ジェニーハイ初のライブツアー“ジェニーハイ ONEMAN TOUR 2020『みんなのジェニー』”ファイナル!
ジェニーハイ | 2020.02.21
ジェニーハイの初のライブツアー“ジェニーハイONEMAN TOUR 2020『みんなのジェニー』”のファイナル、東京・Zepp DiverCity Tokyo公演。2019年11月にリリースされた1stフルアルバム「ジェニーハイストーリー」を携えた今回のツアーで5人は、先鋭的にしてポップなバンドサウンド、メンバー個々のスキルとセンスを活かしたステージング、エンターテインメント性に溢れた演出など、唯一無二としか言いようがない創造性を見せつけた。
最初に登場したのは、“オープニング漫才”の天竺鼠。シュールな漫才とミニコント(おしゃれな服屋さんのタチの悪いお客さんと店員のコント、笑いました)でしっかり笑いを取った後、「“ジェニー”を観客全員がコールし、“ハイ”を最前列の男性客が一人で叫ぶ」というコール&レスポンスから、ジェニーハイのライブに突入。エレクトロ系のトラックが響くなか、ステージに組まれた2段セットの上部から川谷絵音(Produce&G)が登場し、<俺が川谷絵音だ/語れない相いれない人間だ>というフレーズからメンバー紹介ソング「ジェニーハイのテーマ」へ。ガッキーこと新垣隆(Key)、野性爆弾のくっきー!(Ba)、中嶋イッキュウ(Vo/tricot)、小藪千豊(Dr)がマイクリレーし、続いて「愛しのジェニー」を披露。煌びやかにしてドープなトラック、揃いの振り付け、<不埒なあの子も才能の前に背筋ピン>というキャッチーなフレーズが響き、観客も楽しそうに身体を揺らし、手を挙げる。冒頭からバンドの枠を超えたステージが続き、ジェニーハイのライブでしか味わえない楽しさにつながる。
ここからはバンド・セット。「ジェニーハイです! 今日ファイナルです、準備はいいですか? 最後まで楽しんでいきましょう」(イッキュウ)という挨拶から、まずは「ランデブーに逃避行」。鋭利なギターフレーズ、起伏に富んだメロディライン、多彩なリズムが一つになり、ジェニーハイならではの音楽の世界が広がる。さらに強靭にしてアグレッシブなベースラインとクラシカルな鍵盤の旋律、そして、“痩せたいのにどうしてもタピオカがやめられない”という歌詞が混ざり合う「ダイエッター典子」、「強がりと弱虫」を披露。“スリリングでポップで面白い”というありえないハイブリッド感が炸裂する。
“全員が主人公”なステージングも、このバンドの魅力だ。複雑にして多様なリズムを正確に描き出す小藪のドラム、足腰の強さと繊細な表現力を併せ持ったくっきー!のベース、凄まじい技量の高さで緻密な旋律を弾きまくる新垣の鍵盤、そして、トリッキーかつキャッチーなフレーズを響かせる川谷のギター。“川谷によるエゲつないまでに秀逸なアレンジを、個性豊かなミュージシャンたちが演奏する”ということがジェニーハイの本質なのだと改めて実感させられた。前衛的と言いたくなるようなアンサンブルをナチュラルに乗りこなし、複雑なメロディを軽やかに歌うイッキュウのボーカルも素晴らしい。
本物のヘチマをバズーカで客席に放った「ヘチマラップ」、EDM経由のダンストラックと切なくもロマンティックなリリックが溶け合う「バレンタイン泥棒」というラップ・ナンバーの後は、“即興曲作りのコーナー”。天竺鼠の仕切りで観客からお題を募り、ジェニーハイがセッションで曲を作るというコーナーだ。川谷がギターでコードを循環させ、小藪とくっきー!がリズムを作り、新垣がフレーズを加え、イッキュウがその場で思い付いた歌を乗せるのだが、それがいちいちカッコいい。“最後にくっきー!が河内音頭風の語りを始めて曲を台無しにする”というオチも含めて、高度なミュージシャンシップとお笑い的な要素が共存するステージだった。言うまでもなく、こんなことができるバンドはジェニーハイだけだ。
やる気なし、だるさとつらさを抱えて日々を送る女子を描いた「グータラ節」からライブは後半へ。洗練の極みと称すべき鍵盤のフレーズからはじまり、シャープなバンドサウンド、“とんでもない恋”をテーマにした歌詞が一つになった「シャミナミ」、憂いを帯びたボーカルがゆったりと広がる「プリマドンナ」、そして、東京の夜景を映し出す映像と淡々としたリズム、儚さをたっぷり含んだメロディが心に残った「東京は雨」。バンド形式の楽曲はほとんど演出もなく、シンプルに演奏を届けるスタイル。緻密なコード構成、独創的なリズムアレンジ、繊細なボーカルライン、イメージ重視の歌詞を含め、すべての要素がしっかりと研ぎ澄まされたジェニーハイの楽曲は、“ただ演奏するだけ”でとんでもなく興味深く、刺激的だった。
ライブ終盤では、いくつかのサプライズが用意されていた。まずは新曲「良いんだって」。楽器を持たないラップスタイルの楽曲だが、低音の響きを活かしたトラック、重層的なハーモニーを取り入れたラップなど、新しいファクターもたっぷり。新曲を通して、“この先のジェニーハイ”を感じられたのも、今回のツアーの収穫だったと思う。
さらに「ジェニーハイラプソディー」を挟み、「不便な可愛げ feat.アイナ・ジ・エンド(BiSH)」。イッキュウが「ゲストの方を連れてきます」とアイナの写真を貼ったボードを持ってくると、後方から「ちょっと待って!」とアイナ本人が登場。生コラボレーションが実現した。凛としたイッキュウの歌声、ハスキーな声質から繰り出される感情豊かなアイナのボーカルのコントラストは、この日のライブの大きな見どころ。「リハーサルで観ていて、“こんなにカッコいいんだ”と思って、緊張しちゃって。でも、ライブが始まると、皆さん、いつもの通りおもしろくて。こんなバンドは他にいないですよね」というアイナのコメントも印象的だった。
バンドの原点とも言える「片目で異常に恋してる」で本編は終了。アンコールに応えて再び登場したメンバーとアイナはグッズ紹介を行い(くっきー!もTシャツのデザインに参加しているという)、新曲のラップ・ナンバー「ジェニーハイボックス」、そして叙情的なウェディングソング「まるで幸せ」をじっくりと演奏し、ライブはエンディングを迎えた。
MCのなかでイッキュウは「新曲もやれたし、またCDなんかも出ると思います。これからもジェニーハイをよろしくお願いします」と語った。テレビ番組の企画モノとしてはじまったジェニーハイは、1stアルバム「ジェニーハイストーリー」と今回のツアーによって、自らのアイデンティティを確立したと言っていい。今後の活動にも当然、大いに注目したいと思う。
【取材・文:森朋之】
【撮影:鳥居洋介】
リリース情報
ジェニーハイストーリー
2019年11月27日
ワーナーミュージック・ジャパン / unBORDE
02.ダイエッター典子
03.不便な可愛げ feat アイナ・ジ・エンド (BiSH)
04.ジェニーハイラプソディー
05.プリマドンナ
06.ヘチマラップ
07.グータラ節
08.愛しのジェニー
09.バレンタイン泥棒
10.まるで幸せ
セットリスト
ジェニーハイ ONEMAN TOUR 2020「みんなのジェニー」
2020.2.18@Zepp Divercity Tokyo
- オープニング漫才(天竺鼠)
- 1.ジェニーハイのテーマ
- 2.愛しのジェニー
- 3.ランデブーに逃避行
- 4.ダイエッター典子
- 5.強がりと弱虫
- 6.ヘチマラップ
- 7.バレンタイン泥棒
- 〜即興曲作りコーナー〜
- 8.グータラ節
- 9.シャミナミ
- 10.プリマドンナ
- 11.東京は雨
- 12.良いんだって(新曲)
- 13.ジェニーハイラプソディー
- 14.不便な可愛げ
- 15.片目で異常に恋してる
- En.ジェニーハイボックス(新曲)
- En.まるで幸せ