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デビュー11周年を記念した極上のスペシャル公演、第2部の模様を徹底レポート!

androp | 2020.12.16

 この12月でデビュー11周年を迎えるandropが、有観客&配信による昼夜2部制のアニバーサリーライブ「androp -11th Anniversary Special Live- at Billboard Live」を12月13日(日)にBillboard Live TOKYOで行った。第1部はオフィシャル会員サイト「androp member page」のメンバー限定で、第2部は一般の観客も参加できる形で、それぞれセットリストを変えて開催されたスペシャルなライブ。本稿では、第2部(夜公演)の模様をレポートする。

 定刻になると、メンバーが静かにステージへ登場。内澤崇仁(Vo/Gt)、佐藤拓也(Gt/Key)(以下、佐藤)、前田恭介(Ba)、伊藤彬彦(Dr)に加え、サポートに佐藤雄大(Key)を入れた編成で、andropにとって実に11ヵ月ぶりの有観客ライブは、伊藤のカウントから「Paranoid」で幕を開けた。赤い照明の下、Billboard Live TOKYOのシチュエーションを活かした大人っぽいアンサンブル、色気と悩ましさを湛えた内澤のボーカルがまずは美しく映える。続く「Colorful」では、前田が紡ぐジャジーなベースラインにハッとさせられ、佐藤がワウギターでファンクのテイストを足していくあたりも絶妙。いずれも原曲を大胆に崩したアレンジが見事で、序盤にして11年というキャリアの深みを印象づけてくれた。

 オープニングの2曲をさらりと演奏したあと、「こんばんは、andropです。10周年の記念のライブから月日が経ち、11周年のライブ。来てくれてどうもありがとうございます。お客さんと一緒にやれるワンマンは今年これが2回目で、今日はすごく貴重で大切な時間です。僕らは音楽を届けたいなと思っておりますので、皆さんはそれぞれ自由に楽しんでください。よろしくお願いします」と内澤が挨拶。

「12月にずっとやりたいと思ってて演奏できてなかった、クリスマスとかカカオとかチョコレートとかの頭文字を取った甘い曲」と内澤が紹介した「C」では、その温かい歌声を佐藤のカッティング、前田が吹くユーフォニアム、伊藤が鳴らすスレイベルにウィンドチャイム、前田と伊藤のフィンガースナップがじんわり引き立てた。「Kitakaze san」になれば、内澤がアコギを弾き、佐藤のボトルネック奏法も冴えわたるなど、今度は軽やかにフォーキーに聴かせるという小気味いい展開。マスクをして着席でステージを見つめるオーディエンスも、手拍子を送りながら生音をしみじみと楽しんでいる。

「外に出ることも人と会うことも少なかったので、なかなか恋をする機会も少なかったのかな。でも、いつの時代もどんな世の中になっても、人を想う気持ちは大事なものだなと、今年はすごく思いました」――そんな内澤の言葉に続いて届けられたラブバラード「Koi」は、ピアノの音色がしっとり響く中、<物語が僕を拒んだって/誰かが運命を定めたって/会いに行くよ>と熱く歌い上げる実直なリリックが胸を打つ。どんなに曲の振れ幅が大きくても、ひとたび演奏が始まるとスッと没入できるような、安心感のある悠然としたグルーヴも素晴らしい。

「Billboardというと、結構大人な雰囲気じゃないですか。最近、大人になったなと思うことって何かありますか?」(佐藤)、「大人になりたいなって思いますね。第1部でマイクを使わないでしゃべったら、いろんな方から『伊藤さん、マイク使わないと聞こえないです』とご指摘をいただきましたので」(伊藤)、「でも、今はマイク使ってしゃべれたし、大人になれたんじゃない? 言われたことがちゃんとできるってのはさ。内澤さんは?」(前田)、「えーっと、質問なんでしたっけ? あっ、大人になったなって思うことか。うーん……(笑)」(内澤)。中盤はそんなふうにメンバー全員が11周年を迎えた今を自然体で語り合ったり、Billboard Live TOKYOがandropの新曲「RainMan」をイメージして作ったというこの日のための特製カクテルをステージ上で味わったりと、ほのぼのする微笑ましいシーンもあった。

「ひとりで来た方、画面の向こうでひとりで観てる方に捧げます」と前置きした新曲「Lonely」では、カクテルのトークの流れをうまく汲んだアーバンかつチルなノリで魅了。前田のシンセベース、<気怠そうに信号が赤を見せてる><せかすように信号が青を見せてる>の歌詞に合わせて赤や青へと切り換わるライティングも洒落ている。いいムードを保ったまま、次は「Blue Nude」へ。隙間を活かした心地よいビートはもちろんのこと、その上でリズミカルに歌う内澤のボーカルが本当に絵になる感じで、andropにはBillboard Liveという会場がよく似合うと改めて思わされた。

 次のブロックでは、まだタイトルのない新曲を2曲続けて披露。ひとつめのナンバーは声を出して一緒に歌えない昨今の状況を踏まえ、心で共に歌うイメージのもと作ったそうで、<ラララ>のコーラスパートやハンドクラップを取り入れたアレンジ、<行けるところまで行こうか><僕らいつだって後悔だけはしたくないからさ>といったラインがとてもポジティブな余韻を残す。もうひとつの新曲も<もう1回 光の場所へ><超えてゆけ>と歌う、決して挫けることのない強い気概が感じられる仕上がり。こちらは佐藤が奏でるブライトな音色のギター、打ち込みを駆使したダンサブルなトーンが、初期のandropを彷彿とさせた。新型コロナウイルスの影響で世の中がなお予断を許さない現状でもあるだけに、暗闇に一筋の光が差すようなこの新曲たちの音源化は楽しみに待ちたいところだ。

 そして、先日ミュージックビデオが公開された「RainMan」も終盤に満を持して演奏。「レインマンは悲しみの象徴を擬人化したもので、それを絵本みたいな形で登場させて曲を作りました。きっとみなさんの中にもいると思うから、そのレインマンを大事にしてあげてください」という内澤の言葉を受けて、観客それぞれが自分の心を見つめ直しながら聴き入る、語りかけるような歌詞とやさしく温かいアンサンブルに酔いしれる姿にはグッとくるばかりで、Billboard Live TOKYOの空間で「RainMan」が堪能できるのもこの上なく贅沢だった。

「どうもありがとうございます。次で最後の曲になります。11周年というライブを皆さんと過ごせて幸せでした。本当にいろいろとありますけれども、僕らはあなたの心に届くような音楽をこれからもっともっと作っていきたいし、どうか当たり前を大切に。そして、ずっと健康でいてほしいです。画面の向こうの方々にも、いつかまた直接会いたい、音を届けたいと思ってます」。

 現状にもどかしさを覚えつつ、それでもandropは前に進む。そんな決意が伝わる内澤の言葉だった。本編ラストは「Hikari」。一人ひとりの心に届くように、<光に変えてゆくよ どんな暗闇も>と希望を込めて歌われるさまが締めにふさわしい。アウトロで辺りが輝きに包まれる演出も感動的で、温かい拍手があふれる最高の空気を作ってメンバーはステージを降りた。

 メンバーにとってこの日のライブは、2017年12月に行った初のBillboard Live TOKYO公演のリベンジという悲願があったこともアンコールで明かされる。前回は内澤の声が不調をきたしてしまったけれど、今回は絶好調のまま終えられそうで喜びもひとしおと安堵の表情を浮かべる4人。内澤も「マスク越しですけども、皆さんのとても素敵な笑顔を見られたので、1曲目からもう感動しっぱなしです。こうやってandropとしてあなたの人生に関わることができたのなら、ちょっとでもその笑顔が続くような音楽を僕らは作っていきたいと思ってます」と、オーディエンスに自分たちの想いを繰り返し述べた。

 最後はCreepy Nutsとのコラボ曲「SOS!」をandropバージョンで、なおかつ現在の心情を反映した形でガラッと歌い替えて聴かせた。都会的なサウンドの上を泳ぐ<自粛してコロナと闘って いくつものライブなくなってしまった><直接会えないコミュニケーション テンション下がった日もあった それでも夢描いて想い届けようと誓った><辿り着いた今日11周年>などと綴ったラップからは悔しさも滲むが、困難を乗り越えんとするバンドの清々しい姿勢が伝わってきて、どこか救われたような気持ちに。各パートのソロを巧みに織り交ぜた構成、歌い終えたあとの「一緒に生きていきましょう!」という内澤の一言もまだじんわりと胸に残っている。

 やさしい歌と光を灯すような楽曲で心温まるひと時を届け、バンドが前に進む姿を見せてくれたandrop。来年3月12日(金)にBillboard Live OSAKAで新たなライブ「image world -5th. Anniversary live-」を開催することも発表され、6月と7月には今年行われる予定だった全国ツアーの振替公演が決まっている。また彼らに会えること、この日聴けた名もなき新曲をいっしょに声を出して歌い合える日が来ることを信じて、これからの活動を楽しみにしておこう。

 なお、「androp -11th Anniversary Special Live- at Billboard Live」の模様は12月20日(日)23:59までアーカイブ視聴が可能。チケットは同日21:00まで販売中なので、気になる方はぜひチェックしてみてほしい。

【取材・文:田山雄士】
【撮影:SHIN-1】



<アーカイブはこちらから>
https://tixplus.jp/feature/androp_billbord_2020_online/
[視聴期間]
12月20日(日)23:59まで

tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル androp

リリース情報

RainMan

RainMan

2020年09月21日

ユニバーサル ミュージック

01. RainMan

セットリスト

-11th Anniversary Special Live- at Billboard Live

2020.12.13@Billboard Live TOKYO

  1. 01.Paranoid
  2. 02.Colorful
  3. 03.C
  4. 04.Kitakaze san
  5. 05.Koi
  6. 06.Lonely
  7. 07.Blue Nude
  8. 08.新曲
  9. 09.新曲
  10. 10.RainMan
  11. 11.Hikari
  12. 【ENCORE】
  13. EN1.SOS!

お知らせ

■ライブ情報

image world -5th. Anniversary live-
2021/03/12(金)大阪 Billboard Live OSAKA


COUNTDOWN JAPAN 20/21
2020/12/27(日)、12/29(火)〜12/31(木)
千葉 幕張メッセ国際展示場1〜11ホール、イベントホール
※andropは12/30(水)に出演

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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