さくらしめじ、配信ライブでも全力で楽しんだ6周年の「しめたん」
さくらしめじ | 2020.06.22
6月14日。毎年さくらしめじの結成記念日となるこの日に開催されてきた恒例のライブ「しめたん~さくらしめじが生まれた日」が、今年は新型コロナウイルス感染防止対策のため、無観客の有料配信ライブとして実施された。会場は、本来ならば「しめたん~さくらしめじが生まれた日~ 18KIN!?それってなにキン!?」と題した公演が行われるはずだった渋谷duo MUSIC EXCHANGE。公式コメントとしても発表されていたが、「たくさんの行事をやむをえず中止してきたけれど、もう黙ってはいられない」ということで、タイトルも『「しめたん」6周年スペシャル!~6(む)言のままじゃいられない!!~』とし、同会場での配信ライブを決行。この日を待ちわびていた2人の思いが溢れ出すとともに、音楽に対する愛とパワーが終始爆発しているようなステージが90分間に渡って繰り広げられた。
「遂にこの日がやって来ました! 6月14日、僕達さくらしめじ6周年でーす! イエーイ!」
開演時刻の18時になると、田中雅功と髙田彪我の2人がマイクを持って登場。2人で一緒に画面に映るのは久しぶりということだが、その口ぶりからも、今日の日を迎えた嬉しさや喜びは画面を見ているこちら側にも充分に伝わってくるほどだ。タブレットでみんなからのコメントを追いつつ、今年も日付が変わった瞬間からSNSにお祝いのコメントがたくさん寄せられていることへの感謝などを興奮気味に伝える2人。その後も、外出自粛期間中の様子やほぼ毎日更新されていたカバー動画への反響など「ソーシャル的なディスタンス」(彪我)を保ちながらのトークが続き、「この期間で、やれることの幅がすごく広がった。さくらしめじは進化したんです!」と雅功。そして「みんなに届けたい思いや曲がたくさんある。みんなの期待をどんどん上回っていきたい」と、意気込みを語ってくれた。
<これは、遠い遠い森の中にある国のお話……>
そんなナレーションとともに始まったのは、「さがしもの、ひとつ」という紙芝居。きつねくんの体の中から抜け出してしまった“ふわふわ”を探しに、友達のねこくんと旅に出かけるお話だ。実はこれ、雅功が原案を手がけたもので、作画はさくらしめじのアートワークを手がけるフクモトエミによるもの。この日のライブは、この紙芝居のストーリーとリンクさせながら進んでいったのだが、いったいこの“ふわふわ”の正体とは……? 最初に見つけた“黄色のふわふわ”を食べたきつねくんに、笑顔が戻った。「……甘くて、美味しい!!」。どうやらこれは、喜怒哀楽といった感情のひとつひとつ、つまり“心”そのものを取り戻していく物語のようだ。
「画面の向こうのみんな! 距離なんか関係ない! みんなで今日は一緒に楽しもうぜー!」(雅功)
アコースティックギターをかき鳴らし、体中で喜びを表現しながら1曲目の「スタートダッシュ」が始まった。2人の間には透明のアクリル板(丸くてとても可愛い仕様!)があるものの、双方が発するエネルギーはとっくにその垣根を越えてしまっている。一気に高まったテンションは途切れることなく、高揚感と疾走感たっぷりの「先に言うね」へ。力強さで牽引していく雅功と、オチサビなどで見せる彪我の優しい歌声のメリハリも抜群で、2人それぞれの魅力もしっかりとアピールされている。
きつねくんが次に見つけたのは、“赤く光るふわふわ”。触れると、「うわ! アツい!!」。これは怒りや苛立ちといった、押さえきれない感情だろうか。ステージの2人はアコギからエレキへとギターを持ち替え、ヘヴィかつファンキーなロックチューン「でぃすとーしょん」でムードを一転させる。真っ赤な照明のもとでマイクに向かい、見下ろすような視線を向ける雅功。あらわになった心情と真正面から向き合っているような感覚にさせられる、スリリングなカメラワークも最高だ。続く「たけのこミサイル」は、この日ライブ初披露の1曲。作詞作曲を手がけた彪我は、荒々しい感情をのせたボーカルとテクニカルなギターソロを炸裂させながら、「画面の向こうのキミ! その思いを叫べー!」と煽っている。こんなロックな一面ももはや等身大であることが証明された、痛快な2曲だった。
森の中を進んで行くと、今度は季節外れの雪の中で積もっていた“青いふわふわ”を見つけたきつねくん。「うわ、冷たい……」。彪我のひとり語りから始まったこのゾーンでは郷愁や一抹の哀しみといった感情にフォーカスし、「夕空小道」を披露。心の奥にある景色を思い返すように丁寧に言葉を紡いでいく彪我のボーカルと、そこにそっと寄り添うような雅功のギターとコーラスが印象的だった。エモーショナルな余韻の中、聞こえて来たのは「なんだか涙が止まらないよ」と言うきつねくんの呟き。少しずつ感情を取り戻して来たきつねくんと、その変化を優しく見守るねこくんはやがて1本の大きな桜の樹を見つける。「うわぁ、きれいだ」。桜の花びらに混じって舞う“ピンクのふわふわ”のように、今度はステージがきれいな桜色に包まれた。「さあみんなで一緒に、レッツ『しめじ体操』!」。ここからはギターを置き、全身で音楽の楽しさを満喫する時間だ。踊り続けてすっかり汗だくになった2人は、続く「Bun! Bun! BuuuN!」でさらなる盛り上がりに突入。タオルを振り回したり、ステージに寝転がったり、カメラに突進したりでテンション高く暴れまくり、ソーシャル的なディスタンスもお構いなしのパフォーマンスでライブを楽しんでいた。
喜怒哀楽、4つの感情を取り戻してすっかり楽しい気分になったきつねくんだったが、スキップで進んで行った森の中で見つけた“紫のふわふわ”は、大きな沼の向こう。悩んだ末に、ねこくんと手を取り合い泥だらけになって沼の中を進んで行く。ステージでは雅功が、ひとり静かに語り始めた。「疑問に対する答えを見つけることは前に進む原動力になるけど、その疑問が自分に向いた時、人は途端に足を止める。なぜ自分はこうなんだ、なぜあんなことをしてしまったんだ。だけど自信を持って立ち止まろう。次に待っているのは、大きな一歩だから」。そんな、後悔から前を向こうとする気持ちを歌う「届けそこねたラブソング」は、2人が大好きだというコレサワが書き下ろした名曲だ。2本のアコギと2人の歌が、なんとも切なく甘酸っぱい響きを奏でていた。
ライブも、物語も、いよいよ最終幕に近づいて来た。すっかり暗くなった森の中できつねくんは“真っ白いふわふわ”と出会い、それが真っ白な自分自身だと気付く。先の見えない状況が続いて来たが、希望の光は今ちゃんと自分の中にある――。そんな思いを込めて披露された「会いに行こう」は、雅功と彪我が自粛期間中にそれぞれ自宅からインスタライブのコラボ配信をして制作した新曲。お互いの存在を思い合い、応援してくれるファンと会える日を思う気持ちをダイレクトに歌ったこの曲は、きっと双方にとっての宝物のような1曲になったに違いない。最終曲「風とあるがままに今を歩こう」でもそうだったが、この日はとにかく2人が何度も何度も顔を見合わせながら歌う姿が印象的だった。「まだまだここからだけど、中途半端な僕らだけど、大丈夫。怖くなんかない!」――そんな、この先へと向かう力強い気持ちを音楽で確認し合いながら、ファンへの愛と感謝を込めた笑顔を幾度となくカメラに向ける2人がいた。
アンコールの声(コメント)に応え、再び現れた2人が立っていたのはなんとステージではなくフロア。本当だったらきのこりあん(さくらしめじのファンの呼称)のみなさんがいるはずだった場所で、「えそらごと」と「みちくさこうしんきょく」を歌い上げた。ステージと客席という境界線を超え、2人を隔てていたアクリル板もはずし、画面の向こうのみんなと見事なコール&レスポンスまでやってのけたさくらしめじ。雅功は途中のMCで「正直言うと、めちゃめちゃ悔しいし残念な気持ちはすごく大きい。でも、だからこそ気付けた部分もあるし、手に入れたものもすごく大きいなと思った」と言っていたが、この経験は何倍もの糧となって2人を成長させるに違いないだろう。
「みなさんとこんなに楽しく、今日という日を過ごせてすごく嬉しいです!」(彪我)
「さくらしめじはまだまだ終わりません! 6周年は始まったばかり。これからもさくらしめじと一緒に日々を楽しんでいきましょう!」(雅功)
記念すべき1日のライブを、全力で楽しみ全力で届けた2人。最後の最後に見せた、ちょっとだけ名残惜しそうな、だけどなんとも晴れやかな笑顔が心地よい余韻を残すエンディングとなった。
【撮影:鈴木友莉】
リリース情報
会いに行こう(お家ver.)
2020年05月05日
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セットリスト
さくらしめじ結成記念配信ライブ
「しめたん」6周年スペシャル!
~6(む)言のままじゃいられない!!~
2020.06.14
- 01.スタートダッシュ
- 02.先に言うね
- 03.でぃすとーしょん
- 04.たけのこミサイル
- 05.夕空小道
- 06.しめじ体操
- 07.Bun!Bun!BuuuN!
- 08.届けそこねたラブソング
- 09.会いに行こう
- 10.風とあるがままに今を歩こう
- EN1.えそらごと
- EN2.みちくさこうしんきょく