BURNOUT SYNDROMESとファンとの絆の強さが証明された「15th Anniversary Tour 2019→2020『Who am I?』」
BURNOUT SYNDROMES | 2020.01.14
「15th Anniversary Tour 2019→2020『Who am I?』」とタイトルを掲げ、全国ツアー真っ最中のBURNOUT SYNDROMESを、本番直前、記憶喪失になってしまうという最大のピンチが襲う! それは「この劇場の支配人」と名乗る謎の仮面の男、Mr. WhoがBURNOUT SYNDROMESとファンの絆がどれだけ強いものなのか確かめるために仕掛けたゲームだった。
Mr. Whoが観客に語り掛ける。
「みなさんの力で記憶を取り戻してください。今日のライブの鍵は、あなたです!」
なんとかライブが始まる直前に自分たちがBURNOUT SYNDROMESというバンドであることと、それぞれの担当楽器、そして、今まさにライブが始まろうとしていることを思い出した3人は観客のシンガロングと手拍子に導かれ、ステージに――。
演奏のみならず、バンドが直面するさまざまなピンチを切り抜けるストーリーを、毎回、映像をはじめ、さまざまな演出も交えながら楽しませるBURNOUT SYNDROMESのワンマン・ツアー。結成15周年を目前に行うバンド史上最大規模となる今回は、ストーリー仕立ての展開ももちろんだが、3人が徐々に記憶を取り戻していく過程に重ね合わせ、15年のキャリアを振り返るように選曲した新旧のレパートリーが入り混じるセットリストもまた、大きな見どころだった。
「BURNOUT SYNDROMESは、みなさんに愛されるバンドなのでしょうか?」とライブが始まる前にMr. Whoは疑問を投げかけたが、久しぶりに演奏する懐かしい曲に対する、たとえばイントロを聴いただけで客席から上がった大きな歓声が物語っていたのは、じゃあ何だったのか。「声を聞かせてくれ!」「元気ですか? 東京!」というメンバーの呼びかけに序盤からシンガロングはもちろん、レスポンスの声を上げ、手拍子や「ハイスコアガール」のお決まりの振り付けで応える観客の姿を見てもなお、Mr. Whoは「疑問です」と言えただろうか。いや、言えなかったはずだ。
アップテンポのロック・ナンバーをたたみかけ、ぐいぐいと盛り上げた序盤から、EDMと祭囃子を掛け合わせたようなサウンドがユニークな「Ms.Thunderbolt」をはじめ、彼らの持ち味の1つでもあるダンサブルな曲の数々を繋げながら、曲間では、記憶を失っているため、ふだんステージでは寡黙な熊谷和海(Vo/Gt)が急に饒舌になるなど、メンバーそれぞれにいつもとは違うキャラクターを演じる姿も楽しませる。そして、総合司会を務める石川大裕(Ba/Cho)が「次の曲は……。うーん、思い出せない」と観客に多数決(拍手の大きさ、ツイッターおよびインスタグラムへの投票数)で曲を決めさせ、巧みに観客を巻き込みながら、バンドは聴く者に勇気を与える人生讃歌の「文學少女」で会場の温度をさらに上げていく。
そして、懐かしい写真の数々を観客に見せながら、とあることをきっかけに記憶(それはこの15年、彼らがファンと作ってきた絆のことだ)を完全に取り戻し、「なんでこのステージに立っているのか全部思い出した! ここから未来を作りませんか? 高校生の時に作った大切な歌を!」となだれ込んだ「墜落/上昇」からラストスパートを掛けるようにたたみかけた終盤は、まさに圧巻の一言だった。
シアトリカルなライブは、他のバンドに差をつけるBURNOUT SYNDROMESの大きな魅力には違いない。だから、ツアーのたび、今回はどんな演出を楽しませてくれるんだろうかと期待してはいるものの、ストーリーの展開や趣向を凝らした演出が映えるのは、やはり楽曲の魅力と観客を圧倒する演奏があってこそ。前述した「文學少女」をはじめ、ここまでいくつも盛り上がりを作りながら、それらはすべてラストスパートの助走だったと思える爆発的な演奏に筆者は、改めてライブ・バンドとしてのBURNOUT SYNDROMESの底力を思い知らされたのである。
中でも圧巻は、「この曲で(みんなに)出会えた」と熊谷が言った「FLY HIGH!!」。TVアニメ『ハイキュー!! セカンドシーズン』第2クールのオープニングテーマに起用されたBURNOUT SYNDROMESのメジャー・デビュー・シングルが、実はインディーズ時代、結果を出せずに解散まで考えていた彼らが放った大逆転の1曲だったことを、この日、明かしたうえで、「僕らを愛してくれたあなたの歌です! 一緒に歌ってくれますか?」と熊谷が呼びかけ、観客がこの日一番のシンガロングで応える。そして、ツアー・タイトルに掲げている《Who am I?》という歌詞を含み、《何だってなれる》と歌うエモーショナルでアンセミックな「Good Morning World!」で、「騒げ!」「歌え!」とさらに盛り上げると、「一生忘れられない最高の日になったと思います!」と熊谷が快哉を叫ぶ。
それを受け、「いろいろな人が来てると思うけど、1つだけ共通点がある。それは全員が熊谷の作る歌が好きってこと。1曲も知らなかったって人も今回のライブで好きになってくれたんじゃないかな。そんなライブができたと思います!」と感想を述べた石川は、自分が作る歌は、みんなが歌うから完成すると熊谷がいつも言っているというエピソードを付け加えた。そして、「なんて相思相愛!(笑) この3人でBURNOUT SYNDROMESって言ってたけど、違ってた。あなたも含めBURNOUT SYNDROMESです!」と宣言し、客席を沸かせた。
アンコールを求め、観客が全員で歌う「FLY HIGH!!」は、この日、Mr. Whoが見たがっていたバンドとファンの絆の証。
「Zepp Tokyoなんて夢のまた夢と思ってたけど、15年経って、立つことができました」
廣瀬拓哉(Dr/Cho)のそんな感想から始まったアンコールは(現在もツアー中だから念のため曲名は伏せておくが)、さらに2曲を、観客と一緒に歌ったが、ここでは2019年、バンドの解散、メンバー脱退が多い1年だったと振り返った熊谷が語ったメッセージを記しておきたい。
「(BURNOUT SYNDROMESよりも)バラ色に見えるバンドでも悩みがある。そう思ったら、不謹慎かもしれないけど、気が楽になった。自分は常に現状に不満があるし、やめたいと思うこともあるけど、それはあたりまえということを教えられた気がして、救われた気がした。だから、報われないからやめたいと思ったら、今日のことを思い出してほしい。あなただけじゃない。Who am I? みんなが自分は何者なんだろうと悩んでいる。1人じゃないということを伝えたかった」
「Who am I?」というツアー・タイトルには、自分たちはなぜステージに立っているんだろうかという15周年という節目ならではの今一度の問いかけと、もう1つ、生きるうえで誰もが自らに問いかけずにいられない悩み、という2つの意味があった。その悩みを分かち合うこともまた、BURNOUT SYNDROMESとファンの絆なのだろう。そして、その問いかけは、バンドに新たな感慨をもたらしたようだ。
「15周年? 足りない。20周年、30周年、行きましょう。今日、初めて見る人けっこういるよね。どうですか? 変なバンドでしょ。それが我々3人なんです。そして、それを良しとするあなたも含めBURNOUT SYNDROMES。だから一緒に生きていこう!」
2月12日にニュー・シングル『PHOENIX』(TVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』オープニングテーマ)をリリースして、BURNOUT SYNDROMESは8月、東名阪でそれぞれ1500名限定ワンマン・ツアー「注文の多い料理店‐☆☆☆-」を開催する。
【取材・文:山口智男】
リリース情報
PHOENIX
2020年02月12日
Epic Record Japan
02. BREAK DANCER
03. ヒカリアレ -Moonlight Version-
04. PHOENIX (Instrumental)
お知らせ
BURNOUT SYNDROMES 全国ワンマンツアー15th ANNIVERSARY TOUR 2019→2020『Who am I?』
01/24(金) [福岡] BEAT STATION
01/25(土) [広島] LIVE VANQUISH
02/11(火・祝) [大阪] なんばHatch
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。