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PELICAN FANCLUB、「青」から「三原色」へ――自分たちの織り成す色を表現したコンセプチュアルなワンマンライブ

PELICAN FANCLUB | 2020.02.05

 昨年11月27日にリリースした初のシングル『三原色』をひっさげての東名阪ツアー「PELICAN FANCLUB TOUR 2020“三原色”」。シングルのタイトルにちなみ、初日・名古屋=イエロー、2日目・大阪=レッド、そしてファイナルとなる東京=ブルーと、色の三原色をサブタイトルに掲げたコンセプチュアルなライブが繰り広げられた。ここではファイナル、表参道WALL&WALLでの公演をレポートする。

 タイトルどおり、開演前の場内は青いライトで照らされ、白い壁に囲まれた会場の雰囲気とも相まって一種幻想的なムードを醸し出している。そこにシミズヒロフミ(Dr)、カミヤマリョウタツ(B)、そしてカラフルなパーカーのフードを目深にかぶったエンドウアンリ(Vo・G)がステージに登場し、青いジャケットの1stミニアルバム『ANALOG』のオープニングナンバー「凪の頃」からライブはスタートした。きらめくギターサウンドと地を這うようなベースラインが、むせ返るような青春の青さと黒さを描き出すこの曲でブルーな夜の幕を開けると、そのまま「Telepath Telepath」へ。イントロのギターリフに歓声があがり、エンドウは「東京!」と叫び一気にギアアップ。シミズの叩き出すタイトなビートがオーディエンスの高揚をさらに加速させる。さらに8ビートで疾走する「Ophelia」、メランコリックな感情をパワーコードがざくざくと切り刻んでいくようなストレートなロックナンバー「Shadow Play」と、アグレッシブな直球曲を畳み掛けていく序盤。鮮やかな照明がステージとフロアを明るく照らし出し(壁が白いので明るいのだ)、光が会場を包み込んでいくような感覚は、PELICAN FANCLUBのライブでは珍しい体験かもしれない。

「今日は青い楽曲だけを集めています。青いでしょうか?」。4曲歌い終えたエンドウがそうフロアに語りかける。寂しさ、焦り、幼さ、鋭さ、冷たさ、緊張、不安、みずみずしさ……「青」という色が内包するイメージには多様なものがあるが、実際、この日のPFCはそのすべてを体現するような楽曲を次々と鳴らしていった。立て続けに演奏された「許されない冗談」と「説明」では、ノイジーなサウンドと攻撃的な歌詞とエンドウのシャウトで空気をがらりと変えてみせ、かと思えば優しいメロディとハーモニーがノスタルジーを喚起する「クラヴィコードを弾く婦人」では一転して朝の光に包まれるような感覚にさらされる。まるであらゆる感情のあいだを揺れ動くようにして展開するライブは、まさにPFCがたどってきた軌跡そのもののようだ。

 新曲の披露をはさみ、『三原色』からの「Dayload_Run_Letter」。近くの誰かに話しかけるようなエンドウの歌が徐々に熱を上げ、サビで力強いメッセージに変貌する。「赤」が周りを巻き込む爆発の色、「黄」が激しく放たれる光の色だとするなら、「青」は内面の色、心の奥で静かに燃える小さな炎の色だ。「誰にも読まれない手紙」というモチーフが登場するこの曲は、その意味でとても「青い」楽曲だ。リヴァーブの効いたスネアと粒立つギターが雨上がりの風景を描き出す「to her」もそう。照明演出によって、エンドウの心象風景が鮮やかに立ち上がってくる。

 壮大なスケールで展開した「花束」を歌い終えると、エンドウはこの曲を歌いながら「泣きそうになった」と語り始める。感情の高ぶりを吐露し、そういうときは素数を考えるのだと独特の対処法を開陳してみせる。「泣きそうなときって3ぐらいで終わりますね」。そんな話を聞きながら、前にインタビューで自分たちの作品に対する愛を語っていたエンドウの姿を思い出した。おそらく彼にとって、過去の曲だろうが最新曲だろうが、そこには120%自分の感情が乗り移っているのだろう。そしてその感情が、ライブで演奏するたびにまざまざと甦ってくる。だからこそ、PFCのライブはいつでも生々しく、鮮やかで、ヒリついている……本質的にブルーなのだ。

「それはさておき、青いですか? だんだん熱くなってます?」――そんなフロアへの問いかけと、「付いてきて! PELICAN FANCLUBに!」という力強い言葉から突入した終盤戦。それまでの空気を入れ替えるようにして鳴らされた「SF Fiction」「ノン・メリー」を経て、本編最後に鳴らされたのは今ツアーのテーマソングである「三原色」だった。PELICAN FANCLUBの今を音的にも言葉的にも最大レベルで詰め込んだ情報量の多い楽曲。サビではフロアのいたるところで拳が突き上げられ、巨大なユニティが生み出された。

 アンコールでは珍しくグッズ紹介(というよりグッズ自慢)をし、もうひとつの新曲を披露。5月に控えるリキッドルームでの「DX ONEMAN LIVE“NEW TYPE”」のアナウンスをし、最後は「記憶について」を演奏。文字通りPFCの過去と今をつなぐこの曲の「過去も未来も頭の中/自分は今しか生きていない」という歌詞が、彼らの変わらない情熱そのものとして鳴り響いた。

【取材・文:小川智宏】
【撮影:Mitsuru Takada】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル PELICAN FANCLUB

リリース情報

三原色

三原色

2019年11月27日

Ki/oon Music

01.三原色
02.Dayload_Run_Letter
03.記憶について(2019)

セットリスト

PELICAN FANCLUB TOUR 2020
“三原色”-ブルー-
2020.1.23@表参道 WALL&WALL

  1. 1.凪の頃
  2. 2.Telepath Telepath
  3. 3.Ophelia
  4. 4.Shadow Play
  5. 5.許されない冗談
  6. 6.説明
  7. 7.クラヴィコードを弾く婦人
  8. 8.Heaven or poolland
  9. 9.新曲
  10. 10.Dayload_Run_Letter
  11. 11.to her
  12. 12.花束
  13. 13.SF Fiction
  14. 14.ノン・メリー
  15. 15.三原色
  16. 【ENCORE】
  17. 16.新曲
  18. 17.記憶について

お知らせ

■ライブ情報

PELICAN FANCLUB DX ONEMAN LIVE “NEW TYPE"
05/16(土)LIQUIDROOM
松尾企画PRESENTS"agora"
02/21(金)WWW

ササクレクト × WOMB LIVE~THREEMAN~
02/25(火)WOMBLIVE

HAPPY JACK 2020
03/14(土)熊本ライブハウス一帯

ONTAQ 2020
03/15(日)福岡ライブハウス一帯

FACE IT!!
03/17(火)小倉・FUSE

HIROSHIMA MUSIC STADIUM-ハルバン’20-
03/21(土) / 22(日)広島ライブハウス複数会場

SANUKI ROCK
03/21(土) / 22(日)高松ライブハウス一帯

I ROCKS 2020 stand by LACCO TOWER
04/11(土)群馬音楽センター

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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