有観客+オンラインで配信されたTHE BACK HORN「マニアックヘブンVol.13」
THE BACK HORN | 2020.12.09
THE BACK HORNが「マニアックヘブンVol.13」を12月6日に新木場STUDIO COASTで開催した。これは配信ライブでもあるが1年ぶりの有観客ライブであり、ソーシャルディスタンスを保った500人のオーディエンスを前にメンバー4人は実に嬉しそうに演奏していた。
「マニアックヘブン」は、ツアーやイベントで演奏する機会が少ない曲に日の目を見せようとメジャーデビュー5年目の2005年に始まったシリーズで、レアな曲に加えてカバーをやったりメンバー考案のスペシャルドリンクが出されたりと、年1回のお楽しみ会といった趣きのものだ。昨年は8月に福岡・東京・岡山で行ったので、今回は1年4ヵ月ぶりになる。また年1回、レアな曲を聴きたいというコアなファンとの密かな楽しみめいたところもあるマニアックヘブンを今回は配信を通じて全世界に伝えることになるわけで、いつもとは違ったテーマになったようだ。
8月に配信した「『KYO-MEI MOVIE TOUR SPECIAL』-2020-(スタジオ編)」、9月の「『KYO-MEI MOVIE TOUR SPECIAL』-2020-(ライブハウス編)」と、ライブに行けない観客=視聴者を満足させるいいライブを見せてくれてきた。それでも彼らのようにフィジカルなライブが本領のバンドにとって、観客がいないライブはどこか寂しさも感じた。カメラ越しに呼びかける切実さ、画面越しにそれを見る嬉しさと切なさは、こんな状況ならではのものではあったけれど。
18時ちょうどにヘヴィなSEが流れ、ボイスチェンジャーを使った歓迎のアナウンスが幕開けを告げると拍手に迎えられメンバーが登場した。久しぶりに会った友達のように少々ぎこちない空気も漂いながら、バンドもオーディエンスも大きな期待を抱いていることが感じられた。
ラジオノイズのようなイントロで始まった「フラッシュバック」から、「マニアックヘブン」史上でも屈指のマニアックなセットリストでのVol.13はスタート。<地球の空気を全部 奪い去る神の愛>という歌い出しが、閉塞感が半端ない昨今の日々に重なり、<光照らす世界へ/心揺れる世界へ>と歌う山田将司(Vo)の瞳が、抑えた照明の中でぎらりと光った。これに続いたのは岡峰光舟(Ba)が赤いLEDがネックに光るベースを響かせた「カラス」。レゲエ調の曲が多かったのは、気軽に動くこともままならなかった2020年を表していたのだろうか。
松田晋二(Dr)が最初のMCで言った。「今回はオンラインでお届けしています。それぞれの場所で楽しんでますか? 会場にきてくれた皆さんありがとうございます。今年ならではの新たな楽しみ方を共有して、ライブは最高だな、音楽は最高だなと実感できる夜にしたいと思います」 いつもなら大歓声が起きるところだが、松田はフロアを見渡して「いっぱい頷いてくれてる。配信の人もいいねって」と笑顔を見せた。ルールを守って楽しんでいるオーディエンスの様子にバンドも気合が入ったようだ。菅波栄純(Gt)が弾いたジャジーなセッションから曲に進んだ「野生の太陽」で山田はドラマチックに歌を聴かせ、もう1段ギアを上げた「再生」では4人の気持ちが共鳴した力強い演奏に引き込まれた。そんな演奏の後に山田が「久しぶりのライブでテンション上がって尻がつった」と告げて笑いを誘った。
以前なら一気に加速した後半も、この日はじわじわと熱量をあげていく。シアトリカルな「シアター」やインディーズ時代の無骨さが蘇る「怪しき雲ゆき」など、彼らの足跡を感じると同時に首尾一貫したバンドの色があることを改めて感じさせられた。本編最後はシングル「世界樹の下で」のカップリング曲「サイレン」。4人がひとつになり観客と一体となった。
1年ぶりの有観客ライブに4人は気持ちを新たにしたようだ。岡峰は自分たちのライブを食事にたとえて、これまでは作ってお客さんに出す一方だったのが、今は一緒に味わってる気がすると率直に言った。松田が「オンラインと会場を繋げる手応えを感じました」と言い、山田は「ライブによって生かされてると思った。みんなもそうだと思う。またライブを、エネルギーの交換をストレスなくやれる日が来ることを目指して、頑張っていきましょう」と告げた。
アンコールは、「マニアックヘブン」ならではの松田がセンターで朗読する「天気予報」、13年前にラジオ番組の企画で受験生に向けて作った「舞い上がれ」、そして山田が「また会場でみんなと会えるその日まで」と言い「さらば、あの日」。今のような日々が、過ぎ去った”あの日”になるまでTHE BACK HORNは止まらない。
【取材・文:今井 智子】
【撮影:Rui Hashimoto[SOUND SHOOTER]】
リリース情報
Digital Single「瑠璃色のキャンバス」
2020年06月24日
Speedstar
セットリスト
マニアックヘブンVol.13
2020.12.06@新木場STUDIO COAST
- 01.フラッシュバック
- 02.カラス
- 03.ダストデビル
- 04.野生の太陽
- 05.プラトニックファズ
- 06.人間
- 07.再生
- 08.シアター
- 09.風の詩
- 10.飛行機雲
- 11.怪しき雲ゆき
- 12.ミスターワールド
- 13.旅人
- 14.サイレン
- EN1.天気予報
- EN2.舞い上がれ
- EN3.さらば、あの日
お知らせ
9mm Parabellum Bullet
「荒吐20th SPECIAL -鰰の叫ぶ声-」東京編
2021/01/19(火)昭和女子大学人見記念講堂
THE BACK HORN
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2021/01/20(水)昭和女子大学人見記念講堂
「KYO-MEIワンマンツアー」
カルペ・ディエム~今を掴め~
[2021年]
01/29(金)札幌PENNY LANE24
02/07(日)金沢EIGHT HALL
02/11(木祝)京都磔磔
02/21(日)高松MONSTER
02/23(火祝)高知X-pt.
03/04(木)新木場STUDIO COAST
03/07(日)HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
03/12(金)心斎橋BIGCAT
03/19(金)水戸LIGHT HOUSE
03/25(木)名古屋DIAMOND HALL
04/02(金)鹿児島CAPARVO HALL
04/04(日)umeda TRAD
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。