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名刺代わりのミニアルバム『WAGAMAMARAKIA』全曲披露。ラウドでメタリックに、内に秘めた精神性を体現してみせたリリース記念フリーライブを独占レポート!

我儘ラキア | 2021.02.06

 百聞は一見にしかず。その言葉が浮かんだのは、我儘ラキアのライブ・パフォーマンスは百回話を聞くより、一度観ただけで強烈なインパクトを覚えるアイドルグループだから。今、アイドルグループと書いておきながら、その言葉に違和感を覚えるのはなぜだろう。ダンス、サウンド、ビジュアル、どれを取っても既定の何かに収まりそうで、収まりそうにない。枠組みやボーダーを突き抜け、無二のジャンルを作り上げている彼女たち。観ているだけでビリビリするようなオーラを全身から放出する我儘ラキアは、規格外のアイドルと言っていい。バラバラの個性がバラバラのままスパークした破壊力たるや、ロックバンドも裸足で逃げ出すかっこよさなのだ。

 「“WAGAMAMARAKIA"Release FREE ONEMAN SHOW」が渋谷・TSUTAYA O-EASTで昼公演、夜公演の2回開催され、後者のほうに足を運んだ。場内には座席が設置され、感染対策のガイドラインに沿った形式でライブが行われた。今回は昨年12月に発表されたミニアルバム『WAGAMAMARAKIA』収録の全6曲をBAND SETにて全曲披露するという。今作はNob(MY FIRST STORY)、Kuboty、HIDEとAG(NOISEMAKER)、YD(Crystal Lake)と、主にラウドシーンの爆心地を担う先鋭アーティストたちが楽曲提供。その事実からも彼女たちの普通ではないスタンスが窺い知れるし、全曲披露についても作品に絶対的な自信がなければなかなかできない大胆な試みである。

 18時ジャストにSEが流れ、黒の衣装に身を包むツインギターと鍵盤奏者を含む楽器陣5人が定位置に付き、ショートカットのMIRI、モデル風ファッションの海羽凜、オレンジ髪の川﨑怜奈の3人が華麗なダンスを披露し、最後に緑髪の星熊南巫が登場。まずはNob提供曲「SURVIVE」で幕を開け、重厚な演奏の上に星熊がソウルフルなハイトーンを響かせ、そこにMIRIがシャープなラップで斬り込んでくる。ラウドロックの質感を浮かべながら、LIMP BIZKITに通じるラップ・メタルのニュアンスを感じさせるあたりは面白い。次の「Letting Go」は聴けばすぐにわかるKuboty提供曲。元TOTALFATという彼の肩書きを彷彿させるブライトなメロディック・パンク・チューンだ。曲調も相まってメンバー4人もアクティブにステージを動き回り、拳を突き上げてノる観客が増え、会場の温度もグッと高まっていく。こうしたアッパーな曲調も彼女たちのカラーに実に合っているし、オープンエアの音楽フェスでこの曲を聴いたら映えるだろうなあ、と夢想する自分がいた。

 「New World」はエレクトロ色の強い大人びたナンバー。HIDEとAG提供曲であり、NOISEMAKERからオルタナ感を脱臭したセクシーさを猛アピール。加えて、サビでは観客もその場でジャンプしたりと、現場重視の高揚感もきっちり盛り込まれていた。
「東京公演の2部、楽しみにしていた人はどれぐらいいますか?」とMIRIが呼びかけ、そのあとに「中学のときの校庭で走り回っている犬……クマ(星熊)は誰にも止められない」と独自の表現で興奮を露にする星熊に会場から笑いが漏れていた。MIRIと川﨑は1部でとても緊張していたようで、この2部ではより伸び伸びとパフォーマンスに没頭できているのだろう。

 ここで改めて、『WAGAMAMARAKIA』にはいろんな曲があり、新しい我儘ラキアが詰まっていることを星熊が説明。さらに「田舎から大阪に出てきて、自分の譲れない夢があるから突き進んでいける。不安でも大丈夫だから。その気持ちが欠片になって入っている」と曲紹介し、Nob提供曲のバラード「One」へ。メンバー4人の前にはマイクスタンドが置かれ、川﨑、星熊、海羽、MIRIとボーカル・リレーで歌を紡ぎ、四者四様の声色でグループの個性を遺憾なく発揮。曲のアウトロ部分をダンスで締め括る演出にも魅せられた。

 ライブは早くも中盤過ぎに差し掛かると、Kuboty提供曲「Like The Stars」を披露。バラードから一転、パワーポップ/メロコア風味のサウンドが心地良く、緩急溢れる攻めっぷりも最高。アルバムの曲順どおりとはいえ、ライブを想定したような流れも効果的だ。そして、YD提供曲「Ambivalent」へと繋ぎ、イントロからダンスを繰り広げる彼女たちに目を奪われながら、Crystal Lake譲りのスケール感を帯びた曲調が場内に響き渡る。ドスを効かせたMIRIの迫力漲るラップ、ラストは星熊が地べたに座り込んで魂の絶唱を轟かせた。

 以上、『WAGAMAMARAKIA』収録の全6曲を披露したあと、「reflection」「Melody」と畳み掛け、ジャンプ&ハンドクラップで会場をひとつに束ねて本編終了。

 アンコールで再びステージに姿を見せると、「どんどん変わっていくから。かっこいいものを進化させていきたい。自分たちは世界を目指すアイドルになりたい!」と星熊が堂々宣言。その気迫を今日2度目となる「SURVIVE」に託し、会場をぶっ壊さんばかりのダイナミズムを叩き付けてくれた。全9曲50分ほどのライブだったものの、フル回転の全力パフォーマンスにただただ圧倒された。

 ラウド、ヒップホップ、R&B、EDM、ジェント、ハードコア、パンクなど多彩なジャンルを食い尽くし、アイドルからバンド好きまで射程に入れた貪欲なスタイルは、まるで全ジャンルに喧嘩を売っているような不敵な佇まい。誰にも媚びず、自分たちの内にある音楽的正義を愚直なまでに追求する姿勢に終始魅了された。

 何色にも染まりながら、何色にも染まらない強烈なアイデンティティを突きつける彼女たち。あえて言わせてもらうと、我儘ラキアのアイドルらしからぬ野獣魂は、アイドルの“ニュースタンダード”を打ち立てる覇気に満ちている。檻の中から飛び出す瞬間のライオンに立ち会えたような、成長過程真っ只中の彼女たちから目が離せそうにない。

【取材・文:荒金良介】
【撮影:Masanori Fujikawa】

tag一覧 J-POP ライブ 女性ボーカル 我儘ラキア

リリース情報

WAGAMAMARAKIA

WAGAMAMARAKIA

2020年12月23日

WW records

01.SURVIVE
02.Letting Go
03.New World
04.One
05.Like The Stars
06.Ambivalent

セットリスト

“WAGAMAMARAKIA”Release
FREE ONEMAN SHOW
2021.01.30@渋谷TSUTAYA O-EAST

  1. 01.SURVIVE
  2. 02.Letting Go
  3. 03.New World
  4. 04.One
  5. 05.Like The Stars
  6. 06.Ambivalent
  7. 07.reflection
  8. 08.Melody
【ENCORE】
  1. EN1.SURVIVE

お知らせ

■ライブ情報

HOME PARADE
02/22(月)東京 渋谷TSUTAYA O-WEST
02/24(水)愛知 名古屋ReNY limited
03/09(火)大阪 UMEDA CLUB QUATTRO

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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