HakubiがKYOTO MUSEから全国へ――メジャーデビュー発表とともに「生き続ける」ことを宣言した「Hakubi 1st ONEMAN LIVE」を徹底レポート!
Hakubi | 2020.11.16
3ピースバンド・Hakubiにとって初めてのワンマンライブ「Hakubi 1st ONEMAN LIVE」が、3人が初めてHakubiとしてライブを行った場所である京都・KYOTO MUSEにて行われた。コロナ禍と呼ばれる時代に入って以降も、コンスタントに配信ライブを行いながら私たちと繋がり合ってきたHakubiだが、今回はついにオーディエンスの前でライブが行われた。バンドとしてもファンとしても念願とも言える貴重な機会ということもあり、この日のチケットは即完売。その事態を受けて、今回のライブは急遽YouTubeで無料配信されることになり、筆者も配信にてライブを体感した。
開場時間にチャンネルに入ると、開演時間である19:30をめがけてYouTubeの閲覧者数のカウントがどんどんと上がっていき、ライブの始まりを待ちわびる声が続々と書き込まれていく。そうして全国各地から届く視覚化された期待感が増幅していくなか、ゆっくりと画面が切り替わり、KYOTO MUSEのステージに立つ片桐(Vo/Gt)が映し出されると、この瞬間を慈しむようにじっくりと「光芒」のフレーズを歌い出した。続く「初ワンマンの始まりに!」というコールの先に鳴らされたアップチューン「ハジマリ」では、片桐が「最高ですね、ライブハウス」と言葉にするシーンがあった。ここでの“ライブハウス”とは、「自分たちがライブをする場所」の意ではなく、「同じ場所に自分たちの音楽を聴く人がいるうえで、ライブをする場所」という、これまで私たちが普通だと思っていたライブハウスでの光景のことを指しているのだと感じた。この当たり前の景色を再びその身で体感できることを願いながら、この日に至るまで、各々が我慢をし、辛さを抱え、葛藤を繰り返し、それらを乗り越えてきた。そんな人間が集ったこの夜について、「今日、この日のことは絶対に忘れない! 全部、全部。最高の夜にしよう」と約束した「辿る」に続き、ヤスカワアル(Ba)の躍動するベースラインとマツイユウキ(Dr)の力強いドラミングが牽引する「Dark.」を、記憶に刻み付けるかのように鋭くプレイした。
MCにて「今日のライブは、今までで最長のセトリです」と話すと、マツイと片桐のコーラスフレーズが心地よさを感じさせる「薄藍」から「大人になって気づいたこと」へと繋ぐ。途中で歌詞が途切れることもありながらも、懸命に言葉を紡いでいく片桐。ポエトリーリーディングで始まる「サーチライト」や「午前4時、SNS」もそうだが、彼女は1曲1曲変わるごとに、それぞれの音の中に深く潜り込んではのめり込み過ぎて、時に苦しんでいるような表情をする。けれど、それでも歌っている。それは、これがライブ本番だから止めることができないというプレッシャーが故ではなく、人間が生きるために呼吸をするように、音を鳴らし歌を歌うということが、Hakubiの生命維持に直結しているからのように思える。息を止めたら死んでしまう、だから呼吸をする――それと同じように、彼女たちにとって音楽を歌い鳴らすことは「生きること」に等しいのだろう。「正直、消えてしまいたいと思うこともある。消えてしまいたいとずっと思っているし、思わない日はないくらい」と告白した片桐は同時に、激変した世界の中で、音楽活動のみならず人生の活路すら途絶えてしまう人がいるということを告げながら、「それでも、誰かの分まで、絶対に生き延びようと思っています」と話す。消えたいと思い続けている人間を「生き続ける」と言わしめるほど、彼女たちにとって音楽の存在は大きいということが伝わってきた。
そこから「優しい世界でありますように」という願いを込めた「Sommeil」、そして「夢の続き」へと続けると、「久しぶりの曲をやります」と「どこにも行けない僕たちは」、さらに最新シングルから「Friday」をプレイ。「居場所なんかいつもなかったんだ」と歌っていたHakubiが、「ここにいる皆さんは味方だということがうれしいです。人を目の前にすると、『自分は好意的に思われていないんじゃないか?』と思ってしまうんですが、こうしてワンマンライブに来てくれて、私たち3人のことを愛してくれているということは、物凄くうれしいです」と話すように、着実に心地よい居場所を作り始めている。変わっていくことと変わらないことが複雑に入り混じる生活の中で、戸惑う気持ちを拭いきれないままではあるけれど、それでも前に進んでいく――孤独を感じ続けてきた片桐がそうした決意を育てていくなかで、22歳である彼女の現時点の想いを閉じ込めた最新曲「22」は、凛と誇らしく響き渡った。
そして「沢山の人に支えられているということを、最近は本当に実感しています。Hakubiを組んで3年。つらかった日も楽しかった日もめちゃくちゃ喧嘩した日も、一緒にいてくれる仲間がいたから、ここまでやってくることができました。この瞬間を噛み締めて、噛み締めて……これからも歌い続けたいと思います」と語り、新曲を挟みつつ、最後に「今日のこの日に誓って、生き続ける。生き続ける。この曲を、大切な人に、ここから届けます」と告げて、「共に生きて行こう」という約束を結ぶかのように「mirror」を届けた。
その「mirror」の曲の途中、片桐は2017年からスタートしたバンドの歩みを遡るように語るなかで、「2021年、Hakubi、メジャーデビューします」と突然発表し、オーディエンスを驚かせた。メジャーデビューというタイミングはバンドにとっても大きなニュースのはずだが、喜びを露わにすることもせず、淡々とした口調でそれはアナウンスされた。「午前4時、SNS」の中で<僕の音楽の神様はメジャーデビューで何かをなくした>と歌っているHakubiが、自らメジャーの世界に飛び込んでいく。新しいステージに高揚する気持ちと同様に、緊張や不安も間違いなくあるだろう。けれど、その全部を覚悟したうえで「魂も売らない、心も売らない。むしろ、使い切ってやろうと思ってます」と、この場で決意を堂々と言葉にしたHakubiの姿に、心から安堵した。「変わりたい」と願っていた人間が、「まだわからない日々だけど、ぶつかっていくこと、進んでいくこと、立ち向かっていくことを決めた! 誓って、Hakubiは変わらない! この3人でやりたい音楽をする! 言いたい言葉を! 伝えたい想いを! 守りたい人を守る!」と力強く叫ぶほど、音楽をきっかけに自分の中で「変わりたくない」と思える何かを掴んだ――それは、言葉に置き換えるのなら「誇り」と呼ぶものなのだろう。
アンコールでは「聴く人の希望になれたらいい」という想いを込めて書かれたという新曲「アカツキ」と、「賽は投げられた」を贈った彼ら。<やるしかないだろ>という歌詞が、これからさらに躍進していくことを誓った自分自身を鼓舞しているかのように聴こえた。初めてのワンマンライブという大きな一歩を踏み出したステージで、Hakubiがこれまで培い、育て上げてきた「自分たちが大事にしてきたもの/これからも大事にしていきたいもの」を明確に伝えた、未来へ向けて動き出す彼らの芯の強さを感じさせる夜だった。
【取材・文:峯岸利恵】
【撮影:翼、(@na283be)】
リリース情報
アカツキ
2020年11月16日
unBORDE
セットリスト
1st ONEMAN LIVE
2020.10.22@KYOTO MUSE
- 01.光芒
- 02.ハジマリ
- 03.辿る
- 04.Dark.
- 05.薄藍
- 06.大人になって気づいたこと
- 07.サーチライト
- 08.午前4時、SNS
- 09.Sommeil
- 10.夢の続き
- 11.どこにも行けない僕たちは
- 12.Friday
- 13.22
- 14.(新曲)
- 15.mirror 【ENCORE】
- EN1.アカツキ(新曲)
- EN2.賽は投げられた
お知らせ
極・粉塵爆発ツアー
2021/02/09(火)東京 渋谷TSUTAYA O-EAST ※ワンマン
2021/02/11(木)新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
2021/02/13(土)石川 金沢vanvanV4
2021/02/15(月)岡山 CRAZYMAMA 2nd Room
2021/02/17(水)大阪 OSAKA MUSE
2021/02/19(金)愛知 名古屋APOLLO BASE
2021/02/20(土)静岡 東静岡UMBER
2021/02/24(水)宮城 仙台enn 2nd
2021/02/26(金)千葉 LOOK
2021/02/27(土)岐阜 柳ヶ瀬ants
2021/03/02(火)兵庫 神戸太陽と虎
2021/03/04(木)山口 周南rise
2021/03/05(金)福岡 Queblick
2021/03/07(日)大分 SPOT
2021/03/09(火)京都 KYOTO MUSE
スペースシャワー列伝 第144巻〜祭燦再始の宴〜
2020/12/20(日)東京 渋谷WWW X
w/ KALMA / ヤユヨ
FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY
2020/12/26(土)〜12/28(月)大阪 インテックス大阪
※Hakubiは12/27(日)に出演
「心斎橋を刻め」
2021/01/08(金)大阪 OSAKA MUSE
w/ TETORA / ザ・モアイズユー / さよならポエジー / climbgrow / CAT ATE HOTDOGS / あすなろ白昼夢
Atomic Skipper presents
磐田FM-STAGE 30th Anniversary「人間讃歌」
2021/01/11(月)静岡 磐田FM-STAGE
w/ Atomic Skipper / Dear Chambers
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。