PELICAN FANCLUB「この瞬間を後悔なく生きよう」――エモーションが溢れたワンマンライブ
PELICAN FANCLUB | 2020.11.12
あれ、PELICAN FANCLUBってこんなに熱かったっけ? そんなふうに思ってしまうほど、エモーションがだだ漏れのライブだった。それはそうだろう。いうまでもなく、新型コロナウイルスの影響で軒並みライブが中止や延期になり、彼らもワンマンライブを行うのは今年1月の「三原色」リリースツアー以来。この日行われた「PELICAN FANCLUB DX ONEMAN LIVE "NEW TYPE"」も、本来であれば5月に開催されるはずだった。その溜まった鬱憤を晴らすかのごとく、エンドウアンリ(Gt/Vo)は叫び、カミヤマリョウタツ(Ba)とシミズヒロフミ(Dr)は力強いサウンドを奏で続けた。バンドの、負けないという確固たる意思とファンへの思いが溢れる、すばらしいライブだった。
この“NEW TYPE”は、彼らのアートワークを多く手掛けてきたグラフィックデザイナー/アートディレクターのGraphersRockと空間演出集団huezとのトリプルコラボレーションイベント。ステージにはグラフィカルな映像が投影され、サウンドとビジュアルが一体となって彼らの楽曲の世界観を伝える鮮やかなショウとなった。しかしそのコンセプトをロックバンドの熱量が超えるような瞬間が、何度も訪れたのだった。
開演時刻、緑の光がステージを浮かび上がらせるなか、登場した3人。スクリーンに映し出されているのは、リサイクルのマークをモチーフにしたメンバーそれぞれのイニシャル。一瞬の間をおいて、「Amulet Song」の轟音が鳴り響く。映像のコラージュとイベント名がそのガツンとしたロックサウンドを後押しし、テンションは否が応でも高まっていくのだ。
「渋谷、高層ビル、ネオン街……そのなかで僕たちは君に歌います。君たちが主人公です。ようこそ“NEW TYPE”へ」。そう宣言するエンドウの髪は、しばらく見ないあいだにすいぶん伸びたみたいだ。続けて「Dali」から「Telepath Telepath」へと初期の代表曲をつなぐと、エンドウはステージの真ん中に進み出て「東京!」と叫ぶ。序盤から、感情が先走るような熱演である。
ここで投下されたのが、TVアニメ『炎炎ノ消防隊 弐ノ章』の第2クールエンディング主題歌としてオンエアされている新曲「ディザイア」。カミヤマが拳を高々と挙げてフロアを煽る。ルール上、声を出したり歌ったりはできないが、それに応じるようにオーディエンスからも次々と手が挙がる。真っ赤なライトが光る中、これまでの彼らの楽曲にはなかったほどのストレートなロックサウンドが唸りを上げる。
「音楽って見えないものだからこそ、いろんなところに届くなって思うんです。見えないいろんなところに届いていく音楽、今日はその音楽で皆さんの心をハッキングします」というエンドウの言葉とともに突入した「ハッキング・ハックイーン」、「喋れないけど踊れるよね?」という問いかけとともに鳴らされた「ハイネ」、カミヤマが弾くシンセサイザーがきらびやかな世界を描き出した「Gradually」から優しいワルツのリズムが広がった「to her」へ……多彩な映像とコラボレーションしながら、バラエティ豊かな音楽が次々と繰り出されていく。それはまるで、PELICAN FANCLUBの音楽で、バランスを欠いた世界の現状を塗り替えていくようなパフォーマンスだった。内省的な色合いも強い彼らの楽曲が、こんなにもオープンに鳴り響くのかと驚く。
ライブも終盤に差し掛かったころ、「ぼくたち、今日でメジャーデビュー2周年です」とおもむろに告げるエンドウ。「数字って関係ないとか言われるとそうなのかな?って思うけど、数字が積み重なってくってことは未来があるってことだと思うんですよ。苦しいこと、いろんなことは今日のためにありました。でもこの日のためというのは明日からのためのこの日なんです。つまり何が言いたいかというと、この瞬間を後悔なく生きようということです」。バンドを続けてきた意味、そしてこの2020年という困難な時代にこうして音楽を鳴らす意味をそう語ると、<君がいるからどこまでも行こう/震えて待てよ開戦前夜>と歌う「Night Diver」を堂々と鳴らした。そして「ノン・メリー」を経て「三原色」へ。バンドのことを歌い込んだ今のPELICAN FANCLUBのテーマソングだ。
本編最後は「他人同士が一つの音楽で集まる、その繋がりが尊くて、大事にしたいと思っています」と告げて披露された新曲。メンバー3人のユニゾンボーカルが力強い楽曲だった。この曲だけでなく、この日はシングル「ディザイア」に収録される「Day in Day out」や「Gradually」に加え、もうひとつ新曲が披露された。そちらもパワフルなリフが圧倒的な迫力を放ついい曲だった。PELICAN FANCLUBが、一層タフな思いを込めてロックをしていることが、これらの新曲からは伝わってきた。
アンコールでは「懐かしい曲をやります」と言って演奏された「Dancing Queen」を皮切りに、「ベートーヴェンのホワイトノイズ」と「記憶について」を披露。12月に彼らの原点である千葉LOOKで2日間(1日目は有観客、2日目は無観客配信)にわたって開催するワンマンライブ「PELICAN FANCLUB -千葉市並行-」の開催を発表し、大きな拍手を浴びた。「君たちの表情はわかるから、それだけでやる意味があった」――マスク着用必須、ソーシャルディスタンスを保ちながらフロアに立つ観客と相対するのは、バンドにとっても勝手が違っただろう。だが、エンドウの言葉からは久しぶりのワンマンライブで得た手応えが確かに感じられた。「ライブをやるようになって、人の目を見て話せるようになった。僕いま、人間好きなんです」という彼の言葉には、この場と体験を絶対に絶やさないという信念が滲み出ていた。
【撮影:伊藤惇】
リリース情報
ディザイア
2020年11月25日
Ki/oon Music
02.Day in Day out
03.Gradually
セットリスト
DX ONEMAN LIVE “NEW TYPE”
2020.11.07@WWW X
- 01.Amulet Song
- 02.Dali
- 03.Telepath Telepath
- 04.ディザイア
- 05.ハッキング・ハックイーン
- 06.VVAVE
- 07.7071
- 08.ハイネ
- 09.新曲
- 10.Day in Day out
- 11.Gradually
- 12.to her
- 13.Night Diver
- 14.ノン・メリー
- 15.三原色
- 16.Girlfriend In A Coma
- 17.新曲
- EN1.Dancing Queen
- EN2.ベートーヴェンのホワイトノイズ
- EN3.記憶について
お知らせ
PELICAN FANCLUB -千葉市並行-
12/17(木)千葉 千葉LOOK
PELICAN FANCLUB -千葉市並行- × ゼロ距離配信ライブ DREAM DAZE
12/18(金)千葉 千葉LOOK
Dive/Connect @ Zepp Online
11/24(火)20:00
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。