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三月のパンタシア、「大丈夫」という言葉が未来を照らしたオンラインライブ

三月のパンタシア | 2020.11.02

 「きっと大丈夫だよ」「大丈夫だからね」「大丈夫。きっと大丈夫」――。三月のパンタシアのニューアルバム『ブルーポップは鳴りやまない』の音盤と小説による物語に登場する主人公たちは、言えない思いを胸に抱えながらも、何人もが、この「大丈夫」という言葉を口にしていた。この言葉が持つ不思議な力と意味を改めて感じさせられるライブだったと思う。

 三月のパンタシアにとって初のオンラインライブ『ブルーポップは鳴りやまない』。3月に開催予定だった初の主催イベント『三月春のパン(タシア)祭り』が中止となったため、ボーカルのみあにとっては1月25日に豊洲PITで開催されたLIVE2020『18時33分、冬もまた輝く』以来、約9ヵ月ぶりのワンマンライブとなっていた。

 リリックビデオをミックスしたオープニング映像に続き、バンドを従えてステージに立つ彼女の姿が映し出された。真っ白なパーカーには、波のようなブルー、ピンク、シルバーのフリルが縫い付けられている。足元は、三パシのトレードマークとなっている真っ赤なスニーカー。夏に始まった恋に向かってひたむきに全力疾走する女の子を描いた青春ギターロック「サマーグラビティ」で、みあ自身が走り出しそうなほどの勢いでライブをスタートさせた。彼女は、カメラに向かって「今夜だけの特別な秘密の夜を過ごしましょう」と語りかけ、小説『8時33分、夏がまた輝く』のオープニング&エンディング主題歌である「いつか天使になって あるいは青い鳥になって アダムとイブになって ありえないなら」「恋はキライだ」を続けて披露。こぶしをあげ、ジャンプして煽った2曲では、画面上にイラストとリリックが重なり、画面比率がシネマスコープになるなど、まるで映画を観てるような感覚になるオンラインならではの演出もあった。

 そして、本音を隠す傘を取り払い、雨の中を飛び跳ねるかのようにパフォーマンスした「パステルレイン」を歌い終えると、プールサイドへと移動。フューチャーベースを取り入れたエレクトロニカ「ミッドナイトブルー」では、サウンドの浮遊感を、プールに浮かぶ光るビーチボールでも表現。「群青世界」では<たった ひとつの色に染まって>というフレーズに合わせて、ビーチボールとポールが一斉にブルーに変化。走ってメインステージに戻った彼女は、再びバンドに合流。ポップロック「逆さまのLady」では水玉が弾ける画面越しにフリルをひらひらと揺らし、ジャンプしながらクラップをして盛り上げた。

 「ここからも様々な温度で、様々な彩度で、ブルーポップな音楽を紡いでいきます」というMCから、頭の中に思い浮かぶ情景が変わったような気がした。穏やかな幸せを綴った「たべてあげる」では、パンとコーヒー。ライティングとみあの吐息が印象的だった「透明色」ではグラス。夜のライブハウスを舞台にしていた「煙」ではタバコの煙と白い息。聴き進むうちに“君”の口元が立ち現れ、温度や匂いまで感じることができたような気さえした。やがて、みあはVIPルーム前のバルコニーへと移動。“病み曲”と呼ばれているジャジーな「不揃いな脈拍」では、時にはスタンドマイクを使い、時にはソファに座り、全てを達観した空虚さと情緒が暴発しそうな衝動を交差。三パシ流の王道バラード「青い雨は降りやまない」では憂鬱な気持ちを濡らす雨雲を吹き飛ばすかのようなエモーショナルな歌声を響かせた。

 ライブの後半には、観客と一緒に、同じ空間と同じ時間で楽しむことを想定して作られた楽曲がまとめられていた。線画となったイラストと生のライブパフォーマンスが融合した「青春なんていらないわ」。イントロから高揚感が掻き立てられ、画面には桜吹雪が待っていた「醒めないで、青春」。そして、クラップやコーラスが入っている「三月がずっと続けばいい」。みあをクラップを煽り、手を左右に大きく振りながら歌い、「三月がずっと続けばいい」ではチャットを通した「ららら」の大合唱も巻き起こった。また、この3曲は、“終わりと始まりの物語を空想する”ボーカリスト・みあによる音楽ユニットである三月のパンタシアが、やがて訪れる“終わり”に激しく抵抗する共通点も持っている。<今に置き去りがいい>と歌う「青春なんていらないわ」。<どうかどうかこのままで/終わらせないで>と願う「醒めないで、青春」。そして、叶うことがないとわかっていながらも<いっそ このまま いられたら>と空想する「三月がずっと続けばいい」。私とあなたの秘密を探した楽曲の最後に、彼女は大きく“はぁ”とため息をつくと、顔を上げて<「なんてね」/「じゃあ、さよなら」>と伝え、走ってステージから去っていった。ここでライブも終わりかと思いきや、再びライブTシャツに着替えて戻ってきた彼女はカメラに向かって少し長めに話した。

 「今年は世界中が予想だにしなかった事態が起きて。そもそも明日の行方なんて、誰にも分からない世の中ではあるんですけど、さらに未来が暗闇に覆われてしまって。なんかわからないけど不安に思ったり、どこか孤独を感じたり、寂しいなと思ったり……。そういうことをそれぞれが抱えながら生きていく毎日の中で、じゃあ、今、三月のパンタシアとして何を伝えたいのか、何を届けたいのかを改めて向き合った時に、一人一人が抱えているブルーな気分というものに寄り添えるような音楽が作りたいなと思って、今回のアルバムを制作しました。その音楽たちを今日、私とあなただけの特別な距離感の中で届けられることを本当に嬉しく思います」(みあ)

 観客への感謝の言葉を伝えた彼女は、バンドメンバー紹介を経て、最後に「今日を紡ぐことでさえ大変な毎日ですけど、今日の夜の輝きで私たちはちゃんと繋がれてるから大丈夫です。大丈夫。これは、私自身にも言ってる言葉ですね。うん、大丈夫。大丈夫です。ちゃんと私が守るので、大丈夫です。ふふ」と、“大丈夫”と5回繰り返し、みあとファンの一対一の物語を描いたラストナンバー「ランデヴー」へ。画面を通したファンと共に歌い、踊り、思い切りはしゃぎ、<物語はまだまだ続いていく>という再会の約束を込めたフレーズを私たちの心に置き、大きなジャンプとともに初めてのオンラインライブを締めくくった。

 1年前には全く予想していなかった現在になっているのだから、未来はきっと誰にもわからない。でも、私たちはきっと大丈夫。物語はまだまだ続いていく。みあが贈ってくれた言葉を何度も胸で繰り返しながら、彼女が紡ぐ物語の続きを楽しみに待ちたい。

【取材・文:永堀アツオ】
【photo by Viola Kam (V’z Twinkle)】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル 三月のパンタシア

リリース情報

ブルーポップは鳴りやまない

ブルーポップは鳴りやまない

2020年09月30日

SACRA MUSIC

01.いつか天使になって あるいは青い鳥になって アダムとイブになって ありえないなら
02.恋はキライだ
03.サマーグラビティ
04.逆さまのLady
05.醒めないで、青春
06.たべてあげる
07.ミッドナイトブルー
08.青い雨は降りやまない
09.不揃いな脈拍
10.煙
11.透明色
12.ランデヴー

セットリスト

LIVE2020『ブルーポップは鳴りやまない』
2020.10.23

  1. 01.サマーグラビティ
  2. 02.いつか天使になって あるいは青い鳥になって アダムとイブになって ありえないなら
  3. 03.恋はキライだ
  4. 04.パステルレイン
  5. 05.ミッドナイトブルー
  6. 06.群青世界
  7. 07.逆さまのLady
  8. 08.たべてあげる
  9. 09.透明色
  10. 10.煙
  11. 11.不揃いな脈拍
  12. 12.青い雨は降りやまない
  13. 13.青春なんていらないわ
  14. 14.醒めないで、青春
  15. 15.三月がずっと続けばいい
  16. 16.ランデヴー

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