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『荒吐20th SPECIAL -鰰の叫ぶ声-』東京編 2日間の模様をレポート!

THE BACK HORN×9mm Parabellum Bullet | 2021.02.01

 THE BACK HORNと9mm Parabellum Bulletが1月19、20日の2日に渡り昭和女子大学人見記念講堂で開催した、有観客配信ライブ「荒吐20th SPECIAL -鰰の叫ぶ声-」東京編。そもそもは2020年4月に「ARABAKI ROCK FEST.20」で、ステージのひとつ”鰰”で行われる予定だった2バンドの共演だが、コロナ禍でフェスが延期となり、5月に東京で行おうとしたものが延期となり、ようやくこの日に開催されたものだった。こうした経緯があるだけに両バンドは気合の入ったライブを2日に渡って見せてくれた。実際に鰰ステージで使われているバックドロップを背負ってのライブに、ひとしおならぬ思いが込められていたのは言うまでもない。

 19日は9mm Parabellum Bullet、20日はTHE BACK HORNがメインアクトとして前半に出演し、後半は「鰰の叫ぶ声」の名の下に2バンド全員が揃っての演奏と、メンバーをシャッフルして4人ずつ組み「黒組」「白組」を名乗り、両バンドの曲を演奏するという流れ。これまでに何度も対バンしてきただけでなく、THE BACK HORNの菅波栄純(Gt)と9mm Parabellum Bulletの滝善充(Gt)は怪我や病気でステージに立てなかった時に互いに助っ人をした仲だが、こうした形でステージに立つのは初めてだ。1日目に”先攻”として登場した9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎(Vo/Gt)はMCで「THE BACK HORNと俺たちをずっと好きでいてくれる皆さんは、いつかこういうことが起きると思っていたかもしれませんが、それが今日。しかも2日もある。何も間違いないんで、楽しみにしていただいて」と期待をそそった。

 その言葉通り、9mm Parabellum Bulletは幕開けの「太陽が欲しいだけ」から熱量の高い演奏で観客を盛り上げ、「Answer And Answer」「白夜の日々」とテンションを上げていく。滝のギターソロが縦横無尽に曲を彩り、中村和彦(Ba)が激しく動きながらベースを鳴らせば、かみじょうちひろ(Dr)のドラムが唸る。サポートの武田将幸(HERE)も絶妙のポジションで滝とギターを合わせ、起伏に富んだ演奏を膨らませていった。以前この会場での単独公演で演奏した時にミスがあったと言う「サクリファイス」は4人の気持ちを合わせて大きなうねりを作り出し、「Supernova」「The World」とお馴染みの曲で畳み掛けていく。ライブで一段と輝きを増すポップな曲とヘヴィなサウンド、アグレッシブなプレイが一体となった彼らの真骨頂だ。後半は菅原がマラカスを振りながら「踊れー!」と呼びかけた「Talking Machine」「ロング・グッドバイ」で最高潮に。40分と短いながらも彼らならではのダイナミックなライブを見せた。

 2日目のTHE BACK HORNは、抑制の効いた演奏がジワリと迫る「コワレモノ」から始め、山田将司(Vo)が感情を込めた歌でぐいぐい惹きつけた。松田晋二(Dr)の「音楽、ライブ最高だなと思える日になれば」という言葉通りのことを、会場にいる人たちも配信を見ている人たちも感じたに違いない。岡峰光舟(Ba)が印象的なイントロを奏で、命の重さと別れの辛さを歌った「美しい名前」は連日ニュースで流れる悲しい数字と重なり胸を打ち、歌う山田の目にも光るものが見えた気がした。「ライブをやる機会も見る機会もなくなって、ライブに生かされてると感じてる。久々にライブをやると感情が乗りすぎて泣いてばっかり」と照れ笑いした山田に菅波が「OK!」と言うように親指を立てた。自粛期間中に制作された「瑠璃色のキャンバス」から後半は一段と気持ちの入った歌と力強い演奏となり、「シンフォニア」では<帰る場所はARABAKI ROCK FEST.にあるから!>と歌詞を替えて歌った。
 個性的なボーカリストにアグレッシブなギタリスト、内に秘めた激情が炸裂するベーシストにクールなドラマーという編成で起伏に富んだ曲がライブで圧巻。そんなところは一見よく似た2バンドだが、実は対照的と言ってもいいほどそれぞれの個性が強烈なのが、こうした場面でよくわかる。彼ら自身も意識したのか9mm Parabellum Bulletは疾走感のある曲を揃えて一気呵成に進め、THE BACK HORNは感情のこもった歌を軸に多彩な曲を聴かせた。

 そんな2バンドが合体した”鰰の叫ぶ声”は想像以上だった。そして、2日とも演奏した曲は同じだったが全く違った印象になったのが最高の見どころだった。まずは8人が揃っての「コバルトブルー」「ハートに火をつけて」。全ての楽器がダブルになった音圧の迫力と、菅原と山田が交互にボーカルを取るスペシャル感が圧巻だったが、1日目はとにかく全員での演奏が楽しくて仕方がないと言った様子。その高揚感のままに黒シャツで揃えた黒組(菅原・菅波・中村・松田)は「Vampiregirl」「罠」を演奏し、1日目は菅波らしいプレイで滝との違いを感じさせた菅波が、2日目には音も弾き方もよりスムーズになり、バンドとして馴染んでいたのが面白い。また、白組(山田・滝・岡峰・かみじょう)は「The Revolutionary」「戦う君よ」の2曲を両日とも安定感のある演奏で聴かせ、2日目にはセンターに3人が並ぶシーンも。山田と滝のコーラスの相性が意外にいいのも発見だった。最後は再び全員が揃い、菅原と山田がパワフルなユニゾンで歌った「刃」、滝と菅波のギターが重なり共鳴した「Black Market Blues」では菅原が<階段を駆け上がったら人見記念講堂に着いた>と歌詞を替えて歌い、見ている人たちを喜ばせた。終わる頃にはひとつのバンドのようなグルーヴを感じさせる圧倒的なスケールの演奏になっていたのは、彼らの友情と互いへのリスペクト、そして切磋琢磨する良きライバルであることの証だろう。

 「行きつ戻りつだと思いますが、こうやって楽しむ場所がまた作れたらいいなと思っています」と菅原。いつものように「また生きて会おう!」と叫んだ山田は「ライブをやる機会も見る機会も減って、ライブで生かされてることを感じる」とも言った。バンドの熱も会場にいる人たちの熱気も伝わり、両日とも配信でも十分楽しめたが、次の機会があるならば会場で全身で迫力のある音を受け止めたいと切に思った。

【取材・文:今井智子】
【撮影:クレジット橋本塁(SOUND SHOOTER)、西槇太一】

tag一覧 THE BACK HORN 9mm Parabellum Bullet

リリース情報

Digital Single「瑠璃色のキャンバス」

Digital Single「瑠璃色のキャンバス」

2020年06月24日

Speedstar

01.瑠璃色のキャンバス

リリース情報

Blazing Souls

Blazing Souls

2020年10月21日

TRIAD/Nippon Columbia Co., Ltd.

01.Blazing Souls
02.Burning Blood

セットリスト

「荒吐20th SPECIAL -鰰の叫ぶ声-」東京編
2021.01.19~20@昭和女子大学人見記念講堂

     1月19日
     <9mm Parabellum Bullet>
  1. 01.太陽が欲しいだけ
  2. 02.Answer And Answe
  3. 03.白夜の日々
  4. 04.サクリファイス
  5. 05.Supernova
  6. 06.The World
  7. 07.名もなきヒーロー
  8. 08.新しい光
  9. 09.Talking Machine
  10. 10.ロング・グッドバイ
    1.  1月20日
       <THE BACK HORN>
    2. 01.コワレモノ
    3. 02.ブラックホールバースデイ
    4. 03.心臓が止まるまでは
    5. 04.美しい名前
    6. 05.瑠璃色のキャンバス
    7. 06.シンフォニア
    8. 07.太陽の花
    9. 08.無限の荒野
     1月19日、1月20日
     <「鰰の叫ぶ声」全員セッション>
    1. 01.コバルトブルー
    2. 02.ハートに火をつけて
    3. 03.Vampiregirl
    4. 04.罠
    5. 05.The Revolutionary
    6. 06.戦う君よ
    7. 07.刃
    8. 08.Black Market Blues

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