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「ハンブレッダーズの“ライブハウスで”見るラジオ」を観てわかること

ハンブレッダーズ | 2020.10.28

 ロックバンド・ハンブレッダーズのトーク&アコースティックライブツアー「ハンブレッダーズの“ライブハウスで”見るラジオ」の東京公演が、10/17にZepp DiverCity Tokyoにて行われた。「ハンブレッダーズの見るラジオ」とは、ハンブレッダーズが今年6月からスタートさせた、YouTubeでの配信番組のこと。そして今回のツアーは、全国10ヵ所のライブハウスで全席指定の1日2公演(夕方の部・夜の部)を開催するというものだ。当記事は、東京公演がツアーの序盤ということもあり、これからツアーに参加するという人にも読んでもらえるようにライブに関する記述は一切なし。東京公演の「夕方の部」のトークの様子やイベントの雰囲気を中心に書き記していくので、安心して読んでいただきたい。

 パイプ椅子がズラリと並んだ会場は、換気の為に終始解放されていた扉から入り込む、ひんやりとした空気に包まれていた。会話が飛び交うこともなく、静寂が漂う会場の光景は今までとは異なるものではあったが、会場に入った瞬間に沸き起こった個人的な感情は、「あぁ、ライブハウスだ!」という喜びだった。この日のライブを観に来た人の中には、世界がコロナ禍に見舞われて以降初めてライブハウスに訪れたという人も多かっただろうし、だからこそ会場に居た人の誰もがきっと同じような高揚を感じたのではないかと思う。そうした静かなる興奮が立ち込める中、開演時間になると、木島(Dr)、でらし(Ba/Cho)、ムツムロ アキラ(Vo/Gt)の順にステージに登場し、アコースティックライブがスタート! この日はライブ~トーク~ライブという流れで進行していき、前半のライブを終えた後のトークコーナーの冒頭では、でらしから「今回の企画は、僕たちがYouTubeでやっている“見るラジオ”のライブハウスVer.ということでスタートした企画です。ライブができない状況になってしまった半年間だったけど、“今、どんな形だったら自分たちを発信していけるのか?”ということを色々と考えた末に、こういう形になりました」と、企画の主旨が語られた。

 できることならいつも通りのライブをしたい/観たいという気持ちは、バンドにもオーディエンスにももちろんあるだろう。けれど、その欲望に駆られることなく未来と現状を見据えて、最善を考え尽くしてこのような形のツアーを開催してくれたんだということを、実際に会場に訪れて強く感じたし、何よりこの「全席指定のトーク&アコースティックライブ」という形態は、来場者としても安心感があった。大声を出したり身体を動かしたりといったフルテンションでのやりとりはできなくとも、互いにじっくり向き合い、それぞれのリアクションをその目で確かめられるという現場ならではの空気感を共に感じ合いたい――「目の前に、自分たちの曲を聴いてくれる相手がいる」というライブの醍醐味を愛し、大事にしながらここまで活動を続けてきたハンブレッダーズの信条が、この企画を生んだのだろう。

 そして、構成作家の深澤さんを交えたトークコーナーでは、2014年1月に行われたとあるオーディションライブに参加して以来の訪問となったZepp DiverCity Tokyoについての話や、メンバーによる今年の健康診断の感想(全員採血が苦手らしい)、さらには事前にメールにてファンから募集していた「腹が立つこと」に対して続々と回答。「ゲームをする恋人の精神年齢が低くなる」や「自分がやっているバンドで、新しい曲を作ってメンバーに送った時のレスポンスが遅くてそっけない」といった、様々な想いのこもったひとつひとつのメールに対して笑いを添えながらしっかりと答えていくメンバー。その様子はまさにラジオの公開収録といった雰囲気で、トーク力とツッコミ力のある3人が終始楽しませてくれた。

 そんな楽しい雰囲気で会場が明るく包み込まれる中、ムツムロは後半のライブの終盤に「この期間中に決意が新たになったよね。どんどんやっていこうっていう。だから、ずっとハンブレッダーズを続けていくと思いますので、安心していてください」と告げた。曲を作り、各地でライブを行うバンドにとって、今回の非常事態は相当厳しい出来事だったと思うけれど、彼らはそれに屈することなく「前に進んでいく」と決めて、その先駆けとして今回の全国ツアーを敢行している。YouTubeで配信できるものを、敢えて自らの身体を使って全国に届けに行くという彼らの行動からは、「挫けてなんていられるか!」という心強さを感じた。ライブ環境がいつもと違うことに対する寂しさはあっても、前向きに考えれば、それは「特別感」とも言い換えられる。ホールではなくライブハウスで、椅子に座ってじっくりとハンブレッダーズの音楽やメンバーが会話する姿と向き合えるという機会は、もしかしたら今の状況だからこそ体験できるものなのかもしれない。そうポジティブに思わせてくれるのもまた、ハンブレッダーズの力が故なのだと思う。そうした「ここから先」へ向かおうとしているハンブレッダーズの心意気と底力を感じさせる、未来を照らすようなライブイベントだった。

【取材・文:峯岸利恵】
【Photo by タマイシンゴ】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル ハンブレッダーズ

リリース情報

配信限定Single「ライブハウスで会おうぜ」

配信限定Single「ライブハウスで会おうぜ」

2020年04月20日

TOY’S FACTORY

01.ライブハウスで会おうぜ

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お知らせ

■ライブ情報

ハンブレッダーズの“ライブハウスで”見るラジオ
※終了した公演は割愛
10/31(土)大阪 なんばHatch
11/02(月)宮城 仙台MACANA
11/07(土)京都 京都nano
11/14(土)石川 金沢van van V4
11/22(日)福岡 福岡BEAT STATION
11/28(土)岡山 岡山ペパーランド
12/06(日)栃木 宇都宮HEAVEN’S ROCK

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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