DUSTCELL、初の有観客ワンマンライブで見せつけた創造性の高さと可能性
DUSTCELL | 2020.11.25
2019年10月、突如KAMITSUBAKI STUDIOからデビューしたDUSTCELL(ダストセル)。カルチャーシーンにめっぽう詳しいボーカロイドプロデューサーでありコンポーザー / プロデューサーであるMisumiと、歌い手としても活躍してきたシンガーEMAによる“美と狂気”をコンセプトとした2人組ユニットだ。
昨今のネット発音楽シーンは邦楽アーティストからの音楽的影響が強くみられるが、DUSTCELLは洋楽的なダンスミュージック、トラップやヒップホップ、K-POPなどからの影響を強く感じられ、ダークかつエレクトロニックな質感を持ちながらも、耳に残るメロディアスなサウンド構築力が魅力だ。5月にリリースした傑作・1stアルバム『SUMMIT』を聴けば、あなたにもその才能が伝わるはずだ。サウンドセンスはもちろん、アートワークでの退廃的なデストピア感、歌詞における疎外感や挫折を描いたリリックは、誰もが心の奥底に抱えていた行き場のない闇を受け止めてくれるかけがえのない存在となるだろう。
DUSTCELLというユニット名は、“DUST(ゴミ、埃)”と“CELL(細胞)”という言葉を合わせた造語だ。デビュー曲「CULT」は、多重人格を題材としている映画『ファイト・クラブ』にインスパイアされて作られ、投稿後わずか3週間で100万再生を突破。現在では400万再生を超えている。2作目の「STIGMA」も早々に200万再生を突破。その後もハイスペースで楽曲を生み出し続けている。シーンに新しい風を送り込む希有な才能なのだ。
なお、ボカロPとしても知られるMisumiはソロ作品「狂う獣 feat.初音ミク」でも100万再生を突破するなど、クリエイター、作家としての可能性にも注目したい。
シンガーEMAは、同じく注目度の高い3人組バンドWEAKEND WALKERではゲストシンガーとして客演。超絶ハイトーンな歌声を聴かせるなど、メンバーそれぞれ活動の幅を自由に広げている。
実は、DUSTCELLは7月31日に初ワンマン『DUSTCELL 1st ONE-MAN LIVE「SUMMIT」』(渋谷WWW)の開催をオンライン限定で行なっていた。新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、急遽、無観客配信となったのだ。ゆえに、今回初の有人でのワンマン公演となる恵比寿LIQUIDROOMでの『2nd ONE-MAN LIVE「HOWL」』への意気込みは並々ならぬものがあった。
定刻を過ぎてドラムンベース調のビートが鳴り響くフロア。ライブ本編は、EMAによる「DUSTCELLです!」の声で1曲目がスタートした。EMAによるラップがビートを牽引するRPGなどゲームをテーマにリリックが加速する「LAZY」をプレイ。ポジティビティ感じるサウンドに引き篭もり感あるメッセージが重なるのがエモい。中毒性高いフレーズの応酬、今にも泣き出しそうなEMAの歌声に、DUSTCELLならではの次世代ポップチューンの快楽ポイントの高さを感じた。
ステージ前には、アーティストとオーディエンスの間に透過LEDモニターが設置され、映像やリリックが同期するビジュアルが圧巻。高揚感高まるダンサブルなサウンドの圧に、ニューノーマルのルールを意識してか、声を上げずに盛り上がるオーディエンスたちが印象的だった。
要注目は、ピアノによる跳ねるイントロダクションからはじまる「Heaven and Hell」だ。曲のアクセントにサンプラーMPCを操るMisumi、リアルでの歌唱が不可能に感じる難しい楽曲作品をEMAが、拡声器片手に歌い上げていくパワフルなシーン。“最旬”を感じるナンバーだ。
EMA「こんにちは、こんばんは!DUSTCELLです」
Misumi「こんばんは!」
EMA「みんな元気ですか?」
Misumi「元気?」
と、問いかけるDUSTCELLのふたり。EMAが「今日は、活動1周年のライブなんですけど。新曲もやります。今日、はじめて皆さんの顔をみたんですけど」と言えば、Misumiが「感慨深いな」と答える。そう、これまでYouTubeや配信などネット上をメインに活動していたこともあり、オーディエンスとライブで対面するのは今日が初めてなのだ。
「今日は今日しかないので、僕たちは全力で伝えるので君たちも全力でのっかってきてください」と、EMAのMCに続いて四つ打ちでたゆたうようにビートを展開していく「DOMINATION」。EMAのラップは聴くものの感情にダイレクトに響く。
さらに、新曲も披露。ドープなグルーヴを聴かせる低音の効いた「perfectionist」。畳み掛けるボーカル、跳ねるリズムがシリアスに攻めまくるトラップ・チューン「Mad Hatter」が超絶クールだ。そして、キュートなトラックメイクが印象的な「PAIN」では、顔出ししないメンバーのシルエットが青い照明の光とともにまばゆく垣間見えた。
オーラスへ向かう「ONE」では、K-POPでよく取り入れられるブロステップ要素を強く感じた。「ONE」というタイトルには“孤独”という意味がかかっており、以前Misumiが観た映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』からの影響で生まれたナンバーだという。そして、サビでエモーショナルにスパークする「DERO」、「FAKE」へと駆け抜けていく。
アンコールでは、まずはポエトリーなテイストで感情をアップリフトする新曲「独白」を初披露。メンバーも気に入っているという最新曲。EMAのMC「今までいっぱい歌ってきたんですけど、はじめて生身の人間がいて、聴いてくれるのが嬉しくて。正直最近死んでいたんだよね、メンタルが。僕は長生きできないなって思っていたんだけど。でも、なんかこれからも音楽をやっていきたいなと思いました。ありがとう!」という素直な言葉に感情が震える。
そして、デビュー曲「CULT」、日本のボカロ文化圏から生み出された作品の魅力をDUSTCELLというフィルターを介在しながらも集約したダークなポップチューン「アネモネ」と、人気曲が続いていく。
MCで「12月23日に、今日やった新曲『Mad Hatter』のミュージックビデオと配信が決まりました!」とEMAが嬉しそうに伝える。拍手でいっぱいのフロア。「また新しい感じのDUSTCELLの一面をみせられた1曲になっています。映像もすごいよ!」と、テンション高めに伝えるMisumi。ラストは疾走する跳ねるビートが気持ちのいい解放感でいっぱいのギターチューン「STIGMA」で大団円へ。
初の有観客ライブということで、オーディエンスとの距離感を掴みとれないところはあったかもしれない。ライブはプレミアチケットとなったが、フィルターバブルの時代、数百万再生を超える作品を連発しながらも、まだまだ知る人だって多くはないかもしれない。しかし、そんなことを差し引いてもDUSTCELLが生み出す創造性の高さには、新しい可能性を感じた。2021年へ向けて、さらなる活躍を期待したい。
【取材・文:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】
【Photo by:Ryozzy。】
【Photo by:Ryozzy。】
リリース情報
SUMMIT
2020年05月20日
KAMITSUBAKI RECORD
01.CULT
02.アネモネ
03.SOIREE
04.DOMINATION
05.狂う獣
06.Heaven and Hell
07.SOPPY
08.LAZY
09.LILAC
10.ONE
11.STIGMA
12.終点
■アートブック(表紙含め全32P)
■アクリルキーホルダー
■缶バッジセット(3個)
■ステッカーセット(4枚)
02.アネモネ
03.SOIREE
04.DOMINATION
05.狂う獣
06.Heaven and Hell
07.SOPPY
08.LAZY
09.LILAC
10.ONE
11.STIGMA
12.終点
■アートブック(表紙含め全32P)
■アクリルキーホルダー
■缶バッジセット(3個)
■ステッカーセット(4枚)
セットリスト
2nd ONE-MAN LIVE「HOWL」
2020.11.15@LIQUIDROOM
- SE.白亜
- 01.LAZY
- 02.SOIREE
- 03.Heaven and Hell
- 04.DOMINATION
- 05.perfectionist(新曲)
- 06.狂う獣
- 07.オルターエゴ
- 08.Mad Hatter(新曲)
- 09.PAIN
- 10.SOPPY
- 11.ONE
- 12.DERO
- 13.FAKE
- EN1.独白(新曲)
- EN2.CULT
- EN3.アネモネ
- EN4.STIGMA