前へ

次へ

アットホームな空間で心を通わせたオンラインライブ、当日の模様をお届け!

松井玲奈 | 2020.09.02

 多方面のエンターテインメントで活躍中の松井玲奈。彼女にとって初の無観客オンラインライブとなる「松井玲奈 バースデー・アコースティックライブ」が、彼女の誕生日の前日となる7月26日に開催された。
 普段彼女はファンクラブ会員を対象にライブを行っており、今年も秋にライブを開催する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により断念。それを受けて急遽企画されたアコースティックライブは、カバー曲を披露する3部構成となった。3部それぞれで衣装とヘアメイクを変更し、セットリストもマイナーチェンジ。第2部は投げ銭が可能、第3部はファンクラブ会員限定で開催するなど、3公演それぞれで異なる楽しみ方を視聴者に提示した。

 第1部ではロングヘアーをアップにし、ノースリーブのトップスにロングスカート、サンダルという清楚な衣装で登場。「配信ライブは恥ずかしい」「前日の夜から緊張してた」と照れ笑いを浮かべながら本音を吐露する。だが5曲目、数年前からライブでカバーしているHalo at 四畳半「硝子の魔法」の歌唱中は、ドラマチックな展開を見せていく楽曲構成も相まってか、自然な笑顔を見せたり音に乗せて身体を動かしたりと、全身に心地よさが表れていた。ファンの目の前でライブができない状況に寂しさを感じながらも「画面越しでもこうやって同じ時間を共有できることが幸せです」と呼びかけ、第1部を締めくくった。

 第2部開演前にFanStreamアプリを開いてみると、すでにチャットは「第2部も楽しみ」などのコメントで賑わっていた。実際のライブでも開演前に一緒に会場に来た友達とそんな雑談をしながら開演を待ちわびることがしばしばあるが、オンラインはそれを観客全員規模でできる。実際お客さんを入れたライブ会場でも、当日の参加者だけが参加できるチャットがステージの幕に表示されていたら面白いかもしれないなあ、などと妄想したりしつつ、ポジティブな言葉たちが並ぶチャットを眺め開演を待っていた。
 17時になり画面が切り替わると、画面の中ではオーバーサイズのシャツにパンツ姿、ダウンスタイルヘアーの松井がこちらに向かって笑顔で手を振っていた。「皆さーん、見えてますか? 松井玲奈です。こんにちは……なのか、こんばんはなのか、曖昧な時間です!(笑)」と彼女が語り掛けると、チャット欄は一気に手を振る絵文字で埋め尽くされる。
 会場は大きなガラス窓が特徴的なカフェのようなスペースで、松井の背景にあるガラスの向こうには外の木々の緑や車が流れる様子、歩く人々がぼんやりと見える。洒落ているけれど気取らないロケーションも清々しい。キーボード、コーラス、ギターの3人のサポートメンバーとも距離を置き、ドアも開放するという三密配慮も垣間見られた。

 「あなたと一緒に最後まで楽しい時間を過ごしたいと思います。一緒に楽しんでいってください!」と告げると、1曲目はランカ・リー=中島愛の「星間飛行」。アニメや漫画好きでも知られる彼女らしい選曲だ。楽曲のキーポイントでもあるポーズ付きの決め台詞「キラッ☆」もスマートかつ自然体で、時折やわらかい笑顔を見せながら軽やかに第2部の幕を開けた。第1部よりもだいぶ緊張がほぐれているようだ。
 歌い終えた松井はコメント表示非表示やコメントの書き方など、FanStreamアプリの使い方を説明し、「それぞれの楽しみ方をしてください」「ぜひSNSでもハッシュタグを使ってつぶやいて盛り上げてくれたらうれしい」と呼びかける。続いて披露されたのはwacciの「別の人の彼女になったよ」と金井克子の「他人の関係」。低音から高音まで広域のボーカルを楽しめる前者、クールな面持ちで集中しながら歌う後者と、異なる趣向の歌声を聴かせる。曲中のチャットでは「あ、イヤホンで聴けば良かった!」や「イヤホンで聴くのいいね」と視聴方法のリアクションも。視聴者がオンラインライブを重ねていくなかで、自分にとっていちばんいい楽しみ方にトライしている。それをリアルタイムでシェアするのもオンラインライブらしい視聴者同士のコミュニケーションだ。
 PCからスピーカーで視聴し、アプリでチャットをチェックしていたわたしも、すぐさまイヤホンを取り出しPCにつないでみた。「他人の関係」は楽器のカッティングやスタッカートなども特徴的ゆえ、人の手で楽器が奏でられている感覚が生々しく伝わってくる。松井の歌声もすぐ近くで感じられ、自分の耳が彼女の持っているマイクになったような感覚だ。こういう味わい方ができるのもアコースティックライブならではだろう。
 「とってもお気に入りの曲を選んでみました」という言葉のあとに届けたのは、彼女の好きなアーティストのひとりである平井堅が作詞作曲を手掛けた、JUJUの「かわいそうだよね」。少々シビアな歌詞を噛みしめるように歌う姿はとても切実で、彼女の可憐な高音が響くたびに胸をちくりと刺してくる。歌をそっと支える繊細なコーラスも楽曲の世界観を引き立て、視聴者をセンチメンタルの渦へと引き込んだ。

 中盤の長尺のMCタイムでは、自身のステージドリンクが水であることに触れ、大好きなアプリゲーム『アイドリッシュセブン』にステージドリンクがコーラのキャラクターがいる旨を告げる。「信じられない!」とリアクションしながらも、それに影響を受けてコーラにしようと思ったこともあるが、無理だと判断して水にしていると明かした。
 まだまだ彼女の趣味トークは止まらず、最近は『アイドリッシュセブン』の七瀬陸の声を担当している声優の小野賢章が吹き替え出演している映画『ハリー・ポッター』シリーズを順々に観返しているとのこと。「ハリーが成長していくように、小野賢章さんの声の成長を楽しみつくしてから『アイドリッシュセブン』に戻ろうと思う」「(視聴者の)あなたが推し事をしているように、わたしも推し事をしています」とさらにディープなプライベートエピソードを次々と明かす。
 ふと我に返った松井は「初めて観る人びっくりしてないかな!? わたし、こんな感じなんです!」と照れ笑い。だがさらに「昨日もずっとひとりでマリオカートをやってました。今日もやります」と重ねるという、止めようとしても止まらない二次元愛がとても微笑ましい一幕だった。

 「今の話は忘れて音楽を楽しんでください」と切り返すと、エレファントカシマシ「今宵の月のように」でたくましさを感じさせる歌声を聴かせ、その後あいみょんの「君はロックを聴かない」へとなだれ込む。第1部で披露されていないカバーであることに加え、やはり彼女のファンの中でもあいみょん人気は高いのか、イントロのギターで一気にチャットも賑わいを見せた。ピュアな感性を含んだメロディや「僕」という1人称で歌われる歌詞も、松井の透明感のある声との相性がいい。背景のガラス窓からこぼれる晴れやかな陽の光も相まって、爽快感のあるエモーションが画面越しに伝わってきた。
 歌い終えて息を整えた松井は「どうですか皆さん、楽しんでいただけてますか?」と言い、カメラにマイクを向ける。すると「ライブが大好きだから行けないことがもどかしい。でも家で配信ライブを観ているなかで実際にタオルを回したりして、すっごく楽しかった。このライブもそんなふうに楽しんでもらえていたらうれしい」と今回のライブへの想いをまっすぐ語った。
 ラストはいきものがかりの「気まぐれロマンティック」。煌びやかなアレンジとともに、心はずむ歌唱で魅了し、歌い終えると晴れやかな笑顔で「今は画面越しですけど、またイベントをやるので、そのときはぜひぜひぜひぜひ遊びに来てください! わたしも人のいるところでライブをやりたいので、よろしくお願いします!」と力強く伝えた。
 ファンクラブ会員限定でチケットが購入可能な第3部は、夜に開催されたこともあり、会場が第1・2部とは異なる趣へと様変わり。公演時間も長く、曲数も多く披露され、ファンクラブ会員ならではのプレミアムなライブとなった。アットホームで穏やかな空間。28歳を初挑戦で終えた彼女が、素晴らしい29歳人生を送れるよう祈りたくなる3公演だった。

【取材・文:沖さやこ】

tag一覧 配信ライブ 女性ボーカル 松井玲奈

セットリスト

バースデー・アコースティックライブ
[第2部]
2020.07.26

  1. 01.星間旅行
  2. 02.別の人の彼女になったよ
  3. 03.他人の関係
  4. 04.かわいそうだよね
  5. 05.今宵の月のように
  6. 06.君はロックを聴かない
  7. 07.気まぐれロマンティック

トップに戻る