SHE’S、初のリクエストライブでレア曲披露。原点回帰とさらなる飛躍へ
SHE’S | 2020.02.06
SHE’Sのファンクラブイベント第2弾「SHE“Zoo”サファリvol.2」の東京公演(2020年1月29日/渋谷WWW)。ファン投票をもとにした“リクエストLIVE”を中心としたこのイベントでSHE’Sは、ふだんはあまり披露されないレアな楽曲を次々と演奏。初期の楽曲を軸にしながら、自らの奥深い音楽性をアピールしてみせた。
イベントは1stミニアルバム『WHO IS SHE?』(2014年)収録の「Voice」からスタート。切なくも美しい鍵盤のフレーズ、エモーショナルなバンドサウンド、そして、“また会えるならば この声を聞いてよ”というフレーズが響き渡る。さらに洗練された旋律と切ない別れのシーンを描いた歌詞が一つになった「Leave Me」、ヘビィな音像と憂いを帯びたメロディを軸にした「彼方」へ。冒頭の3曲はいずれもミニアルバム『WHO IS SHE?』の楽曲。初期の楽曲に対するファンの愛着が感じられるラインナップだが、「この頃から、こんなにクオリティの高い楽曲を生み出していたのか」と改めて驚かされる。ピアノエモ、UKギターロックなどから受けた影響をもとにしながら、表情豊かなバンドサウンドともに日本語のポップミュージックに昇華する彼らのスタイルは、活動が本格化した6年間からしっかりと確立されていたのだ。
「はじめてのリクエストライブということで、のっけから“おまえら、何年前にタイムスリップしてるねん?”という曲もありますけど、楽しんでもらえたらと思います」(井上)というMC、SHE’Sのポップサイドが前面に押し出された「日曜日の観覧車」を挟んで披露されたバラードナンバーも強く心に残った。以前には確かにあったはずの幸せの風景、それを失ってしまった切なさを綴った「幸せ」、“離れ離れになっても、どこかで繋がっている感覚を忘れられない”という感情を描いた「2人」。この2曲はファン投票の上位にランクイン。アッパーチューンで盛り上げるだけではなく、オーセンティックなロックバラードで観客を惹きつけることができるのもSHE’Sの大きな魅力だろう。
メンバーそれぞれの優れたプレイヤビリティを実感できたのは、「ワンシーン」だった。「普段やってない曲を多くリクエストしてもらっていて、それがすごく嬉しかったです」「作った当時とまったく同じ気持ちでは歌えないけど」という井上の言葉に導かれたこの曲は、木村雅人(Dr)のカウントから始まるアッパーチューン。心地よいグルーヴを描き出す木村のドラム、シンプルなラインで楽曲のボトムを支える広瀬臣吾(Ba)のベース、アグレッシブにしてエモーショナルの服部栞汰(Gt)のギター、そして、キャッチ―な旋律を放つ井上の鍵盤。4人の個性的なプレイを至近距離で体感できたことも、今回のイベントの大きな収穫だったと思う。
井上が愛犬のために書いたという「C.K.C.S.」からライブは後半へ。ブラックミュージックのテイストを含んだアンサンブル、ポップに解放されたメロディラインが広がり、観客も気持ちよさそうに身体を揺らし始める。ハンドマイクでフロアを煽る井上も、この貴重なイベントを思い切り楽しんでいるようだった。
さらに「この先もずっとずっと、いろんな景色を見てみたいと思ってます」(井上)という言葉に導かれた「遠くまで」では、オーディエンスの手拍子とサビの大合唱によって強い一体感が生み出される。ラストは「Curtain Call」。井上がギターを弾くこの曲は、UKロックの色合いが強く反映されたミディアムチューン。井上のメロディメイカーとしてのセンス、しっかりと歌を支えるアレンジメント、感情豊かなギターソロなど、SHE’Sの音楽的な魅力がダイレクトに感じられる名曲だ。最後の“ストーリーはずっと続いてくよ”からは、原点回帰とも言えるこのイベントを経て、さらに先へと進もうとうする4人の意志が真っ直ぐに伝わってきた。
第2部はトークセッション。ファン投票に対する感想と質問コーナー(「オリンピックに出場するなら、どの競技がいい?」「大阪でおすすめの場所は?」など)でフレンドリーなやり取りを行い、イベントは終了した。
さらにこの日、2020年5月13日にニューアルバム『Tragicomedy』をリリースすることを発表。本作には2019年12月に発売された5thシングル『Tricolor EP』収録曲の「Masquerade」「Letter」「Your Song」、トオミヨウ氏をプロデューサーに迎えた、ドラマ特区『ホームルーム』オープニング主題歌「Unforgive」、島田昌典氏をプロデューサーに迎えた、第92回センバツ MBS公式テーマソング「Higher」、アルバム表題曲「Tragicomedy」など全13曲を収録予定。“悲喜劇”というタイトルを冠した本作について井上は、「真っ直ぐに生きて真っ直ぐに泣き笑うあなたの傍で、あなたの為だけに生き続ける音楽をここに残した。」とコメント。この日のイベントと同じように、リスナーに寄り添い、鼓舞し、ともに人生を歩めるような楽曲がたっぷりと収められている。3月14日からは、全国ツアー「SHE‘s Tour 2020 ~reboot~」がスタート。ここから始まるSHE’Sのさらなる飛躍をぜひ共有してほしいと思う。
【取材・文:森朋之】
【撮影:MASANORI FUJIKAWA】
リリース情報
Tragicomedy
2020年05月13日
ユニバーサルミュージック
Unforgive(ドラマ特区「ホームルーム」オープニング主題歌)
Higher(第92回センバツ MBS公式テーマソング)、Tragicomedyほか全13曲
※価格/形態/収録詳細は後日発表
セットリスト
SHE“Zoo”サファリvol.2
2020.1.29@渋谷WWW
- 1.Voice
- 2.Leave Me
- 3.彼方
- 4.日曜日の観覧車
- 5.幸せ
- 6.2人
- 7.ワンシーン
- 8.C.K.C.S.
- 9.遠くまで
- 10.Curtain Call
お知らせ
SHE’S Tour 2020 ~reboot~
03/14(土)大阪・Zepp Namba
03/15(日)香川・高松DIME
03/22(日)北海道・札幌cube garden
03/28(土)福岡・DRUM LOGOS
03/29(日)広島・CLUB QUATTRO
04/10(金)長野・松本ALECX
04/18(土)宮城・仙台Rensa
04/19(日)新潟・NIIGATA LOTS
04/28(火)愛知・Zepp Nagoya
WOMCADOLE「旗鼓堂堂ツアー」
02/08(土) HEAVEN’S ROCK Utsunomiya 2/3(VJ-4)
02/09(日) 水戸LIGHT HOUSE
SIX LOUNGE TOUR 2019“THE BULB”
02/18(火) F.A.D YOKOHAMA
I ROCKS 2020 stand by LACCO TOWER
04/11(土) 群馬音楽センター
METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2020
05/24(日) 新木場・若洲公園
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。