パノラマパナマタウン「やっぱここしかねーな」――全力で出し切り、一回り大きくなって帰ってくることを誓った一夜
パノラマパナマタウン | 2020.02.06
真っ赤な照明で染まったステージに、やる気満々の様子で飛び込んできた浪越康平(Gt)、タノ アキヒコ(Ba)、田村夢希(Dr)。続いて、悠然と歩いて登場した岩渕想太(Vo・Gt)を出迎えた拍手と歓声がすさまじい。そして、「Dive to Mars」の演奏が始まった瞬間、恵比寿リキッドルームのフロアは、熱いダンス空間と化した。エネルギッシュに躍動するバンドサウンド、ビートを巧みに乗りこなしながら届けられる歌とラップ、ステージから押し寄せるあらゆる波動が、観客のアドレナリンを徹底的に絞り上げているのを、まざまざと感じた。続いて、ファンキーに刻まれるビートが、観客を無我夢中で踊らせていた「世界最後になる歌は」。激しいコール&レスポンスを皮切りに突入して、いつしか軽快な手拍子に彩られた「マジカルケミカル」。荒野をひた走る戦車のような逞しいエネルギーの塊となった「ずっとマイペース」。メンバー各々が歌声を響かせる場面も交えつつ盛り上げた「寝正月」。とことん濃密なグルーヴを醸し出していた「目立ちたくないMIND」。骨太なサウンドをじっくり轟かせた「SHINKAICHI」……強力極まりないナンバーが一気に連発された序盤であった。
「いろんな意味がある日なんですけど。ツアーファイナルっていうのもあるし、ライブ活動を休止する直前のライブでもあります。悔いを残したくない。“もう当分ライブしたくないな”っていうくらい歌いきって、ライブをやりきって帰りたいと思ってます。みんなも“ちょっと行儀よくしちゃったな”みたいなことがないように、お互いに気持ちの一番深いところが出し合えるようなそんなライブにしたいなと思ってるので」と、中盤のMCで語っていた岩渕。彼が発症した喉のポリープの治療に伴い、パノパナは、この公演後、しばらくの間、ライブ活動を休止する。非常に大きい決断だったはずだが、「歌えなくなるって知ってから歌うことの楽しさとか、気づけてることがいっぱいあって。歌が楽しいし、演奏が楽しいし」と言っていた岩渕も含めて、前向きな様子だったメンバーたちの姿が、頼もしかった。そんな中、「Chopstick Bad!!!」と「月の裏側」を経て披露された3曲は、グッときたひと時として思い出される。エネルギッシュなサウンドをたくさん届けてくれるパノラマパナマタウンだが、彼らの音楽の核には、常にロマンチックで抒情的な何かが渦巻いている。哀愁のメロディをじっくりと高鳴らせながら、岩渕の地元である北九州のシャッター商店街の風景を浮き彫りにした「真夜中の虹」。穏やかなメロディから愛情が滲み出ていた「パン屋の帰り」。力強く展開するほどにノスタルジックなムードも漂わせていた「エイリアン」……歌われる言葉、奏でられる音のひとつひとつが、豊かなイメージを喚起してくれる場面が続いた。
終盤のMCで、岩渕は今回のツアーのことを振り返った。声が思うように出ない日や、思い悩んだ日々もあったが、各地でファンが待っていたことに、とても救われたのだという。「ライブの時は何も考えずに自分を発散することができるし、言いたいこと言えるし、歌いたいこと歌える。だからライブが好きだなと思うし、“ここしかない。一番だな”って思います。ちょっとの間休むけど、絶対にすぐ帰ってくるので。“ここが絶対に俺の居場所だから”って思ってるから」と語った後、《やっぱここしかねーな》と生々しい心情を吐露しながらラップした岩渕。そして雪崩れ込んだ「リバティーリバティー」は、飛び跳ねながら踊る観客のエネルギーが、フロアを心地よく揺さぶっていた。そして、「めちゃめちゃ生きてる」「MOMO」「フカンショウ」……全力全開で放たれ続けたサウンドによって、ますます桁外れの熱気で包まれていった恵比寿リキッドルーム。「上手くいかないこと、ちっぽけな悩みごと、いろいろあるけど、生きてこうぜ。どこまでも!」という言葉が添えられた「GINGAKEI」は、パノパナの4人と観客が音を介して心を通わせ合っているのを感じる清々しい1曲であった。
アンコールで、まず届けられたのは、パノパナが最初に作った曲「ロールプレイング」。彼らの原点を受け止めながら、感無量の様子で手拍子していた観客の熱気がものすごかった。続いて、岩渕がシャープに刻んだギターが先陣を切った「俺ism」。言葉をとことん溢れ返らせながら歌う岩渕、音を交し合う喜びを全身から放っていた浪越、タノ、田村の姿は、実に美しいアンサンブルを構築していた。そして、「本当にありがとうございました。また帰ってきます。1月19日、恵比寿リキッドルームに集まったみなさん、いい趣味してるね」と岩渕が言い、ラストは「いい趣味してるね」が締め括った。ステージから押し寄せた爆音に刺激されて、興奮をとことん露わにしていた観客。ライブ活動休止前の1曲として、この上なく熱くて美しい空間が作り上げられていた。
「また連絡するぜ。ありがとう!」と観客に呼びかけた岩渕。そして、ステージを後にしたメンバーたち。しかし、拍手と歓声は全く収まる気配がなく、岩渕が戻ってきた。「もう曲がないの(笑)。ありがとう、ほんとに。“まじか、このバンド!?”っていうくらいかっこよくなって帰ってきたいと思ってるので。帰りたくないなあ。最高だったよな? これからもパノラマパナマタウンをよろしくお願いします。いい酒飲んでください。ありがとうございました!」。彼を包んだ大きな歓声が、明るいムードに満ち溢れていたのが印象深い。賑やかな観客の様子は、メンバーにとって非常に心強いものだったのではないだろうか。ライブをしばらくの間観られないのは寂しいが、我々の前に戻ってきた時、パノパナは一回り大きくなった姿を示してくれるに違いない。
【取材・文:田中 大】
【撮影:nishinaga "saicho” isao、上原 俊】
リリース情報
GINGAKEI
2019年11月13日
A-Sketch
02.目立ちたくないMIND
03.ずっとマイペース
04.Chopstick Bad!!!
05.HEAT ADDICTION 〜灼熱中毒〜
06.エイリアン
07.GINGAKEI
セットリスト
銀河探索TOUR 2019-2020
2020.1.19@恵比寿LIQUIDROOM
- 1. Dive to Mars
- 2. 世界最後になる歌は
- 3. マジカルケミカル
- 4. ずっとマイペース
- 5. パノラマパナマタウンのテーマ
- 6. 寝正月
- 7. 目立ちたくないMIND
- 8. SHINKAICHI
- 9. Chopstick Bad!!!
- 10. 月の裏側
- 11. 真夜中の虹
- 12. パン屋の帰り
- 13. エイリアン
- 14. リバティーリバティー
- 15. めちゃめちゃ生きてる
- 16. MOMO
- 17. フカンショウ
- 18. GINGAKEI 【ENCORE】
- EN1. ロールプレイング
- EN2. 俺ism
- EN3. いい趣味してるね