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CHiCO with HoneyWorksが音楽で届け続けてきた思いとは

CHiCO with HoneyWorks | 2021.01.05

 不思議なものだ。もともとは2017年に発表されていた楽曲であるというのに、このたび12月25日に配信された『CHiCO with HoneyWorks ONLiNE LiVE @BUDOKAN 「COME! COME! ONiON」』のオープニングを飾った「今日もサクラ舞う暁に」の歌詞中にある<会えなくなったけど離れ離れじゃないよ><会えなくなったけどいつでも繋がってるよ>といったフレーズたちは、今このタイミングにこそやたらと意味深く響いてるような気がしてならなかった。

 チコハニことCHiCO with HoneyWorksは、今夏に全国5都市を廻るツアー『WiSH Upon A Star』を予定していたものの、それらは残念ながら今般の社会状況を受けてやむをえずの中止に追い込まれてしまっていたわけだが。その一方、唯一開催された9月27日中野サンプラザ公演『WiSH Upon A Star』に関しては、日本政府から出されているガイドラインを遵守しながら有観客でのライブを行い、同時にそれを全国の映画館でライブビューイングのかたちで公開する、という方策がとられることになったのである。

 そして、本来であれば12月25日に配信された日本武道館でのライブも、当初は有観客公演として計画されていたと思われるものの、結果的には現在の諸事情を鑑みた上で今回の『CHiCO with HoneyWorks ONLiNE LiVE @BUDOKAN 「COME! COME! ONiON」』はオンライン配信となったに違いない。

 ちなみに、このライブタイトルに冠せられている“ONiON”とは武道館のテッペンにしつらえられたタマネギ型の造形物のことを指しているそうで、あれは正式には擬宝珠(ぎぼし/ぎぼうしゅ)と呼ばれる魔除けなのだとか。いやはや、コロナ禍収束の道筋がなかなか見えにくい今こそ、まさに魔除けの持つ力にあやかりたいところ。

「ついにやってきました。『CHiCO with HoneyWorks ONLiNE LiVE @BUDOKAN 「COME! COME! ONiON」』へようこそ!! 今回はわたしたちにとって2回目の武道館ということで、『ただいま』って言ったら画面の向こうで大きな声で『おかえり!!』って言ってください。用意はいいですか?? 『ただいま!!!』」(CHiCO)

 冒頭での「今日もサクラ舞う暁に」に続いて、キラめくような青春ポップチューン「ハートの主張」を歌い終えたあと、CHiCOがこのようにカメラに向かって投げ掛けると、むろんチャット画面には「おかえり」のコメントが大量投下されたのは言うまでもない。

「配信でみなさんにライブを観ていただくのは今回が初めてなんですが、いろいろと配信ならではの楽しみ方もありますので、ぜひぜひ最初から最後まで楽しんでいってください。よろしくお願いします!!」(CHiCO)

 それにしても2020年春以降、無観客配信ライブと称されるものは方々で数多く開催されてきたことになるが、今のところ由緒正しき音楽の聖地・日本武道館での無観客配信ライブを行った例というのはまだ極めて少ない。客観的に考えるならば、武道館ほどの大空間で無観客ライブを開催するというのは大変に贅沢なことであるし、ともすれば大空間を持て余してしまう懸念もあったはず。だが、それでも今回チコハニは文字通りに武道館でのライブを“敢行”してみせたのだから、まずはその勇気をたたえたい。

 なお、今回の公演においては館内の全客席にLEDを用いたライティングシステムを全方位360°で巡らせてあり、楽曲に併せてそれらが光るという演出方法がとられていたことで、場面によってはあたかも観客たちがペンライトを輝かせているようにも見えたのが何とも印象的だった。

 かくして、今回のライブ前半戦ではシリアスさの漂うハードな「アイのシナリオ」でOjiのギターソロや宇都圭輝の華麗な鍵盤さばきを楽しむことが出来る見せ場があったり。かと思うと、CHiCOのキュートな面が全開となっていた「ミスター・ダーリン」、第1回『ウタカツ!』オーディションでグランプリに輝いた経歴を持つCHiCOをモデルに作られた楽曲「私、アイドル宣言」、約6年前にリリースされたチコハニにとってのデビュー曲「世界は恋に落ちている」などが続々と披露されていくこととなった。

 また、ライブ中盤ではギタリスト・Ojiがこのライブのために新規購入したというピカピカのエレアコを肩にかけて登場。ここからはアリーナフロアのド真ん中に設営されたセンターステージにて、Ojiのギター1本とCHiCOの歌のみで「私を殺さないで」が我々へと伝えられることになったのだが、シンプルな構成ゆえここではCHiCOの持つボーカリストとしての魅力がダイレクトに伝わってきたと言える。
 
「今年はアルバム(『瞬く世界にiを揺らせ』)が発売になって、今歌った『私を殺さないで』はその中でもアコースティックギターとボーカルのみで挑戦した曲だったんですよ。それをライブでやるのは、なかなか緊張するものがありますね(笑)」(CHiCO)
「ふたりとも、良かったよ!」(中西)
「いいなー、センターステージ。凄く美しかった!!」(AtsuyuK!)

 ここでは非常にわきあいあいとしたメンバーMCが繰り広げられたのが、実を言うとコレは後の場面につながるフリだったようだ。というのも、メッセージ性の強い「BGM」やバラード「贈り歌」をはさみつつのライブ中盤戦に入ると……
「さっき、あっちゃんがセンターステージに行きたいと言ってたでしょ。だから、今度は皆で向こうに行きましょうか!」(CHiCO)
「やったー!今日クリスマスだもんね。ありがとう、サンタさん!!」(AtsuyuK!)

 ということになり、躍動感あふれる「決戦スピリット」と、CHiCOが軽快なダンスステップを見せつけた「ぐる恋」、ベーシスト・Hiroki169のコールが粋に響いた「プライド革命」の計3曲については、チコハニの全員がセンターステージで楽しそうにパフォーマンスする様を拝むことが叶った。

 その後は再びメインステージに全員が戻り、それこそハッピーな空気感が漂った「幸せ。」や、武道館のスケール感と臨場感がより映えていた「ヒカリ証明論」の2曲が演奏され、そろそろこのライブも佳境か?というくだりでは何と待望の今後に向けた告知がなされることに。

「2021年、3月に全国Zeppツアーが決定しました! ライブハウスは久しぶりなので、今からとても楽しみです。無事開催出来ますように!!」(CHiCO)

 そのうえで、今宵のライブの最後を飾ったのは、曲の冒頭にてメンバー紹介がなされてから始まった「ホーリーフラッグ」。この曲を歌い終えたあとには、CHiCOから次のような言葉が発せられたのでそれもここに付記しておきたい。

「正直なことを言ってしまえば、本当は皆さんと一緒にこの2回目の武道館に立ちたかったです。……でも、今はまだそれが出来る状況ではありません。皆さんも、本当は武道館に行きたいという思いを抱えながら観てくれていたんだと思います。来年もまだどうなるかはわかりませんけど、でもいつかまた皆と盛り上がってやるんだ!という希望を持って、これからも一緒に過ごしていけたらいいなと思っております。来年もCHiCO with HoneyWorksは、これまでと変わらず音楽を楽しんでいきますので、これからも応援よろしくお願いします!! 今日は本当にありがとうございました!!!」(CHiCO)

 さて、ここでまた筆者はなんとも不思議な感覚を得てしまったのわけだが。遡ること2015年に作られた「ホーリーフラッグ」の中には、<僕らの意思は人から人へ 嵐さえ邪魔はできない>というフレーズが出てくるではないか。つまり、そう。チコハニがあの頃から変わらず音楽を通じて届け続けている意思は、嵐などものともしないということにほかならない。チコハニの放つ頼もしき調べは、これからもきっと希望と共にある。

【取材・文:杉江由紀】

tag一覧 J-POP 配信ライブ 女性ボーカル CHiCO with HoneyWorks

リリース情報

瞬く世界にiを揺らせ

瞬く世界にiを揺らせ

2020年09月16日

MusicRay’n

01.決戦スピリット
02.ミスター・ダーリン
03.幸せ。
04.ワタシノテンシ
05.ぐる恋
06.胸キュンライト□ ~フリフリ隊mix~
07.ヒカリ証明論
08.恋人ツナギ
09.Alive(英語詞)
10ギミギミコール
11.Marie
12.ヒロイン育成計画
13.私を殺さないで
14.乙女どもよ。

※6曲目の□はハートマーク。

セットリスト

ONLiNE LiVE @BUDOKAN
「COME! COME! ONiON」
2020.12.25@日本武道館

  1. 01. 今日もサクラ舞う暁に
  2. 02. ハートの主張
  3. 03. アイのシナリオ
  4. 04. ミスター・ダーリン
  5. 05. 私、アイドル宣言
  6. 06. 世界は恋に落ちている
  7. 07. 私を殺さないで
  8. 08. BGM
  9. 09. 贈り歌
  10. 10. 決戦スピリット
  11. 11. ぐる恋
  12. 12. プライド革命
  13. 13. 幸せ。
  14. 14. ヒカリ証明論
  15. 15. ホーリーフラッグ

お知らせ

■ライブ情報

CHiCO with HoneyWorks
春の全国Zeppツアー

03/07(日)愛知 Zepp Nagoya
・1回目 OPEN 13:30/START 14:30
・2回目 OPEN 17:30/START 18:30
03/14(日)北海道 Zepp Sapporo
・1回目 OPEN 13:00/START 14:00
・2回目 OPEN 17:00/START 18:00
03/21(日)東京 Zepp Tokyo
・1回目 OPEN 13:00/START 14:00
・2回目 OPEN 17:00/START 18:00
03/27(土)大阪 Zepp Osaka Bayside
・1回目 OPEN 13:00/START 14:00
・2回目 OPEN 17:00/START 18:00
03/28(日)福岡 Zepp Fukuoka
・1回目 OPEN 13:30/START 14:30
・2回目 OPEN 17:30/START 18:30

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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