BURNOUT SYNDROMES、ネットを越えて燃え尽きた「リモートワンマンライブ -PREMIUM NIGHT-」
BURNOUT SYNDROMES | 2020.07.23
BURNOUT SYNDROMES(以下バーンアウト)による無観客の配信ライブ「リモートワンマンライブ -PREMIUM NIGHT-」は、ある意味、イレギュラーなシチュエーションだったにもかかわらず、非常にバーンアウトらしい、そしてバーンアウトならではと言えるものとなった。
“燃え尽き野郎たちの愛は必ずネットを越える! ライブを愛する者は世界を救うヒーローなのだ!立ち上がれ!!”
開演直前にPC、あるいはスマホの画面に踊った雄々しい言葉とは裏腹に、ライブは熊谷和海(Gt/Vo)、石川大裕(Ba/Cho)、廣瀬拓哉(Dr/Cho)の3人が向かい合いながら、アコスーティック・アレンジの「文學少女」で始まった。
場所は、どこかのライブハウスらしい。
廣瀬は自ら叩くカホンにまたがっているが、アコースティック・ギターを抱えた熊谷とタンバリンを手にした石川は床に胡坐をかいている。なるほど、オーディエンスが自宅で見ていることを考え、今回はリラックスしたムードの中、これまでライブハウスのステージで繰り広げてきたエネルギッシュなライブとは違う魅力をアピールしようということか……筆者も含め、少なくない人がそう考えたに違いない。
サビの直前に石川が自ら作ってきた手拍子の絵文字が描かれたプラカード――石川曰く“手拍子ください”パネルを掲げると、配信画面に手拍子と声援の書き込みがあふれ、「あなたの言葉、手拍子、全部届いてます!」と石川が快哉を叫ぶ。
今回の配信ライブに臨むにあたって、いつもどおり万全の準備を整えてきたことは、前述のプラカードからも明らかだったが、単に演奏を見せるだけにとどまらず、ライブではエンターテインメントを提供したいというバーンアウトの身上は無観客の配信ライブでも決して変わることはなかった。
1曲目から得られたオーディエンスのレスポンスにガッと気持ちがアガッたのか、「文學少女」を歌い終えた途端、「バーンアウトのワンマン・ライブ始めます! よろしく!」と声を上げ、「みんなと状況を合わせていくわ。気持ちだけでも共有したい」と靴を脱いだ熊谷からは、普段のクールな彼からはちょっと想像しづらい興奮が感じられた。早速、大きな手応えを感じているようだ。思わず画面に向かって前のめりになったのは、きっと筆者だけではなかったと思う。
そこからいつもどおりライブの司会進行を務める石川によるメンバー紹介となり、「廣瀬拓也!」、「熊谷和海!」に対する拍手と歓声の効果音が、石川の時だけ極端にまばらになって、「スタッフより少な!」と自ら突っ込むという笑いも挟みながら、「吾輩は猫である」、そして「夏の歌(のリクエスト)をコメントでもらおう」(石川)とオーディエンスから募ったリクエストに応え、「セツナヒコウキ」、そして「ハイスコアガール」と、熊谷の歌に石川がハーモニーを重ね、曲が持つ切なさやノスタルジアを際立たせながら披露していった。
しかし、そこはバーンアウトだ。1曲目の「文學少女」から画面に歌詞の字幕を流したことも含め、ただ演奏したわけではない。「吾輩は猫である」では新メンバーと紹介したイラストの猫(ブク)を、演奏する3人の姿に重ねたり、リクエストを募るきっかけになった「夏の歌を歌いたいなぁ」という廣瀬の心の声をマンガの吹き出しで表現したり、「踊れるようにダンス・ナンバーを持ってきました。みんなで踊りたい」と言った「ハイスコアガール」では、画面の前で参加できるよう振り付けを指南したり――。
バーンアウトのワンマン・ライブを見た人ならご存じだろう。あらかじめ撮影したムービーなど、映像も使いながら、ツアーごとにさまざまな趣向を凝らした物語仕立てのライブを楽しませ、彼らが群雄割拠と言えるバンド・シーンにおいて、数多いるバンドたちに差をつけてきたことを。
その意味で、まさに彼らの真骨頂だったのが「ハイスコアガール」演奏後、オーディエンスのPCのインカメラをハッキングしていた(という設定で)石川が、みんなの踊りが上手すぎることに気づき、「今、ライブを見てくれているみんなは、実はロボットなんじゃないか」と疑い始めたくだりだ(そういう設定)。
「当初の予定の3倍か4倍の人たちが見てくれているのは嬉しいけど、機嫌良く自分たちに配信ライブをやらせようという陰謀なんじゃないか。それを確かめるため、ネット上の壁を用意しました。突破して、みんながロボットじゃないことを証明してください」
バンドが用意したのは、①文字認証、②画像認証、③並んだジャケット写真の中からバーンアウトのメジャー・デビュー曲を選ぶ――そんなふうにオーディエンスにもライブに参加することを楽しんでもらいながら、それがアコースティック・セットから通常のバンド・セットへの転換になっていたんだから心憎い。
画面が切り替わると、3人はすでにステージに立っている。
そして、「後半戦、最高速でぶっとばしていきます!」と石川が声を上げ、3人が演奏したのが、前述の③の答えである「FLY HIGH!!」。バーンアウトにとって特別な1曲になったアンセミックなロック・ナンバー。一気に熱を上げ、ライブハウスで活動してきたバンドが持つ瞬発力をアピールする3人に、カメラが肉薄する。その臨場感に、見ているこちらの熱も上がらずにいられない。
クライマックスのシンガロングパートで、「次、あなたの番です! 大丈夫、声は届くから、心の中で歌ってみて!」と石川が声をかけると、どこからともなく合唱の声が! そして、「最高の歌声、聴こえてきましたよ」と繋げた「ヒカリアレ」では、熊谷がギター・ソロを奏でる姿に重ね、キュイ→ンの文字を躍らせる。
エネルギッシュな演奏に加え、遊び心に思わずニヤリの演出も楽しませながら、バンドは3月にリリースしたコンセプト・ベスト・アルバム『BURNOUT SYNDROMEZ』からのアンセミックな曲の数々を披露していった。彼らがオープニング・テーマを手掛けてきたテレビアニメ『ハイキュー!!』のトリビュート・ソングとして書き下ろしたヒロイックな「Dream On!!」、バーンアウトらしいアンセムにダンサブルな魅力が加わった「PHOENIX」を、ようやくライブで聴けたのは嬉しかった。
そして――。
ライブができない自分たちも含め、多くの人がコロナ禍における将来が見えない不安に苦悩している現在の状況に対して、人生はうまくいかないものだと認めた上で、「それを楽しむためのポリシーが僕にはあります。それは、真っ直ぐぶつかることです。真っ直ぐ歩いている人は、幸運を司る神様に見つけてもらいやすい。こんな世の中だから真っ直ぐやっていきたい。歩いていきたい。僕らの歌から、少しでもそのことを思い出してほしい」と熊谷が静かに語ってから、本編最後に「白線渡り」を、ピアノとストリングスを同期音源で流しながら披露。それまでのアンセムの数々から一転、フォーキーでノスタルジックな曲調は、真っ直ぐ歩いていこうという曲に込めた思いを、聴く者の胸の奥にまで伝えたのだった。
アンコールに応え、バンドはさらに2曲――カバー曲「Wake Up H×ERO! feat.炎城烈人(CV:松岡禎丞)」に加え、「SPEECH」を披露。8月26日にCDがリリースされる前者は、TVアニメ『ド級編隊エグゼロス』のために結成されたスペシャル・ユニット、HXEROS SYNDROMES(エグゼロス・シンドロームズ)のためにバーンアウトが初めてプロデュースを手掛けた、王道のアニソンを思わせるヒロイックかつアンセミックなロック・ナンバーだ。
そして、穏やかな曲調に夢を諦めない気持ちをズシリと込めた「SPEECH」に寄せ、バンドを代表して石川が語った「バーンアウトは続けることが得意です。諦めることが苦手です。この2人、そしてあなたがいるかぎり、何があっても続けていきます。僕らにはみんなを大阪城ホールに連れていくという、でっかい夢があります」という言葉が、どれだけ頼もしく聞こえたことか。冒頭にも書いた通り、無観客の配信ライブというイレギュラーなシチュエーションにもかかわらず、いや、それをバーンアウトならではのやり方を生かせる絶好の機会と考え、これまでどおりに趣向を凝らしたライブに挑んだ3人に心から拍手を贈りたい。彼らは従来のライブの代替などではない配信ライブの可能性を証明してみせたのだ。
初めての経験だったが、メンバーたちは大きな手応えを感じているはずだ。来年2月の全国ツアーを目標に掲げ、バンドはすでに動き出しているようだが、機会があったらまた今回とは違う形で配信ライブもやってくれるんじゃないかと期待している。
……などとライブの余韻を味わっていたら、突然、番組がジャックされ、画面にはエグゼロス・シンドロームズが!
「俺たちはバーチャルの世界の住人だが、バーンアウトよりヤバいライブができるぜ。近々見せてやるから楽しみにしてろよ!」
その宣言を聞き、そう言えば、とさっき熊谷が「8月に何かあるかもね」とポツリと言ったことを思い出した。なんだ、なんだ、なんだ!? バーンアウトは、最後の最後まで僕らを楽しませてくれたのだ。
【撮影:中條のぞみ】
リリース情報
BURNOUT SYNDROMEZ
2020年03月25日
Epic Record Japan
02.ヒカリアレ
03.PHOENIX
04.Dream On!!
05.Good Morning World!
06.花一匁
07.ハイスコアガール
08.ナミタチヌ
09.吾輩は猫である
10.白線渡り
11.数學少女Z
<Bonus Track>
12.FLY HIGH!! -Spring Version-
セットリスト
リモートワンマンライブ
-PREMIUM NIGHT-
2020.07.17
- 01.文學少女
- 02.吾輩は猫である
- 03.セツナヒコウキ
- 04.ハイスコアガール
- 05.FLY HIGH!!
- 06.ヒカリアレ
- 07.Dream ON!!
- 08.PHOENIX
- 09.白線渡り
- 10.Wake Up H×ERO! feat.炎城烈人
(CV:松岡禎丞) - 11.SPEECH
お知らせ
1500名限定ワンマンツアー
「注文の多い料理店‐☆☆☆-」
11/08(日)東京 SHIBUYA CLUB QUATTRO
12/03(木)大阪 UMEDA CLUB QUATTRO
12/11(金)愛知 名古屋・ell.FITS ALL
全国ワンマンツアー 2021
02/06(土)福岡 BEAT STATION
02/07(日)広島 LIVE VANQUISH
02/13(土)愛知 DIAMOND HALL
02/14(日)大阪 なんばHatch
02/20(土)宮城 仙台 RENSA *NEW
02/21(日)新潟 NEXS *NEW
02/28(日)東京 EX THEATER ROPPONGI
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。