、十九川宗裕(Ba)、前田将司(Dr)の3人が登場。SEを掻き消すようにジャーンと楽器を鳴らし、ライブが始まった。平部の第一声にフロアからは悲鳴のような歓声が響く。それだけでバンドに寄せる期待の大きさが伝わってくる。クアトロの隅々まで響き渡る平部のハイトーンボーカル。それを支える十九川と前田によるリズム隊の演奏は、音源で聴く以上に骨太でアグレッシブだ。ステージを春らしいピンク色に包んだ「ブロッサム」、十九川の歌うようなベースラインが口火を切った「キスの味」など、最新アルバム『soon』の楽曲に加えて、reGretGirlを語るうえではハズせない過去曲を散りばめながらライブは進んだ。途中、とある曲で歌詞が飛んだ平部。歌い終えて、「歌詞は間違ったんじゃないですよ。感極まったということにしときましょう。僕らが口パクじゃないことを証明するためにやらせてもらいました(笑)」と冗談っぽく言って、会場を和ませる場面も。ちょっと毒舌気味で飾らない平部のMCも、彼らのライブの魅力のひとつだ。
「毎日会えなくとも、ボタンを押すだけで声を聞ける時代です。でも、僕には、そのボタンは恐ろしいものに変わりました」という曲紹介からつないだのは、電話での別れをテーマにした「テレフォン」だった。サウンドこそ疾走感があふれ、駆け抜けるサビはキャッチーで痛快だが、そのメロディに綴られる歌詞はどこまでも切ない。reGretGirlの曲には、そういう構成の曲が多い。代表曲「ホワイトアウト」も、「12月29日」もそうだが、そういう音と詞のギャップが、戻れない日々への後悔を切々と歌い上げる楽曲の切なさを、ぐっと加速させる。
この日のライブは曲順も秀逸だった。そもそも『my』『take』と『soon』の3部作は、平部がほぼひとりの元カノへの想いを、実体験をもとに綴ったものであり、その曲順は決して時系列に沿っていない。だからこそ「あの歌は、この歌とつながっているのかな?」と、リスナーが自由に想像する余地が残されているわけだが、この日のライブ中、何曲か時系列順に演奏するタームがあったのだ。歌で描くショートムービーとでも言おうか。ライブハウスだからスクリーンの演出はないが、そういうストーリー仕立てのライブの作り方ができるのも、その瞬間の景色や感情を鮮明に切り取り、まるでタイムカプセルに封じ込めるように描かれる、平部の、恥ずかしいほどにリアルで生々しい歌詞だからこそ。やがて新しい恋をすることで、傷は癒され、記憶は色褪せていくけれど、音楽の中に閉じ込められた想いは永遠に歌い継ぐことができる。2年前、初めてreGretGirlにインタビューしたときに、「なぜ、失恋ソングばかり書くのか?」と聞いたことがあり、それに対して、平部は「それしか歌えないから」と答えてくれたのだが、この日のライブを観ながら、平部が実体験をもとにした失恋ソングを歌うのは、忘れたくないからなのかもしれないと思ったりもした。そのときに、たしかに動いた自分の心をなかったことにしないために、ありのままに歌に刻むのかもしれない、と。
もうひとつ、この日のライブのハイライトとなったのは「おわりではじまり」だろう。未練を断ち切れない元カノと同窓会で再会したことをテーマにした曲であり、3部作の締めくくりとなるこの曲を歌うときに、平部は「失恋なんやけど、僕はこれ、前向きな曲やなと思ってて」と切り出した。「今までは、はじまりがあるから、終わりが来てしまうっていう歌をうたってきました。でも、終わりがあるから、次が始まるって、僕はこの曲で伝えたいです」。さらに、「reGretGirlは、『がんばれよ』とか、『おまえならできるよ』とか、そんなことは言いません。でも『泣きたいときは泣けよ』って言ってあげることはできます。みんなと戦う武器じゃなくて、みんなを守る盾でありたい。この手は、みんなの背中を押すんじゃなくて、隣でつなぐためにありたい」と、感極まったように声を詰まらせながら語りかけると、晴れやかに新しい旅立ちを歌うバラード曲「おわりではじまり」へとつないだ。
ライブのクライマックスにかけては、フロアが一体となるシンガロングを巻き起こし、「最高。今日のライブをずっと忘れないようにしたい!」と喜びを爆発させて、本編を終えた。さらに、アンコールでは「後ろで泣いてました(笑)」と照れたような表情を見せながら、再びステージに戻ってきたメンバー。アンコールで披露された楽曲の途中には、平部のギターの弦が切れるハプニングがあり、「最後に切れるのが平部っぽいな(笑)」と自虐気味に笑う一幕もあったが、急遽、普段はライブで使用することのないという、高校生のときに買ったギター(そのギターの裏には、若気の至りで、自転車通学のシールや、大好きなももクロのステッカーなどが所狭しと貼られていた)で演奏するというレアな展開は、この日、会場にいたお客さんだけが味わえたスペシャルなワンシーンだろう。
現在、「coming soon」ツアーは前半戦を終えて、残りは年明けからの後半戦8公演が控えている。すでに全公演ソールドアウト。思えば、ちょうど1年前、2019年の幕が開けたころ、各メディアが注目する「ブレイクしそうなバンド」に、よくreGretGirlの名前が挙がっていた。だが、きっと彼らの本当の快進撃はこれからだ。おそらく、2020年、reGretGirlの躍進はさらに加速度を上げていくだろう。3部作の完結で、「失恋以外の曲にもトライしていきたい」という平部の発言もある。
reGretGirlの「本気」はこれからだ。
【撮影:ハライタチ】
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リリース情報
soon
2019年09月25日
No Big Deal Records
02.白昼夢から覚めて
03.キスの味
04.soak
05.ブロッサム
06.テレフォン
07.おわりではじまり
お知らせ
coming soon ツアー(※終了分は割愛)
2020/01/13(月・祝) 神奈川 F.A.D YOKOHAMA
2020/01/18(土) 石川 金沢vanvan V4
2020/01/25(土) 福岡 BEAT STATION
2020/01/26(日) 広島 SECONDCRUTCH
2020/02/01(土) 北海道 札幌COLONY
2020/02/09(日) 岡山 PEPPERLAND
2020/02/11(火) 愛知 名古屋CLUB QUATTRO
2020/02/15(土) 大阪 梅田CLUB QUATTRO
※全公演SOLD OUT!!
SANUKI ROCK COLOSSEUM 2020
-MONSTER baSH × I♡RADIO 786
2020/03/21(土) 香川 高松エリア複数会場
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。