go!go!vanillas「誰かのためじゃなく自分たちのために」――東京タワーから届けた高密度の配信ライブ
go!go!vanillas | 2020.06.17
「STARTING OVER - Live at 東京タワー」と名付けられた今回の配信ライブ。本来であればツアー初日となるはずだったこの6月13日に、約4ヵ月ぶりに集結したメンバー4人が生パフォーマンスを届けるというスペシャルな企画。しかも場所は、タイトルにあるとおり東京のランドマークである東京タワーだ。
暗い画面に4人の声が聞こえてきたかと思うと、いつものSEが鳴り響き、いつもの楽器がセットされたステージが映る。1曲目はメンバーによるハーモニーから始まった「おはようカルチャー」。これまで何度もバンドや僕たちの背中を押してきた曲が晴れやかに鳴り響くと、「今日は日頃溜まった鬱憤をみんなで叫ぼうぜ!」と牧達弥(Vo/Gt)はカメラに向かって語りかける。ジェットセイヤ(Dr)の革ジャンのペイントも長谷川プリティ敬祐(Ba)の笑顔も、画面越しにくっきりはっきり見える。牧がハンドマイクでカメラにかぶりつくようにして歌う「チェンジユアワールド」、軽快なファンクネスを響かせた「サイシンサイコウ」(柳沢進太郎(Gt)のスライドギターも手元までばっちり見える!)、早くも汗だくの柳沢がセクシーなボーカルを披露する「ワットウィーラブ」……ライブハウスでの最前列並み、いやそれ以上の近さと迫力でバニラズのロックンロールが押し寄せてきて、いつのまにかモニターの前で体が動き、歌を口ずさんでいる自分に気づく。
マージービート風のリズムと繊細なギターアンサンブル(このへんのディティールがしっかり聴けるのも配信ライブのいいところ)が気持ちいい「No No No」では牧、プリティ、柳沢の美しい3声ハーモニーが放たれる。「俺のあとに続いて歌ってくれ」と牧。きっとみんな、画面の前で声を上げていたことだろう。当然、リアルなライブのような直接のコミュニケーションはないし、みんなの歓声も拍手もないけれど、そのぶん牧は何度も何度もカメラに近づき、覗き込むようにしてこちらを見つめて語りかけてくる。それはきっと、このシチュエーションに対する彼なりの落とし前であり、闘い方なのだろうと思った。
「僕は大分出身で、東京といったら東京タワーというベタな人間なんだけど」とこの場所を選んだ理由を話す牧。ツアーができないことを悔しがりながらも「逆転の発想をすれば、スタジオコーストにはフィジカル的に行けないじゃん、全国の人は。でも今日は世界、いや宇宙からも俺たちのライブ見れるわけじゃん!」と明るく言い放つ様子が頼もしい。「夏にやるの2年ぶりなんだけどさ、こんなに汗かくのかって(笑)」と昨年秋に怪我の療養から復帰したプリティが笑う。「みんなの日常に活気が出るように。俺たちと一緒にピクニックしようぜ」と鳴らされた「ナイトピクニック」を経て「雑食」へ。ムーディで大人っぽいグルーブが、背景の東京タワーにぴったりハマって、まるでミュージックビデオのようだ。
「大分にいたときは、こんなに長く東京にいて、全国で音楽を鳴らすとは思ってもみませんでした。いろんな場所に行って音を鳴らすことがこんなに尊いものだとは、こういう状況にならなければわからなかった。僕たちは音楽を止めずに、どんな形でもみんなに届けられるように。その決意として、久々にこの歌を歌います」。牧のそんな言葉に続いてセイヤのマーチングドラムから始まったのは「オリエント」。照明を落とし、東京タワーを背負って歌われた<僕を駆り立てるここは東京/湧き出る言霊に身を任せ/これからも生きていくと決めた>という歌詞が、新たな意志の道標となって輝く。
「ライクアマウンテン」を高らかに鳴らしてMCへ。牧は「ここから時代も変わるし、バンドもここから闘っていく上でいろんな形を取り込んでやっていかないと時代に呑まれてしまう。悩みつつバンドを成長させていこうかなって思います」と言いながら、「やっぱり、寂しいね」と本音を漏らす。セイヤは「気持ちいいー!!」と絶叫して、「突き破りたい、この天井を!」とテンションを爆発させる。柳沢は「あの真っ赤な色ががんばれって言っているようで。お客さんがいないと多少シュンとするかなと思ったら全然そんなことなくて」とこのライブの手応えを語る。プリティはなんと今日初めて東京タワーに来たそうだ。そんなMCから、セイヤのカウントで「No.999」をスタート。どん底から這い上がる気持ちを歌うこの曲もまた、今違う意味合いを持って熱く燃えている。機関銃のようなセイヤのスネア、柳沢のファルセットとキレのあるギターソロ。復帰以降、曲をしっかり支える重みが増したように思えるプリティのベース。今のバニラズの全身全霊が、ますますライブの温度を上げていく。
柳沢とプリティによるコール&レスポンスから「カウンターアクション」「平成ペイン」とキラーチューンを連打すると、いよいよライブは終盤に。「みんなが苦しかったり困ったときに、『バニラズ観てえなあ』って思えるバンドになれるように、誰かのためじゃなく自分たちのためにやっていこうと思います」。そんな“宣言”から鳴らされたのは、バニラズの歩みと牧の今の思いをすべて注ぎ込んだ運命の1曲「パラノーマルワンダーワールド」。ここからさらに進んでいく決意、闘っていく覚悟。それが優しく明るい音とメロディに乗って、東京タワーのふもとから世界に向けて放たれる。ライブで聴くたびに泣きそうになるこの曲は、この日もやっぱり感動的だった。そして最後の曲は、最新シングルであり新たなスタートの曲「アメイジングレース」。メンバー全員笑顔で歌われる<僕らの未来に賭けてみよう>というフレーズが、バニラズと、それをこうして観ている僕たちの約束のように聴こえてきた。
いつもとは明らかに違う、それこそライブハウスで観るのとはまったく違うバニラズ。でも音楽に乗せた思いと熱量は、確かにいつものバニラズのライブのそれだった。いや、これまで観てきたバニラズよりも、ぎゅっと密度の高まった、タフなバンドになっている印象すら受けた。4人でリスタートを切ってまだ半年あまり。本来なら全国で最強のバニラズを轟かせていたところだが、それを目撃する楽しみは、少し先に取っておこうと思う。
【撮影:西槇太一】
リリース情報
アメイジングレース
2020年06月03日
ビクターエンタテインメント
02.TTNoW
03.ノットアローン
セットリスト
STARTING OVER - Live at 東京タワー
2020.06.13
- 01.おはようカルチャー
- 02.チェンジユアワールド
- 03.サイシンサイコウ
- 04.ワットウィーラブ
- 05.NO NO NO
- 06.ナイトピクニック
- 07.雑食
- 08.オリエント
- 09.Hey My Bro.
- 10.ライクアマウンテン
- 11.No.999
- 12.カウンターアクション
- 13.平成ペイン
- 14.パラノーマルワンダーワールド
- 15.アメイジングレース
お知らせ
ROAD TO AMAZING BUDOKAN TOUR 2020
2020/11/07(土)愛知 愛知県芸術劇場 大ホール
2020/11/13(金)福岡 福岡サンパレス ホテル&ホール
2020/11/15(日)兵庫 神戸国際会館 こくさいホール
2020/11/23(月・祝)東京 日本武道館
2021/01/14(木)北海道 札幌 PENNY LANE24 ※振替公演
2021/01/15(金)北海道 旭川 CASINO DRIVE ※振替公演
2021/01/17(日)北海道 帯広 MEGA STONE ※振替公演
2021/01/19(火)北海道 函館 club COCOA ※振替公演
2021/01/26(火)東京 新木場 STUDIO COAST ※振替公演
2021/01/28(木)大阪 なんば Hatch ※振替公演
2021/01/29(金)愛知 名古屋 DIAMOND HALL ※振替公演
go!go!vanillas presents
READY STEADY go!go! vol.07
~しゃあしい音でしんけん騒ぐで凱旋ワンマン!!~
2020/12/20(日)大分 iichikoグランシアタ ※振替公演
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。