SOMETIME’Sの本質がストレートに伝わったアコースティック配信ライブ
SOMETIME’S | 2021.01.18
何とも心身が解けていくいいライブだった。と、同時に無意識のうちにも日々、緊張を強いられているのだなということにも気づけた時間だった。
当初、昨年10月リリースのEP「TOBARI」のリリースイベント第二弾として、有観客ライブを開催する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を避ける緊急事態宣言を受け、ライブの一週間前に無料でのYouTube配信ライブに変更。が、ただオンラインライブにしただけでなく、アコースティック編成での別バージョンに一週間でリアレンジしたことに、非常に感銘を受けた。それは音楽的な柔軟性はもちろん、ライブを実施するはずだったShibuya Milkywayという会場で、観客がいる想定のライブをそのまま行うのはちょっと違うと感じたからなのかもしれない。結果として、楽曲そのものやSOMETIME’Sの本質を伝えることに成功していたと思うのだ。
EPのアートワーク同様、帳(緞帳)が降りた開始前の画面がうっすらブルーのライティングに彩られたライブ画面に移行すると、まずアカペラでSOTA(Vo)が歌い始める。「I Still」だ。この段階で、その声のウォームでスモーキーな雰囲気に包み込まれる。そこにピアノが滑り込み、真冬の夜に火が灯るような温かさ。2コーラス終わりでTAKKI(Gt)のフルアコースティックギター、ウッドベース、ドラムパッドの音が加わり、ミニマムで隙間の多い音像が、歌の世界をより鮮明に伝えてくる。冒頭から、この編成のチョイスは大正解なんじゃないか?という思いと、ただ配信をすればいいとは思っていなさそうな彼らの意思が届いた。
曲終わりと同時にSOTAが「本当ならここで初めての有観客招待ライブをやる予定だった渋谷ミルキーウェイからお届けしています」とMC。彼もTAKKIも悔しさを口にしながらも、「単に中止というのも考えたんですけど、せっかくみなさんが予定を開けておいてくださったので、急遽、アコースティックライブでお届けすることにしました」と、経緯を話し、心強いメンバーを紹介。ファンにはお馴染みの冨田洋之進(Dr/Omoinotake)、佐々木恵太郎(Ba)、そして初登場の山葉隼也(Key)の3人がアコースティックかつジャジー&メロウなリアレンジに即応しているのが素晴らしい。
2曲目に演奏した「Take a chance on yourself」も、SOTAのスモーキーかつタフなボーカルがアコースティック・アレンジに映える。さらにこの日ならではのバージョンがプレミアムな感触を残したのが「Get in me」。佐々木のウッドベースでありつつも、エレキベース的なフレーズと冨田の抑えめのドラミングのバランスがいい。それでも曲の持ち味が溢れ出る印象で、思わず体を揺らしたくなる。それにしてもミュージシャンとしての対応が全員高い。悔しい事態ではあるけれど、特に楽器隊のプレイヤーとしてのレンジの広さを知ることができたのは嬉しい発見だ。そして現場のグルーヴが心地よいのだろう。SOTAが自然に笑顔になっていく。ステージ上ではなく、フロアで向き合う陣形を取ったのも、お互いの表情がよく見える理由だろう。
8月にもストリーミングライブを実施し、それ以外にも小規模で配信を行ってきた二人だが、「いつまで経っても慣れないね、曲終わりにお客さんのいないところで喋るの」と、SOTAが本音を漏らしつつ、「大事なお知らせを」とTAKKIが促し、2021年第一弾デジタルシングル「HORIZON」を2月10日にリリースすることを発表。「本邦初公開ってことでやりますか」と、ごく自然なムードで新曲をライブで初披露。ギターと歌始まりというのが、SOMETIME’Sらしい。そこにエレピが入ってくると、やはり最高に心が解ける。スローでジャジーなナンバーだが、果たして音源のアレンジはどんなだろう?と想像するのも楽しい。歌詞は耳で聴き取れた範囲では、プロポーズソングにも聴こえるし、今のこの先が見えない状況を少しでも温かな光で照らすエールソングにも聴こえる。HORIZONは夜明けだが、今は夜明け前の一番暗い時間なのかもしれない。その闇をともに超えられる人に向けたラブソングでもあり、きっとこの闇を抜けられると自分自身を励ます歌としても聴くことができると感じた。
初めて聴く楽曲であるにもかかわらず、昔から知っていたような安心感を得た新曲に続いて、SOTAとTAKKIが少し長めのMC。来る2月26日にはSHIBUYA PLEASURE PLEASUREでライブが行われるのだが、この日から一般発売がスタート。二人とも「やる気満々ですから」と力強い。「自粛含め、ニュースを入手したくなるじゃん? でもずっとコロナの情報ばっか飛んできて、いろんなバンドが矛盾と戦ってる。有観客でやりたいけど、やった方がいいのかどうか、もちろん周りの家族の状況とかあると思うけど、自分たちが(アーティストが)来て欲しいと言わないのはおかしいと思ってて。だから僕たちはやる気満々です、来てください、ってことです」とTAKKI。「来る選択も来ない選択も正解なので。僕らは2月26日、待ってます」とSOTA。今、ほとんどのバンドマンや様々な演者が同じ気持ちだと思う。まだまだギリギリのタイミングで判断を迫られる状況は続くだろう。しかし、演奏している5人を見ていると、音楽があることで溢れ出す感情も、保たれる安堵もあることを確信する。
「朝はいつ来るかわからないですけど、『Morning』という曲です」と、ラストの曲紹介。ピアノが1日の始まりを告げるように軽やかに駆けていく。誰も自分のことを責めてはいないけれど、まだトライできることは自分が一番よく知っている、この1日を楽しくできるかどうかも自分にかかっている――演奏の質感が“明けていく”清々しさを表現していて、何気なく勇気づけられる。さりげない聴感のアレンジで届けられた今回のライブ。その分、歌がストレートに胸に届いたのは間違いない。短い期間でアコースティックセットを選んで、実現した彼らの選択に拍手と感謝を伝えたい。
【Live Photo by fukumaru(@fkmr_08)】
リリース情報
TOBARI
2020年10月21日
SOMETIME’S
02.Honeys
03.Take a chance on yourself
04.Simple
05.I Still
06.Morning
セットリスト
TOBARI RELEASE EVENT Vol.2
「Acoustic Streaming Live」
2021.01.15
- 01.I Still
- 02.Take a chance on yourself
- 03.Get in me
- 04.HORIZON
- 05.Morning
お知らせ
SOMETIME’S EP『TOBARI』
https://lnk.to/_TOBARI
■ライブ情報
SOMETIME’S TOBARI Release Event
「TO"N"ARI」
02/26(金)東京 Shibuya PLEASURE PLEASURE
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。