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オメでたい頭でなにより、ライブの楽しさを実感した笑うしかできないZeppワンマン!

オメでたい頭でなにより | 2021.02.02

 1月23日・Zepp Osaka Bayside、1月30日・Zepp Tokyoで行われた『Zeppワンマン~笑うしかできない全席デリケートゾーンライブ』。「デリケートゾーン」とは、ゆっくりとライブを楽しみたい人のために、オメでたい頭でなによりが毎回用意しているスペースこと。ソーシャルディスタンスを保つために椅子をフロアに整然と並べて、観客同士の間隔を空けるように配慮していた今回のライブは、まさしく全席がデリケートゾーンだった。大声を発することができない状況に対抗した笑い声発生装置「爆笑ボタン」を全観客に配布して、限定Tシャツとリハーサル招待がセットになった「オメコンボチケット」の販売もするなど、様々な工夫を凝らしていたこのライブの東京公演の模様をレポートする。

 ラジオの深夜放送風音声『オールナイト転換』を聴いて過ごしている内に、ついにやってきた開演時間。眩しい日の出のオープニング映像とSEが鳴り響く中、ミト充(Dr)、mao(Ba)、324(Gt)、ぽにきんぐだむ(Gt/Vo)という順番でメンバーが登場。そして赤飯(Vo)も現れて「ザ・レジスタンス」がスタートした瞬間、オメっ子(ファンの呼称)の手拍子が会場をビリビリと震わせた。ステージの背景に映し出された歌詞の言葉のひとつひとつが、強いメッセージを帯びながら迫ってくるのが快感! <聞こえるか 生まれる 我らの歌 反逆のレジスタンス 夜が明け はじまる 今>という一節は、有観客ライブがなかなかできなくなっている状況下、様々な困難を乗り越えて公演が実現した喜びと重なる言葉たちであった。そして、2曲目に届けられた「日出ズル場所」の時点で、爆音、重低音、感動が熱く入り混じる空間と化していたZepp Tokyo。ステージに立っているメンバーたちも、何とも言えない感情を噛み締めていたに違いない。

 「ただいま帰りましたよ! ここからバキバキに行きますので、みなさんよろしくお願いします!」――イントロが流れる中、赤飯が挨拶をして「鯛獲る」がスタート。背景に何発もの打ち上げ花火が映し出されて、オメっ子たちの興奮もさらに高まっていく。そして最初の小休止を挟んで、演奏はさらに過熱していった。昨年の4月にリリースされたアルバム『オメでたい頭でなにより2』の中で強烈な重低音を轟かせていた「哀紫電一閃」と「God luck -運神-」が披露されて、オメっ子たちは大興奮。「日本人の『頑張れ』って『上手くいくといいですね』っていう祈りの言葉やと勝手に解釈してるんですよ。そんな気持ちで作った曲なんですよね。肩の力だるだるのつもりで聴いてもらったらいいかなと。今年1年、オメでたい頭でなにより、特に俺。肩の力だるだるでやっていこうかなと思ってます。これからもライブをするために肩の力を敢えてだるだるにして、その先にまたライブで会えるようにいろんなことやっていこうと思ってます」と赤飯が語ってから始まった「頑張っていきまっしょい」は、ポジティブな波動をオメっ子たちに目一杯に届けていた。

 メンバーたちが女装している花王エッセンシャルのCM映像、最新グッズのサイリウム「非常灯」の広告が流れてから突入した後半戦は、メンバー全員がサビで楽器を置いて踊りだしてしまう「推しごとメモリアル」からスタート。披露し終えた後、「1年ぶりのリサイタルに遊びに来てくれてありがとうございます。久しぶりで、私たちのこと忘れちゃってるんじゃないかな?」と、特技の女性ボイスを響かせた赤飯。そして、メンバーたちによる女性アイドル風なぶりっ子自己紹介を経て始まった新曲「推しどこメモリアル」のインパクトは絶大であった。赤飯が鍵盤を弾きながらバラード調で歌い始めたと思ったら、唐突に80年代末辺りのアイドルソング風味へと変化。ローラースケートで滑りながら5人が踊り、個性豊かな歌声を響かせる様がシュール極まりなかった。

 インストナンバー「今いくね」を経て、ライブはいよいよ佳境へ。オメっ子たちが掲げたタオルが激しく回転する様が壮観だった「踊る世間もええじゃないか」。<ダルマさんは転ばないっ>と歌った瞬間に爆笑ボタンの笑い声をピタリと止めたり、フロア内で笑い声のウェイブを巻き起こしたりする新しい遊びが導入されていた「ダルマさんは転ばないっ」。ソーシャルディスタンスをしっかり保ちながらも、熱い一体感を生み出せていた「スーパー銭湯~オメの湯~」。そして、本編を締め括った「オメでたい頭でなにより」は、曲の途中で赤飯から届けられた言葉も印象的だった。「離れてる時間がまた増えるかもしれへんけど、離れててもきみらのどっかにあるであろう爆笑ボタンのスイッチをずっと探し続けようと思います。その結果、またこうやって思いっきり一緒に声出して叫べる日が来たらいいよね? お前らの爆笑スイッチのボタン、甘々に設定しておいて。押し続けるから!」――この言葉を噛み締めつつオメっ子たちが一斉に掲げたダブルピースは、またライブの現場で再会することを誓う美しいハンドサインとなっていた。

 アンコールを求める手拍子に応えてステージに戻ってきた5人。「俺たちとあなたたちのこの場所は不要不急なんかじゃない。そう確信しました。この場所を守り続けるから、またいつでも帰ってきてください!」というぽにきんぐだむの言葉は、温かい拍手を浴びていた。そして、穏やかな手拍子を巻き起こした「ピーマン」の後に、あのとんでもない曲が飛び出してしまった。「俺たちが今日、みんなに一番伝えたかったメッセージをこの曲に込めて!」と赤飯が言ったので、「どの曲だろう?」と思っていたら、スタートしたのはつボイノリオの名曲のカバー「金太の大冒険」。厳かに降下してきた2個のミラーボールが黄金色の光を煌めかせている真下に立ち、朗々と歌い上げた赤飯。深読みをせざるを得ない表現、奇妙な言葉の響きが満載の曲なので、オメっ子たちの頭の中では様々な妖しい空想が広がっていたに違いない。そして、この曲がラストを飾ったのかと思いきや、本物の最後の曲として披露されたのは「えんがちょ!」。激しいヘッドバンギングを誘う曲だが、厳しい状況の中で奮闘している人々へのエール、災厄を払う祈りが込められているのを感じた。

 メンバーたちがステージを後にして終演を迎えた時、会場内に漂っていた清々しい余韻。ユニークな演出、遊び心、切れ味抜群のサウンドで満ち溢れていたオメでたのライブは、やはり最幸に楽しかった。モッシュ、ダイブ、大合唱ができる時間を取り戻せるまでには、まだ時間が必要なのだろう。しかし、音楽を愛する人々が集って共に過ごせば、素敵な空間を生み出せると証明されていたことに、とても希望を感じられるライブであった。

【取材・文:田中大】
【撮影:ゆうと。】

tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル オメでたい頭でなにより

リリース情報

推しどこメモリアル

推しどこメモリアル

2021年01月13日

ポニーキャニオン

01. 推しどこメモリアル

セットリスト

Zeppワンマン
~笑うしかできない全席デリケートゾーンライブ~
2021.01.30@Zepp Tokyo

  1. 01.ザ・レジスタンス
  2. 02.日出ズル場所
  3. 03.鯛獲る
  4. 04.哀紫電一閃
  5. 05.God luck -運神-
  6. 06.頑張っていきまっしょい
  7. 07.推しごとメモリアル
  8. 08.推しどこメモリアル
  9. 09.今いくね
  10. 10.踊る世間もええじゃないか
  11. 11.ダルマさんは転ばないっ
  12. 12.スーパー銭湯~オメの湯~
  13. 13.オメでたい頭でなにより
【ENCORE】
  1. EN1.ピーマン
  2. EN2.金太の大冒険
  3. EN3.えんがちょ!

お知らせ

■ライブ情報

ARABAKI ROCK FEST.20×21
04/29(木・祝)~ 05/02(日・祝)宮城 みちのく公園北地区エコキャンプみちのく

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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