UK.PROJECTが主導する真夏の恒例イベント、10回目となる今年は無観客生配信という形で「UKFC in the Air 2020」として開催された。
UKFC in the Air | 2020.09.05
UK PROJECTのレーベル部門/マネージメント部門が主導するライブイベント「UKFC on the Road」は、2019年までに9回の開催を重ねて今年がめでたく10回目のアニバーサリー。新型コロナウイルスの影響によりライブイベントを行うことが困難な中、今年は無観客生配信という形で「UKFC in the Air 2020」が8月28日に開催された。
開演に先立って、まずはUK PROJECT代表・遠藤幸一とMCの芦沢ムネト(パップコーン)による挨拶だ。イベントロゴは「UKFC on the Road」に「in the Air」のシールを重ね貼りしたデザインを用いたことも説明する。また、今回出演予定だったSPiCYSOLは、KENNY(Vo/Gt)の新型コロナウイルス感染を理由に残念ながら出演が見送られたけれども、そのトップ出演枠に金井政人(BIGMAMA・Vo/Gt)、東出真緒(BIGMAMA・Violin/Key/Cho)、そしてShun(TOTALFAT・Vo/Ba)の3人が登場。「家族は助け合うものだろう」という金井の言葉とともに、スペシャルセッションとしてSPiCYSOLの「Coral」をカバー披露する。金井とShunによる絶妙な距離感のハーモニーとスイッチングボーカル、そこに東出のバイオリン演奏が寄り添い、優しくも力強い絆を形にしてみせるオープニングである。
さて、華麗なるメロディの交錯を描く一方、ロックなアタック感と熱量があればこそ成立する、人間味豊かな感情表現のステージを繰り広げるのはBIGMAMAだ。サポートドラマーには、バケツを被った姿で注目を集めるBucket Banquet Bisを迎えた編成。「荒狂曲”シンセカイ”」や「誰が為のレクイエム」ではクラシカルな旋律ごと情緒を燃え上がらせ、ベスト的選曲で攻め立てる。「秘密」や「かくれんぼ」ではロマンチックな対話の時間を育んでライブ体験をより濃く深いものにし、期待と後悔の念がせめぎ合う新曲「Naked King」も、強烈な人間味を印象付ける1曲になった。
続いては、この7月に初のフルアルバム『HOPEFUL APPLE』を発表した4人組バンドのpostmanが登場。骨太なギターリフに寺本颯輝(Vo/Gt)の巻き舌ボーカルが絡み付き、新作曲を中心にどっしりとした歌心を届けてくる。寺本が「こんな愛にまみれた家族の中でやれているのが誇らしいです」と告げながら、堂々と駆け抜けるステージであった。彼らはこの9月から10月にかけて、有観客の東名阪ツアーを繰り広げる予定だ。
昨年は「UKFC on the Road 2019」のキュレーターを務め、3ピースの新体制へと移行したTOTALFAT。Jose(Vo/Gt)の伸びやかな歌い出しから、無観客だろうがお構いなしの熱い疾走が始まる。「夏のトカゲ」では画面越しにタオル回しを要求するパンクな祭囃子を繰り出し、ブリージンな新曲「My Secret Summer」も放たれる。圧巻だったのは、フミ(POLYSICS・Ba/Syn/Vo)の剛腕ベースに乗せてShun(Vo/Ba)がハンドマイクで熱唱する「スクランブル」や、カッキーこと柿沼広也(BIGMAMA・Gt/Vo)がしれっとステージ中央に入ってきて凄まじい瞬発力で燃え盛る「X-stream」といったコラボだろう。照明演出のトラブルで少々戸惑った場面もあったけれど、新作EP曲+αのリアルなライブ感に満たされたステージだった。
瑞々しい浮遊感を描くバンドサウンドに、竹田昌和(Vo/Gt)の美声が伝い、とめどない恋心を溢れ出させる「決して嘘はつかないバンド」=ウソツキ。「UKプロジェクトのみんなが思っていると思うけど、大好きな音楽を守るためにこのイベントをやっています」と告げながら、バイラルヒットを記録している「名もなき感情」まで、4曲を限られた持ち時間内に披露した。壮大なロマンチシズムと等身大の生活感が交差する、不思議なスケール感のラブソングたちだ。
3ピースの体制に戻って初のステージを踏むことになったPOLYSICSは、ノーMC&ノーTOISU、疾風怒濤の全14曲1本勝負を駆け抜けてみせた。引き攣ったサウンドのまま転がる「Ah-Yeah!!」や、ジャーマンテイストのディスコサウンドで踊らせる「Crazy My Bone」といった辺りはまだ笑顔で楽しめていたのだが、3人が向き合ってひたすら内向きなエネルギーを高めてゆく、その異様な緊迫感にゾクリとさせられる。まるで、自らの身体で人体実験するマッドサイエンティストのような、狂気のストイシズムに裏付けられたライブなのである。バイザーを外して全力で追い込む最終ナンバー「URGE ON!!」をフィニッシュすると、ハヤシヒロユキ(Gt/Vo/Syn/Programming)は「最後まで楽しんでら$#@*%&―!!」と叫んで、その場に蹲まってしまう。大きな感動と共に「事件」の余韻を引き摺るステージであった。
淡いブルーのライトに包まれ、ドリーミーなシンセのリフレインを合図とするように始まった、EASTOKLABのパフォーマンス。ハーフエレクトロニックな音像は極めて現代的なデザインだが、夢の向こう側から語りかけ、するすると距離を詰めてくる独自の姿勢と親密感こそが、彼ら最大の武器だろう。最新デジタルミニアルバム『Fake Planets』の収録曲でセットリストを固め、最後には「Dive」で視聴者を未来へと運ぶのだった。
フェイスシールド(これさえもステージ衣装に見える)を装着して登場したthe telephonesは、ノブこと岡本伸明(Syn/Cowbell/Shrike)が肩をはだけて所狭しと跳ね回り、石毛輝(Vo/Gt/Syn)がジャーマンスープレックス奏法(首ブリッジ)を敢行する、ハイボルテージな平常運転。直線的かつ直情的なダンスロックを連発しつつ、「Don’t Stop The Move, Keep On Dancing!!!」の直後に石毛は「最高だー、テレフォンズ」と思わず自画自賛の声を漏らす。11月にリリース予定となっているアルバム『New!』から披露された「New Phase」は、まだ少々のぎこちなさを感じさせながらも、コズミックなファンキーサウンドが次第に哀愁を帯びてゆく手応えで、まさしくテレフォンズ印の新境地だ。9月25日には横浜で有観客&新作全曲披露ワンマンを開催予定ということで、その前哨戦とばかりにヒットパレードへと持ち込む終盤も素晴らしかった。
FUTURE STAGEのアンカーを担ったのは、the shes gone。不器用なほどに真っ直ぐなグッドメロディと歌を投げかけてくるバンドが、ノーガード戦法で今回の配信ライブに挑んだ。美しい空間系ギターサウンドも映えるステージで、兼丸(Vo/Gt)は「いま抱えている不安をズルズル引き摺って、一緒に戦っていきたいと思います」と、シズゴの歌世界そのもののような言葉で視聴者に語りかける。そして最後は「ふたりのうた」で締めくくるのだった。
さあ、FRONTIER STAGEのトリを飾るのは[Alexandros]だ。川上洋平(Vo/Gt)のウィスパリングボーカルが映えるアレンジの「Run Away (Bedroom Ver.)」こそ静謐な滑り出しだったが、荘厳な音響で包み込むような曲調も、スリリングな曲調も、今の彼らは余裕さえ伺わせる懐の深さで奏でてみせる。何よりも、タブレットやスマホで視聴者の反応を逐一チェックしながら、配信ライブの距離を本気で越えようとするのが、[Alexandros]のスタイルだ。「Dracula La」では無数の「#おーおーおー」というシンガロングのハッシュタグが溢れ返り、《離れたまま 僕らは色んな構図で/離れたまま 心を描き合うけど/めんどくさいから 直接渡すよ》と歌われる「rooftop」は、この「UKFC in the Air」においても大切な約束の1曲となった。ライブ本編を締めくくったのは、かつて他のすべての出演バンドに対して喧嘩腰でいたことを思い出させるという「For Freedom」だ。UK PROJECT所属バンドの強固な絆と、互いに良きライバルであろうとする意志は、今後もシーンを突き動かす大きな原動力となってゆくのだろう。
【取材・文:小池宏和】
配信ライブ BIGMAMA postman TOTALFAT ウソツキ POLYSICS EASTOKLAB the telephones the shes gone [Alexandros]
セットリスト
UKFC in the Air
2020.08.28
-
■オープニング企画
- 01. Coral(SPiCYSOL カバー)
Shun(TOTALFAT)+金井政人&東出真緒(BIGMAMA)
-
■BIGMAMA(FRONTIER STAGE)
- 01.SPECIALS
- 02.MUTOPIA
- 03.荒狂曲”シンセカイ”
- 04.誰が為のレクイエム
- 05.アリギリス
- 06.ヒーローインタビュー
- 07.秘密
- 08.かくれんぼ
- 09.Sweet Dreams
- 10.セントライト
- 11.The Naked King
- 12.CPX
-
■postman(FUTURE STAGE)
- 01.揺らめきと閃き
- 02.GOD
- 03.夢と夢
- 04.探海灯
-
■TOTALFAT(FRONTIER STAGE)
- 01.Place to Try
- 02.晴天
- 03.夏のトカゲ
- 04.My Secret Summer
- 05.スクランブルfeat. フミ(POLYSICS)
- 06.X-stream feat. 柿沼広也(BIGMAMA)
- 07.世界中の人に自慢したいよ(忌野清志郎 カバー)
- 08.PARTY PARTY
- 09.Good Fight & Promise You
- 10.夜明け待つ
-
■ウソツキ(FUTURE STAGE)
- 01.夏の亡霊
- 02.一生分のラブレター
- 03.ギャラクシーロマンス
- 04.名もなき感情
-
■POLYSICS(FRONTIER STAGE)
- 01.Buggie Technica
- 02.Ah-Yeah!!
- 03.You Talk Too Much
- 04.Crazy My Bone
- 05.DTMK未来
- 06.DNA Junction
- 07.Distortion
- 08.Stop Boom
- 09.Everybody Say No
- 10.United
- 11.MAD MAC
- 12.Broken Mac
- 13.スリーオースリーオーマーン
- 14.URGE ON!!
-
■EASTOKLAB(FUTURE STAGE)
- 01.Contrail
- 02.Rainbow
- 03.Ten
- 04.Hug
- 05.Dive
-
■the telephones(FRONTIER STAGE)
- 01.Here We Go
- 02.Monkey Discooooooo
- 03.RIOT!!!
- 04.Don’t Stop The Move, Keep On Dancing!!!
- 05.New Phase
- 06.Tequila, Tequila, Tequila
- 07.Do the DISCO
- 08.I Hate DISCOOOOOOO!!!
- 09.urban disco
- 10.Love & DISCO
-
■the shes gone(FUTURE STAGE)
- 01.嫌いになり方
- 02.シーズンワン
- 03.想いあい
- 04.ふたりのうた
-
■[Alexandros](FRONTIER STAGE)
- 01.Run Away (Bedroom Ver.)
- 02.ムーンソング
- 03.She’s Very
- 04.Dracula La
- 05.Mosquito Bite
- 06.rooftop
- 07.For Freedom
- EN1.LAST MINUTE