りぶ、“生きる化石”を冠したアルバムを引っ提げ今を鮮明に生き歌う様を見せつけた5年ぶりワンマン
りぶ | 2020.01.16
2ndフルアルバム『Riboot』(2014年)が、オリコンウィークリーランキングで2位にランクインし、当時ネット・動画サイトを中心に活動する歌い手として初の快挙を成し遂げたことからも、界隈では、屈指の存在であるりぶ。2015年2月にみきとPによる書き下ろし曲「アカイト」の動画を投稿して以降しばらく間が空くも、2017年10月15日にEveのオリジナル楽曲「ドラマツルギー」の歌ってみた動画を突如投稿し、再び動画投稿を再開。4年半ぶりとなる9月18日にリリースした4thアルバム『Ribing fossil』は、9月17日付のオリコンデイリーランキングで第2位にランクインし、オリコンウィークリーランキングでは第3位を獲得、自身にとって過去最高の販売枚数を記録した。その『Ribing fossil』リリースパーティーとして開催されたのが、5年ぶりとなるワンマンライブ『Rib-on“e” ~「Ribing fossil」Release Party~』だ。今回は、東京・大阪公演のうち、2020年1月4日のZepp Tokyo公演における模様をお送りする。
ステージを覆う映像が投影されていた紗幕に、文字が打ち込まれていく。“たとえいつか思い出が化石になっても りぶは歌い続ける、生き続ける”――完成した途端、天から降り注いでくるように聞こえたのは、「ただいま」(りぶ)の声。
その声に沸いた大歓声からイントロへと繋がり、振り落とされた紗幕の奥にある階段の頂上には、4thアルバム『Ribing fossil』のジャケットに描かれているりぶと同様のオレンジのアウターに身を包んだりぶの姿。夢か現か、誰もがその狭間を彷徨い始めるなかで、開口一番に「どうもみなさんこんばんは!りぶです」と発してから、ライブの幕を切ることとなった。曲はEveによる書下ろし曲「リア」。
5年ぶりのライブとは思えないバイタリティあふれる姿勢で一斉にファンを巻き込んでいく。「予習してきたか?東京。これ、5年前の曲だけど。みんなで歌ってくれよ!」と放てば、間奏で犬の名前が斉唱されるユニークな楽曲「不可侵領域デストロイヤー」、ファルセットと地声を巧みに切り替えた「シャルル」へ。「最後まで思う存分に楽しんでいってください。よろしく!」と告げると、自身でマイクスタンドを立てて、「サリシノハラ」を流麗な歌声で紡いだ。アウターを脱いだりぶは、3rdアルバム『singing Rib』に描かれたりぶと同様のカマーベストを着用していた。続けて「Princess」をムーディーに歌唱。
2014年11月8日に東京・Zepp DiverCity TOKYOで開催した、りぶの初のワンマンライブ『Rib-on"e"』から、りぶのライブをサポートしているキーボード・バンマス担当の事務員G曰く、この日のステージは、動画投稿、Twitterにおけるツイートの頻度の低下などから、化石の愛称で親しまれているりぶを想い、荒廃を表現したものになっているという。織り成すようにしてぶら下がったカーテンや、バンドメンバーの背後に鉄格子などが配置された、荒廃感の漂うステージと、これまでのアルバムジャケットの衣装を連想させるりぶの衣装が相俟って、感じ取ることができるのは、2012年9月19日にリリースした、1stアルバム『Rib on』から、4thアルバム『Ribing fossil』に対する思いの強さ。幻想的な空間の延長線上で「はぐれうた」へと向かうと、色っぽさを「乙女解剖」で魅せた。
一旦、バンドセッションを挟み、黒のジャケット姿で再度登場したりぶ。和のテイストの映える「疾走」は、みきとPによる書き下ろし曲で、りぶにとっては初となるテレビアニメ(『胡蝶綺 ~若き信長~』)のOPテーマに抜擢されたナンバー。マイクスタンドを手に取り、アコギで弾き語った場面もあった「生命の名前」には、長い間、化石化していたりぶの気持ちを綴ったようなフレーズ〈僕がいないならいないできっと別の誰かがやるでしょって/そんなこと考え中〉があるが、2015年5月23日に自身のTwitterアカウントで、〈他の歌い手さんや音楽聞きながら肩の力を抜いてテキトーに、10年とか20年に一度くらいたま~に聞いて「当時こんなん聞いてたのか私」とかでも、普通にめちゃくちゃ嬉しいよ。〉と、ツイートしていたことに通じるように、りぶは人一倍マイペースな性格なのかもしれない。だからこそ、会場に集まった多くのファンの様を新鮮に喜ぶりぶの姿が印象的な楽曲となった。
身体を左右に揺らし、会場内と気持ちを通信した「太陽系デスコ」の後は、事務員GとふたりでMCを展開。「すごいな。この景色にりぶくんいるの。5年ぶりか~」と、事務員G。そこに、りぶのスマホの電話が鳴り、一旦、ステージを事務員Gに任せ、去るりぶ。その後に再び、RIBと書かれた大きなフラッグを掲げつつ、メガフォンを手に持ってステージに登場すると、会場内が赤一色に染まる「プロパガンダ」、クラップハンズを煽る「人生は吠える」、バンドメンバーとして参加している堀江晶太がkemu名義で作った楽曲「敗北の少年」をパワフルに歌い上げる。ピアノの旋律に透明感のある声色を重ねた「夏は雨晒し」や、ピアノの音色と歌声のみで届けたシンプルな「心做し」では、飾りのない状態でも心に届く歌を紡げるポテンシャルの高さを証明していた。
「5年ぶりにこの景色を見ることができたのは、周りにいるみなさんのおかげ」と感謝を伝えてから、「本当につくづく幸せ者だなって。だってほら、2000個の顔……。すごいね。5年ぶりに見てふわふわしてる部分もあるんですけど。おかげさまでこうやって歌を歌えています」と、感慨深い表情で、隅から隅までを見渡し、5年前の自身の記録のなかの地図を上書きしていくりぶ。終盤では自身の原点ともいえる「エンヴィキャットウォーク」で場内が最高潮に達し、「ラストラスト」で本編を締めくくった。
アンコールでは会場全体から「おかえり」の声を浴びながら、アコギを抱えて1人ステージに歩いてくるりぶ。「小さな家の小さな部屋の小さな自分がアップロードした歌をどこかの誰かが聞いてくれて、そこからどんどん広がって、いまの景色になっているんだなっていうのを当たり前に思っちゃいけないなって、ずっと思っていて」「最初の聴いてくれたひとり、その次に聴いてくれたひとり……と、その一人一人が集まっていまの活動をさせていただくことができている」「応援し甲斐のないやつかもしれないですけど、本当にありがとう」。そう伝え、歌う意義を綴ったような、自身で作詞作曲を手がけた「singing」を弾き語りで一曲。そしてバンドメンバーを再び呼び込み、歌ってみた動画の投稿活動の再開を知らせることとなったEveの「ドラマツルギー」、会場内の声をひとつにした「ロキ」、自身で奏でるアコギの音色とバンドのアンサブルが美しく響いた「fossil」までを送り届ける。最後の言葉は、「またいつか必ず会おうぜ!」。深々とおじぎをしてからは、清々しい笑顔でステージから離れていった。
閉幕後、2020年5月9日・10日にパシフィコ横浜国立大ホールにて、りぶ活動10周年記念ライブ『Rib 10th Anniversary Party「MYLIST」』を開催することを告知。会場は大歓声に包まれた。“歌い続ける、生き続ける”今の姿を力強いパフォーマンスと共に見せつけたりぶ。可能性はこれからも、拡がっている。
【取材・文:小町碧音】
【撮影:中村ユタカ】
<バンドメンバー>
Gt:yu-ya (vivid undress)
Ba:堀江晶太
Pf:事務員G
Dr : ゆーまお(ヒトリエ)
Mani:akasaka
リリース情報
Ribing fossil
2019年09月18日
フライングドッグ
02.カナリユラレテル
03.シャルル
04.Princess
05.生命の名前
06.ドラマツルギー
07.疾走
08.はぐれうた
09.Focus
10.ロキ
11.夏は雨晒し
12.fossil
セットリスト
Rib-on"e"「Ribing fossil」Release Party
2020.1.4@Zepp Tokyo
- 01.リア
- 02.カナリユラレテル
- 03.不可侵領域デストロイヤー
- 04.シャルル
- 05.サリシノハラ
- 06.Princess
- 07.はぐれうた
- 08.乙女解剖
- 09.疾走
- 10.生命の名前
- 11.太陽系デスコ
- 12.Focus
- 13.プロパガンダ
- 14.人生は吠える
- 15.ロベリア / Lobelia
- 16.敗北の少年
- 17.夏は雨晒し
- 18.心做し
- 19.エンヴィキャットウォーク
- 20.ラストラスト
- 01.singing
- 02.ドラマツルギー
- 03.ロキ
- 04.fossil
お知らせ
Rib 10th Anniversary Party「MYLIST」
05/09(土)・10(日) パシフィコ横浜国立大ホール
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。