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22枚目のオリジナルアルバム発売日に行われた、BUCK-TICK初の無観客生配信ライブ「ABRACADABRA LIVE ON THE NET」

BUCK-TICK | 2020.09.30

 BUCK-TICKが、22作目となる『ABRACADABRA』をリリースした9月21日、初の無観客での生配信ライブ「ABRACADABRA LIVE ON THE NET」を開催した。2020年になって初のライブとなったこの日は彼らの33回目のデビュー記念日だったのだが、生配信という新しい表現方法のデビューを飾る日にもなった。

 配信は、新作『ABRACADABRA』の制作過程や今回の配信について語る5人への約1時間のインタビューから始まり、この新作と生配信ライブにかける強い思いが伝わってきた。

 20時過ぎ、アルバムの冒頭を飾る「PEACE」を基にしたSEとともに美しいCGが投影され、「ABRACADABRA」の文字が浮かび上がると、その後ろにメンバー5人の姿。「ケセラセラ エレジー」のイントロでステージ前面の紗幕が振り落とされ、ハットを被った櫻井敦司(Vo)が進み出て歌い出した。カラフルに髪を染めた今井寿(Gt/Vo)がコーラスをしながら手で様々なサインをしてみせ、星野英彦(Gt/Cho)は引き締まった顔でギターを弾く。樋口豊(Ba)は軽く微笑みながら体を揺らし、トレードマークのモヒカンを屹立させたヤガミ・トール(Dr)が、このバンドのボトムとなるビートを叩き出す。「URAHARA-JUKU」は、歌詞に出てくる赤色灯のような照明の中でハードな曲が燃えていた。今井がつけている黒いラメのマスクには、いつも頬に書いているのと同じ「B-T」の文字。

 「ハロー、みなさん、元気? 楽しんでください、アブラカダーブラ」櫻井の簡潔な挨拶を挟み櫻井と今井のツインボーカルで聴かせる「SOPHIA DREAM」へ。櫻井は透明感のある声で歌い今井が抑制の効いた声を重ねると、エキゾチックなサウンドと二人の声が不思議なサイケデリアへと導いた。その流れは「月の砂漠」へと続き、櫻井は金色の仮面を手にシアトリカルなステージングで幻想的な世界へと私たちを誘う。幻想から一転、テクノなサウンドを加えた「Villain」も櫻井と今井の掛け合いが聴きものだ。収録順に演奏することで『ABRACADABRA』という作品の持つストーリーが体温を持って伝わってきた。

 星野のギターが柔らかく響いた「凍える」から数曲は櫻井の細やかな身体表現に引き込まれた。<この手首にそっと>という歌詞に合わせて手首を示し、<ねんねんころりよ>と赤子を抱くように腕を揺らす。そして男女の対話が歌詞の「舞夢マイム」ではハットを被った男とベールで顔を包む女を演じながら歌い、「ダンス天国」では羽のストールを巻いて60年代スターのように踊った。それはバンドとともにステージにいるからこその姿であり、ネットを通じて観ているものがいることを知っているからの動きだ。彼らは観客と共にいる。

 「獣たちの夜」は昨年5月にリリースされたシングル曲なのでライブでは披露されているが、この日はアルバム収録の「獣たちの夜 YOW-ROW ver.」。ソリッドなデジロック仕立てで迫力のある演奏となった曲は、サビでビートに合わせハンドクラップする観客が眼に浮かんだ。続く「堕天使 YOW-ROW ver.」はダンサブルな4つ打ちと遊びのある歌詞で気分を変えて、ロマンチックな「MOONLIGHT ESCAPE」に備える。モノクロ映像になったこの曲は、高音から低音まで自在に声を響かせる櫻井の伸びやかな歌が際立った。今井は軽やかにステップを踏みながら気持ちよさそうにギターを弾いていた。

 バンドのパワーが一気に炸裂したのはアルバムの要とも言える「ユリイカ」。アッパーな曲の中に、アルバムタイトルになった<ABRACADABRA>を歌い込み<LOVE><PEACE>と繰り返す。“ABRACADABRA”という言葉は様々な場面で使われるが、疫病退散や治癒を願う呪文でもある。2020年にこの言葉を選んだ意味は言うまでもない。淀んだ空気を切り裂くパワフルな曲は、重たい空気を切り裂く光のようだ。そして最後を彩るバラード「忘却」は、白いスモークの雲がステージからフロアへと流れ落ちる中で、忘れてしまうぐらい穏やかな日々の再来を願う祈りの歌のように、深い余韻を残していった。

 しばしの休憩を挟んでのアンコールは、Tシャツに着替えた今井らに続き櫻井がステージに戻り、リズム隊が力強いビートを叩き出して始まった「Living on the Net」から。今井と星野がアコースティックギターを持つアコースティックバージョンになっていたが、エッジの効いた曲の持ち味はむしろ研ぎ澄まされ、1996年にアルバム『COSMOS』の1曲として発表された時よりもリアルに現在を表していると思わせた。アコギで続けたラテン風味の「Cuba Libre」はハットを被った櫻井がスパニッシュ風のステップを踏み、しばし南欧の開放的な雰囲気に。硬質なサウンドで盛り上げる「ICONOCLASM」では、休憩の間にステージにセットされた定置カメラに映像が切り替わり至近距離でメンバーを映し出した。カメラ目線をしたりポーズを決めたり。こういう時に際立つのは今井だ。カメラ越しに、曲に合わせて腕を振る人たちを見ているかのようだった。

 「ドラム、ヤガミ・トール。ベース、樋口豊。ギター、星野英彦アンド今井寿」と櫻井がイントロに乗せてメンバー紹介した「Memento mori」は力強いコーラスに合わせ櫻井がフロアに向けてマイクスタンドを差し出し、エキゾチックなギターソロに合わせて沖縄民謡風に踊った。「今日はこういうかたちで……。みんな見てるのかな?静かな夜です。またいつか、一緒の空間で遊べることを夢見て、あと1曲で今日は終わります。またお会いしましょう。どうもありがとう」櫻井の締めの言葉からフィナーレを飾った「独壇場Beauty -R.I.P.-」は、スモークに満たされたフロア一面にライトが並び、メンバーは嬉しそうにそれを見ながら演奏していた。終わると今井は「また会いましょう、ピース!」と言ってステージを去り、樋口は「ありがとう、ピース!」と笑顔を見せた。

 無観客配信ライブという特殊な状態だからこそ、アルバム収録曲順に演奏するという緊張感のあるライブが可能になった。このライブとは別に収録した映像作品で彼らは全国23箇所での「TOUR2020 ABRACADABRA ON SCREEN」を敢行する。その映像と、このライブを経て『ABRACADABRA』はひとつの完成を見るのではないかと思う。2020年の特別な状況で生まれたこの作品は、他にはない色をまとって記憶に留まることだろう。

【取材・文:今井智子】
【撮影:田中聖太郎】

tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル BUCK-TICK

リリース情報

ABRACADABRA

ABRACADABRA

2020年09月21日

ビクターエンタテインメント

1. PEACE
2. ケセラセラ エレジー
3. URAHARA-JUKU
4. SOPHIA DREAM
5. 月の砂漠
6. Villain
7. 凍える Crystal CUBE ver.
8. 舞夢マイム
9. ダンス天国
10. 獣たちの夜 YOW-ROW ver.
11. 堕天使 YOW-ROW ver.
12. MOONLIGHT ESCAPE
13. ユリイカ
14. 忘却

セットリスト

「ABRACADABRA LIVE ON THE NET」
2020.9.21 19:00

  1. SE.PEACE
  2. 01. ケセラセラ エレジー
  3. 02. URAHARA-JUKU
  4. 03. SOPHIA DREAM
  5. 04. 月の砂漠
  6. 05. Villain
  7. 06. 凍える
  8. 07. 舞夢マイム
  9. 08. ダンス天国
  10. 09. 獣たちの夜 YOW-ROW ver.
  11. 10. 堕天使 YOW-ROW ver.
  12. 11. MOONLIGHT ESCAPE
  13. 12. ユリイカ
  14. 13. 忘却
  15. 【ENCORE】
  16. EN1.Living on the Net (アコースティックver.)
  17. EN2.Cuba Libre
  18. EN3.ICONOCLASM
  19. EN4.Memento mori
  20. EN5.独壇場Beauty-R.I.P.-

お知らせ

■配信情報

『ABRACADABRA』配信中
https://BUCK-TICK.lnk.to/abracadabra

アルバム『ABRACADABRA』特設サイト
https://www.jvcmusic.co.jp/linguasounda/abracadabra/



■ライブ情報

TOUR2020 ABRACADABRA ON SCREEN
10/03(土)福岡サンパレスホテル&ホール
10/04(日)広島上野学園ホール
10/09(金)高崎芸術劇場 大劇場
10/11(日)宇都宮市文化会館 大ホール
10/18(日)静岡市民文化会館 大ホール
10/24(土)パシフィコ横浜 国立大ホール
10/25(日)昭和女子大学 人見記念講堂
10/31(土)仙台サンプラザホール
11/01(日)LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
11/03(火・祝)ロームシアター京都(京都会館) メインホール
11/07(土)日本特殊陶業市民会館フォレストホール (旧:名古屋市民会館)
11/08(日)神戸国際会館こくさいホール
11/12(木)大宮ソニックシティ 大ホール
11/21(土)倉敷市民会館
11/22(日)サンポートホール高松 大ホール
11/27(金)中野サンプラザホール
11/28(土)中野サンプラザホール
11/29(日)千葉県文化会館 大ホール
12/04(金)札幌市教育文化会館 大ホール
12/06(日)東京国際フォーラム ホールA
12/11(金)ホクト文化ホール 中ホール(長野県県民文化会館)
12/12(土)本多の森ホール
12/19(土)グランキューブ大阪 メインホール
12/20(日)グランキューブ大阪 メインホール
12/26(土)グランキューブ大阪 メインホール

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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