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フレデリック「配信ライブでも遊びたい」――アコースティックで躍らせたオンラインライブ

フレデリック | 2020.07.22

 音楽を鳴らす幸せ、音楽を届ける幸せ、そしてそれを受け取る幸せ。フレデリックというバンドだからこそ、原曲に大胆なアレンジを施したこのアコースティックセットだからこそ、そしてスタジオからの配信だからこそ、それが思い切り伝わってきたという意味で、本当にすばらしい生配信ライブだったと思う。フレデリックにとって初めてのオンラインライブFREDERHYTHM ONLINE「FABO!!~Frederic Acoustic Band Online~」。ソファやスタンドライト、カーペット(それからフレデリックのグッズたち)が配置されたスタジオの真ん中には、アナログレコードが乗ったターンテーブル。まるで家のような雰囲気のなかで披露されたアコースティックセッションは、進化するフレデリックの懐の深さと、彼らの音楽が持つそもそものポテンシャルを詳らかにするような貴重な時間だった。

 「フレデリックの音楽の楽しみ方は自由です。スピーカーで聴くもよし、ヘッドフォンで聴くもよし、あなたにとって音楽が好きになれるベストな環境で聴いていただけることを、フレデリックは望んでいます」。そんな三原健司(Vo/Gt)によるアナウンスを経て、メンバーが登場。少し緊張した面持ちでそれぞれの位置につき、三原康司(Ba)のベースが音を奏で出す。「Frederic Acoustic Band、はじめます」。健司の一言から、ムーディなラテンのリズムとともにライブはスタートした。1曲目は「ナイトステップ」。切なげな健司のボーカル、赤頭隆児(Gt)が弾くウェットなギター、高橋武(Dr)の抑えたドラムプレイ、落ち着いていながら情熱的な康司のベースラインにいきなり心を掴まれる。そして“夜つながり”で「KITAKU BEATS」、さらにオリジナルバージョンのリフレインの強烈さがボッサのリズムによって心をそっと撫でるような優しさへと変換された「リリリピート」へ。フレデリックの音楽が、違う側面から輝きを得て届けられていく。いつもと違う環境、いつもと違うスタイルを、メンバーも心から楽しんでいることが、その表情からも伝わってくる。

 「やってまいりました、『FABO!!』へようこそ、フレデリックです!」とここで健司が挨拶。「今のフレデリックの形を見せていきたいし、進化したフレデリックを見せていきたい」と、この配信ライブをアコースティック形式にした意図を話す。そして硬軟を大胆に行き来するようなボーカルとリズムがドラマティックな「まちがいさがしの国」へ……と思いきや、そこから驚くほど自然に「イマジネーション」へとつないでいく。リズム、コード、メロディ……このアコースティックアレンジが、その細部にいたるまで繊細に組み上げられていることがはっきりと見える。逆にいえば、これほど大胆なアレンジを許容するほど、フレデリックの楽曲は強靭であり、この4人は自由ということでもある。これまで観たFAB!!のセッションでも感じていたことだが、音も映像もそのために構築されたこの配信ライブは、それをダイレクトに伝えてくるのだ。

 高橋がシンセパッドを叩き健司がハンドマイクで歌う「VISION」は、最小限の音数によるアレンジがそのメロディの美しさを暴き出し、照明が落とされたなかで演奏された康司ボーカル曲「もう帰る汽船」(コメント欄はまさかのレア曲に狂喜乱舞!)で、この繊細でアンニュイな空気感がそもそもフレデリックの“標準装備”であったことを思い出させる。答え合わせというか種明かしというか、新しいフレデリックを観ているのに、ものすごい納得感がある。これがFAB!!のすごさだ。康司の作る楽曲をメンバー全員で徹底的に噛み砕いて音楽化していく、フレデリックというバンドの実力が、この形態だからこそあからさまになっているのだ。あと、やっぱり康司の書くメロディは切ない。ダンスビートで加速させたりダイナミックなバンドアンサンブルでぶっ飛んだりしているが、フレデリックは本質的に切ないバンドなのだなと改めて思う。

 ふっと空気が緩み、「楽しい」と健司が言えば、康司も「めっちゃ気持ちいい」と応える。4ヵ月ぶりのライブということで、メンバーそれぞれが解放されたような表情を浮かべる。そこからメンバー全員で、まるで誰かの部屋で宅飲みでもやっているような感じでMCへ。メンバーの誕生日に何をあげたかという話で盛り上がったり、全員で視聴者のコメントを読んだり、いつものライブ以上にバンドを近くに感じられるような時間だ。「ライブの予定はいろいろあったんですが、延期になったり中止になったりして。でもそのなかでもフレデリック音楽を作り続けてきました」という健司の言葉から、夏フェスでやるはずだったという新曲「SENTIMENTAL SUMMER」を1コーラス披露。康司のベースリフの上で双子のハーモニーが広がっていく。失われた夏への思いを歌い上げる健司のボーカルが、たまらなく心をざわつかせるような楽曲だ。これは確かにフェスで聴きたかったが、その楽しみは来年以降に取っておくことにしよう。

 康司のベースと高橋のドラムによるグルーヴがどんどん熱を高めていく「ふしだらフラミンゴ」で後半戦をキックオフすると、赤頭の技ありギターが生み出すリズムがいい味を出しまくっている「シンセンス」へ。画面越しでも自然と身体が動き出してしまうところはさすがフレデリックだ。さらに高橋がスネアを高らかに打ち鳴らし、繰り出されたのは「オドループ」! テンポを落としながらも聴いた瞬間に踊らんといかん気持ちにさせられるこの曲の中毒性は相変わらずだ。もう何百回と聴いてきた<踊ってない夜を知らない><いつも待ってる ダンスホールは待ってる>というフレーズが、やはり今だとますます切実に、そして頼もしく響いてくる。配信だろうが、アコースティックだろうが、踊らせることはできる。ゆったりと気持ちいいグルーヴのなかに、そんなフレデリックのプライドが見えた。本編最後は、これまた今鳴らすことが大きな意味をもつ「終わらないMUSIC」。この曲は、新章の扉を開け突き進んでいる今のフレデリックのテーマソングだと僕は思っているが、その曲がチルなソウルアレンジとともに改めて未来を約束するかのように優しく強く鳴り響いた。

 「配信ライブでも遊びたいやん」とアンコールで戻ってきた健司。「ひと手間もふた手間もかけたフレデリックの音楽を、これからもよろしくお願いします」という一言から演奏された「かなしいうれしい」を終えると、健司が小声で「終わりたくない……」とつぶやく。「どんな環境であれ音楽を鳴らせていることに感謝です。フレデリックはいろんなアプローチを続けると思います。ちょっと受け付けないという人がいるかもしれへん。でも音楽をより深く楽しんでもらうことをやっていくのがフレデリックやと思ってるんで」。バンドとしての行く末をしっかり見据えたそんな言葉とともに鳴らされたラストチューン「CLIMAX NUMBER」。たぶんこの日いちばん明るいリズムとアレンジがぱっと光を放つ。2月の横浜アリーナでも今日と同じFAB!!スタイルで演奏されたこの曲。赤頭も高橋も笑みを浮かべながら軽やかに音を奏でている。音が鳴り止んだあとにはすがすがしい余韻。もちろんライブハウスでのライブもそうだけど、この形もまた観たい。そう思わせてくれる魅惑の1時間強だった。

【取材・文:小川智宏】
【撮影:AZUSA TAKADA】

tag一覧 J-POP 配信ライブ 男性ボーカル フレデリック

リリース情報

Digital Release「されどBGM」

Digital Release「されどBGM」

2020年07月08日

A-Sketch

01.されどBGM
02.されどBGM (Instrumental)

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セットリスト

FREDERHYTHM ONLINE
「FABO!!~Frederic Acoustic Band Online~」
2020.07.18

  1. 01.ナイトステップ
  2. 02.KITAKU BEATS
  3. 03.リリリピート
  4. 04.まちがいさがしの国 & イマジネーション
  5. 05.VISION
  6. 06.もう帰る汽船
  7. 07.SENTIMENTAL SUMMER (1コーラス)
  8. 08.ふしだらフラミンゴ
  9. 09.シンセンス
  10. 10.オドループ
  11. 11.終わらないMUSIC
【ENCORE】
  1. EN1.かなしいうれしい
  2. EN2.CLIMAX NUMBER

お知らせ

■ライブ情報

FREDERHYTHM TOUR 2020
~たかがMUSIC されどMUSIC~

10/10(土)北海道 Zepp Sapporo
10/18(日)宮城 仙台GIGS
10/30(金)神奈川 KT Zepp Yokohama
10/31(土)神奈川 KT Zepp Yokohama
11/05(木)大阪 Zepp Osaka Bayside
11/06(金)大阪 Zepp Osaka Bayside
11/21(土)福岡 Zepp Fukuoka
11/25(水)愛知 Zepp Nagoya
11/26(木)愛知 Zepp Nagoya

FREDERHYTHM ARENA 2021
02/23(火・祝)東京 日本武道館

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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