BLUE ENCOUNT、確かな希望を抱き続けるために――生配信ライブ「STAY HOPE」
BLUE ENCOUNT | 2020.07.16
「俺たちは、この4人は、本当にライブが好きです。生の現場で、一人一人にメッセージを発信するのが、好きなバンドです」。ライブハウスのステージ上で、田邊駿一(Vo/Gt)はそう告げた。ツアー日程の延期といったコロナ禍の問題を掻い潜る一方、「ハミングバード」や「あなたへ」といった配信シングルのリリースを経てきたBLUE ENCOUNTが、初めて行った生配信ライブ「STAY HOPE」。ただ熱く盛り上がり、楽しむばかりではない。ライブ・エンターテインメントが置かれた今日のシビアな現実と真っ向から向き合い、これからの姿勢を表明する。そういう意味で、確かな希望を抱き続けるためのステージであった。LINE LIVEを通じて、無料で配信されたライブの模様を、振り返ってみたい。
TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』オープニングテーマとして人気を博してきた「ポラリス」で始まった今回のステージは、2曲目「Survivor」で世界中の人々が命を脅かされる今このときのためのメッセージを掴まえる。田邊は<生きて生きて生きて>という節回しに力を込め、江口雄也(Gt)は燃え盛るようなギターワークでその思いを後押ししていた。挨拶を交え、「メンバー久しぶり! 今日も来てくれてありがとう!」と早速冗談めかしたり、視聴者コメントをリアルタイムで確認するためのiPadが見当たらない、と慌てたり。「最初はね、生配信に乗り気じゃなかったんだけど、我慢できなくなりました!」と歯に衣着せず打ち明ける田邊は、多くの人々の協力を得て配信ライブが実現したことに、率直な感謝の思いを告げるのだった。
その感謝の念を更に燃え上がらせる「THANKS」は、高村佳秀(Dr)の叩き出す推進力が強烈で、「今日はここに来てくれてありがとな!!」というリアルライブ並の距離感でメッセージが投げかけられる。歓喜のギターを弾き倒す江口は満面の笑顔だ。「#YOLO」のイントロで熱量高くハンドクラップを誘う辻村勇太(Ba)も、いつものライブさながら。悶々、鬱々とした気分を跳ね除けるサウンドとアクションで駆け抜け、高村はビートを刻みながらマイクでもリスナーを煽り立てる。ミニアルバム『SICK(S)』から続けざまに放たれる「幻聴」では、ゴリゴリのサウンドに田邊のファルセットを絡めた情感の強い歌声が伝い、4人がひとつの生き物のように大きな抑揚を描いていった。生のバンド表現として、素晴らしいパフォーマンスだ。「まだまだ見つからないけど! 絶対に答えは、いつか見つけられると思います! 一緒に探しに行きましょう!!」と、混乱の日々に向けて投げかけられる「ANSWER」では、メンバーを背後から照らす照明にも負けないほど、サウンドそのものがまばゆく煌き、温かなメッセージを運ぶ。
「めちゃくちゃ贅沢な時間を過ごさせて貰ってます……ブランク、だごできゃあ!!」と思わず故郷・熊本の方言で零した田邊だが、その言葉は「とても大きい」という意味らしい。メンバーが思い思いに視聴者のコメントを読んで談笑したり、今回のライブに向けて特別に製作されたTシャツを紹介したりしながら、田邊は今日のライブ・エンターテインメントが受ける風当たりの強さについて語り出した。脅威となるのは、理不尽に襲いくる病魔だけではない。人々が日々募らせた不満や不安もまた、ライブ・エンターテインメントへの理解を遠ざけてしまう。「だったら、今日はチャンスです。全国で、何万人もの人が観ています。俺たちから、歩み寄りましょう」。田邊はそう語り、ライブ・エンターテインメントに向けられる敵意に対しても、敵意で返してはならない、と呼びかけるのだった。
「曖昧だらけの世界で、踊り回ろうぜ!!」と歌詞を引用しながら切り出された「バッドパラドックス」では、辻村のベースが激しくうねる豪腕グルーヴで、ネガティブな感情ごと笑顔で踊るためのサウンドが放たれる。さらに畳み掛けられるアクロバティックな4ピースサウンド「VS」は、長く続くコロナ禍との格闘の中で、何度でも闘争心を燃え上がらせる不屈のアンセムとして鳴り響いていた。各地からステージを見つめるファンたちも、ライブの一体感を生み出すかのように、動画のコメント欄には無数の<やっちゃって!>の歌詞が溢れるのだった。美しい光景だ。
「もっと光を」の歌い出しを伸びやかに響かせた後、田邊は「ひとつだけ言わせてください。何日経とうと、何ヵ月経とうと、ライブハウスで鳴らす音は正義でした」と言葉を添え、<これから誰かが抱きしめるよ>という歌詞を「これからもライブハウスが抱きしめるよ」と変えて歌う。江口はカメラにマイクを向け、辻村が「ご唱和くださーい!!」と呼びかけると、今度は「もっと光をー!」というワードがコメント欄を埋め尽くしていった。形は違えど、紛れもなくシンガロングが止まらないBLUE ENCOUNTのライブである。
「思っている何倍も楽しかったです。でも、物足りないですね。全然足りない……あなたに会いたいです」。田邊はそう告げて、困難の中にもライブ・エンターテインメントの文化を守ろうとする人がたくさんいることを語る。「どんどん、会えない時間が増えるよ。雨だの、感染者だの……。とにかく今は、命を守ることを考えてください」。そこには、大雨によって大きな被害がもたらされた故郷・熊本に寄せる思いもあっただろう。そして濃密な全10曲の最後に披露されたのは、ライブハウスに約束を刻みつけるような「だいじょうぶ」だ。病魔や災害や悪意が絶え間なく降り注ぐ世界で、それでも肯定をもたらしてくれるシェルターのような場所。それこそが、ライブハウスという場所に他ならない。今回の「だいじょうぶ」は、そんなふうに聴こえていた。全10曲1本勝負、完全燃焼のステージであった。
さてその直後「重大発表」と記された映像が流れ出す。ワゴンに乗り込んだメンバー4人が到着したのは、横浜アリーナだ。ここで建物壁面の巨大LEDスクリーンを用い発表されたのは、2021年4月18日、横浜アリーナワンマン決定というビッグニュースであった。また、映画『青くて痛くて脆い』の主題歌に決定していた新曲「ユメミグサ」が、2020年9月2日にシングルリリースされることも発表。ステージに再登場して盛り上がるメンバーだったが、田邊によれば「カップリング曲、めっちゃかっこいいです」とのことなので、そちらもぜひ楽しみにしたい。丸裸の感情を音に乗せ、そしてまた新たな一歩を踏み出す。インターネット回線越しにも熱が伝わるほどに、BLUE ENCOUNTはBLUE ENCOUNTのままだ。
【撮影:浜野カズシ】
リリース情報
ユメミグサ
2020年09月02日
Ki/oon Music
02.1%
03.ポラリス(TOUR2019「B.E. with YOU」@Zepp Tokyo2019.11.21)
セットリスト
BLUE ENCOUNT「STAY HOPE」
2020.07.10
- 01.ポラリス
- 02.Survivor
- 03.THANKS
- 04.#YOLO
- 05.幻聴
- 06.ANSWER
- 07.バッドパラドックス
- 08.VS
- 09.もっと光を
- 10.だいじょうぶ
お知らせ
BLUE ENCOUNT TOUR2020 blue bird
09/01(火)東京 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
09/02(水)東京 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
09/13(日)宮城 仙台電力ホール【振替公演】
09/20(日)兵庫 神戸国際会館こくさいホール 【振替公演】
09/21(月・祝)大阪 オリックス劇場
09/27(日)香川 サンポートホール高松【振替公演】
10/03(土)愛知 愛知県芸術劇場大ホール【振替公演】
10/11(日)北海道 道新ホール【振替公演】
11/20(金)広島 広島JMSアステールプラザ 大ホール【振替公演】
11/21(土)福岡 福岡サンパレス【振替公演】
BLUE ENCOUNT
LIVE@YOKOHAMA ARENA(仮)
2021/04/18(日)神奈川 横浜アリーナ
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。