KEYTALK、10年前の楽曲を今の実力で見せつけたオンラインライブ
KEYTALK | 2020.10.05
アーカイブ映像は残さず、“生配信のみ”という形で行われた『4密サウンドでSUTEKI HOME~甘い甘い蜜のよう~2010-2014』。KEYTALKにとって初の試みが満載だったオンラインライブの模様をレポートする。
KEYTALKの活動を辿る映像が2020年から2010年にかけて高速で一気に流れるオープニングムービーを経て、ついにライブがスタート。1曲目が「FREEDOM」で、早速仰天させられた。これはメジャー3rdシングル「MONSTER DANCE」のカップリング。かなりマニアックな選曲だ。そして2曲目もびっくり! 「night focus」は、インディーズ1stミニアルバム『TIMES SQUARE』の曲。今回のライブのタイトルの中に“2010-2014”という文字が含まれていたので、2010年から2014年にかけての作品から選曲しているのはわかっていたが、序盤から予想外の連続だった。3曲目で「フォーマルハウト」が披露された瞬間、全国の熱心なKEYTALKファンが大喜びした様が目に浮かぶ。秋の爽やかなムードが漂うこの曲を今の時期に聴けるのは最高だし、そもそもこれをライブで聴ける機会は最近なかなかない。このオンラインライブが、普段とはかなり趣の異なるものとなることを予感させてくれるオープニングの3曲であった。
序盤の3曲は簡素な電飾で彩られたステージから届けられたのだが、自粛期間中にギターを弾く動画“#わしつなぎ”を毎日投稿していた小野武正(Gt)の様子を再現した「THE 自粛生活 case 1:武正の場合」という映像を経て、ムードは大きく変化した。「PASSION」がスタートした瞬間、色鮮やかなLEDの光に包まれたステージ。背景に映し出されたグラフィックが絶えず変化する中で躍動するサウンドにワクワクさせられた。寺中友将(巨匠/Vo/Gt)と首藤義勝(Vo/Ba)の歌声の黄金コンビネーション、華やかな裏メロを涼しい顔をしながら連発する武正、ドラムを叩くのが楽しくて仕方なさそうな八木優樹(Dr)――百戦錬磨のライブバンドであるこの4人の奏でる音、入念に作り込まれた映像演出、美しいライティングが融合する様は、じっくりと画面と向き合って鑑賞するオンラインライブならではの楽しさを目一杯に噛み締めさせてくれた。
背景だけでなく、天井や床にも映し出され続けた映像は、今回のライブの5人目のメンバー的な立ち位置だったと言っても、それほど誇張ではないだろう。聴覚と視覚の刺激が入り混じっていた世界は、まるでKEYTALKのテーマパーク。胸躍る空間に身を置いている感覚は、その後も続いた。フュージョン的なエッセンスが香るスタイリッシュなサウンドが猛烈にかっこよかった「orange and cool sounds」で興奮した直後、「サイクル」でメジャーデビューした直後の彼らのことをふと思い出し、ひたすらパワプロをプレイしてゲーム実況に勤しむ八木を捉えた映像「THE 自粛生活 case 2:八木の場合」で和み、「MURASAKI」の瑞々しいメロディを聴いて胸キュンキュン。爽やかな疾走感に満ちた「マキシマム ザ シリカ」、印象的なキメどころで手拍子をせずにはいられなかった「fiction escape」……ライブが中盤に差し掛かったこの頃には、全国の視聴者は完全に夢中になっていたはずだ。
YouTubeチャンネル“巨匠部屋”で「筋トレ飽きちゃって。筋トレやめます!」という宣言をしたものの、ダンベルを密かに手にしていた……というオチで締め括られた「THE 自粛生活 case 3:巨匠の場合」を経て、ライブは後半戦に突入。背景にたくさんのブラウン管の画面が映し出されたことにより、MVの世界が再構築されていた「トラベリング」。視聴者のコメント欄が「ララララ~」という文字で埋め尽くされて、バーチャルシンガロングが実現していた「sympathy」。2011年にYouTubeで公開された“振りを付けてみた動画”を再現するかのように、武正と八木が踊りながら増殖する映像が背景で流れたものの、記憶が曖昧らしい八木のダンスがかなり独創的なものとなっていた「a picture book」……片時も目も耳も離せない場面の連続であった。そして、ベランダでひたすら真面目に忍術修行に励む義勝の様子を捉えた「THE 自粛生活 case 4:義勝の場合」を挟み、怒涛の終盤戦へ。
起伏に富みまくった展開が、バミューダトライアングルとアンドロメダ星雲の間を勢いよく行き来するかのようだった「バミューダアンドロメダ」。4人の楽器プレイの聴かせどころが満載だった「blue moon light」。サビに差し掛かった瞬間、「いーえなーい」という大量の文字がコメント欄で躍った「コースター」。そして、「ラスト1曲。みんなで踊りましょう!」と巨匠が言い、最後に届けられたのは「MONSTER DANCE」。光の弾道、火柱、打ち上げ花火の映像で彩られながら高鳴り続けた強力なビートが快感! 八木のホイッスルを合図に<アルバラーバ アルバラーバ>という謎の呪文が始まり、アドレナリン分泌が止まらないクライマックスへと雪崩れ込む……という展開は、通常の形態でのライブでももちろん最高だが、ダイナミックな映像演出と共に体感するのも新鮮な楽しさがあった。
ライブが終了した後は、トークコーナーがスタート。本編中にはMCタイムは盛り込まれていなかったので、ここからいつものような4人の和気あいあいとしたやり取りが繰り広げられていった。「成長しましたね、10年前とかと比べて。やっぱ、全体的なクオリテー? クオリテーがマシマシのマシで」(八木)。「昔の曲を今の僕らでガッツリと表現できたんじゃないかなって思っております!」(武正)。ボーカリストのふたりにとっては、“歌詞を間違えられない”という緊張感もあったらしい。「途中で歌詞を映像で出す演出。あれをやると間違えられない(笑)」(義勝)。「今日、歌詞飛ばさなかった。俺、いつもなんで歌詞を飛ばすかというと、目の前のお客さんと目が合うから」(巨匠)――歌詞を突然忘れさせる魔物“妖怪 歌詞飛ばし”がKEYTALKのライブに頻繁に現れることを、ファンのみなさんはよくご存知だろう。しかし、今回はなんとか無事だったようだ。
抽選で選ばれたファンクラブ会員とZoomで会話をしたり、最新曲「流線ノスタルジック」のMVが初公開されたりもしたトークコーナーの終盤では、10月31日に無観客オンラインワンマンライブ『4密サウンドでSUTEKI HOME~甘い甘い蜜のよう~2015-2020』が開催されることも発表された。次回もファンの「これ、聴きたかった!」というツボを突きまくるセットリストとなるのだろう。映像やライティングなども含めた演出への期待も膨らむ。みなさん、お見逃しなく!
【取材・文:田中大】
セットリスト
オンラインワンマンライブ
「4密サウンドでSUTEKI HOME~甘い甘い蜜のよう~」2010-2014
2020.09.26
- 01.FREEDOM
- 02.night focus
- 03.フォーマルハウト
- 04.PASSION
- 05.orange and cool sounds
- 06.サイクル
- 07.MURASAKI
- 08.マキシマム ザ シリカ
- 09.fiction escape
- 10.トラベリング
- 11.sympathy
- 12.a picture book
- 13.バミューダアンドロメダ
- 14.blue moon light
- 15.コースター
- 16.MONSTER DANCE
お知らせ
KEYTALKオンラインライブ
「4密サウンドでSUTEKI HOME~甘い甘い蜜のよう~」2015-2020
2020/10/31(土)OPEN 19:30 / START 20:00
2daysワンマンライブ
2021/01/09(土)・10(日)東京 国立代々木競技場第一体育館
大阪文化芸術フェスpresents
OSAKA GENKi PARK
2020/10/10(土) 大阪 万博記念公園
Nothing’s Carved In Stone presents
“Hand In Hand Tour 2020”
2021/02/12(金) 広島 広島CLUB QUATTRO
ARABAKI ROCK FEST.20×21
2021/04/29(木・祝)・30(金)・05/01(土)・02(日)宮城 みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。