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バレンタインに恵比寿で一番モテたTENDOUJI「TOUR PINEAPPLE final!」レポート

TENDOUJI | 2020.02.25

 バレンタインデーの夜7時。恵比寿の駅ビルで高級チョコレートを買い求める人の波を突っ切って、リキッドルームに急ぐ。すると、入場の列の先に大きなポスターが。近づくとロングツアーの先々で増えていった寄せ書きで、空いたスペースがないほどだ。メンバーの顔に落書きもされている。でも、その隣のプレゼントボックスにはきれいにラッピングされたチョコレートと思しきものも。今のTENDOUJIは、いろんなリスナーから愛されている。

 前回、ワンマンを見たのが約1年前のWWW Xなので、ツアー・ファイナルでリキッドをSoldoutするということは、順調にファンを拡大してきたと言えるのだけど、ノリは前方で血気盛んな野郎どもがモッシュしたり、特段ファストなナンバーでなくてもサーフィングしたり、後方では体を揺らしたり、じっくり見ている人もいて、自由なムードのまま規模が拡大しているという理想的な状況に見えた。

 今回は、各地を巡ってきたライブ映像がオープニングに投影されたのだが、どれもがバンドマンの日常で、ステージ上、楽屋、移動、打ち上げetc……に笑いが満ちている。遅れてきた青春にも見えるし、日本なのに日本じゃないようなフリーキーさも窺える。あくまでもバンドとファン主導。そのムードが、ロックバンドのライブに行かないような人の足も運ばせているんだろう。

 オープナーから最強の人気曲「Kids in the Dark」を投下し、フロアから湯気が立ちそうな盛り上がり。その反応に表情が緩みっぱなしのアサノケンジ(Gt,Vo)を見てこっちも表情が緩む。相変わらず、もぎたて新鮮野菜もしくはボリューム勝負のステーキみたいな演奏が痛快だが、オオイナオユキ(Dr)のバスドラや、ヨシダタカマサ(Ba)のローはキャパに合わせてよく出ている。隙間だらけの音像だが、出るところが出ているおかげで会場全体に最初からグルーヴが生まれた感じだ。シンガロングできる「Killing Heads」、ビーチ・ボーイズとポストパンクが出会ったような「Space weekend」、4分キックがグッとタイトになった印象の「NINJA BOX」と立て続けにプレイ。モリタナオヒコ(Gt,Vo)のハウりがちなリッケンバッカーの素の音は相変わらずワイルドだし、アサノのオブリもいい意味でルーズだ。このかっちりかっちりしないノリとファニーでスウィートなメロディが合わさると、別にどんな楽しみ方でもいっか、という気分になる。

 野郎がメンバーの名前を叫ぶ中、「バレンタインに恵比寿で一番モテるとは思わなかった」とアサノが自虐混じりに話し、ヨシダが真面目に「歌っても踊ってもいいし、自分のスペースで楽しんでください」とキャラのコントラストを見せた後は、聴かせるナンバーが続く。切なくも美しいアルペジオのイントロが印象的な「Something」、シンディ・ローパーのカバー「Time After time」はロネッツを想起させるリズムやリバーブたっぷりのギターがいい。あれほど弾けていたフロアが水を打ったように静かに聴き入るのも納得の名曲の畳み掛け。

 ゆったり乗れる「LIFE-SIZE」や、一気に空気感が夏になる「Get Up!!」、ヨシダのぶっといベースラインから始まるロカビリー調の「Magic Hour」は最近のナンバーの進化ぶりを表すように転調やテンポチェンジを盛り込んで、1曲の濃さを楽しめる。アウトロに向かってファンが上げる“Hey!”の掛け声も愉快そうだ。一転、モーターヘッドをダルにしたようなワイルドなAメロがかっこいい「D.T.A.」。サビに向けてポップに開放されてくコントラストも明快になってきた印象を受けた。さらに、ロックンロールの王道的な循環コードとループするリフに勝手に身体が反応する「Peace Bomb」。ラフなようでいて、モリタとアサノの異なる個性のリフやオブリ、ミュートカッティングなどが厚みのあるグルーヴを生み出す。楽譜に起こせないようなギタリストの個性と、ポップな曲構造のバランスがたまらない。別に新しい発明じゃないけれど、今、日本でほとんど生で体感できないロックンロールなのだ。この曲終わりでドラがステージに運び込まれ、映像作家の元(もと)がこれを叩くことに。GoProでフロアからステージを撮影していた彼は、メンバーより目立つキャラの持ち主で、まるで5人目のメンバーのよう。彼が思い切りドラを叩きまくってスタートした「COCO」の豪快なチャイニーズなフレーズが相当ばかばかしい。そのフレーズを生かしたAメロのキラキラしたニュアンス、サビ前のシンガロングの大きさ、さらにキャッチーになったサビに、座ってメモを取っていても首だけは自然と振ってしまう。ステージ上は、撮影を続ける元も混ざってカオスな様相を呈し、最後には元がフロアにダイブしていた。

 ちなみにTENDOUJIのライブはスマホでの動画や写真撮影はOK。ヨシダが開放しているアカウントに投稿できるので、臨場感のある動画がガンガンに送られてくるという。オールタイムOKと言われると、逆にここぞという時に撮りたくなるわけで、オーディエンスも能動的に参加することになるというわけだ。

 さらにこの日の夜から配信スタートした新曲「HEARTBEAT」も披露。初お目見えにも関わらず、曲のポイントを掴んで盛り上がるフロアの頼もしいこと。イントロのムーグ音を同期で流したり、新しい試みもある曲だが、劇画チックなTENDOUJIに似合うサウンドは今後のナンバーでもアリなんじゃないかと思う。一気にフロアが沸騰した後にはリラックスした仲間感が醸し出される「HAPPY MAN」をプレイ。次の曲のイントロを奏でながら、モリタが「5~6年前、ライブのやり方も分からずに、平日の客のいないライブハウスでやってた俺らを、誰かが誰かにいいって言ってくれて、また誰かがいいって伝えてくれた」、その結果が今だと、確信と同時にミラクルを感じているような口ぶりで話す。輝ける日をただ待ってはいられなかった普通の男たち。これほど自分たちと地続きのロックバンドっているだろうか?と思う。そんな始まりの日々を描いた「THE DAY」で締めくくった本編は、飄々と、でも熱くバンドを転がすTENDOUJIらしい歓喜に満ちていた。

 アンコール1曲目には、遅れてきた青春だろうが、失われないギターポップのきらめきは誰にも奪えないとばかりの「GOLD」に、フロアも自らを投影する。何を目指すわけでもないけれど、いつまでもこうして自由に遊んでいられる場所が少しずつ大きくなっていくことに何か言いたいとばかりに、再びモリタは「こんな、28歳で仕事辞めて組んだバンドなんて、はっきり言ってキ●ガイですよ。越えられない壁があることもわかってる。でも、こんなバンドが好きだっていうお客さんも変人ですよ」と一気に言うと、フロアは大歓声。「死ぬまで俺は何が起こるかわからないと思ってます」というトドメの一言で、さらに大いなる同意が巻き起こる。ハンドマイクで「GROUPEEEEE」を歌い、ダイブを決めた彼をはじめ、このツアーを走りきった4人の表情は清々しかった。

 恒例企画、「MAKE!TAG!NIGHT!!!」の大阪、東京ライブも発表。「負けたくない」今回の対バン相手はこれまで以上に発表されたら誰もが驚くはずだと自信満々に言い放っていた彼ら。これまで同企画で曽我部恵一BAND、teto、Tempalay、POLYSICS、崎山蒼志と多彩なゲストを迎えてきただけに、次回も予想を裏切るゲストに期待したい。

【取材・文:石角友香】
【PHOTO by MOTO】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル TENDOUJI

リリース情報

配信シングル「HEARTBEAT」

配信シングル「HEARTBEAT」

2020年02月14日

TENDOUJI

1. HEARTBEAT

セットリスト

TENDOUJI TOUR PINEAPPLE 2019-2020
《ONEMAN 2020》final
2020.02.14@恵比寿 LIQUIDROOM

  1. 1.Kids in the Dark
  2. 2.Killing Heads
  3. 3.Space weekend
  4. 4.NINJA BOX
  5. 5.Something
  6. 6.Time After Time
  7. 7.Salv.
  8. 8.June song
  9. 9.LIFE-SIZE
  10. 10.Get Up!!
  11. 11.Magic Hour
  12. 12.D.T.A.
  13. 13.Peace Bomb
  14. 14.COCO
  15. 15.HEARTBEAT
  16. 16.HAPPY MAN3
  17. 17.THE DAY
  18. 【ENCORE】
  19. en1. GOLD
  20. en2. Mayonnaise
  21. en3. Skippy
  22. en4. GROUPEEEEE
  23. 【W ENCORE】
  24. Wen. Orangejuice

お知らせ

■ライブ情報

TENDOUJI Presents “MAKE!TAG!NIGHT!!! vol.4″
07/05(日)shibuya TSUTAYA O-EAST
07/17(金)umeda CLUB QUATTRO
SCOOBIE DO TOUR「Have A Nice 25周年! Season1」Young Bloods vol.14
03/07(土)新代田 FEVER

BAYSIDE STOMPER vol.5
03/13(金)横浜Bay Hall

DENIMS presents東名阪 Split 2man tour「wish you were here」
03/14(土)梅田 Shangri-La
03/19(木)代官山 UNIT
03/20(金)名古屋 CLUB UPSET

環七フィーバーズ Vol.2
03/21(土)新代田 FEVER

ネバヤンのギャー!!ツアー EXTRA SHOW
03/29(日)渋谷 WWW X

SYNCHRONICITY2020 - 15th Anniversary!! -
04/05(日)渋谷9ライブハウス

RADIO BERRY haruberrylive2020
04/10(金)HEAVEN’S ROCK宇都宮VJ-2

Craftrock Circuit’20
04/19(日)吉祥寺7ライブハウス&1屋外会場

OUR FAVORITE THINGS 2020
06/07(日)各務原 河川環境楽園

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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