Mega Shinnosuke、唯一無二のスタイルで楽しませたオンラインパーティー
Mega Shinnosuke | 2021.01.21
どこまでも独創的でインディペンデントな姿勢のまま邁進しているMega Shinnosukeの、初のオンラインパーティー。これはそもそも、彼が20歳の誕生日を迎えた2020年11月20日に、開催が発表された企画であった。彼は以前にもインスタライブなどを行ったことがあるけれど、今回はオンラインパーティーと銘打たれている点が重要。多様な音楽スタイルを縦横無尽に行き来する楽曲群と同様に、「楽しい」を目指すためのありとあらゆるアイデアが注ぎ込まれたパーティーであった。
配信がスタートすると、おもむろに食事をしているMega Shinnosukeの姿が目に飛び込んでくる。はたと配信開始時刻に気づいたのか、慌ててライブハウスのフロアへと急ぐ。トボけたオープニングからしてコミカルだ。ライブパフォーマンスは、sooogood!(Gt/Cho)、Kameyama Kenshiro(Ba/Cho)、松本ジュン(Piano/Manipulation/Cho)、komaki(Dr)というバンドメンバーに囲まれたフォーメーションで、ソウルフルなデジタルシングル曲「Japan」からスタート。いきなりディープな陶酔感へと誘われる。
軽快なディスコポップが鳴り響く「桃源郷とタクシー」のイントロで、「Mega Shinnosuke 1 Night Online Partyにようこそ! 楽しもうね」と呼びかけると、身を揺らしながら歌う彼のナチュラルな美声がキャッチーなフックを捉え、高揚感を加速させる。演奏するバンドの映像に、アナログノイズが走るような加工を施した演出もクールだ。sooogood!は奔放でフリーキーなギターソロを奏で、松本のキーボードリフも勢いよく跳ね上がる。Mega Shinnosukeのキャッチーな楽曲を中心にして、バンドメンバーの呼吸も自由度高く盛り上がっていることが手にとるように分かる。
目下の最新デジタルシングル「Midnight Routine」では、夢見心地なネオサイケ風ギターポップの中を、洒脱なメロディが掻い潜ってゆく。MVにも用いられていたラフな線画のアニメーションが、演奏シーンとオーバーラップしてゆくさまもかっこいい。手作り感たっぷりのパーティーでありながら、見せる配信映像としての工夫が随所に凝らされている。komakiの刻む16ビートに導かれるのは、Mega Shinnosukeが初めて制作した楽曲として2018年6月にYouTubeに公開された「blue men.」だ。哀愁の湿り気を帯びたラップソングが、観る者の胸にもじっくりと染み渡る。
余韻に浸っていると、「メガくん、ゲームやろう!」という声に誘われ、唐突にフロアの隅でレトロなテニスゲームに興じたりもする。余りにも自由なパーティーだ。「もう1ゲームしたい」とか何とかゴネているうちにバンドは次の曲のイントロを切り出し、Mega Shinnosukeはサッカーボール片手に痛快なパワーポップ「Sports」を歌うという具合である。そこからシームレスに畳みかけるのは「電車」。ボールをギターに持ち替え、なびくキーボードサウンドの中を駆け抜けてゆくのだった。
バンドの賑々しいコーラスが歌心を膨らませる「憂鬱なラブソング」の最中には、長髪ブロンドの外国人男性が楽しそうに踊りながら演奏中のフロアに乱入し、「いい曲だね♪」とコメントを残してゆく。理解を追いつかせるのが一苦労の、混沌とした楽しさだ。直後には場面が切り替わり、Mega Shinnosukeが犬と散歩するインタビュー映像「Dog Talk Channel」が差し込まれた。実は猫派であることが告げられたり、飄々としたユーモラスな語り口が彼らしい。
再びライブシーンに戻ると、デニムジャケット姿になったMega Shinnosukeがギターを爪弾き、切々と「本音」が歌われる。ディストーションを噛ませたギターやオルガンが加わり、分厚いサウンドでドラマティックにエモーションを増幅させてゆく。粗く処理された映像も、配信の前半とはテイストが異なっている。味わい深い楽曲の余韻をまたもや断ち切るように、海外テレビ通販番組のようなノリで眼鏡と口髭を付けたMega Shinnosukeが、最新グッズのスウェットを紹介する映像へ。そのままの姿でsooogood!との共同アレンジによる新曲ラップチューン「Sweet Dream special short ver.」が届けられるのだった。何とも、気を抜く隙を与えないオンラインパーティーになっている。
ライブ終盤は、キレの良いファンキーポップ「O.W.A.」でスパートをかけながら、事情により低予算で作り直したこの曲のMVと同様、フロアに持ち込まれたグリーンバックの演出の前で踊り歌う。さながら優れたYouTuberのように、創意工夫のエンタメ精神がとめどなく溢れ出す配信だ。「最後にとっておきのロックンロールをかまして、終わりたいと思います。ありがとうございました、Mega Shinnosukeでした!」と告げ、万感のフィナーレは人懐っこいメロディで思い切りよく疾走する「明日もこの世は回るから」だ。
<否定を気にしてないなんて嘘だよ/気になって、気にした上でも/僕は僕でいたいと思うだけなの>。まさにその思いが形になった、唯一無二のオンラインパーティーであった。オフショット映像を用いたエンドロールを経て、最後には「いつでも楽しくできるハズ! 元気にがんばろう!」というメッセージが映し出される。ドラマ『君と世界が終わる日に』主題歌に起用された菅田将暉の新曲「星を仰ぐ」に作詞・作曲で携わったMega Shinnosukeは、この2021年も自由奔放なクリエイティビティを発揮して、何度でも我々を驚かせてくれそうだ。
【取材・文:小池宏和】
リリース情報
Midnight Routine
2020年10月23日
Mega Shinnosuke
セットリスト
Mega Shinnosuke
1 Night Online Party
2021.01.16
- 1.Japan
- 2.桃源郷とタクシー
- 3.Midnight Routine
- 4.blue men.
- -Play Games-
- 5.Sports
- 6.電車
- 7.憂鬱なラブソング
- -Mega Shinnosuke Dog Talk Channel-
- 8.本音
- -Mega Shinnosuke TV Shopping-
- 9.Sweet Dream special short ver. (新曲)
- 10.O.W.A.
- 11.明日もこの世は回るから