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ゴスペラーズ、諦めずに踏み出す最初の1歩となった生配信ライブ

ゴスペラーズ | 2020.07.10

 7月5日、日曜日。
 ゴスペラーズが、グループ初となる生配信ライブ「ゴスペラーズ LIVE “#ライブハウスからハーモニーを”」を開催した。当日の模様は、3つのライブ配信メディアから同時配信された。

 本来であれば、7月5日は、彼らのメジャーデビュー25周年を記念する全都道府県ツアー「ゴスペラーズ坂ツアー2019~2020 “G25”」の最終日。昨年の12月21日、デビュー記念日からスタートした本ツアーは、グループにとって4度目の全都道府県ツアーとなる予定だった。しかし2月下旬以降、コロナ渦で中断。全56公演中19公演を開催した後、最終的には20公演目以降をすべて中止するという苦渋の決断を余儀なくされた。
 そんな中でのライブ生配信。当日、配信中にはTwitterトレンドにもランクインし、いかに多くの人が“この日”を待っていたかが窺えるリアクションがあった。

 筆者もリアルタイムでこの配信を鑑賞。画面越しからの当日の模様をレポートする。

 20時過ぎ。画面にゴスペラーズ25周年のロゴが浮かび上がる。5人の声で最初に放たれたのは「NEVER STOP」。アップテンポのアカペラ曲。5人の姿が画面に浮かび上がる。スツールに腰かけ、力強く、丁寧に歌を紡いでいく。

 1曲目が終わったところで「皆さん、こんばんは。ゴスペラーズです」と挨拶。それぞれが自己紹介した後、最後は村上てつやがこう締め括った。
「どんな場所で観ていたとしても、どのデバイスで観ているとしても、最前列のど真ん中。最高の席で、それぞれの場所から楽しんでいただけたらと思います。最後までよろしくお願いします」

 続いて披露されたのは、25周年記念シングル「VOXers」。前述した「ゴスペラーズ坂ツアー2019~2020 “G25”」では、オープニングを飾っていたアップチューンのアカペラ曲だ。今回のライブ生配信では、バンドの生ドラムと共に歌った。メンバーそれぞれの音が、非常にクリアに聴こえてくる。CDではわからない、生のライブでは拾い切れない、この曲のコーラスワークの複雑さに改めて驚く。と同時に、村上が言った“誰もが最前列”に加え、この“一音一音が良く分かる”というのもライブ生配信の醍醐味ではないかと思った。「VOXers」は彼らの楽曲の中でも、5本指に入る複雑なコーラスワークと、スリリングな曲調が特徴。ゆえに、再現するときはいつでも緊張感があり、そこがこの曲の迫力に繋がっていたが、この日は、いつも以上に鬼気迫る迫力があった。おそらく「歌を届けたい。画面越しに、気持ちを届けたい」というメンバーの思いが、強く現れた結果だと思う。画面越しに観ていても、ビリビリと痺れるような感覚があった。彼らの気持ちが迫力となって、突き刺さって来た。

 バンドと共に高速ハイパーチューン「いろは 2010」を見事に決めた後は、「風をつかまえて」、「永遠(とわ)に」と、ゆったりした曲が続く。イントロはバンドと一緒に、Aメロの歌い出しは歌とサックスのみ……と、滅多にないアレンジで聴かせた「永遠(とわ)に」に、配信中の画面のコメント欄には「生で会場にいるより近くにいる感じ」や「染みる。染みすぎる」、「泣いちゃいそう」という言葉が並んだ。

 6曲目「東京スヰート」。スイートでソウルフルなバラードだ。ファンの人気も高い1曲だが、この数年は、ほとんどセットリストに入っておらず、久々に披露された形だ。誰もいない客席。そのテーブルの上のキャンドルが、ゆらゆらと揺れている。エンディング直前。村上がアドリブで歌詞を変えて歌った。
 ♪ 画面越しでもあなたに……歌いかけていたいから……今夜はまだ眠れそうにない…… ♪

 MCへ。口火を切ったのは安岡 優。4月中旬から毎週土曜日にTwitterで生配信していたゴスペラーズによるトーク番組「#おうちからハーモニーを」のことに触れた後、安岡はこう感想を述べた。「やっとライブハウス。今まで我々5人も画面越しでしかお互いの顔は見えていなかった。5人で集まった空気感はなかったからね。久々に5人集まって、その空気感を感じられたことが嬉しい」
 話は前述した「#おうちからハーモニーを」の思い出を中心に展開。「いろいろ面白かった。25年間で体験できなかった笑いもあった」という、このTwitter生配信では、毎週、ワンコーラスだけアカペラで歌うという“一節ハーモニー”というコーナーがあった。その中で歌われた曲の中から、「Moon glows(on you)」と「Love me! Love me!」の2曲をフルコーラスで披露した。

 村上がマイクをとる。
「ここからは後半戦。ちょっと思い出に残ることをやってみましょう。我々と画面越しの皆さんで、魂のコールアンドレスポンスをやりましょう!」
 この言葉から、「愛の歌」が始まり、曲中ではなりきりゴスペラーズへ展開。
 本物のライブでは、会場をコーラスパートで何分割かし、一斉に観客をハモらせるコーナーである。観客が目の前にいないと成立しないこの“なりきり”を、エアーで入れ込んでくるとは。この常識を覆すアイデアに、ゴスペラーズのステージ(=ライブ)への執念、さらには、“なるべくいつものライブを届けたい”という、ファンへの優しさが見て取れた。
 エアーなりきりで歌われた「愛の歌」。会場全体が曲に合わせて大きく右手を振るシーンでは、画面のコメント欄が、手の絵文字で埋め尽くされた。画面の向こうから、ゴスペラーズの意地に応え、エアーなりきり最高の思い出にしたこの日の視聴者にも、素直に大きな拍手を送りたい。

 10曲目「It’s Alright ~君といるだけで~」の後、村上が再びマイクをとった。
「この自粛期間、コンサートが出来なかったこの時期……信じて待つという当たり前の言葉が、こんなに身に染みて応えた期間は、これまで無かったと思います。今は離れ離れになっていますが、こういう(=生配信)ライブが出来たことは、大きな前進なんじゃないかと思っています。また、皆さんの住んでいる町に、音楽を届けに行けることを信じて、この曲を届けます」

この言葉を受け、包容力あるピュアで優しいバラード「まっすぐな橋」へ。続いて「約束の季節」。2曲歌い終え、「本当にありがとうございます」と言った村上が、メンバーに向かいこんな言葉を投げかけた。「今日、このライブをやれたことは、一生忘れない、ってことだよな」。メンバー全員が、繰り返し、深く頷く。そしてそれぞれの挨拶へ。「隣をみると、パッと4人が見える。そえが幸せでした。てっちゃんも言ってたんですけど、一生(今日のライブのことを)忘れないと思います」と北山陽一。酒井雄二は、ステージセットとして各メンバーの隣に設置されていたフラワーアレンジメントに触れ、自分用のアレンジメントに使われていた猫じゃらしをふわふわ揺らしながら「“約束の季節”歌っている時に揺らそうかと思ったけど(笑)」と、笑顔を見せた。「途中からだんだん、お客さんの顔がおぼろげに見えるような気持ちになりました。万全の形で、また皆さんにお見せしたいなと思います」と言ったのは黒沢 薫。安岡は「(全国ツアーの)最終日の変わりというよりも、今日から新たな旅が始まった、その初日。この旅がどこへ向かうのか、今はまだわからないけど。失った昨日のために今日があるのではなく、これからの明日のために今日があるんだと思って、やっていきたいと思います」とまとめた。最後は村上。この日の撮影クルー、会場となったライブハウスのスタッフ、また配信を請け負った3会社に改めて御礼を述べた後、こう続けた。
「ベストじゃないけど、ベターに少しでも近づいていこう……それを模索する時期だったと思います。それでも、音楽で繋がっている皆さんがいるんだと。画面越しだけど、繋がっていくということを信じて、これからもゴスペラーズ坂を上っていきます。皆さん、よろしければ、これからもお付き合いください」

 最後に歌われたのは「星屑の街」。「どうもありがとう! ゴスペラーズでした。また会いましょう!」という言葉を残して、5人はステージを後にした。

 新たな最初の1歩は刻まれた。今後のライブの予定も発表になっている。しかしながら、次の1歩がどうなるのか、現状では誰もわからない。村上の言った模索は、きっとまだしばらく続くだろう。そんな中でも、ゴスペラーズは“音楽という絆を信じる”と言い“また会いましょう”と約束をした。
 ゴスペラーズは諦めない。なぜなら、諦めずに、幾度となく新しいことにチャレンジし続けて来たからこそ、ヒット曲が生まれ、今がある……それを1番知っているのが彼ら自身だからだ。
 だから、ゴスペラーズは、絶対に諦めない。
また会いましょう――この約束を、満員の観客の前で果たす日が来るまで。約束の季節が訪れる、その日まで。

【取材・文:伊藤亜希】

tag一覧 男性ボーカル ゴスペラーズ J-POP 配信ライブ

リリース情報

THE GOSPELLERS CLIPS 2015-2019

THE GOSPELLERS CLIPS 2015-2019

2020年07月29日

Ki/oon Music

01.Dream Girl
02.GOSWING
03.Recycle Love
04.Fly me to the disco ball
05.angel tree
06.ヒカリ
07.In This Room
08.HITORI
09.VOXers

[特典映像]
01.ヒカリ -Rec Making ver.-
02.まっすぐな橋 -Movie Edit Ver.-
03.私がゴスペラーズじゃなかったら ~酒井雄二 編~
04.私がゴスペラーズじゃなかったら ~黒沢 薫 編~
05.私がゴスペラーズじゃなかったら ~村上てつや 編~
06.私がゴスペラーズじゃなかったら ~北山陽一 編~
07. 私がゴスペラーズじゃなかったら ~安岡 優 編~

セットリスト

ゴスペラーズ LIVE
“ライブハウスからハーモニーを”
2020.07.05

  1. 01.NEVER STOP
  2. 02.VOXers
  3. 03.いろは 2010
  4. 04.風をつかまえて
  5. 05.永遠(とわ)に
  6. 06.東京スヰート
  7. 07.Moon glows(on you)
  8. 08.Love me! Love me!
  9. 09.愛の歌
  10. 10.It’s Alright ~君といるだけで~
  11. 11.まっすぐな橋
  12. 12.約束の季節
  13. 13.星屑の街

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