Vaundy、完全無欠の初ワンマンライブ『大人間前夜』を観た
Vaundy | 2020.09.18
Vaundyのワンマンがようやく観られる! この感動は大きい。たとえ、配信ライブであってでもだ。本来、2020年4月5日に行われるはずだった初のワンマンライブ『大人間前夜』が、コロナ禍の影響で延期……。今回、無観客オンラインライブとしての実現となった。
Vaundyの魅力とは、一聴して耳に残るハスキーなスモーキーさと突き抜けていく透明感を共存させた歌声の素晴らしさだ。そして、いまの時代に溶け合う自らの言葉とメロディやサウンドセンスを持った楽曲の痛快さ、気持ち良さにある。
オープニングはアルバム『strobo』と同じく「Audio 001」からスタート。暗闇の中階段を登り、ドアを開いてステージへ。深海のごとく青めいた空間で、ドラマー、ギタリスト、ベーシストをバックに、マイク片手にVaundyが歌いはじめた。
1曲目は、現在SpotifyのCM曲としてテレビで毎日のように観るSpotify Premium 全国地上波テレビCM「Spotify Town」編 CMソング「不可幸力」だ。一気にオーディエンスを、ライブハウス最前列に連れていくかのような、没入感の高いハイレベルなパフォーマンスのスタート。
続いて、<愛とかノンフィクション>と呟くフレーズが耳に残る「life hack」を、やわらかなビートに乗せてたゆたうように言葉をのせていく。
初のワンマンライブながら緊張を感じさせるどころか懐の大きさ、すべてを包み込むようなポップセンスが気持ちいい。感心していたら、ギターを片手にカッティングしはじめ突然の未発表曲の登場。未発表曲がまだまだ続く。オルタナティブロック色を感じさせるダウナーなコード感&リズムに、時折スウィートなメロディやリフを聴かせてくれる楽曲を披露。
ここで、アルバム『strobo』にも収録されたサンプリングを織り交ぜたインストチューン「Audio 002」が流れる無観客のフロア。電車のガタンゴトンなリズムにピアノが重なる、不思議な空間を感じさせる。
そして、R&Bちっくなビートに乗せて「napori」を、本来なら満員のオーディエンスでいっぱいであったであろうフロアへ降りて、グルーヴへ身を委ねながらたゆたうように歌唱。せつなきラブソングを優しくも儚く歌い上げていく。
気がついたらフロア中心にマイクが置かれ“人生”と向き合うかのようなシリアスな「Pain」を、背後からのスポットライトのみの照明で歌い出すシーンは鳥肌ものだ。俯瞰視点から悩みを吐き出すポエトリーなナンバー。サビで一気に郷愁を感じさせる胸が狂おしくなる展開もたまらない。
続く、これも新曲か? Vaundyと、印象的な女性ボーカルによる声が耳に残る風のように透き通る透明感あるポップチューン。うん、これは新曲だ。ステージを背景に、照明に溶けていくVaundyの姿が歌うシーンとシンクロしていくかのようだった。
一気に7曲を駆け抜けたVaundy。本日最初のMC。
「Vaundyです。ありがとうございます。今日の日までいっぱい考えてここにきているので、いっぱい出していきたいと思います。『極楽浄土』。」
多くは語らないVaundy。その分、1曲でも多くの音楽で表現していきたいのだろう。エレアコ片手に着席してひとりで人が生きる道を表現する未発表曲「極楽浄土」を弾き語っていく。
ここから、ラストへ向かって一気に駆け抜けていく。
アルバム『strobo』でも異色だった打ち込みでのダークかつアッパーなダンスナンバー「soramimi」をバンドスタイルでプレイ。90年代センスと“いま”の時代が混ざりあいながらも、Vaundyによる妖しげなラップ風ボーカリゼーションが宙に飛び交い突き刺さっていく。
一変して、アコギを片手に、ほんわかした雰囲気を醸し出してくれる「Bye by me」では、本日一番明るい照明の下、リスナーに寄り添ってくれるポップなメロディをプレゼントしてくれた。いい感じに緩んできたフロア。あ、いや、無観客ライブだった。だとしても、オーディエンスをリアルに感じられるナンバーだなぁ。
そして、本日のハイライトといえる「僕は今日も」を歌い上げるVaundy。
本作は、Vaundyの決意表明ソングであり、聴くものに生きる力を与えてくれるエネルギーをたくさん備えた、人類讃歌のような強力なバラードだ。ストリングスとメロディ、Vaundyが歌唱するまっすぐな歌声がパワーとなり、会場中を“せつなさ”というミストでいっぱいに埋め尽くしていく。
再びMCだ。「みなさん今日はありがとうございました。次のライブでみなさんの元気な姿をみれるように祈っています。『灯火』。」
気がついたら、青で統一感のあった照明が赤へとチェンジしていた。ラテン感あるビートが熱量をより高めていく「灯火」による力強いメッセージが、Vaundyによる全身全霊のパフォーマンスとして熱い。
そして、ここではち切れるVaundy流ロックチューン「怪獣の花唄」の人懐っこいキャッチーさは最高だ。今日は、無観客だったけれど、一番の盛り上がりとなったと思う。コーラスワークがゴスペルのような一体感を増幅させるんだな。ああ、ロックフェスで鳴り響いたらすごい光景がみえそうなナンバーだ。
そんなバーストする勢いのまま、Vaundy自身が世に知られたキラーチューン「東京フラッシュ」をラストソングとして披露。時間軸を巻き戻したのかのように公衆電話ボックスで電話するVaundy。渋谷クアトロのエレベーターに乗り移動し、ミュージックビデオを再現するというCGを駆使したエフェクティブかつ、ギミッカブルな演出を魅せる。オンラインライブならではの表現といえるだろう。ある種、本日のスペシャルなアンコール曲。それが一期一会な「東京フラッシュ」ライブ・バージョンだったのかもしれない。めくるめく、360度Vaundyを追いかけるようなカメラワークが、渋谷クアトロという環境を感じさせてくれて、気持ちよかった。
そして、ラストの締めとともにモニターに映った“Vaundy”のロゴ。
Vaundy初のワンマンライブはパーフェクトに完璧主義者のごとく完全無欠の大成功といえるだろう。いや、ほんとカッコよすぎるわ。なお、Vaundyは止まらない。10月10日にはZepp Hanedaにて、観客を入れての2ndワンマンライブ『“strobo”』を控えている。
これまでの“当たり前”を驚くべきスピード感、クオリティで塗り替えていく、新時代の吟遊詩人である新しい才能、Vaundy。引き続き注目していきたい。
【撮影:日吉"JP"純平】
リリース情報
strobo
2020年05月27日
SDR
02.灯火
03.東京フラッシュ
04.怪獣の花唄
05.life hack
06.不可幸力
07.soramimi
08.Audio 002
09.napori
10.僕は今日も
11.Bye by me
セットリスト
Vaundy one man live「大人間前夜」
2020.08.30
- SE Audio 001
- 01.不可幸力
- 02.life hack
- 03.未発表曲
- 04.未発表曲
- SE Audio 002
- 05.napori
- 06.Pain
- 07.未発表曲
- 08.極楽浄土(未発表曲)
- 09.soramimi
- 10.Bye by me
- 11.僕は今日も
- 12.灯火
- 13.怪獣の花唄
- 14.東京フラッシュ
お知らせ
2nd one man live “strobo”
10/10(土)東京 Zepp Haneda
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。