あいみょん、生配信も実施された「AIMYON TOUR 2020“ミート・ミート”」さいたまスーパーアリーナ公演の模様をレポート!
あいみょん | 2020.12.30
2日間に渡って行われた「AIMYON TOUR 2020“ミート・ミート”」in さいたまスーパーアリーナの2日目。コロナ禍での中止や延期が相次いだツアーとなってしまったが、この日はライブが生配信されるということで、心待ちにしていたファンも多かったはず。新曲も披露されたこの日のライブを配信視聴でレポートする。
スポットライトの下、アコギを抱えたあいみょんが現れた。画面は暗く、深い影を落としていて表情までは見ることが出来ないが、アコギをかき鳴らす細い指先の真っ赤なマニキュアが彼女のテンションを伝えているよう。幕開けは、最新アルバム「おいしいパスタがあると聞いて」の1曲目でもある「黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を」だ。だんだんと光が満ちていくステージ。ザラついた映像の中、目元に笑みを浮かべた彼女の表情が浮かび上がった。続く「ハルノヒ」では、その光が、ステージから会場全体をあたたかく包み込むように広がっていく。「満月の夜なら」では、可愛くセクシーなムードの照明の下で心地よく体を揺らすあいみょんとバンドメンバー達。気負うことなくその場の空気をスッとひとつにしてしまう彼女の存在感は、今日も圧倒的だ。
「AIMYON TOUR 2020“ミート・ミート”にようこそ!」
満面の笑みで、大きく両手を振りながらそう挨拶したあいみょん。昨日の初日を振り返りながら「こんな広いところで出来るんやと思って、嬉しくなっちゃって」と素直な感想を語りつつ、この場所でもう1日出来ることの喜びをファンと共有。「ツアーももう半分来た。みんなが声出せへん分、私が一生懸命歌います。みんなもそれに応えてくれたら嬉しいです。今日はめちゃめちゃいい夜にしましょう!よろしくお願いします!」と、笑顔で会場を見渡していた。
歌い出しのアカペラで会場のテンションを一気にあげた「どうせ死ぬなら」。バンドインしてからの熱はそのまま次の「ふたりの世界」へと引き継がれたが、いつもの掛け合い直前で曲をストップ!大声を出せない状況ということで、普段なら「まだ眠たくないの」「セックス!」とオーディエンスが盛大にレスポンスするパートは、ささやきバージョンに変更された(笑)。遊び心とアイデアでコロナ禍の課題(!?)をクリアし、最後はあいみょん自身も、両手でマイクを囲むようにしてそっと「ありがとう」とささやいていた。女の子の独り言のような「シガレット」の軽やかなサウンドから一転、内面の深いところまで一気に潜り込んでいくような「マトリョーシカ」ではサイケデリックな照明がディープな世界観を演出していた。
次のMCでは、「どうですか、私のライブ。こんな感じです(笑)」とテレながら前髪を押さえるあいみょん。この日も夫婦やきょうだい、カップルにひとり参加などいろんな人が足を運んでくれている状況を見て、「きっと小さい子もいるよね。あいみょんってファミリー向けやからさ」と言うとすかさずベースの井嶋啓介が「初耳(笑)」と突っ込む。メンバー間からも笑いが起こる中、「初耳?ほんまに?私、ファミリー向けの物件なんやけど(笑)」ともう一度あいみょん。今の自分があるのは幅広い世代に支えられているからだという感謝の思いも込めていたのだろう、「こうして大きな会場でやればやるほど、過去の自分のことを考える。あの頃があったから今があるって」と言葉を続けた。また、これは前にも言ったかもしれないけどと前置きしつつ、「雲の上の存在になってしまったと言われるけど、私は今もみんなのことを雲の上の存在やと思っている。だから今は、ようやく一緒の場所にいれてる気がして、それが嬉しい」とあいみょん。
上京したての頃、日当たりの悪い部屋でいつか絶対誰かに認めてもらえる気がすると思って曲を作っていた頃を振り返り、「私、大丈夫かな。音楽でやっていけるのかなと悩むこともあったけど、そういう時に思ったことが歌になって、こういう場所で歌えるのが感慨深い」と語り、「風のささやき」を披露した。自信と背中合わせの焦燥や、まだ何者でもなかったあの頃が巻き戻ってきたかのような言葉の圧が伝わってくる。そこからギターは持たず、ピアノをバックに歌い始めた「裸の心」。アコギ1本、モノクロの粗い画像でパンキッシュに歌い上げた「憧れてきたんだ」。そして、窓から差し込む月明かりのような光に照らされて「from 四階の角部屋」。ありのままの言葉をストレートに投げかけてきたこの4曲の流れはまさに「あの頃があったから今がある」、その言葉の意味を感じさせてくれるものだったと思う。
この日のバンドメンバーである八橋義幸(Gt)、井嶋啓介(Ba)、伊吹文裕(Dr)、山本健太(Key)、朝倉真司(per)、クロサワ(Gt)を紹介し、ここからは「ポプリの葉」と「二人だけの国」をアコースティックな編成で。アコースティックというよりむしろ、このメンバーならではのアナザーバージョンといった方が合うような研ぎ澄まされたアレンジだ。その後は「愛を伝えたいだとか」や「マリーゴールド」といったお馴染みの楽曲も登場し、このゾーンで初めてあいみょんはセンターから離れてステージの両端まで移動。楽しそうに歩き回りながら、巨大な会場とたくさんの客席を見つめていた。
「マリーゴールド」でみんなが大きく手を振ってくれた光景を「今日も綺麗やった。毎回泣きそうになります(笑)」とあいみょん。また「今日は配信でもたくさんの人が見てくれているから、何かスペシャルなことを」ということで、ホーン隊の3名――橋本剛秀(sax)、村上基(Tp)、大田垣"OTG"正信(Tb)を呼び込み、新曲「スーパーガール」が初披露された。あいみょんはギターを持たず、マイクスタンドに手をかけながら総勢9名が生み出すグルーヴを体中で感じているよう。サビで聴こえてくるファルセットも印象的で、男性目線の歌詞なのに強烈な色気を感じるボーカルが新鮮だった。このメンバーでもう1曲「真夏の夜の匂いがする」も披露し、名残惜しそうにホーン隊を送り出すと後半戦へ突入。「マシマロ」、「夢追いベンガル」とポップでエネルギッシュなナンバーでオーディエンスを盛り上げた。ステージ狭しと駆け回り、もちろん配信用のカメラにもアピール。一転してマイクをアコギに持ち変え、聴こえてきたのは「君はロックを聴かない」のイントロだ。マスクの奥で、画面の向こうで、いったいどれだけの人がこの歌を口ずさんでいたのだろう。カメラは、オーディエンスが振り上げる拳や手のひら越しのあいみょんを映し出している。ライブの時に自分の目で見ているいつもの光景がちゃんと味わえるようになっていたのは、あいみょんチームの愛でしかない。その後じっくりと「漂白」を歌い上げ、この2日間を改めて振り返った。
「ほんまにありがとう。嬉しかったな。このさいたまスーパーアリーナの2日間を間も無く終えることになるけど、ほんまに一段と、自分がシンガーソングライターになれた気がします。そういう力を貰えました。自信がついた。自信がなかったわけじゃないけど、みんなに会ってみんなに語りかけたり歌ったりすることで、より一層自分が自分でいられる気がします」
バンドメンバーとのラストは、「さよならの今日に」。やりきれない気持ちも、心の中に渦巻く言葉も、現状に対する思いも全部込めたと言わんばかりの気迫が伝わってくる。彼女らしいメッセージの掲げ方、圧巻の1曲だった。
ステージにひとり残ったあいみょんが最後に歌ったのは、「そんな風に生きている」。アルバムとは違い、アコギ1本の弾き語りだ。こみ上げてくる様々な思いがあったのだろう。少しだけ声を震わせ、瞳には涙が光っていたがしっかりと最後まで歌い切った。
「初めてのさいたまスーパーアリーナはほんまに大きかったです。今の自分の力じゃどうにも出来ないと思うくらい大きかったけど、なんとか2日間終えられて良かったです。また必ずみんなと当たり前にこうやって会えて、当たり前に歌が歌えて、一緒に話せる時が来る。いつもみんなを待たせてばかりやから、みんなを待たせないようにしっかりこれからも、音楽、楽しみながら届けていけたらなと思います。頑張る。みんなとまた元気に会えますように。今日はほんまに来てくれてありがとうございました!」
涙を拭いながら今の気持ちを真っ直ぐに伝えたあいみょん。会場と、配信。この時間を共有したすべての人と再会の約束を交わすような笑顔を残し、ステージを後にしていた。
【取材・文:山田邦子】
【撮影:永峰拓也】
リリース情報
おいしいパスタがあると聞いて
2020年09月09日
ワーナーミュージックジャパン
02 ハルノヒ
03 シガレット
04 さよならの今日に
05 朝陽
06 裸の心
07 マシマロ
08 空の青さを知る人よ
09 真夏の夜の匂いがする
10 ポプリの葉
11 チカ
12 そんな風に生きている